「ユビキタスネット社会憲章(案)」に対する意見(ドラフト)

2005/02/17

Permalink 03:08:00, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 2042 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: パブリックコメント, 情報社会

「ユビキタスネット社会憲章(案)」に対する意見(ドラフト)

以下、総務省の「ユビキタスネット社会憲章(案)」に対する意見(ドラフト)。送付は一日置いてからと考えている。〆切は2月18日17時。


「ユビキタスネット社会憲章(案)」については、まず、その位置付けについて大きな疑問があります。この憲章は「社会における基本原則や共通認識を総括した」ものとして提示され、国民の基本的人権に直接かかわる権利や義務をそのなかで規定するものとなっていますが、一方で、この文章は総務省の政策懇談会で作成されたものでしかなく、国会の議決を経るなどの予定はないと考えられます。しかるに、一方では総務省の今後の政策の根拠となりうるものです。その場合、総務省、あるいは行政一般の権限の範囲内で規定しうる内容であるならともかく、この憲章はそれを大きく超えたところにあるように思います。憲章の正統性について、強い懸念を感じます。憲章という名称やその位置付けなどについて変更することが望ましいと考えます。

以下、内容についての意見です。

[続き:]

「第一条 情報の受発信に関する権利 」について。ここでは、「権利」が述べられていますが、その権利が自由権の範囲のものであるのか社会権としてのものなのか、明確ではありません。自由権としてのものと、社会権としてのものとでは、その保障する内容や権利への制約が大きく異なることになるので、項を分けるなど適切に書き分ける必要があるように思われます。

「第五条 プライバシー」について。第四項「撮影機器」は、監視カメラを含みつつ、個人所有の携帯電話付属のカメラなどもをもカバーする表現となっています。しかし、個人の撮影によるプライバシー侵害の可能性と、監視カメラ等による大組織によるプライバシー侵害は、その形態が異なり、また監視は撮影以外の方法も考えられます。従って、人を監視する機器については、別の項を立て、監視の事実の告知・表示のほか、監視の目的や収集される情報の扱いについての告知・表示などが適切に行われる必要があることについても言及するべきだと考えます。

「第六条 情報セキュリティ」について。情報セキュリティ対策のうえでは、実質的な被害リスクと対策コストが適切にバランスされるようなインセンティブを確保するため、セキュリティ事故後の補償についての制度上の整備が必要だと考えられます。例えば、金融機関の口座からの不正引き出しについては消費者に対しては原則としてほぼ全額金融機関からの補償が行われて金融機関が名実ともに被害者となる形をつくってこそはじめてセキュリティ対策コストとのトレードオフを金融機関が適切に見積もることができるようになります。 インセンティブを確保するための制度整備の必要性を述べる項が必要です。

「第七条 知的財産権」は第二項後半において、著作権侵害を専らの目的とするのではない、中立的な技術の開発者に社会的な責任を負わせようとするものだと考えます。第二項の後半は削除するべきです。

「第八条 情報倫理」について。第一項については、メディアの影響として問題がおこる、という意味の場合にはそのような影響は科学的根拠がなく、また道具としてのICTの関与があるという意味の場合は、中立的な道具や技術の開発者や運営者に責任を負わせるのは問題があると考えます。また、「予防的な措置」は、通信の秘密や表現の自由への事前介入につながると考えられるため、適切ではありません。さらに、「社会的一体性の強化」は意味不明であり、かつ、第二条で重視する社会・文化的多様性と文面上対立しているように思われます。第二項については、「違法コンテンツ」はともかくとして「有害コンテンツ」については、その有害性の根拠が多くの場合において存在しないこと、また、定義が広範かつ曖昧であることから、回避を努力義務とすることは表現の自由への介入であり不当だと考えます。また、「媒介」「助長」の回避義務については、通信の秘密への介入や、中立的行為へ責任追及となりうるものであり、問題があります。第三項、第四項については、「安全性」「信頼性」の評価について多様な価値判断があることに留意できる表現とするべきです。

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