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知財権侵害刑罰強化と共謀罪

2005/06/07

Permalink 10:00:01, by Nobuo Sakiyama Email , 3 words   Japanese (JP)
Categories: セキュリティ, 著作権, 監視社会, 共謀罪

知財権侵害刑罰強化と共謀罪

日経新聞が「知財権侵害、懲役を最高10年に強化・政府最終案」と報道している。 内閣の知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2005」の案であるという。 今月10日の予定の会議の資料はまだないが、知的財産戦略本部会合(第10回)議事次第の[資料2 「推進計画2005において取り組むべき課題」]に刑罰強化とひとこと書いてあり、権利保護基盤の強化に関する専門調査会の第13回会合における安念潤司参考人(成蹊大学法科大学院教授)の資料や議事録内容から、最高10年という数字が出て来ていると思われる。すでに公開されている資料や、あるいは「知的財産推進計画2005」では、それ以上の細かい話は出ないようだ。

厳罰化そのものについては、奥村弁護士が述べるような必要性についての疑問の声があるようだが、そこは私はよくわからないので話題にしない。それよりも、別の点で重要なことに気がついた。それは、いわゆる共謀罪(「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の一部)との関係だ。

ここで関心を著作権法に絞ると、著作権法の罰則の最高は5年(第119条の著作権侵害への罰則)で(日経新聞報道に「3年以下」とあるのは古い資料を参照した誤報か?)で、すでに共謀罪の対象と考えられる(ただし、この点については、Winny作者の刑事裁判の結果次第では極めて憂慮すべき結果をもたらすだろう。ファイル交換ネットワークを構成するソフトウェアを完成させ配布するに至らなかったとしても、例えば sourceforge のような場所で仕様を練る作業に参加しただけで「著作権侵害の従犯たることを共謀」とみなされかねない、という状況に、共謀罪が成立するとなってしまうのではないか)。もっとも、第119条は被害者からの告訴があってこそというものなので、非常に具体的に特定の著作物を侵害しようという共謀、でもなければ、共謀とはみなせないのかもしれず、あまり深く考えなくてもよいのかもしれない。いずれにせよ、私は法律の専門家でないのでこのあたりを厳密に検討できないのだが。

その上で、一番問題になると考えられるのは、「技術的保護手段の回避」に関する罰則(第120条の2の1号、2号)だ。これは、親告罪ではない。そして、現行の著作権法では懲役3年以下(あるいは/および罰金)となっている。刑罰強化が行われると、この上限が4年以上に引き上げられて共謀罪の対象となってしまう可能性が出てくる。これは、例えば「技術的保護手段の回避」を実現するプログラムを実際に配布しなくても、配布を「共謀」しただけで、犯罪とされる可能性があるということだ。しかも、何が「技術的保護手段か」という判断は、自明な領域はあるにしても判断が難しいものもあるだろうが、とりあえず、何かを検討しているさいに法執行機関が該当すると判断するものが少しでも現れれば、その後そのアイデアを却下したところで、「共謀した」という事実は消えないということになるだろう。これは、ある種の研究開発にあたっては、非常に強い萎縮効果なのではないだろうか?

6月27日追記: 小倉秀夫弁護士のblogで、「共謀罪」と著作権法との関係について記した記事を書いた、という話が出ている。どうやら、著作権侵害が共謀罪の対象になるということ自体が広く知られていなかったようだ。これはこれは!各所に知らせたほうがよさそうだ。