共謀罪を含む刑法改正案の審議が、7月12日よりいよいよ始まってしまうという話が聞こえている。形式的にはすでに趣旨説明をもってすでに審議入りしているのだが、これからが本格的な審議入りということになる。さて、前回のエントリで述べているように、著作権侵害も共謀罪の対象となる。こういう意外なものが他にもないかと思ったら、結構ある。
たとえば、不正競争防止法。現行法の罰則規定を見ても該当しないのだが、実は今国会で両院で可決成立し、すでに公布された改正をみると、罰則が「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」に引き上げられている。これで共謀罪の適用対象となっている。改正はこれに留まらず、営業秘密に関する処罰範囲が拡大している。これら全てが、共謀罪の対象となる。特に、転職や独立に関係しておこる営業秘密の漏洩については、営業秘密の保護と労働の自由のバランスをとる観点から、あくまでも「事前に約束して実際に漏洩させた場合」に限定して処罰の対象とした経緯があるというのだが、共謀罪の対象となると「事前の約束」だけで処罰され得ることになり、バランスが大きく変化することになる。なお、団体や組織の定義を狭く解釈する立場から共謀罪は限定的なものであって一般への影響はないとする立場が存在するが、そのように解釈するにしても、例えば企業内部での対立から一部の役員・従業員が一緒になって独立を謀ろうとすれば、やはり対象となってしまう場合があるように思う(現経営側はその状況を察知した段階で告訴するだろうし)。
もうひとつ別の例を。これは新しい話というわけではないが、関税法第109条では、関税定率法第21条第1項に定める輸入禁制品の輸入について、罰則を定めている。禁制品のカテゴリによって併科されうる罰金が異なるため項が二つあるが、いずれにせよ自由刑の部分は懲役五年以下となっていて、共謀罪の対象となる。予備も未遂も同じ。で、問題は禁制品の中身だ。麻薬・覚醒剤、銃器、爆発物、火薬、科学兵器の材料となる特定の物質、偽造通貨、といったものや、児童ポルノ、知財権を侵害する物品、とったものだけではなく、ここには「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」(第7号)が含まれている。これには、ハードコアポルノDVDなども含まれるが、同時に、芸術作品が該当するとされた税関での差し止めに対する訴訟が最高裁で敗訴に終わった事例や、あるいは30年以上前のこととはいえ、ベトナム戦争での被害状況の写真が税関で差し止められた事例が存在する。従って、性器の描写を含むような作品のある芸術家・写真家についての企画展を計画するとか(その後異なる判断が出たというRobert Mapplethorpeならともかく、Jeff KoonsのMade In Heaven シリーズならどうなるだろう?)、あるいはイラク戦争における米軍の攻撃の被害状況を伝える写真展のためにプリント済みの写真を海外から運ぶといったことを計画するとか、そういった計画を謀るだけで、共謀罪とされる危険があることになる。関税定率法第21条第1項第7項自体が、表現の自由との関係でその違憲性を問う声が絶えないのだが、それがさらに共謀罪とかかわるということについて、もっと注目されてもいいだろう。
追記: 拡大解釈の危険を煽るのはよくないという人もいるわけですが、しかし拡大解釈が否定されれば問題ないという結論にはならないですね。また、摘発されないかどうかというレベルでの心配とは別に、たとえ摘発の危険が小さくとも違法とみなされうる行為をしない、あるいはさせてはならない責任を負う立場の人達への萎縮効果、というのも考えるべきです。
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