前のエントリに続き、バーチャル社会のもたらす弊害 から子どもを守る研究会の資料がきっかけなのだが、全然違う話を。研究会の第2回資料が公開されたとき、そこをみて、携帯電話でのネットサービスについてのコンテンツフィルタリングサービスが実運用に入っている、ということに、今さらながら気がついた。その話は、第4回でも再び登場している。
まず話の前提として、NTTドコモとボーダフォン(もうすぐソフトバンクにブランドが変わるけど)が、類似のサービスを行っていて、auは異なる、という状況がある。NTTドコモとボーダフォンは、いずれも、インターネット上のサイトへのアクセスを提供しつつ、これにフィルタリングを適用する、というサービスを行っている。一方、auの場合は、いわゆる公式サイトのうち一部のみへのアクセスを提供する、というサービスになる。auの場合、例えば、公式サイトのなかでも、例えば酒・煙草に関するものへのアクセスは提供しないようなサービス、といったものではないかと想像される。いずれにせよ、他社と比較できないので、以後の議論の対象からは除外する。
NTTドコモのキッズ iモード プラスと、ボーダフォンのウェブ利用制限と、いずれも、ネットスター株式会社のデータベースを利用したフィルタリングであると明記してある。つまり、両者の違いは「どのようなものを対象とするか」という設定のみである。ここで、両者の対象カテゴリを比較すると、NTTドコモのほうが対象カテゴリが多い。何かといえば、
である。これらは、ネットスター社の分類基準によれば、
といった内容である。ちなみに、NTTドコモはフィルタリングサービスの提供開始にあたってのプレスリリースで
フィルタリング機能により、出会い系サイトやギャンブル系サイトなど特定のカテゴリに該当するiモードメニューサイト以外のサイトへのアクセスを制限することで、お客様にさらに安心してiモードをご利用いただくとともに、モバイルインターネットの健全な普及を推進することを目的とします。
とうたい、さらにドコモ「あんしん」ミッションというCSR(企業の社会的責任)の主要な内容のひとつとして、
子どもが利用する場合を想定して、健全な育成を妨げるおそれのあるサイトへのアクセスを制限することができます。
と唱っている。これらをつなげた論理的な帰結は
NTTドコモは、ゲイ・レズビアン・トランスジェンダーの生活スタイルに関する各種情報の提供や、 キリスト教、仏教、イスラム教、ヒンズー教、ユダヤ教、神道など、伝統的な宗教に関わる情報の提供や、伝統的宗教に分類されない宗教や、宗教全般に関する情報の提供や、宗教を巡る議論・論争の情報の提供や、政党・議員・それらの支援団体を含む、政治活動や政党に関わる情報の提供を、子どもの健全な育成を妨げるおそれがあるとしてこれらへのアクセスを制限することがモバイルインターネットの健全な普及を推進することに資するものであり、それを実施することが企業の社会的責任と認識している。
というものである。もっと簡単にいえば、「NTTドコモは同性愛と宗教と政治は有害だと宣言している」ということになる。
こういうのは「いちゃもん」のように思われるかもしれないが、そうではない。フィルタリングソフトのビジネスというのは、既に紹介したネットスター社の分類基準のページの注に
ネットスター株式会社は、URLフィルタリング製品等で利用いただくためにURLデータベースの収集・分類とお客様へのご提供を行なっており、その分類について、倫理的道徳的な価値判断をおこなったり推奨したり、厳密な司法的判断を提供するものではありません。製品を用いたURLフィルタリングやアクセス分析等の実施にあたっては、それぞれの組織の定める基準に沿ったかたちで、アクセスポリシーの制定と組織内への適切な告知・教育等を実施されることをお勧めします。
とあるように、データベース会社は「あくまで分類しているだけだよ」というスタンスを貫くことで、価値判断に関する責任問題を回避する一方で、典型的には、それを利用する機関では、私的自治として、ある価値判断に基づいたフィルタリングを実施するものだ。だから、スポーツやレジャーといったカテゴリもあるし、企業内利用では、単に「業務外だから」というフィルタリングをしたりもする。その基準は、一般論としては公共的な議論の対象とならなくなる。アメリカなどでは、Privatized Censorshipなどと呼ばれたりする所以である。
しかし、逆にいえば、こういったものを利用して公衆サービスを提供する場合、とくに末端利用者が設定を制御できないサービスの場合は、まさに価値基準をプロバイダが提供することになり、公共的な議論の対象となりうる。まして、これはマイナーなISPのサービスではなく、免許制度によって参入制限があり、事業者の数が極めて限られている携帯電話事業におけるサービスについての話であり、しかもそのシェア1位企業のサービスについてである。そして、NTTドコモほどの大企業がこのようなサービス提供をするのであれば、当然、そのポリシー決定がどのような意味をもつのかは、十分に事前の検討が行われているのであろうから、うっかりしているということは考えなくていいだろう。確信をもってやっていると考えていいだろう。
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