「ホットライン運用ガイドライン」等に対する意見の書きかけ

2006/05/07

Permalink 00:45:30, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 674 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲, パブリックコメント, 言論・表現の自由

「ホットライン運用ガイドライン」等に対する意見の書きかけ

前エントリで問題点を述べた「ホットライン運用ガイドライン」などについて、意見を書いているのだけど、最後まで書いて仕上がるまでもう一日かかるかな、というところ(体調の都合で一日中パソコンの前に居られないのだ)なのだが、〆切も近いので他の方の参考になるかな、と書きかけのところでとりあえず公表しときます。まだ募集要項の本題にもたどりつかないものであることに注意。なお、これを書くにあたっては、山口貴士弁護士の意見も参考にした(ただし、山口弁護士の論点に細かく立ち入る部分は未了)。


以下、「ホットライン運用ガイドライン」等に対する意見を述べます。

私は、ホットラインの枠組そのものに重大な欠陥があると考えますので、 まずはホットライン全体についての意見を述べ、その中で、及び次いで、 募集要項にある

  • 第3 プロバイダや電子掲示板の管理者等に対する違法情報の送信防止措置依頼
  • 第4 プロバイダや電子掲示板の管理者等に対する公序良俗に反する情報に関する対応依頼

に関する提案、意見を述べることとします。

1. ホットラインの目的・背景などについて

ガイドライン案では、おもに国内事情を中心として、ひろく「違法・有害情報」 への対応を推進するためにホットラインセンターを設置するとしています。し かし、広汎な情報規制を意図した通報窓口の設置は、有効な通報の動機付けと ならない上、一方で無効な通報により有限なリソースが浪費される可能性があ ります。

インターネットはその国際的越境性から、国内において違法であると考えられ る内容が、かならずしも別の国ではそうではないわけで、それゆえ、一国にお ける対応が困難で、そのことは多くのインターネットユーザーが知っています。 そして、現実にそのような形で国内で違法とされるコンテンツを、多くのイン ターネットユーザが亨受しうる環境が存在しています。

そのような中で、いわば国内サーバ提供コンテンツにかかる「ネット浄化」を 思わせるような形で通報窓口を設置しても、そもそも問題となるようなコンテ ンツに接する可能性が高いユーザの支持を得られそうにもありませんし、また 一方で、正義感からなされる多くの通報が国外サーバ提供コンテンツにかかる ものとなり、多くの通報が無駄となる一方で、調査に人的・計算機的リソース が余計にかかる、ということが考えられます。

一方、国際的な背景をみれば、INHOPEを中心として、「インターネットの自由」 を価値として掲げつつ、おもに児童ポルノなど、児童への直接の人権侵害とな るコンテンツへ対応するホットラインが主流であり、このような流れへの国際 的な対応が必要です。児童ポルノは、被写体の年齢や単純な裸体写真の扱いな どにおいて国によって扱いの異なる境界事例が存在するにしても、その中核と なる要素においては多くの国でその提供が違法とされるのであり、かつ児童へ の重大な人権侵害であることから、積極的な対応が必要です。さらに、国際的 な児童ポルノ通報は、国内サイトに関するものでも、Googleをはじめとする画 像検索サイトや Way Back Machine などの Web アーカイブからの画像・映像 除去の観点からも必要でしょう。

ホットラインの目的・背景としては、このような部分を中心として掲げて、現 実のインターネットユーザ、とくに疑われる情報に接する可能性のある人々の 支持を得る必要があります。そのためには、重大な人権侵害である児童ポルノ についての通報以外は、インターネットで情報を受発信するユーザの利益を考 慮した、自主規制の枠組であることが明確であるようにする必要があります。 法的秩序の完徹をめざす法執行機関と一体化した下請け的組織に見えることこ とはマイナスです。

児童ポルノを中心課題とすることは、他の違法情報についてホットラインで取 り扱うことを否定するものではありませんが、情報の種類にかかわらずひとつ の枠組で扱うべきとは思えず、それぞれの情報に適した枠組を作るべきではな いかと考えます。

2. フィルタリング事業者に対する情報提供に関する問題

ホットラインは扱う情報の性質上、機密性が求められます(INHOPEの会員資格 でも明記されている)。

一方、フィルタリング事業者への情報提供は、通報されたサイト情報が、ホッ トラインの外に出ることを意味します。フィルタリングソフトの種類によって は、ブラックリストの情報が暗号化されてエンドユーザのパソコンに格納され るものがあり、これはエンドユーザによって解読される可能性があります。実 際、米国のCyber Patrol については解読プログラムがオープンソースとして 流通し、Cyber Patrol の権利をもつ会社が 解読プログラム作者を訴え、和解 により作者が会社側にプログラムの権利を譲渡し公開を停止した、という事例 もあります。公開されない形で、このような解読行為が行われる可能性は常に あります。また、フィルタリング事業者によってはユーザにブラックリストを 公開することもあるでしょう。

INHOPE への加盟は国際的な児童ポルノコンテンツの流通抑止への対応として 必要なことですから、このような機密性を毀損する可能性は排除しておく必要 があります。少なくとも、INHOPE経由で通報されたサイト情報がフィルタリン グ事業者に提供されることは避けるべきです。

この点、INHOPEの主要団体のひとつである英国の IWF は、フィルタリング事 業者への情報提供を行っているものの、それは、IWF に通報され、英国法で違 法だと判断されるものの英国外のコンテンツである場合に限定されており(英 国内の場合は違法であれば警察とISP等への通報で対処され、違法でない情報 については扱わないため)、INHOPE経由の通報はサイトが英国内の場合に限ら れることから、問題がおきない形となっています。

INHOPE 経由で通報された情報がフィルタリング事業者に渡らないためには、 専用のフラグを用意して扱う方法も考えられますが、そもそも違法情報のみに 限定して扱うこととすれば、問題は起こりえないはずです。

3. 扱うべき情報の範囲について

すでに述べたように、ホットラインは児童ポルノなど児童への重大な人権侵害 を中心として扱う必要があります。このような観点からみると、ガイドライン 案「第3」「第4」は、違法・有害といった線のひきかた、児童ポルノについ て「わいせつ情報」とまとめるまとめ方など、あまりに問題が大きいと考えま す。

まず、概念として、「違法コンテンツ」と「違法利用」を分ける必要がありま す。「違法コンテンツ」は、そのコンテンツを引用・複製してもやはり違法コ ンテンツですが、違法利用は、使い方の問題であって、内容を第三者が引用・ 複製した場合、文脈によって必ずしも違法なものではありません。

ガイドライン案では、「わいせつ物公然陳列」と「児童ポルノ公然陳列」が違 法コンテンツに該当し、その他の広告的な情報は違法利用に該当します。

3.1 違法コンテンツ

違法コンテンツについて、「わいせつ物公然陳列」と「児童ポルノ公然陳列」 は大きな差があります。「児童ポルノ」は、表現ではなく、表現において実在 の児童を性的に虐待して用いているという問題であり、その要件は客観的なも のであり、重大な人権侵害であり、徹底かつ迅速な対応が迫られるものです。 この場合、警察への通報が基本的な手続きとなり、送信防止措置依頼手続きな どは捜査の妨害とならない形で行われるべきです。

その一方、「わいせつ物」は、表現の問題であるため、常に表現の自由と拮抗 し、歴史的にも何がわいせつ物に該当し、あるいは該当しないのか、常に争い があるものです。ここで、ホットラインが自主規制機関であることをさらに細 かく考えると、従来メディアのように限られた数の企業が明確な合意において 自主規制機関を利用しているわけではないため、ホットラインが情報発信者に 対して行いうるのは、あくまで「わいせつ物」に該当する疑いがあるという指 摘に留まるはずであり、それを受けて該当すると判断するか、判断しないかは あくまで情報発信者の問題であり、刑事裁判においても常に情報発信者は該当 性について争う余地があるところです。従って、違法情報であることが確かで あるかのような通知を情報発信者に対して行うことは問題があります。さらに、 自主規制機関としては、表現に関する警察への通報は行うべきではないと考え ます。

3.2 違法利用

一方、広告的な違法情報は、インターネット上で散見されるものの多くは、単 に管理されないまま放置されている掲示板やブログなどへの迷惑コメント(コ メントspam)がそのままになっていて、spam業者は放置サイトに既に集積して いるspamコメントの内容に応じて自動投稿し、あたかもサイトが違法広告に乗っ 取られたような形になるものが少なくありません。これらについて、ホットラ インの送信防止措置依頼手続が行われると、サイト管理者とホットラインの双 方にとって大きな負担となると考えられます。従って、コメント spam につい てはホットラインとは別に、より簡便な、自動化・半自動化された対処が可能 となるような枠組やシステムの普及を図ることとして、送信防止措置依頼手続 の対象としないこととしておくべきです(コメントspam対処のシステムから、 違法広告を抽出してまとめあげてホットラインに通報する連携は検討されても よい)。送信防止措置依頼手続などは、サイト管理者と違法情報発信者が等し いと考えられる場合やサイト管理者が積極的に違法情報流通に関与していると 考えられる場合に、捜査の妨害とならない形で行われるべきです。

4. 判断基準について


(以下未完)

この記事へのトラックバック アドレス

http://blog.sakichan.org/htsrv/trackback.php/a1602e611abcd2c0c695fc87949d7b0a115e43a54e041ede4fdd173673e434a4

コメント, トラックバック, ピンバック:

この投稿への コメント/トラックバック/ピンバック はまだありません...

コメントを残す:

頂いたメールアドレスはこのサイト上には表示されません
頂いたURLは表示されます。

許可される XHTML タグ: <p, ul, ol, li, dl, dt, dd, address, blockquote, ins, del, span, bdo, br, em, strong, dfn, code, samp, kdb, var, cite, abbr, acronym, q, sub, sup, tt, i, b, big, small>
(改行が自動で <br /> になります)
(名前、メールアドレス、URLを記憶する Cookie を発行します)
(ユーザがメッセージ・フォームを通してあなたに連絡することを許可します (あなたのメール・アドレスは表示されません))

崎山伸夫のBlog

日々の意見やコメント、出来事などを書いていきます。

8月 2008
 << <   > >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

検索

いろいろ

XMLフィード

RSSとは?

オンラインユーザ一覧

  • ゲスト ユーザ: 27

powered by
b2evolution