このところの子どもの携帯電話・所持にまつわるモラルパニック的な騒動について、規制という意味の問題というのとは別に、そこで語られる、子どもを情報機器とICTを使ったコミュニケーションからなるべく遠ざけたい、という「教育」的議論に、ずっと気持ち悪さを感じていた。ただ、私自身はとうに子どもから遠い年齢であり、といって、子どもがいるわけではなく、そして教育の専門家でもないので、このもやもやさをあんまり深く突っ込まずに放置してきていた。でも、ふと気づいたので書く。少なくとも中長期的には、昨今のモラルパニック的な方向とは逆に「全ての子どもにスマートフォンを持たせよう」ぐらいの勢いでものごとをすすめるのがいいのではないか。
こう思い始めたきっかけは、一ヶ月前ほどにクリステンセン(正確には弟子と、大学学長経験のある公共政策専門家の3人の共著)の新著「教育×破壊的イノベーション」が出たばかりのところをたまたま本屋で見かけて購入、2,3時間で読み切ったあたりから。原著も数ヶ月前に出たばかりらしいけれども、関係論文は、2、3年前から出ていたようだ。クリステンセンということで、モジュール化による破壊的イノベーションを学校教育に適用していく議論で、教師中心の指導システムを個別の生徒中心の学習システムに置き換えていくということが話の中心となる(原著タイトルは "Disrupting Class")。こうした変革の道具立てとして、インターネットにつながったパソコンでの e-Learning、それも少数のプロが作ったコンテンツだけではなく、ユーザー生成コンテンツが重要な位置を占めるような姿が未来として描かれている。そうだこれだ、というのがひとつ。もうひとつ、この本では全く引用されていないのだけれども、こういう学びの変革はOLPCプロジェクトとも共通点が多い。
ここで日本のケータイ騒動に戻る。弊害論全体はともかくとして、その後の「学校への携帯持ち込み禁止」議論は、いったい何を守ろうとしているのだろうか。ケータイの利用それ自体についてではなく、「学校への持ち込み」で問題にされているのは、結局のところ、「教師中心の指導システム」としての学校の秩序維持、という観点じゃなかろうか。それに対しての反論も、家庭との連絡や緊急時対応、GPSによる居場所監視などの「セキュリティ」的なものが中心となり、議論が総じて後ろ向き。かくて、GPSはついているが能動的にネットを使えないようにしたケータイを「子ども向け」として売れ的な、非常に後ろ向きな話が大手を振って歩いている。
あと、思ったんだけどね。従来の「ケータイ」って、製品としてかなり垂直統合されていたわけで、ちょっと機能がついたり変わったりするたびにニューモデル、という感じだったけれども、もはやケータイはこれまでほど短い買い替えサイクルが維持できないという話もあり、それは「機能限定子ども向けケータイ」にしたって変わらない。販売奨励金モデルが終わったというのはそういうことだ。そういう状況で「今のうちの子にはこれで十分」と思ったものが、はたして数年後にミスマッチがないか、というと、厳しいのではないだろうか。子どもの成長は早い。さらに、たいして安くもない低機能ケータイを「セキュリティ」関心で買った親が、子どもにそれとは別のさらなる情報化投資ができるかどうか、というと、社会階層や可処分所得によっては、つらい場合も少なからずあるのではないだろうか。
そこで、スマートフォンだ。スマートフォンもいろいろあるだろうけれども、例えば Windows Mobile携帯電話や Android携帯電話は、かなり明確にハードウェアとソフトウエアがモジュール化により分離している。さらに Windows Mobile の端末メーカーにとってのカスタマイズ化の要素の大きさは広く知られているし、Androidに至ってはオープンソースだから、端末メーカーが許せばサードパーティのカスタマイズができる。そして、多くのスマートフォンはサードパーティのものを含むアプリケーションをインストールでき、出来ることの幅も広い。
こういうスマートフォンに教育向けアプリケーションを載せて教育現場で活用できるようにして、ケータイ上のアテンションのいくらかを「遊び」から「学び」に転換する、というほうが、普及がすすんでいる子どものケータイ保有率を考えれば、よほどポジティブなんじゃないだろうか。OLPCの5つの基本原則には「子供の所有権」とあり、スマートフォンを活用できれば、学校の特別教室の共用パソコンよりも、はるかに効果的かもしれない。
ペアレンタルコントロールという観点では、端末メーカーの方針次第では、複数のバージョンのファームウェアを一種類の端末でサポートすることもできるし、内部のさまざまなモジュールを個別に有効・無効にしたり、あるいは場所や時間を用いたきめ細かいペアレンタル・コントロールも実装可能だろう。こうした実装をサードパーティが行うことができるようになっていれば、その提供者は大企業である必要もなく、地域のニーズを拾い上げやすいかもしれない。子どもの発達段階に応じて出来ることをソフトウェアで変えていくのであれば、端末を短いサイクルで買い換える必要もなく、家庭の財布にもやさしいだろう。
そういえば、上でリンクを貼った楠さんのブログ記事では、任天堂DSをひきつつ次世代(以降)のポータブル・ゲーム機のモバイルプラットフォーム化の可能性をみているのだけれども、ここでの文脈だと、すでにDSを使った e-Learning ソフトというのは結構な数が出ているので、教育コンテンツプロバイダとしてはその方向もうれしいのかもしれない。
兵庫県が18歳未満の携帯電話でのフィルタリングを義務付ける条例骨子案を発表したという報道があった(神戸新聞、朝日新聞、読売新聞)。各紙報道のほか、兵庫県のサイトで青少年愛護条例改正骨子案に係る県民意見提出手続き(パブリックコメント)の実施についてという文書が発表されていて、条例改正概要、条例改正案の目的・背景、条例改正骨子案などがMicrosoft Wordフォーマットで公開されている(条例案はインターネットカフェ規制、出会い喫茶規制、深夜外出制限の強化、乳幼児への条例対象への拡大とセット)。どうやら、昨年度からの検討のようだが、その経過の一部を青少年愛護審議会の議事録として読むことができる。県当局が主導して検討していくのを審議会に諮ってきた模様。
この条例案、なんとも気持ち悪い。青少年ネット規制法では保護者が「青少年有害情報フィルタリングサービスを利用しない旨の申出」をする場合、その理由を問われることはない。しかし、この条例案では、
のみが、フィルタリング解除の「正当な理由」として許される。それ以外の理由で判断しようとすることは、条例の義務違反とされる。その上、その「理由」は携帯電話事業者に 書面で提出しなければならず、その記録は3年間保存される。そして、県の「事業者に対する立入調査」において、この記録は調査対象となる。
親が、どのような理由で子どもに携帯電話をどのように使わせるか、というのは、フィルタリングを含めて、その家庭の自治でありプライバシーに属するはずだ。しかし、兵庫県はそこに土足で上がり込むことを平気でやると宣言している。さらに、青少年愛護審議会の議事録を読むと分かるのだが、この条例は当初、フィルタリングの義務化と違反した保護者への罰則までが検討されていたようだ。フィルタリングが「有害」とも思われない有用な情報をブロックする弊害はそれなりに認識されていて、それでかえってプライバシーに首を突っ込むような条例案になっているようだが、罰則については県当局と審議会の一部の委員はかなり拘っていた様子も伺える。将来についての線としては消えておらず、今後ブラックリストのカスタマイズ化が普及すると、むしろ復活する可能性がありそうな議論になっている。
気持ち悪さにはもうひとつ別の要因があって、ネットとケータイを使う「親」への、県や審議会委員の目線だ。大抵の親はすでに成人で、20代〜30代が中心で10代と40代もそれなりにいるだろうが、そういう世代には、ネットとケータイで当たり前にヘビーにコミュニケーションしている、そういう層が少なからずいるわけだけれども、それこそを矯正したい、という感じが漂っている。これは、条例改正の他の部分についての議論でも伺える。下限を撤廃して従来対象になっていなかった乳幼児を含める、という文脈では、さすがに他の委員から支持されず、審議会の会長からも検討対象外だとされていたが、「青少年条例の年齢の上限を上げたい」という議論がでていた。
(会長) 条例上の青少年の定義を「6歳以上18歳未満の者」から「18歳未満の者」に変更するということについて、ご意見はありますか。
(委員) 国民投票を18歳以上にするという議論もある。それについて、ある大学で調査したところ、18歳は若すぎる、まだ物の判断ができないとその年代に近い学生が答えている。そうなると、犯罪を起こしているという行為自体は大人と寸分違わず起こしていますけれども、精神的にはまだ20歳になっても、子どもじゃないかなと思うんですけれども。これからは、18歳という上限についても議論していかなければならないと思います。
平成20年度青少年愛護審議会(第2回)議事概要 - 兵庫県
まぁ、こういうパターナリスティックな気持ち悪さというのは、なにも兵庫県限定ではなくて、内閣府の青少年育成施策大綱でも、従来からして、青年期といって30歳未満までカバーしてきたところを、今度はさらに「ポスト青年期」といって30代まで政策の対象としてきていて、個別の政策の是非とはまったく別の「枠組」レベルの問題として、どんだけお前らパターナリズム好きなんだ、というほかないのだが。ただ、それでも兵庫県の気持ち悪さは特質に値する。
毎日新聞の社説なんだけどね、主張の是非はさておき。
警察当局は取り締まりを強化しなければならない。これまではインターネットの接続業者に削除を要請したり、海外からの流入はブロッキングという手法で防いできたが、手ぬるいと言わざるを得ない。
社説:児童ポルノ規制 これ以上子どもを泣かせるな - 毎日新聞 2008年12月19日
ブロッキングは自民党提出法案の附則第二条で調査研究が盛り込まれていて、総務省『インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会』最終取りまとめ(案)でも多くのページ数が割かれているところ(パブコメ募集へのMIAUの意見書でもここが厚くなった)。つまりは現状は検討中であって実施されているものではない。それがすでに導入されているような記述になっている、というのは、単純に事実ではない。毎日新聞は、どこかのパラレルワールドに行ってしまっているのだろうか。それとも、すでに一般への何の断りもなく密かに導入されているというスクープだったりするのだろうか?後者はあまりにひどいので前者説をタイトルとした。
楠さんが私のところを参照して言及したヘイトスピーチ規制の可能性についてなんだけど、少し考えてみたが、やはり、きっかけは人権擁護法案になるのではないかと思う。ただし、人権擁護法案が直接にヘイトスピーチ全般を法規制する、という話ではない。
2003年に廃案になった政府案を参照すると、ヘイトスピーチは「特定の者」へのものと、「不特定多数の者」へのものと大きく二つに分かれている。前者は「人権侵害」の中のひとつで後者は「差別助長行為等」(法案3条2項)。特定の被害者のいないヘイトスピーチに関しては、後者だけを考えればよい。さらに、この中で二つあるうちの2号は3条1項1号の人権侵害を「する意思を広告、掲示その他これらに類する方法で公然と表示する行為」ということで、行為主体がかなり限られる。「業として対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供する者としての立場」において、女人禁制とか外国人お断りとか表示するというのがそれなりに幅広いが、ただ、それは言論として独立に存在するというよりは、普通に考えて行為と一体になっているだろう。そして、3条2項1号は誰でもできる内容だが、「当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為」というのは普通に考えるとプライバシー暴露とか、規制対象とするのに無意味な情報(性別とか肌の色とか)とかを除くと、ピンポイントに被差別部落の地名の列挙などをターゲットにしているという話でしかない。そして、第3条での禁止は直罰規定があるものでもない。従って、法規制としては、人権擁護法案それ自体はヨーロッパのヘイトスピーチ規制と比べれば相当に弱い。そして、人権擁護法案が永遠に通らないということはないとして、おそらく、このあたりの条文は動かないだろう。
問題はここから。そもそも、被差別部落の地名の列挙などは法務省人権擁護局がすでに対応し、プロバイダに削除要請を行っている(2007年の概要中に具体的記述あり)。現状は、業界の自主規制で公序良俗に反する情報として扱っているということになる。ホットラインセンターも、取扱い範囲外として人権擁護局に転送する対応となっている。まず、これが「違法情報」に格上げになる。法的根拠があれば、ホットラインセンターのレベルで対処する、というのは現実的に考えられるだろう。また、実際に人権擁護法案が成立して法律になれば、何を「公序良俗に反する」と考えるか、という線が書き換えられるというのも、十分に考えられることだ。「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」が更新され、ホットラインセンターの運用ガイドラインも更新され、となれば、人権擁護法案の厳密な定義はもはや関係なく規制がすすむということになる。プロバイダがそういう方向に積極的に動くとも思わないが、ホットラインセンター関係者に取扱情報の範囲拡大についての野心を隠さない方がいるのはそれなりに知られていることだし、事件などのきっかけがあれば、警察庁は積極的に「要請」を出して「公序良俗に反する情報」の拡大に勤しむのではないだろうか。
Apeman氏が反応しているので続き。まずもってきちんと読んでほしいいのは、東氏の次の記述(強調は私)。
A.いまの日本社会に、南京大虐殺があったと断言するひとと、なかったと断言するひとがそれぞれかなりのボリュームでいるのは事実である(この場合の南京大虐殺は例)。
歴史認識問題についていくつか - 渦状言論
例に過ぎないのだから、個別の細かい話は捨象されている。そういう例に使うのは専門に扱っている歴史研究者などへの敬意に欠ける、という批判もみているが、「たとえその信条が私的にどれほど許し難かったとしても」という話をするための例なのだから、どのような例を持ってきても、論争当事者に対しては「敬意に欠ける」のは仕方がない。その上で、日本語で日本の読者なり日本の学生なりに提示する例として、これは選ばれている、のだろう。ホロコースト否認論も「私的にどれほど許し難」いという反応は引き出せるかもしれないが、現実の問題として、日本の多くの読者なり学生なりにとっては響かないだろう。個別の事情を捨象しているのだから、「南京事件否定論を違法化しようという具体的な政治運動」の具体性も必要ないし、そこは話のポイントでもない。
問題は、情報社会の発展により「言論の自由市場」が淘汰の場としては失効しているということ。東氏が島宇宙という(用語自体は宮台真司に由来。ただし、東氏においては若者文化論ではなくこれが全面化した状態が想定されている)のはそういう状態。それが、東氏における世界認識であり、かつ、ポストモダニズム系リベラルとして擁護する社会の姿でもある。この環境において、Apeman氏が「スルーせずに批判すること」を繰り返しても、社会の中で影響される人はいるかもしれないが、俯瞰してみれば、大勢に影響はない。島宇宙的な共存関係を壊すようなものではない。だから、「スルーせずに批判すること」についていえば、それはご自由にというほかない(し、それはそれでガンガンやればいいんじゃないのかな)が、それのどこが東氏批判になるのか、ということになる。東氏のビジョンを根本的に批判するということであれば、直截には私的に許し難い言論を公的に潰す実力公使となるほかなく、「市民的合意」によって国家権力を呼び出すのであればそれは法規制であるし、合意によらないのであれば、テロリズムとなる。島宇宙化した人々の関心をかつてのように特定少数のものに集まるように取り戻す、というのもないではないが、それはおそらく不可能に近いぐらい困難なことだろうし、現在東氏を批判している面々がそういう方向をめざしているようにもみえない。
表題は、東浩紀氏の「歴史認識問題についていくつか」の件。東工大の授業に関係して起こった騒動については、「呆れうんざり」するだけでいい。大学の授業は、それ自体は、イコール「公共圏」ではない。
多くの論者は「絶対的真実」について、あまりにも甘く見すぎている。「絶対的真実が存在する」とする、というのはどういうことかといえば、それに異を唱えるというのは殺してok、いやむしろ殺すべし、それくらいのことだ。キリスト教における異端審問というのはそういうものであったし、イスラム圏におけるコーランも、やはりそのような重みを持っている場合が少なくない。しかし、そのような「絶対的真実はない」というのが、東氏のいう、「ポストモダニズム系リベラルの理論家」たる主張だ(これは、結論としては「ポストモダニズム系リベラルの理論家」に限定される主張ではないかもしれないが)。
絶対的真実はないということは共有しつつ、東氏の議論はSFと断じ、人道をめぐる人類的合意形成はなくとも「市民社会の信頼をめぐる合意」は可能ではないかとする意見も出ている。しかし、ではそのような合意が「言論・表現」に向かうとき、それは何を意味するのか。SFでもなんでもなく、端的な事実として、現代のヨーロッパでは、ヘイトスピーチへの法規制が進んでいる(ナチズムの記憶のあるドイツに限定された動きではない)。「公共空間の言論」から、特定の形の主張を「平等と反差別」のための「市民的合意」として、国家権力をもって排除するということである。もちろん、ヘイトスピーチというものは、特定の属性を持った人的集団の排除を扇動するものであり(これは、イギリスのCriminal Justice and Immigration Act 2008において、ヘイトクライムについて1986年からの人種に基づく嫌悪、2006年からの宗教に基づく嫌悪に、性的指向に基づく嫌悪が追加されたさいに、同性愛行為などへの批判は含まれず、あくまで同性愛「者」へのヘイトであることが明確にされたことでもわかる)、言論・表現の自由という面では歴史認識問題以上に臨界的なものではあろうが、しかし、特定の主張の「公共的空間」からの排除であることは間違いない。日本における「人権擁護法案」は、実際の条文はこのような水準のものではないにもかかわらず、右派・保守系組織が危機感を表明してきたのは、そのような意味では(私個人の法案への賛否は別として)根拠がないわけではない。
さらに、このような問題はヘイトスピーチだけでは終わらない。前述のCriminal Justice and Immigration Act 2008では、extreme pornographyと呼ばれるものの違法化が行われていて、単純所持を含めて来年1月から禁止される。extreme pornography とは、生命に危険の及ぶ虞のあるプレイを含むポルノ、極度に暴力的なポルノや屍姦、獣姦となっている。現実の殺人事件(窒息プレイについて、合意の上での事故か殺人かが問われた)にからんで加害者が所有していたビデオから悪影響論が盛り上がったことが法制化のきっかけになったこともあり、また、獣姦が含まれていることから分かるようにキリスト教道徳的なものが背景にあるのも間違いないが、しかし、個人的な直感では、フェミニズム由来の反ポルノ運動での「描写自体が暴力である」という主張がこと暴力的な内容ではヘイトスピーチが違法とされている環境では、それなりに受け入れられ易かったのではないか、という気がする。法制化に向けた動きをちゃんと調べてない単なる直感だけれどもね。それから、「違法とする児童ポルノに漫画を含める」といった主張も、「漫画の描写自体が子どもへの性暴力である」という理由が主張する側から再三言われるのだけれども、これもまた、最高裁が断固として憲法修正一条でバーチャル児童ポルノ違憲を出したアメリカ(これでアメリカの最高裁や違憲裁判原告のACLUは先日のリオの会議で日本と並んで非難の対象となっていた)や、日本はいざしらず、ヘイトスピーチ違法のヨーロッパではいかにも受け入れられやすい、というのは普通に連想できる。「平等と反差別」のための「市民的合意」として、特定の言論表現を排除する、ということは、そういうことだ。
「たとえその信条が私的にどれほど許し難かったとしても、南京大虐殺がなかったと断言するひとの声に耳を傾ける、少なくともその声に場所を与える必要があるはずである」とする東氏の主張を非難しつつ、「もちろん言論の自由は前提である」と述べるような人たちは、ひょっとして、「許さない」という言葉は、「我々は(われわれわぁ)、○○の反動的主張を(はんどうできしゅちょうおぅ)、許すことができない(ゆるすことができなぁい)」とでも集会で宣言し街頭でデモすることが「許さない」という言葉の意味だと考えているんじゃないかとちょっと思ったが、さすがにそんなこともないだろうから、正直言って、何を言いたいのか不明だ。
あと、東氏がメタレベルで議論することを上から目線過ぎと嫌悪するむきもあるが、そもそも問題の科目は「ポストモダンと情報社会」だ。情報社会を論ずるということは必然的にコミュニケーションの形式をめぐって論ずるということになり、コミュニケーションの内容は主要な関心ではない。それは内容議論の上にあるものではなく、単に「全体性」が失われたなかでパラレルに存在するひとつの領域だというぐらいに考えておいたほうが健康だと思う。
追記: 場は既に与えられてるのに今更何言ってんだ、ということらしいが、現時点で場が与えられているということと将来も場が与えられているということは同等ではない。「南京大虐殺がなかったと断言する主張が存在する権利がない」という人たちは、すなわちそういう言動を違法化して検挙せよ、と主張するのだろうか?そうでなければ、それは「場を与える」状態を続けることだ。言論の自由市場で特定の主張が周縁化して実質的に無視できるようになることと、「市民的合意」により国家権力を呼び出して排除することは異なることだということにも注意。もうひとつ付け加えれば、たとえば「歴史学」といった特定の領域で特定の主張を領域構成員の自治として排除することも、「公共的空間からの排除」ではない。その場合、排除された主張が別のクラスターを構成することはある。そのようなクラスターの存在をも許さず地球上から権力的に葬るということが「公共的空間からの排除」だ。
静岡県立大学教授の小島茂氏のブログにテレビに専門家として出演する非認定・DM博士とDM教授というエントリがあり、そこに、おやっと思う名前があった。小島氏としては断定的な評価は行っていないが、全国webカウンセリング協議会理事長の安川雅史氏の名前が出ていた。
全国webカウンセリング協議会といえば、「学校裏サイト」問題にからんで急速に有名になった団体だ。会長に多湖輝氏を頂いているが、実質的には安川氏を中心とした団体といえるだろう。安川氏は、単にテレビに出ているというにとどまらず、先の通常国会では青少年問題に関する特別委員会で参考人を務め、文部科学省ではネット安全安心全国推進会議 委員を今年の8月の第3回会合から務め、10月に始まった「教育の情報化に関する手引」作成検討会 構成員でもある。
その安川氏の経歴についての問題だ。5年前の著書で、「ホノルル大学認定・応用心理カウンセラー」を名乗っているが、ホノルル大学というのは普通にディプロマミルとして知られていて、安川氏の経歴からすると、これはおそらく北海道応用心理学教室で心理学を学んだということだろう。現在でも、北海道応用心理学教室サイトの「生徒から一言」というページには2001年時点でのホノルル大学についての記述があり、Way Back Machineで探れば「ホノルル大学札幌キャンパスについて」というページが出てくる。その後、「ホノルル大学日本事務局」は閉鎖され、北海道応用心理学教室サイトでもホノルル大学の学位授与というのはなくなっているようだ。そして、現在の安川氏のプロフィールには「ホノルル大学」の文字はない。
ここからが本題。安川氏は、現在は「心理学博士」を名乗っている。ただ、「心理学名誉博士」と表記される場合もあり、大学名もない。そして、安川氏の名義での国内の大学の博士論文は存在していない。ここまでを確認した上で、トップページに安川氏のプロフィールを載せている全国webカウンセリング協議会事務局に問い合わせてみたところ、早速、回答を頂いた。以下、前後の挨拶を除いた部分。
お問合せいただきまして、ありがとうございます。安川の博士号についてですが、社会的貢献に送られる海外からの名誉博士号(名誉称号)になります。その他については個人情報になりますので、情報提供はできません。ご了承ください。
「名誉博士号」について「個人情報」というのはどこかがらみで見たような表現なのだが、それは置いておくとして、「名誉」博士号がどこの大学からのものかという部分だけが「個人情報」というのは、かなり奇妙な話だな、とだけ、とりあえず述べておく。個人の公式サイトにも問い合わせてみるか…、と思ったのだが、残念なことにページのフッタをみると「全国webカウンセリング協議会」とあり、結局同じところになってしまうようだ。
なお、心理学関係は少なくとも日本においては国家資格が存在するものではなく複数の民間団体資格が並立していることは知っているし、安川氏や全国webカウンセリング協議会が注目を浴びているのは安川氏のプロフィールに「心理学博士」と書いてあるからではなく、例えば「学校裏サイトリンク集」が注目を集めるなど、一定の実績のもとであることは否定するつもりはない。ただ、公的なところに出てくる「心理学博士」が、じつは「名誉博士」でその大学名は出せません、というのはどんなもんなんだろうね、という疑問を持っている。
タイトルはやや煽りだけれども、アングラサイトではなくてメジャーサイトにブロッキングが適用されたことで、ぐっと話をしやすくなった。日本語だとCNET日本語版に掲載されているWikipediaがイギリスの児童ポルノブロッキングで大ニュースになった件。英語情報は当のWikipediaに集積され、ニュース記事へのリンクも提供されている。
問題は、英語版Wikipediaで長いキャリアを誇るジャーマンメタルバンドであるスコーピオンズのアルバム、Virgin Killer(邦題「狂熱の蠍団 ヴァージン・キラー」)の記事に、オリジナルのアルバムジャケット写真が掲載されていたことから起きた。このジャケット写真は股を開いたポーズの少女ヌードを大きくフィーチャーしたもので、1976年の発表当時から物議をかもしていくつかの国では写真がメンバー集合写真に差し替えられている(日本ではオリジナルのもの)。現在では、新品のCDとして入手できるのは、すべて差し替え版のジャケット。Wikipedia記事では、差し替え問題の説明のために フェアユースとして両方のジャケット写真を掲載している(日本語版ではフェアユースを採用していないので掲載されていない)。
直近の状況としては、これがイギリスのInternet Watch Foundation(IWF)に通報され、ブロック対象になった。イギリスの刑法上の児童ポルノ(indecent photograph of children)の解釈基準では一番レベルの低いところに Erotic Posing というものがあり、これに該当するという判断が行われたと思われる(児童ヌードでも該当しないものはある)。一方、アメリカの連邦法、およびWikipedia財団のあるフロリダ州法では、これは児童ポルノではない。アメリカの児童ポルノの定義では、単体ヌードが該当する場合は限定されていて、ヴァージン・キラーのジャケット写真では、性器そのものは上に被さったガラスのヒビの描写で覆い隠されていて、性器を露骨に描写しているわけでもなく、全身ポーズとしては股を開いているが、性的ななにかを少女にさせているわけでもない。こういうものは法的には児童ポルノとはされない。このジャケット写真に関しては、アメリカ国内の有名な右派ニュースメディアが、児童ポルノだとして警察に対応を要求したことがあった(このメディアは他のWikipediaの記事での性的事項の記述や成人の性器写真などについても批判的である)が、結局のところ警察が動くことはなく終わっている。なお、実児童の写真という前提のもとでは定義が幅広い日本の児童買春・児童ポルノ禁止法には抵触するような気がするので、このブログ記事から問題のエントリへのダイレクトなリンクは行っていない。
いくつか問題があって、アルバムジャケット写真そのものは、「店頭で販売する」という文脈では単なる違法・合法の線引き以上の抑制が働いているわけで、まず売っていないのだが、昔のLPレコードの中古品の売買は普通に行われていて、Wikipediaを運営するWikimedia財団の声明でも、Amazonでイギリスから普通に買えるぞと言及されている。あと、非常にメジャーなところで扱われていたので、Wikipediaに限らず問題の写真を掲載している Webサイトがあるなか、「通報ベース」とはいえ非常に恣意的に見えた、ということはあるだろう。さらに、そもそも問題なのは「写真だけ」のはずが、ここでは当のアルバムを説明している純粋なテキストまでもが児童ポルノブロッキングに適用されたということだろう。イギリスの児童ポルノブロッキングは、URL単位で行うので「画像だけ」というブロッキングが容易だということになっていた。しかし、現実は画像をインライン表示するテキストページもブロッキングの対象になっていることが白日のもとに晒された。「児童ポルノへの対応」のなかでは、商業的児童ポルノサイトなどへの対応で、あきらかに画像のみではなく幅広いブロッキングを要するケースもあるだろう。しかし、この件はそういう問題ではない。「児童ポルノ」ゆえにブラックリストの内容を公表できないという前提のもと、いったい彼らは何をやっているのか、ということだ。ちなみに、イギリスでは最近Criminal Justice and Immigration Act 2008という法律が成立して順次施行の最中で、すでに児童ポルノについては「トレースやその他の派生物」も対象とする拡大が行われていて、来年1月には、extreme pornography として、屍姦ポルノや過激な暴力ポルノ、獣姦ポルノなど(実際のものかどうかは問われない)が単純所持を含めて禁止され、これらもブロッキング対象になるとみられている。
制度的な部分以外では、技術的な問題点もWikipediaでは指摘されていて、ブロッキングに利用されている透過プロキシの速度が十分でないことや、そもそもプロキシとしてサーバー側からは見えてしまう代物なので イギリスの多くのユーザーのアクセスするIPアドレスが数個に集約されてしまっているといったことが挙げられている。後者は「荒らし対策」の側面では最悪で、多くの非ログインユーザーが他のユーザーとIPアドレスで区別がつかないためにWikipediaの編集ができない状態にあるという(HTTPヘッダでクライアントのIPアドレスを通知しているプロバイダは個別救済されているというがそれから外れているプロバイダもあるという)。
犯罪対策閣僚会議というのがあって、そこが「犯罪に強い社会の実現のための新たな行動計画(仮称)」(案)に対する意見の募集というパブリックコメント募集をやっていて、これがわずか10日ほどの募集期間。共謀罪関係の項目があったりネットの表現規制に関係する項目があったりして一部で注目されつつ存在自体、広くは知られていない模様。まぁ、大半は現行の政策そのものをしっかりやります、ないしその延長という話でしかなかったりはするけれども。
ということで、読んでいたら最初のほうにGoogleストビュー問題の話がいきなり出ていた。「第1 身近な犯罪に強い社会の構築 - 2 犯罪に強いまちづくりの推進」の項目のひとつで、2ページ目のなかほど。
③ 道路周辺の映像を表示するサービスに係る防犯対策等の検討
実在する道路周辺の映像をインターネット上で立体的に表示するサービスについて、防犯上の問題点等を検討し、問題点がある場合は、対策について検討する。
楠さんが通信プラットフォーム研究会と携帯電話の契約者IDの問題は別という話をしていて、報告書案はたしかにそこは直接リンクしない話に落ちていて、というか、今後の検討に先送りしているともいえる(そこは、契約者IDの問題を解決したい人にとってもチャンスの場だかれども、IDで徹底的に個人情報を結びつけたいビジネスにとっても正当性を担保するチャンスの場だとも言える)けれども、インターネットが終わっちゃうかどうか問題についていえば、問題はそこだけじゃないので。ということで、私が書いたパブコメを以下に。今の文脈だと意見2のほう。いいかげん、IPv6を個人に紐付ける識別子にっていう発想は政策の場から追い出されるようにするべきだと思う。
意見1. 18ページ 4.3) 「2 外部リンク(リンクアウト)の柔軟性の確保」について
現在の主流の携帯電話端末では、ブラウザ上で表示されているページのURLを確認するためにメニュー操作が必要であったり、あるいは正確なURL確認が不可能であったりする。このような環境において外部リンクの柔軟性が確保されると、サイトの信頼性を確認する点について利用者が大きな不便や不利を被ることになる。同様の問題はすでに公式サイト以外のサイトの利用において存在しているが、公式サイトでの「外部リンクの柔軟性の確保」は、問題を深刻化させる可能性がある。
報告書案では、一定の環境整備と事業者間の合意を前提とした上で、相互リンクを実現することを提案しているが、コンテンツの信頼性の最終的な判断は、実際には公式ポータルや競争ポータルをどれだけ信頼するかという利用者の判断の余地が残されるべきである。
従って、「外部リンクの柔軟性の確保」にあたっては、ポータルが対象とする携帯電話端末においてPCのブラウザ同様のURLの常時表示の実現を必須の前提とするべきである。
意見2. 33ページ 5.1) 「(b)移動通信分野の認証基盤と他の認証基盤との相互運用性の確保」について
「例えば、今後はIPv4アドレスが2011年頃に枯渇するものと見込まれることから、インターネットは段階的にIPv6アドレスに移行していくが、それに併せてIPv6アドレスが各携帯端末にも付与されれば、従来の電話番号等をベースとしたユーザーIDに替わって、IPv6アドレスを携帯端末の識別子とする新たな移動通信の認証基盤を構築すること等も考えられる。」
とあるが、一般論としてIPv6アドレスは識別子とするには不適切である。もっとも一般的なIPv6のアドレス設定方式である ステートレスな自動設定(RFC4862) やプライバシー拡張(RFC4941)においては、IPv6アドレスの永続性は意図的に保証されていない。ステートフルなDHCPにより永続的なアドレスを保証することは不可能ではないが、IPv6ネイティブの携帯端末のセキュリティや プライバシー確保の観点からは、アドレスの一意性が保証しないことを積極的に志向するべきである。
携帯端末むけに標準化が進んでいるProxy Mobile IPv6 (RFC5213)においてもアドレスのステートレスな自動設定は主流な方式としてサポートされており、IPv6アドレスを識別子として永続的なものに限定するような仕組みの導入の要請は国際標準にそぐわないネットワークを求めることになると考える。
また、アドレスのステートレス自動設定では変化するのはIPv6の128ビットアドレスのうち下位64ビットであり、Proxy Mobile IPv6 では上位のプレフィックスについては接続中には他の端末と共有されないホームアドレスを割り当てることからホームアドレス部分を識別子とすることも考えられるが、IPv6のアドレスの使い方を考慮した場合、携帯端末ごとに一意のホームアドレスを割り当てるというのは、いくらIPv6のアドレス空間が広いといえども、携帯電話の端末数を考慮した場合に無理があると考える。なお、Proxy Mobile IPv6 ではホームアドレスのリナンバリングもサポートしており、永続性を保証するものではないことは明らかである。
以上のことを考えた場合、「例えば」以下は、例示としても不適切であり、削除するべきと考える。
えがちゃんこと永上裕之氏が非モテSNSというのを作って告知しているのだけれども、これって違法サイトじゃね?
「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」、いわゆる出会い系サイト規制法というのがあって、出会い系サイトの事業や利用法について規制されている。このほど法改正と施行規則改正で大幅な規制強化が行われて、届出義務化とか年齢確認の強化とかが、12月から順次始まる。警察庁のサイトに詳しい説明がある。年齢確認の強化で免許証の写しなどの送付(メールでいいし、パブコメでツッコミが入って施行規則上は本人を特定する部分は塗りつぶすなどしてもいいが、事業者の決めるルールはまた別)を求めるレベルの厳密な確認を求めるというのは、まさに永上氏のような(ワナビーかもしれないが)スタートアップのレベルの事業者にとっての大きな参入障壁となるような規制で、それを法律ではない所轄庁が定める「施行規則改正」でやってしまっていることには個人的には大きな疑問があるし、「インターネット異性紹介事業」の定義にひっかかりたくないコミュニティサイトは異性の出会いを求めるコミュニティが内部に形成されてきたのを知ったり知らされたりしたら検閲して潰していかない(そうしないと実態として出会い系サイトであるとみなされた時点で届出違反として違法になる上、その場合は他体は年齢確認義務にも違反しているとされるだろう)、というのも、表現の自由とかコミュニケーションの自由という観点からどうかと思う。なにしろ、「異性交際」は実際に出会うことに限定されていなくて、文字だけのメル友付き合いとかも入ってくるのだからね。ただ、最近の「子どもを守れ」の流れでは、これはもう止まらない流れ。大規模なコミュニティサイトを含むポータル事業者は最終的に折り合いをつけてのんだというし、ライブドアは、さっそく利用者に対しては、個々の出会い系サイト業者を信用しなくてもうちがかわりに認証するので大丈夫ですよ、中小事業者に対しては、うちが年齢確認するから負担小さくなりますよ、廃業しなくてもいいですよというサービスをアナウンスしてビジネスにつなげていたりする。
それはともかくだ。非モテSNSは、「非モテが集まって傷を舐めあったり、非モテな男女が出会ったりするSNS」と名乗っているのだから、コミュニティサイトに関する微妙な議論を抜きにして、出会い系サイトだ。警察庁の出会い系サイトの定義についてのガイドラインでは、SNSについて『サイト開設者がサイトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供していない限り、「インターネット異性紹介事業」には該当しません。』としているけれども、非モテSNSは直球で出会い系サイト。でも、サイトのどこにも18禁って書いてないし、捨てアドレスで登録したら幼児の年齢でも登録できちゃうよ。これは現行法でもまずいだろう。警察庁のネット規制頑張りすぎは困ったものだけれども、天然で何も考えてないでサイト作りつづけるのもどうかと思うよ。
テレコムサービス協会(正確にはテレサ協を事務局とする「違法情報等対応連絡会」だけれども以下ではテレサ協と表記)がインターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン(案)」等に係る 意見募集についてというのを21日締切で出していて、メインの「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」改訂については、あんまり問題を感じなかった。変更箇所がわかりやすくPDFファイル内に赤字で示されていて、わいせつ性の判断基準を少しいじりました(これで利用者が不利になる要素はない)、児童ポルノの定義を法律と揃えました(それはそういうものでしょう)、警察機関からの公序良俗に反する情報の対応依頼書を新たに追加しました(国家権力を背負った警察が違法でないものについて口出せるのはやや問題があるんだけど、それはテレサ協の問題ではなくて、テレサ協はただ書式を用意しただけ)、といった話にすぎないので。
もうひとつの「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」のほうが、どこがどう変更されたか、いまいち分かりにくかったので、ちゃんと読んでみた。現行と改訂案。
なお、「契約約款モデル条項」は、その名のとおり「モデル」なので、これが変更されたからといって、ダイレクトに利用者の権利が変更されるわけではない。ただ、業界のそういう動きを各ISPは見て動くだろうというのはあって、自前の法務部に実力があるような大手ISPはさらに独自の検討を行うかもしれないし、あるいはここにあるような検討をすでに行って反映しているかもしれないが、中小ISPはそのまま改訂案を反映させた契約約款改訂を行うところが少なくないだろう。
改訂はいずれも「禁止事項」(第一条)に関するもの。
もともと、この種の契約約款では最後に「その他」というキャッチオール条項があるので「対象をより明確にする観点」で改訂という説明は間違いではないのだけれども、結構もりだくさんな改訂ですね。さぁ、どう考えたものかな。
今回のパブリックコメント提出にあたって、私は無限責任中間法人 インターネット先進ユーザーの会(MIAU)の正会員として、、同会が別に提出しているパブリックコメントに意見を同じくするものです。
以下は、それに加えて、私個人として提出するパブリックコメントとなります。なお、指摘点が多数あるため、氏名と連絡先は冒頭に示し、以下の個別の記載においては省略しております。
指摘点: SafetyOnline3.1「ヌード」カテゴリおよび「性行為」カテゴリについて
内 容: キーワード「自慰」「排泄」「緊縛」はヌードカテゴリから削除するべきである。一方、性行為カテゴリのキーワードについては、「異性間・同性間の性行為」「自慰」「SM」「糞尿趣味」「フェティシズム」「獣姦」「性行為を連想させる行為」とするべきである。「緊縛」はキーワード「SM」の説明に含めればよい。「乱交」は、「異性間・同性間の性行為」のキーワード説明に追加すればよい。キーワード「変態性欲」「不倫」「官能小説」は削除すべきである。
理 由: 「ヌード」カテゴリは正確にヌードに関係する内容とするべきである。「自慰」は性行為が正しい。「排泄」については、いわゆる糞尿趣味は性行為カテゴリが適切と考えられ、一方、トイレ盗撮については擬似も含めて性犯罪カテゴリが適切である。性行為カテゴリについては、特定の性行為を「変態性欲」「背徳的」と記述するレイティング基準は、成人向けコンテンツの製作者等の間を含めてセルフレイティングを推進する観点からは、彼らを尊重するものといえず不適切である。ここでは性行為の種類を網羅すればいいのであって、ある行為が「変態性欲」か、「背徳的」か、といった予断をレイティング基準を使う側に与える必要はない。また、キーワード「不倫」「官能小説」については、これらは性行為を記述するキーワードとは言えないので単に削除するべきである。性行為や性愛の描写や表現でそれぞれのカテゴリに分類するべきである。
指摘点: SafetyOnline3.1「露出的な服装」カテゴリについて
内 容: カテゴリの説明の冒頭を「肌の露出性の高い身体の描写として」とし、キーワード「下着」の説明の冒頭について「セクシーさを強調する下着」とするべきである。
理 由: カテゴリの説明の「露出性の高い」の対象が明文化されておらず、キーワード「下着」の説明として、単に「下着を露出した姿態の描写」とあるため、単に下着を露出した描写が全て該当するように読める可能性が高い。単に下着を露出した描写は、実用下着のウェブサイトや実用下着の通販サイトなどのように、とくに青少年の閲覧を制限する必要性に乏しいサイトにも少なからず存在するため、誤解を避ける必要がある。こうしたメーカーや流通業者が運営している実社会のショッピングモール内の店舗では下着姿の女性を描写した大きな写真が掲げられていて店舗外から確認できることも少なくないが、社会的に全く問題となっていない。
本カテゴリに対応するネットスターのカテゴリ一の説明にも、「水着・下着・レースクイーンなどセクシーさを強調する画像の掲載やグッズの販売、フェチをテーマにした各種画像や情報提供」とあり、実際に上に挙げたようなサイトがこのカテゴリに分類されてはいない。
指摘点:SafetyOnline3.1「性暴力・性犯罪」カテゴリについて
内 容:キーワード「近親姦」の説明を「児童を対象とした近親姦、あるいは近親としての優越的地位を利用ないし強制を伴う近親姦の描写や表現」とするべきである。
理 由:日本の法令においては、西欧の一部の国とは異なり「近親姦」がただちに性犯罪となるわけではない。児童福祉法上の犯罪となる児童を対象とした近親姦、あるいは性暴力と言える範囲の近親姦とするべきである。なお、このように限定しても成人間近親姦ポルノグラフィの多くは性行為カテゴリや性愛表現カテゴリに含まれるだろう。
指摘点:SafetyOnline3.1「その他禁止行為」カテゴリについて
内 容:カテゴリー名を「その他犯罪行為」とし、カテゴリーの説明を「犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い、仲介し、若しくは誘引し、又は自殺を直接的かつ明示的に誘引するもので、右のような記述を含むもの」と改めるべきである。また、キーワード「その他の違法行為」が広範すぎるので、説明中にある「不正アクセス、フィッシング詐欺」で置き換えるべきである。
理 由:カテゴリー名「その他禁止行為」は禁止の根拠があきらかでなく、カテゴリーの説明については「法律、条例その他の法規で禁止された取引や行為」は広範すぎ、青少年の閲覧がとくに不適切と考えられない情報をも大幅に制限することになる可能性があるため、カテゴリーの説明には青少年ネット規制法第二条第4項一号の定義をそのまま用いて、カテゴリーの範囲を「犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為」に限定するべきである。また、SafetyOnline3の検討過程では、2006年度に本カテゴリを思想信条、宗教に基づく団体などのサイトの排除に活用する方向の検討が行われていた事実がある。具体的には、2006年度RF研第3回研究会資料3において、『「反社会的な集団やカルト集団」(を追加しない件)については、暴力やテロ活動を行なう集団は「犯罪行為(その他禁止行為)」のカテゴリで対処できるが、示威活動や脅迫活動を行なうような集団はどう扱うのか?』という委員のコメントに対して『サイト上で示威活動や脅迫活動を行なっているサイトについては、カテゴリ「その他禁止行為」の項で対応できるよう、「口座売買、殺人依頼、脅迫など法律で禁止された行為に関する記述が含まれるもの」と加筆する。』とWGの考え方が示されている。脅迫行為は犯罪だが、示威活動一般は必ずしも犯罪とはいえず、むしろ言論・表現の自由に属するものであり、それを閲覧制限の対象とする方向で検討が行われていたということについて憂慮する。
上記WG見解がSafetyOnline3において『口座売買、殺人依頼、脅迫など法律で禁止された行為に関する記述が含まれるもの、その他法律、条例その他の法規で禁止された行為の手口に関する記述』となり、3.1では『殺人依頼、脅迫、口座売買、携帯電話無断譲渡』と『その他の違法行為』に分割された。『その他の違法行為』の「法律、条例その他の法規で禁止された行為の手口に関する記述」は、極めて広範であり、道路交通法や公安条例、その他、公安事件でしばしば見られる別件逮捕目的の軽微な逮捕容疑にかかるようなものまで含まれる可能性があり、そのような解釈は青少年が多様な政治的意見に接する機会を狭める可能性がある。また、思想信条、宗教に基づくレイティング・フィルタリングをしないという基本方針を実質的に逸脱する余地があると考える。このような解釈を招かないために、「その他の違法行為」というキーワードは削除し、「不正アクセス、フィッシング詐欺」で置き換え、不足があればキーワードはレイティング基準を見直すさいに追加するものとすべきである。
指摘点:SafetyOnline3.1「コンテキストラベル」について
内 容:「青少年に対する配慮」を拡大・分割し、12歳未満制限、15歳未満制限などの既存の自主規制の範囲のコンテンツを取りこめるようにするべきである
理 由:すでにインターネットはDVDやテレビゲームなどのパッケージメディアの販促にも広く用いられており、映画についても公開時のプロモーションサイトが設けられる場合が多い。また、過去の作品についてはワンソース・マルチユースということでネットコンテンツ化していくことも今後は増えると思われる。こうしたパッケージメディアや映画などは、すでに既存の自主規制の枠組のなかで、全年齢向けと成人向け以外のほか、PG12やR15などの中間的なレイティングを行っている場合が少なくない。こうしたレイティングを反映してカテゴリーによる制限の例外とすることができるようにすることは、青少年健全育成と青少年や保護者の利便性の両立をはかる上で必要である。
永遠にネットをさまよう公安個人記録 「亡霊のよう」という記事が ITmediaに載っていて、これは ZAKZAK から買ってきて配信している記事だというのはクレジットにあるとおりで、そこらじゅうのニュースサイトに載っているんだが、デタラメ。ほぼデマに近い。一般論として、ネットに流出した情報が消せない、という話はあるだろうが、これはそんな話ではない。事実を示すということと、2000年にサイトや個人の実名を明記する報道がされている(Wiredのような濃いところだけじゃなくて、Washington Postとか)ので、ここでは実名を出す。この ZAKZAK 記事が固有名詞を欠いているのは情報操作の可能性すらある。
「当時すでに退職していた内部関係者」は、現在はジャーナリストの野田敬生氏(なぜか知らないが彼のサイトとブログのESPIOはつい最近消滅している。メルマガのアーカイブだけは残ってるが)。「海外ホームページ」は、英語版Wikipediaにも載っている、John Young が開設したCryptomeだ。ここは、問題の公安調査庁職員リストを2000年に掲載した時のアクセス過多によるダウンがあったとか、2007年にNTT資本であるISPのVerioからAUPを理由に契約解除されたことでISPを移転したとか、そういうのを除けば、「消滅しており、データは抹消された」ことはない。
そして、問題のリストは、最新情報サイトであるcryptome.orgからアーカイブサイトとして後に設けられたcryptome.infoに移されたものの、いまだ堂々と公開されている(名簿スキャン画像による日本語版、英語に翻訳されたテキスト版)。FBI経由で削除云々の経緯も話もFBI側の担当者の実名込みでメールをさらす形で残されていて、これを読めば Young 氏が「アメリカの裁判所命令があれば削除するよ」とはっきり述べている。まずは、公安調査庁の上部組織である日本の法務省が「自分で」削除依頼出してねと。その上で裁判所命令となれば対処しますという話になっている(直接の表現としては、そうしないから削除しないよ、と述べているわけだけど)。そして、日本の法務省は現在に至るまで、Young 氏に対する正式な対応をとっていないからここにリストが残っているわけだ。「いたちごっこ」なんて、ないじゃないの。
「一般ユーザーでも専用ソフトを使ってキーワードを入力すれば、かなりの確率でダウンロードできる」とか、そういう問題じゃない。普通にWebブラウザで、Google 検索で、"PSIA lists"と入れれば、最初に出てくる。Winny も eMule も BitTorrent も要らないよ!
ただ、ひとつだけこの記事に興味深い点があるとすれば、「公安調側は何度も削除を試みている」とか「「可能な限り処置はした」という話が出てくる点。もしかすると、2007年のVerioの件は、日本資本が入っているということで公安調査庁として take down をムリムリ依頼して、明確な法的根拠を示さなかったので「AUP違反による契約解除」という以上の説明がYoung氏側にないという話なのかもしれない。例えば著作権侵害とかなら、Verioも手順を踏んで通知してきたというのが契約解除ネタの後半部分に実例がついていたりするのでわかるので、それがなかったということはかなりイレギュラーだし、そのわりにはVerio側が移転のための猶予期間をとったというのも、法的問題ではなかったことをうかがわせる。推測に過ぎないけどね。
もし、上記の推測があたっているとするとかなりマヌケな状況なので、法的に無理と判断してデマだけ流すことにしたと、むしろ信じたいなぁ…。
インターネット協会パブコメの件、中間とりまとめの本文に関する意見を中心にMIAUから提出しようと案を練っているところで、 レイティング・フィルタリング基準SafetyOnline3.1についても、あまり煩雑にならない程度には突っ込もうとは思っているんだけど、SafetyOnline3.1での年齢区分って、トンでもなくキツい状態で、いくら強制ではない目安という話とはいえ、ちょっと頭かかえちゃう状態。個別具体的にパブコメに書くべきかどうかはともかく。
ふと気になったのは、青年マンガ雑誌。雑誌は紙メディアとはいえ、いまどきは当然のようにWebサイトがあり、無料のマンガも少しだけ置いてあったりする。たとえば、ヤングマガジンは、新人漫画家の作品を無料で見せるコーナーのほかに現在および過去の連載作品の第1話を読めるコーナーもあったりする(全ての作品ではない)。ヤンマガというと、それなりに性愛表現があるほかに、ヤンキー的な世界を描いた作品が多く、ケンカのシーンも当然よくある。高校生が飲酒や喫煙をしているシーンが含まれる作品も少なくない。そうなると、SafetyOnline3.1では、上記のような無料閲覧コーナーは「性愛表現」「格闘」「飲酒・喫煙」などのカテゴリになり、それは「18歳未満利用制限」ということになる。ヤングマガジンってもう長いこと読んでいないので、あんまり作品を知らないのだけれども、例えば「工業哀歌バレーボーイズ」などはここで挙げたカテゴリ全てに該当すると判断される内容だろう。「湾岸MIDNIGHT」や「頭文字D」などの公道走り屋マンガは、道路交通法違反ということで「その他禁止行為」に分類されるかもしれない。講談社以外のヤングジャンプやビッグコミックスピリッツといった同じセグメントの雑誌のサイトは、ヤングサンデーほどには雑誌サイトからコンテンツをみせてはいないようだが、集英社マンガネットや小学館ソク読みといった形で単行本の有料オンラインコンテンツ販売をやっていて、そこで無料の試し読みもできる。SafetyOnline3.1のような厳しい基準では、青年誌はおろか、少年誌掲載作品でも、ひっかかるものは少なくないだろう。そして、ここで挙げたような雑誌は想定する中核読者は大学生ぐらいかもしれないが、下は中学生ぐらいからを考えている雑誌だろう。条例規制でもコンビニなどの流通自主規制でも成人誌扱いはされていない。
ただ、フィルタリングは流通規制ではなく受け手の選択なのだから、多少厳しくてもいいだろう、という意見はもちろんあるだろう。とはいえ、たとえば「露骨な性愛表現としてのキスの描写や表現」というのまで18禁はどうだ、という問題はある。最近、知人がYes! プリキュア5GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪という映画にお子さん(小学校前)を連れて行って、キスシーンが出てきて軽く困惑したが、ま、いいか、的な話題をmixiに書いていた。というと、じゃぁ完全にお子さま向けアニメであるプリキュアがネットコンテンツになったら18禁なのか、という話だ。実際には、プリキュアの場合は、文脈をみる「コンテキストラベル」で「青少年に対する配慮」というのがあるのでそれで救済という話になるかもしれないが、キスシーンが「表現を抽象化したり、やわらげた」ものかどうかが問題になるし、「小学1年生に見せられる程度の配慮を基準とする」というので、プリキュアはひょっとするといいかもしれないが、もうちょっと上、小学校高学年ぐらいから対象を意図すると、インターネット協会的には18禁と判断しましょう、と言っていることになる。
こんなんでいいの?SafetyOnlineの過去の議論って、どう見ても清ければ清いほど望ましい的な純潔価値観が暴走してると思うんだ。みんな、ちゃんとパブコメ書いたほうがいいよ。
少し忙しくしたり体調ダメだったりした間にいろいろとネット規制・自主規制がらみの動きがあってパブリックコメント募集も出ているのだけど、とりあえず 、インターネット協会「青少年の安全なインターネット利用環境の整備を目指して関係者に望まれる取組みについて〜書き込み可能なCGMサイト増加への対応〜(中間とりまとめ)」について書いてみる。
この中間まとめそれ自体をどう考えるのか、というのもあるのだけれども、個人的にはその中の SafetyOnline3.1の問題についてとりあえず並べてみたい。SafetyOnlineは、インターネット協会が長らくやってきたレイティング基準策定の最新版だけれども、一般からの意見募集は今回が初めてだ。ということで、SafetyOnline3 から 3.1 への差分についての意見ではなく全体について過去の経緯を踏まえた形で意見を述べておく、というのは意味があるのではないかと思っている。以下、冗長かつまとまりがない形になるけれども、個別の話。
まず、「性行為」カテゴリの「キーワード」やその説明が、価値中立ではなく「青少年の安全なインターネット利用環境の整備」を越えた価値の押し付けになっている。「変態性欲」というキーワードに「SM、フェチ、獣姦等の変態性欲に基づく性行為」とあるのだけれども、Wikipediaにもあるように、この言葉は現代的には異常性を強調する偏見でしかなく、用いられるべきではない。言い替えの「性的倒錯」にしても、精神医学上の診断基準では、本人が苦しんでいるとか社会的に受け入れられない行動で困ったことになっているとか、いずれにせよ実害が存在していることが前提で、実害が無ければ単なる嗜好の問題としてスルーされるべきもの。レイティング基準でここに分類される行為が「性行為」カテゴリに入れられる意義は、性器を用いた人間の間の典型的な性行為以外のものを包摂することにあるのであって、異常性を処断するためではない。したがって、なんらかの適切な言い替えが必要になる。そもそも、このキーワードがなぜここに存在するのかといえば、SafetyOnline3で検討で既存のフィルタリングソフトのカテゴリを参考にしたがゆえで、既存のフィルタリングソフトのカテゴリは国産であってもアメリカのフィルタリングソフトのカテゴリを引き継いだ、あるいは影響を受けた経緯があり、アメリカでは、そもそもキリスト教文化のもとソドミー法が2003年までいくつかの州で生きていたということがある。ソドミー法は最終的には同性間の性行為を処罰することについて違憲が確定したけれども、そもそもの禁止対象ははるかに幅広い、男女間の性器による性交以外の性行為を取り締まるものだった経緯があり、それは「変態性欲」のリストとかなり一致する。SafetyOnline3でも、当初は同性愛を「変態性欲」に分類して発表したが後でこっそり差し替えたことは以前述べた。必要以上の価値の押し付けをするべきではない、という見地からは、「乱交」について「背徳的な性行為」とわざわざ分類する必要はなく(「異性間・同性間の性行為」に含まれる)、キーワードとしても3人以上によるとか多数によるといった表現で十分だろう。「不倫」に至っては、具体的な性行為描写があれば他のものに包摂されるだろうし、そうでなければ「性愛表現」カテゴリで十分だろう。「官能小説」も同様。
「性暴力・性犯罪」カテゴリも若干問題で、「近親姦」というキーワードがあり、少なくとも片方が18歳未満の児童である近親姦が日本において児童福祉法違反の性犯罪であることは間違いないし、また典型的な近親姦が性暴力であることは疑いないのだが、では成人間で性暴力ではないケースはどうなるのだ、という話がある。直近に話題になったものではオーストラリアのJenny Deaves と John Deavesのケースがあり、これはオーストラリアでは二人とも有罪となったケースだが、日本において同様のケースがあっても性犯罪でも性暴力でもなかろう。別の記事によればヨーロッパ内でも成人間の近親姦が犯罪になるかどうかは国によって異なる。この分類も、結局のところインセストタブーが極めて強い文化の影響を受けているということだ。一般論として、どこまでの近い血縁がインセストタブーに属するかは国や文化、そして年代によって異なるし、日本の近代においても、赤松啓介が『非常民の性民俗』で述べたように社会階層によっても大きく意識が異なるものだったという論が存在しているので、それがそのまま横滑りで入ってきていることには違和感がある。いずれにせよ、日本においては「近親姦」を直接のターゲットとした犯罪化が行われているわけではない(児童福祉法も児童淫行罪が適用されるのであって「近親」との関係が特別扱いされる条文ではない)のだから、正確さを欠いているように思うし、価値の押し付けの恐れがある。
「ギャンブル」カテゴリにおいては、パチンコ、パチスロと「競馬、競艇、競輪」を同列に置いているところに問題がある。パチンコ、パチスロは18歳未満をアクセス対象から完全に除外することが容認されうるが、競馬、競艇、競輪はそうではない。競馬、競艇、競輪に競技者として携わるということは10代の児童の進路の選択として存在していて、それらのための学校の入校資格は中学卒業が下限である。進路にかかわる情報として、遅くても中学生以上にこれらの情報にアクセスを許容する必要があるのではないか。もちろん、馬券、車券などのオンライン購入(がもし可能でもそこ)まで許容する必要はないし、単に賭ける立場からの予想などの情報へのアクセスも許容する必要はないだろう。しかし、「ギャンブル」カテゴリがそこまで限定的なものとは読み取れないし、コンテキストラベルの「スポーツ」「教育」による例外措置で救済できる範囲は十分ではないのではないか。
「その他禁止行為」カテゴリのうち、「その他の違法行為」が、「不正アクセス、フィッシング詐欺等」の例示があるものの、限定列挙ではない点が問題だ。SafetyOnline3の検討過程においては、一部の「過激」な政治的コンテンツをこれを口実としてレイティングしてアクセス制限するという議論が登場している。どうやら想定されているのは街宣右翼や暴力的な新左翼党派のようだが、それに限定されず、「政治的ビラの集合住宅ポストへの投函」や「首相私邸外観見学ツアー」なんかも入れたがる人達はいるだろうね!あと、最近の流れだと、自衛隊員(幹部)が懸賞論文に応募しちゃう話、とかね!第三者レイティングとしてもセルフレイティングとしても、「その他」はないだろ、と思うよ。
コンテンツ分類についてはこれくらいだけれども、最後にコンテキストラベルについて。芸術、教育、医学、スポーツ、青少年に対する配慮、というのがあがっているのだけれども、これじゃ足りないんじゃないかな。純文学・古典文学などは芸術の文脈に入ると明示しないと、学校の教科書に載ったり、入試で出たりするような本が著作権切れでネットにあってもアクセス制限対象って話になりかねない。それから、歴史、あるいは歴史的文書といったラベルも必要だろう。歴史なんて、暴力的な内容で溢れているし、思想家でも革命を語っているようなもの、マルクスとかレーニンとか北一輝とか、(厳密に考えてないが)「客観的」にカテゴリでひっかかる可能性がある気がする。でも、中高生ぐらいだったら読みたい奴が読めないのはおかしいしね。
高木さんの指摘しているグーグルの「駐車場荒らし」事例は、どうやら例外ではないようだ。
(川崎)市営中野島多摩川住宅1号棟も該当する。リンク先はあえて、入り口部分の公道にしてあるが、そこから南西方向に進むことで駐車場アクセス私道へと侵入していく。降りている車止めが確認できるし、もう一端の口では車止めが上がっていてチェーンがかかっていることもわかる。これが公道でないことは見れば分かるレベル。
別の例としては、 八王子市のパークヒルズ目白台へのアクセス道路と駐車場敷地(リンクは公道部分から) 。公道側の歩道が切れておらず(交差点となっていない)、たどっていけば、これが駐車場と切れ目がない私道であることがわかる。この近辺では、UR都市機構グリーンヒル寺田(棟が多数あり間を通る公道もあるがリンク先から入る部分は私道と思われる)も該当する。
川崎市南部では県公社戸手団地の例があった(公道との境界をまたぐ直前)。
楠さんがふれている「STOP!架空請求!」偽サイトの件だけれども、これは本当に偽サイトだったようのなので一応指摘。
まず、報道レベルでは産経新聞10月9日報道に、
都によると、偽サイトは、タイトルや注意を呼びかける文言などが都のサイトと酷似しているが、「優良アダルトサイト集 不正の無い優良サイトのみを集めました」との表示があり、クリックするとアダルトサイトの選択画面に切り替わるという。
「STOP!架空請求」酷似のアダルトサイトに削除要請 東京 - MSN産経ニュース 2008.10.9
とある。単に標語が同じ、というレベルではないという話だ。そこで、タイトルで検索をかけると、 http://394.be/stop/ というサイトが結果に出るのだが、現在は 404 Not found ということだ。ここで、 Google検索キャッシュ(2008年9月1日のもの)を確認すると、東京都のサイトと酷似、というか、東京都という痕跡を消しただけのほぼ同一の内容が出てくる。最後の「優良アダルトサイト集」についての文言は完全に一致。 トップページだけではなくて、細部にわたって東京都サイトのほぼコピーであることは、Google検索結果から、個々のキャッシュ結果をみて東京都サイトと比較すれば一目瞭然となる。著作権侵害を理由とした削除請求が成り立つレベルで、これはこういうものじゃないだろうか。
ちなみに、東京都は3年前の 「STOP!架空請求!」の開始にあたって大手ISPのグラビアサイトに啓蒙バナー広告を出したとのことがあり、対象とされる層にそこそこの認知度はあるのではないかと思う。 検索してみると、「出会い系サイトリンク集」や「出会い系サイト攻略法サイト」といった類のサイトでは、東京都のサイトをリンクしたりURLを記載して紹介するのは定番のひとつのようで、また、今回の問題のサイトのURL階層をひとつ上に上がってトップレベルをみれば、自称出会い系無料掲示板であり(リロードを繰り返せば写真とメッセージがランダム表示され、これが出会い系サイトとしても偽サイトである可能性が高いことが分かる)、その最初に今回の偽サイトへのリンクがある。東京都がリーチしようとする層を考えれば、ケータイの世界ではサイトURLの確認が一手間あって閲覧中にそうしばしば見るものではないこと、あるいはキャリアによっては確実なURL確認機能自体が 提供されていなかったりすることもあり、これが無視できない偽サイトぶりだったという推測もつく。
追記: 問題の偽サイトに誘導するリンクが設置されているのは、親階層のみではない。どうやら親階層と同様の自称出会い系サイトが多数あるようだ。spamからたどりついたというはてなブックマークコメントあり。いろいろみると、単一のところがキーワードを使って半自動生成したサイトを多数運営している様子。
以前言及した広島市の携帯電話フィルタリング条例のその後なのだが、画一的な統制をより好ましいと思う発想はやはり根強いらしい。
中国新聞10月8日報道では、携帯電話販売店舗へのサンプル調査で、18歳未満新規契約の携帯電話の3—5割について保護者の意思でフィルタリングが解除されたということについて「フィルタリング条例に抜け道」というタイトルをつけて報じている。
18歳未満に販売する携帯電話に有害サイトの閲覧制限(フィルタリング)機能を付けることが条例で義務化された広島市内の一部店舗から、「保護者の要請で機能解除されたケースが3割—5割ある」と市教委に報告があったことが7日、分かった。子どもを守るための条例も、保護者の手で「抜け道」があることになり、啓発などの対策を急ぐ。この日の市青少年と電子メディアに関する審議会(会長・越智貢広島大大学院教授)で市教委が説明した。
フィルタリング条例に抜け道 - 中国新聞'08/10/8
「抜け道」という表現が広島市教育委員会によるものか、それとも中国新聞独自のものかは分からないが、「対策を急ぐ」とされているのだから、条例で保護者が機能解除を選択できる(これ自体は当たり前で、その選択を奪うことは違法の可能性が強いだろう)にも関わらず、そのような選択は「対策」されなければならないという認識がここにはある。現状の携帯電話フィルタリングが望ましい内容でないことは、今後の改善が発表されているようにもはや多くの関係者の共通認識であり、さらに、改善の方向性が保護者によるカスタマイズを含むものである以上、そもそも、「フィルタリングをする/しない」の境界は曖昧・私的なものとなっていくわけだが、広島市などでは、そのような方向性は望ましくなく、一定の情報統制を公が民に押し付けるべし、という価値観が優勢なのだろうか?
直近のはてなが契約者固有IDをケータイから送信させるようになった件のエントリーについての反応と思われるものに
劣化するって、昔から上等だったのかよ、とかいうと悪態って言われるのかしらん。
Twitter / KUROSAKA, Tatsuya
というのがあった。これは慧眼。
早速のはてなの対応は事後的なプライバシーポリシーの改訂の発表だった。そもそもの高木さんや私の問題意識からいえば、これは「解決」ではないが、一事業者として契約者固有IDを集めることにした、ということを理由込みで正式に発表した、というのは、やらないよりはいい話…だと思うでしょ?でも全然ダメなんだ。
上記の発表が行われた「はてなの日記」は、はてなグループを使って実装されたはてなの公式告知用グループの上にある。でも、はてなグループはポケットはてなのコンテンツではない。上記発表記事をiモードブラウザで見れば、サポートされていないものだということはすぐわかるし、何よりもポケットはてなに属するケータイ向けページの各ページのナビゲーションリンクの「お知らせ」をクリックして表示されるのはポケットはてな日記で、ここには現時点ではプライバシーポリシーの改訂への言及は無い。
それ以前の問題として、ケータイからはてなを使うユーザーに提示されているプライバシーポリシーは何か、ということがある。ポケットはてなのナビゲーションリンクには「プライバシーポリシー」という文字列は存在しない。利用規約の下、という一段下の構成になっている。これはGoogleが本国で散々批判されて改めた点だったと思うが、今回はそこは置いておこう。問題は、そこにあるポケットはてなプライバシーポリシー。これ、はてな全体のプライバシーポリシーと同期がとれていない。
「(2)個人情報の取得」には、今回の「個体識別番号」に関する変更は反映されていない。「個人情報用途表」については、全体のものへのリンクとなっているので齟齬はないが、全体のものが置かれているのがはてなグループ上なので、ケータイでの表示が崩れる未サポートサイト上となっている。そしてだ。「(15)改定履歴」を見ると、本サイト上の履歴にはある2008年分の変更履歴がない。ということで、なんと、 ケータイ上では個人情報管理責任者の所在地がいまだに鉢山町のNTTコミュニケーションズのビルという事態に。東京オフィスも移転してもう無いって話だよね?
劣化とかそういう問題じゃなくて、すげーいい加減な運営してない?hatelaboみたいな片手間実験サービスじゃなくて、「ドコモ公式サイト」だよね?
タイトルは釣りじゃないです。
まず、ここで述べる話の前提として、高木浩光氏の日記の以下のエントリを挙げておく。
9月25日に、はてなは「モバイル版はてなダイアリーにデザイン設定機能を追加しました」という告知を行い、別途プレスリリースも出している。これは告知やプレスリリースを見る前に、帰宅途中にドコモのケータイではてなダイアリーを見たときに分かった。iモードブラウザのブックマークにいくつかのはてなダイアリーを入れておいて、通勤電車の中でちょっと読んだりするもので。
このタイミングで、このブログのはてなブックマークの新着エントリー一覧を眺めてみた。はてなはケータイサイトのポケットはてなでのブックマークと、通常サイトのブックマークでURLが異なるのだが、後者でないと新着エントリーや個別のブックマークユーザの確認はできないはずなので、これまで、通常サイトでのURLをケータイのブックマークに登録していた。通常のJavascriptてんこもりのページをレンダリングしようとして、iモードブラウザでのレンダリングは崩れているのだが、支障はない。いつものことだ。ところがここで、新着エントリー一覧は普通に見ることができたのだが、個別のブックマークを確認しようとしたら、
このページはまだブックマークされていません
と表示された。そしてURLをみると、"guid=on" と、query文字列に入っているのだ。
ここで、モバイル版はてなダイアリーを閲覧してみて、iモードブラウザの機能でURLを確認すると、"guid=on" と query文字列が追加されていることに気づいた。
つまり、はてなのケータイサイトであるポケットはてなは、一切の告知なく、常に契約者固有IDをケータイから送信させるようになった、ということだ。これは、ポケットはてなへのログインとは何の関係もなく行われているし、コメント投稿などにも限定されていないので、「発信者情報開示請求のため」に限定されるものでもない。
はてなも、スーパーcookie的な固有ID利用によるサイト横断の行動ターゲティング広告の一翼を担います、ということなのだろうか。
ケータイフィルタリング騒動はいまだ続いていて、というか法律もできたし、ということで「取組強化」のなかで問題点の具体的な修正というフェーズに入ってきている。
カテゴリの問題については、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)が9月4日に意見書を各携帯電話会社に提出し、それを受けて、電気通信事業者協会(TCA)発表にあるように、18歳未満既存契約者へのフィルタリングサービスのデフォルト化と、EMAの認定サイトの反映とカテゴリの見直し、そしてユーザー単位のカスタマイズを可能に、といった施策が各携帯電話会社を行う。具体的な内容は、各携帯電話会社ごとということになる。
EMAの意見書では、「アクセス制限とすべきカテゴリー」についても、よく読むと既存のものそのままでいいとしているわけではないが、カテゴリの中身の見直しは携帯電話会社というよりはフィルタリングのデータを作っているネットスターの問題なので、携帯電話会社ではとくにふれていないようだ。本題は「対象外とすべきカテゴリー」。検索キャッシュ、同性愛、宗教、政治だ。これらのうち、検索キャッシュはイー・モバイル特有で、その他はNTTドコモ、イー・モバイル、ウィルコムが現状でアクセス制限対象としている。イー・モバイルは現時点で個別のプレスリリースがなく、ウィルコムはTCA発表と同水準の粒度の発表に留まっている。au と ソフトバンクモバイルはアクセス制限カテゴリの見直しには論理的に関係しないのでふれていない。キャリアとしての規模も考慮すれば、EMAの「対象外とすべきカテゴリー」は実質的にNTTドコモへの意見と言っていいだろう。そして、 NTTドコモは、かなり詳細なスケジュールやサービスイメージを含めた報道発表を行っている。
このNTTドコモの発表によれば、アクセス制限カテゴリの見直し自体は行われ、その内容はEMAの意見書と同様となる。しかし、それは、「2009年1月9日以降」「新規で「iモードフィルタ」をお申込みのお客様」を対象としたものだ。18歳未満の既存契約者でアクセス制限サービス未契約の場合の意思確認のデフォルトもここに入る(2009年1月下旬以降)。「iモードフィルタ」の既契約者(2008年2月以降現在まで)、および、今後1月9日までの新規契約者は、1月9日以降も既存のカテゴリによるアクセス制限が適用され、新規分類に移るには、別途の申し込みとなる。これには、2008年2月以降の多くの18歳未満の新規契約者・利用者が含まれていることだろう。
EMAの意見書では同性愛について
同性愛でも性的な情報を含むサイトはアダルトカテゴリーに分類されており、青少年にとって同性愛自体が有害とは考えられない。性同一性障害については、国内外においてもその理解は進んでおり、同性愛者への差別、青少年の同性愛への偏見を助長することも考えられるためアクセス制限対象カテゴリーとすべきでなく、カテゴリー自体の必要性の有無についても検討が必要と考える。
携帯電話事業者が提供する「特定分類アクセス制限方式(いわゆるブラックリスト方式)」におけるアクセス制限対象カテゴリー選択基準に関する意見書 - 有限責任中間法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構基準策定委員会
としており、宗教については「基本的人権としての信仰の自由」を理由とし、政治については「投票権はなくても青少年にとって生活一般に関わる情報」だとしている。これらのカテゴリについて、かなり強いトーンで制限することの問題性を指摘している。
NTTドコモは、「正しい通信キャリアのありかた」として、「意思確認なしに提供条件を変更できない」と判断して、わざわざ既存の制限を残す方針をとったとも考えられる。しかし、それならば、「18歳未満の既存契約者に対する意思確認」と同じ方法で、サービス内容変更の意思確認をとることは十分可能だろう。デフォルトでカテゴリ見直しとして、既存の制限カテゴリの維持を求める契約者の意思表示を求めてもいいし、あるいは同時にスタートする「カスタマイズ機能」で既存の制限カテゴリと同等の内容を実現できるという案内をしてもいいはずだ。
にもかかわらず、少なくないユーザーが現状のカテゴリ制限に残るであろう形をとる、というのは、EMA意見書にあるような差別や人権などに言及した指摘について、NTTドコモはいったい何を考えているのだろうね。
地域情報化ネタって全然追ってなくて、まったく素人なんだけど、最近のブログ界隈の議論をみていてなんでもそこに引きつけて語るのって違うんじゃね?と思ったのでちょっと。
地方でネットの利用が進んでないのはある程度想像できるとして、東京都にも「地方」並の例がありますよっと。
東京都にも「地方」があるよ、という話。 - POLAR BEAR BLOG
といって、以下、青梅市公式ページ内の青梅マラソンのページがいかにそっけなくパンフレットのPDFを貼っているか、ということを語って「紙媒体が一番、ウェブは二の次」だったのではとのことなのだけど、それはかなり間違った認識なんじゃないかな、と。
そもそも、スポーツ競技イベントというのは、万人が参加するものなのか、できるものなのかというと、違います。まず、競技を成立させるために、規模に一定の枠をはめています。小林さんが比較対象としている東京マラソンでは、一般ランナーは抽選制であり、青梅マラソンでは小林さんが書かれている「毎年1万5千人以上」という規模は、一般ランナー30kmの部1万5千人、10kmの部5千人という枠があらかじめあり、先着制です。走りたいひとは定員よりたくさんいるのが実態と考えられ、エントリーのレベルで「集客不足」という状況にはないでしょう。走りたそうな層に確実にリーチできれば、その外に参加者を募る必要はないイベントのように見えます。
加えて、長距離走という競技がけっこうハードだというのも、ここでは重要でしょう。小学校の運動会で「じゃぁパパ走っちゃうぞ」とは、ちょっと違うレベルのものです。大会要綱をみれば分かりますが、この大会は招待選手もいて全日本陸上連盟のポイントの対象となる、という、上のレベルはかなり高いものですし、中間地点やゴールなどでの時間制限からすると、ジョギングぐらいのスピードでも走り続けられる人が対象で、ちょっと走ったらあとは歩くしかない、というレベルの人は対象外です。日常的に走っている人なら難しくないでしょうが、普段何もしていない人が出来心で出られるレベルには見えません(10kmの部は女子は全年齢だけれども男子は高校生と40歳以上のみ)。ということで、この大会では、アマチュアでもそれなりのスポーツ愛好家にリーチできればよく、その範囲での参加の利便性が高まればよい、というのが妥当なところでしょう。
そして、利便性についてですが、PDFの要綱をみるとスポーツエントリーとRUNNETのURLが書いてあります。前者はさまざまなアマチュアスポーツの大会参加手続きを行える決済機能つきのサイトで、後者はランニング専門の同様のサイトです(後者は専門誌の雑誌社が運営)。すでにスポーツエントリーでもRUNNETでも専用エントリはできていて、受付開始日を待っている状態です。それぞれ、公式サイトのPDFの内容はおおむね網羅されたデータをHTMLの文書として読むことができます。ランニング愛好家は、青梅のいろんなイベントに出たい人たちではなくて、マラソンのいろんな大会に出たい人たちですから、この種のサイトで他の大会と一緒に参加要綱をみることができ、申し込みができ、データを蓄積できたり、あるいは愛好家同士で交流できたりする、という文脈に青梅マラソンの情報があるので、すでに利便性は十分にあるのではないでしょうか。ここで、青梅市公式サイトの中の公式ページからスポーツエントリーやRUNNETに直接リンクが貼ってあれば、より親切ではあるでしょうが、大勢に影響はないでしょう。
そんなわけで、青梅マラソンは不適切な例だと思うのですが、世の中に課題がないわけではなくて、前述のようなスポーツ参加ポータルに情報が載らないイベントも多数あるでしょう。私はスキーの大会目当てでスポーツエントリーと、もうひとつデジエントリーにアカウントを持っていますが、両者に出てこない、申し込みが不便な大会も結構あります。FAXや郵送前提とか、より極端には、開催スキー場に通ってる人前提の現地事前申し込みのみ、というのも見たように思います。まさに公式サイトにそっけなくPDFとかHTMLでパンフレットの内容が置いてあるだけで、あとはネットを使わずにやらないといけないというケースは多く見ます。ただ、その解決は地域ポータル的な話ではなくて、この場合であればスポーツ系のポータルにどう情報を載せてもらうとか、どこでもいいので決済サービスを使ってもらうとか、そういうのを(ポータルはすでに営業活動をしているんだと思うのだけれどもそれとは別に)どう促進していくかという話になるんじゃないかと思います。そして、スポーツ参加以外でも、趣味性が高い参加型イベントの場合は、大抵は地域じゃなくてイベントの属性にあってどう情報を流してもらうかのほうが重要なんじゃないかと。
先の国会で「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」いわゆる出会い系サイト規制法の改正があっさりと成立し、その結果、警察庁から「「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン案」及び「インターネット異性紹介事業者の閲覧防止措置義務(いわゆる削除義務)に関するガイドライン案」に対する意見の募集についてとインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する規則案に対する意見の募集についての2本の意見募集が開始された。前者は任意の意見募集であり、後者は行政手続法に基づく意見募集であるため、締切りが前者は9月5日、後者は9月20日と、後者には若干余裕があるが前者はほとんど時間がない状況だ。
今回の出会い系サイト規制法改正でもっとも大きいのは、サイト開設者に事前届出の義務が罰則つきで課されている点で、後者のパブリックコメント募集はその具体的な手続きを施行規則として定める部分が中心となっている。ただ、今回問題にしたいのは前者の「ガイドライン」について。なかでも「「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン案」のほうだ。
従来から、出会い系サイト規制法には「インターネット異性紹介事業」の定義が曖昧だという批判があった。コミュニティサイト一般を含みかねない、ということだ。ただ、従来は、サイト開設者の観点では、問題になるような18歳未満がかかわる書き込みが放置されるかどうかが問題であって、自身の事業が定義にあてはまっているかどうか、というのは、大きな問題ではなかった。
今回、届出義務が発生することで、そのような曖昧さはそのままに出来ない。18歳未満を排除する運営をきっちりやっていようが、削除義務が発生するような書き込みを積極的にパトロールして削除していようが、「出会えないサイト」とする努力をしていようが、該当性判断でインターネット異性紹介事業となるものが届出していなければ、刑事罰の対象となる。もっとも、コミュニティサイト関連の事業をむやみやたらと萎縮させることが法律の意図ではないはず、というのが法案が国会に出る前から議論されていて、従来のガイドラインを上書きする形で新しいガイドラインの案が意見募集という形で公表された、というのが今回のものになる。
ということで、今回のガイドライン案の具体的な中身だが…、やっぱりダメではという感じがする。
基本的な骨格は、従来と変わっていない。「異性との交際」というのは、「男女の性に着目した交際」であり、異性であることへの「関心が重要な要素となっている感情」に基づくものであれば、「他人と知り合い、交流する行為全般」が対象であり、リアルワールドで対面しないものを含む。つまり、サイト内で完結する関係でも該当する。そして、「サイト開設者がサイトの運営方針として、「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供している」ということが「インターネット異性紹介事業」にあてはまるかどうかの要件であって、個々の利用者の意図にはかかわらないとしつつも、
なお、異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的で利用している実態がある場合でも、サイト開設者が異性交際を求める書き込みの削除や当該投稿者の利用停止措置を行っていれば、当該サイトは、 基本的には「インターネット異性紹介事業」に該当しませんが、当該書き込みを知りながら放置するなど、サイト開設者がその実態を許容していると認められるときは「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があります。
ということで、「異性交際目的での利用を禁ずる規約等」を設けて、notice and takedown の手続きをとるなどしていなければ、いつのまにか「インターネット異性紹介事業」に該当しうる、ということは、従来のガイドラインと変わっていない(なお、積極的な監視義務までは負わせてはいない)。
以下、該当性判断の具体例をみていく。
問 いわゆるSNSは、「インターネット異性紹介事業」に該当するのか。
(答)
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)とは、一般に、会員制をとり、参加者が互いに友人を紹介し合うなどして、共通性を持つ新たな友人関係を広げるサイトのことを言います。このようなサイトは、サイト開設者がサ イトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供していない限り、「インターネット異性紹介事業」には該当しません。
なお、サイトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供していないことを明らかにするためには、利用規約等においてその趣旨を明確にし、これに基づく措置がとられていることが望ましいと考えられます。
日本に拠点はないが、facebookのアプリケーションには出会い系機能をもったものもあったような気がするが、どのように評価されるだろう?
問 あるサイトが、開設者が知らないうちに実質的に出会い系サイトとして利用されていた場合、そのサイトは「インターネット異性紹介事業」に該当するのか。
(答)
自らが運営するサイトが知らないうちに、実質的にインターネット異性紹介事業に利用されていた場合、サイト開設者はサイトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供していないことから、基本的には「イ ンターネット異性紹介事業」には該当しませんが、異性交際を求める書き込みを知りながら放置するなどサイト開設者がその利用実態を許容していると認められるときは、「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があります。
従来のガイドラインにもあった項目だと思ったが、閑古鳥が鳴いてるサイトならともかく、ある程度の利用実態があるところで「知らずに放置」がありうるかというと、サイト利用者の誰かがサイト開設者に「通報」すれば知らなかったという実態はなくなり、もし「異性交際を求める書き込みを禁止」する項目が規約にないということで放置しておくと、該当する可能性があるということになる。
問 サイト開設者は「異性交際」を目的としないサイトとして開設しているものの、当該サイトの中に利用者が異性交際希望者を対象としたジャンルを設け、サイト開設者が提供するサービス(利用者間で一対一の連絡をす ることができる機能等)とあわせて実質的に出会い系サイトとして利用されていた場合、当該ジャンルは「インターネット異性紹介事業」に該当するのか。
(答)
サイト開設者ではなく利用者が当該ジャンルを設けている場合でも、サイトを更に細分化したジャンルがサイト開設者が提供するサービスとあわせて独立した一つのサイトとしての機能を果たしており、かつ、当該ジャンルの存在や 異性交際を求める書き込みを知りながら放置するなどサイト開設者がその利用実態を許容していると認められるときは、当該ジャンルのみについて「インターネット異性紹介事業」に該当し、サイト開設者が「インターネット異性紹介事業者」に該当する場合があります。
ここの最大のポイントは「「インターネット異性紹介事業者」に該当する場合があ」るのは、そのジャンルを設定した利用者ではなく、サイト開設者だという点。また、「サイトを細分化したジャンル」が「独立した一つのサイトとしての機能を果たして」いれば、当該ジャンル部分のみに限定して「インターネット異性紹介事業」に限定可能ということであって、独立性がなければ「インターネット異性紹介事業」にならないかというとそうではなく、おそらくは全体がそうみなされうるという点だろう。コミュニティーサイト開設者としては、「ジャンル」や「コミュニティ」の設定を完全にユーザーに開放すると、「インターネット異性紹介事業」に該当することになる危険があることになる。しかも、「異性交際」であれば、「リアルに出会う目的かどうか」は問題にならないから、インターネット異性紹介事業者として届出をしない前提では、かなり幅広いものを禁止する必要がある。もっとも、すでにある程度の事業規模があれば、18歳未満ユーザーと18歳以上ユーザーが出来ることに大幅に違いをつけて、後者の部分について実態にかかわらずインターネット異性紹介事業として届け出ておくという割り切ったアプローチもありうるのかな、とは思われる。
問 複数の事業者が分担してインターネット異性紹介事業を行っている場合には、各事業者は「インターネット異性紹介事業者」に該当するのか。
(答)
例えば、A会社がサイトの運営を、B会社が顧客管理をそれぞれ担当し、両社が共同してインターネット異性紹介事業を行っている場合、共同して行う事業が全体として「インターネット異性紹介事業」に該当することから、両社と もに「インターネット異性紹介事業者」に該当します。なお、「共同してインターネット異性紹介事業を行う」というには、それぞれの者が、一のインターネット異性紹介事業を共同して行う意思を有していることが必要です。
OpenIDとか使って出会い系サイトを作ると、どうなるんだろうね。「共同して行う意思」がないからサイト運営者だけがインターネット異性紹介事業者で、OpenID プロバイダーは関係ないということなのか、「共同して行う意思」がないからそもそも許容されない形態という意味なのか。mixi OpenIDなんかは、mixiプロフィールページへのリンクをサイト側で設定できて、そのプロフィールページに性別の記載があるので例としてうってつけかもしれない。現実に現れたらmixi はガイドライン の「その他」の項にあるような形で「認証を停止」するんじゃないかと予想するけど、ね。
Googleストリートビュー問題についてはてブで追いかけていて気づいたのだが、北口学さんというジャーナリストの方が「ストリートビューというサービス開始の日ー爆発的に増殖する深刻な問題を見つめて」というネット連載を書いていた(上記連載の本サイトはジャーナリスト・ネットというところで、北口氏は日本人権ジャーナリストの会事務局長でもあるということ。日本人権ジャーナリストの会はごく最近設立された団体だが、設立が朝日新聞で報道されている)。北口氏について私はこれまで知らなかったのだが、名前でググるとキャリアが長い方のようだ。
その北口氏の上記連載を通読したところ、すでに部落差別に関連して結構いろいろ起きているようだ。2ちゃんねるのスレッドで部落差別と結びつける形で特定の場所の位置を公開し、ストリートビュー写真が削除されれば、事前に保存しておいたその写真を画像アップローダーで公開して示す、といったことになっている。ただ、これはGoogleがオプトアウトであることも問題だが、悪意は別のところから来ているのですべてをGoogleのせいだというわけにもいかないかもしれない。
一方、気になりつづけている空白地帯問題だが、最初は1ヶ所だけしか認識していなかった大規模被差別部落との相関について、私自身は土地勘がまったくない都市だが空白地帯のいくつかについて調べると、そこもまた被差別部落の地名として著名、といった状況があることがわかった。ただ、空白地帯とそうでない部分の境界と部落との関係がどこまで密接なのか、というのは、さすがに簡単にわかる公開資料程度では分からない。問題の性質上、そんなものがネット上に簡単に見つかるわけがない(差別を意図した掲示板への地名列挙の書き込みといったものは見つかるが信頼できる資料になりえないのは当たり前だ)し、見つかってもまずいし、そもそもそこまでセンシティブなものを私が追いつづけるのが適切かというと多分適切でない。ということで、一般にも著名な部落問題の研究者(誰なのかは少なくとも今のところは伏せる)に、本件についてご意見を伺うべく、問い合わせのメールを出してみた。まったく面識がない方なので、どういうことになるかは分からないが。個人的には、本件(Googleストリートビューと部落差別の関係)については「部落差別問題へ取り組むことを主要な関心としているわけではない私が被差別部落の正確な場所について詳しくなることが適切とは思えない」という事情により、今回連絡をとった研究者の方や、あるいは北口氏のような専門性の高いジャーナリストの方に引き取ってもらって撤退したいと考えている。
最後に、私の見込みが当たっているという仮定でのこの問題についての意見だけれども、Googleストリートビューが仮に存続しつづけるとした場合、公開範囲は大幅に制限する必要があるだろうし、また、サポート範囲の道路の縁取りもやめるべきだと思う。ストリートビューとしての有用性は、場所を起点として道路からの風景を眺められれば十分で、どこが撮影されていてどこが撮影されていないのか、という俯瞰的な視点を厳密に提供することの有用性は薄いのではないか。もっとアバウトに、どのあたりの区域が撮影されているかを面で色分けする程度でいいのではないか(この場合、その中の空白地帯はサポート範囲として色をつけて他の地域と区別できないようにする)。
追記: 上記の著名な研究者から返事を頂いた。それによると、当該都市のストリートビューで部落を識別できる状況にはないとのこと。中途半端に知られている地名で余計な心配をしてしまったのかもしれない。まぁ、私の心配事がFUDで済めばそれはむしろ幸いなので悪いことではない。
前のエントリでは、Googleストリートビューについて、まだあまり出ていなかったであろう論点を出してみたのだけれども、ここらでやや包括的に。
プライバシー問題については、いろんな切り口があるのだと思うのだけれども、個人的にここでおさえておきたいと思うのは、明治大学の夏井高人教授が提唱しているデジタル情報化されない権利。こういうのを無限定にふりかざすとなれば、池田信夫氏にLudditeと非難されることうけあいだが、ものは程度ということもある。高木さんが指摘するように、Googleのスト(略)カーの撮影視点はかなり高く、多くの生活空間における家屋のアーキテクチャーが想定する視点とは異なるので、個人が私的空間として確保している場所への侵襲性は高い。ちなみに、高木さんが示している例の道では、同レベルの視点を確保できるような座席高の高い車、例えば大型トラックやバスなどはそもそも通れる場所ではないように見える(RV車やワンボックスカーなどの車高の高さはたかが知れている)。その上で、仮にそういう車が通れると仮定しても、高木さんが引用した榎本さんのブックマークコメントは、たとえば前記の「デジタル情報化されない権利」を主張する立場を仮にとると、適切ではないと言える。見えることと、撮影しデジタル情報化し公開することは同等ではない。
「デジタル情報化されない権利」を支持するかどうかはいったん留保するとして、今のところ、Googleはオプトアウトを提供することで苦情を解決しようとしている。オプトアウトによる対処それ自体が弱者保護の観点から問題となるが、それに加えて前のエントリで書いたように、網羅的に地図に情報がマッピングされている、という状態では、真のオプトアウトは不可能だ。画像は消されるかもしれないが、画像が消されたということがわかり、その場所はURLでピンポイントに特定できる。これ自体が「何かセンシティブなものが映っていた可能性がある」というメッセージになる。たまたま被写体として人が映り込んだだけかもしれないが、場所特有の問題かもしれない、という情報だ。その上、一部の道路だけを撮影対象から外せば、それは地図の上で俯瞰できて、そこから(余分かもしれない)メッセージを読み取ってしまうことができるわけだ(結界はネタとして、buyobuyo氏のこれはひどい。大田区の例はむしろメッセージを読み取れない広さで、公開スケジュールありきで巡回が間に合ってないのだろうと個人的には思う)。
個人的な直感としては、この問題は単に写真をめぐるプライバシーの問題として扱うのはスジが悪いように思う。おそらく、そういう問題にすると、私人間(Googleと個人)の選択の問題に帰着してしまい、写真はオプトアウトできても、オプトアウトしたという情報が公開されている状況は解決できないのではないか。何がオプトアウトされているかも含めてセンシティブ情報である可能性を含めた検討が必要で、そういう前提においてプライバシーと利便性の折り合いをつけるにはどうしたらいいかという問題設定が行われる必要があると思う。この場合、オプトアウトを選ばない邸宅写真の公開も制限される方向に倒れる部分があり、単にGoogle対個人という話ではなくて、より公衆的な選択という文脈になるように思う。専門じゃないので把握していないけれども、GISとプライバシーの問題ってかなりいろいろあって、それなりに検討が行われてきているのではないだろうか。けれども、Googleはそういう検討をしたかというと、その必要を認めていないからこそこういう形でサービスを始めちゃったのだろう、と思うわけで、悩ましいですねぇ。
Googleマップのストリートビュー機能が日本でも有効になってあちこちで論議を呼んでいるのだが、これには実にやっかいな問題があることに気づいた。
ここで言う問題は、すでに多くの議論の対象となっている「何が映っているか」ではない。逆の話だ。ストリートビュー機能を有効にしたGoogleマップでは、ストリートビュー写真が用意されている道路は青く表示されてそれとわかるようになっている。逆にいえば、ストリートビューのないところも分かる。
オプトアウトを要求した場合にどう変化するかまでは確認していないが、東京都では、大田区の大半のような大きな空白地帯のほかにも生活道路的な道に入り込んでいない場所も多い。例えば、吉原や山谷の一部もそうだし、大久保・百人町もそういう部分が多い。湯島駅の近辺も粗め。根津・千駄木あたりは単に道が細いところを通っていないような気もするが、高木さんの挙げた目白の事例では、かなり細い道まで入り込んでいるから、単純に道路の幅の問題ともいえないだろう。東京以外では、有名な大規模被差別部落(ここは地域団体がドメインとってWebサイトまで持っているが一応都市名も含めて実名は避ける)についてストリートビューが外周以外はあまりないなどが分かる。もっとも、この都市の空白地帯はそれ以外にも多いし、また、2ちゃんねるの人権問題板などをみると、被差別部落だからといってGoogleがストリートビューを避けているという因果関係もないようだ。ただ、その地域のおおよその所在を知っていれば地図の上で可視化されてくるという要素はある。
今のところ、Googleマップのストリートビューは「不完全」なので、空白地帯であるということだけをもって特別な意味は見出しにくいが、今後カバー率が上がっていくと、Google側で避けたか、あるいは住民などがオプトアウトの要求を出したか、そういう道だけがストリートビュー空白地帯として浮かび上がってくることになる。これって、どうなんだろうなぁ。
前のエントリでコミックマーケット公式サイトやとらのあな公式サイトのフィルタリング向けのカテゴリ分類状況を紹介したところ、消費日記@はてなで、他の同人誌販売店や即売会も性風俗や成人嗜好と分類されていて、どうやらこの分類はアクシデントではなく方針のようにもみえる(ただし、消費日記@はてなで調査されたもののうち、同人誌販売店については、とくに通販の部分ではURL の階層で18禁とそれ以外を分けることができていないようだ。確認ボタンをクリックすると Cookie で状態保持とか、URLのqueryの引数で区別とか。COMITIAは通販部分だけカテゴリを分けられるはずだが区別されていない)。なんでこんなことになってるんでしょうね。
ところで、はてなブックマークのトップページをみていて、コミックマーケット公式サイトがケータイ全キャリアでフィルタリング対象になるようなカテゴリ分類されていることについて、重大な問題が発生する可能性が出てきたことに気づいてしまった。これは急いで「該当カテゴリなし」に修正される必要がある。ということで、ネットスターのカテゴリ修正依頼ページを通して以下のような内容を送った。
今回報告するURLですが、コミックマーケット公式サイトになります。当該サイトを閲覧してみても、「文章による性的表現」を確認することは出来ませんでした。
加えて、間もなく開催されるコミックマーケットでは、ネット上の脅迫行為の存在から、過去行われていなかった参加者の手荷物確認を実施すること、会場である東京ビッグサイトで先日起きたエスカレータ事故により一部のエスカレータを停止することの2点を以下のURLで緊急告知しています。
http://www.comiket.co.jp/info-a/C74/C74Oshirase.html
コミックマーケットは18歳未満の子どもも少なからず参加が見込まれる日本国内有数の大規模イベントであり、フィルタリングのために適切な情報伝達が妨げられた場合、現地での混乱などにより安全上の問題が発生する可能性もあります。従って、当該サイトがフィルタリングされる可能性のあるカテゴリに入れられることには問題があります。サイトの一部に「文章による性的表現」がある場合も、階層を限定するなどして上記の緊急告知の閲覧が妨げられないようにする必要があると考えます。
8月12日追記: コミックマーケット公式サイトのカテゴリ登録は解除された。一営業日で対応された。
ひとつ前のエントリには(はてブとかのブックマークは少ないけれども)多大な反響があったようで、リファラをみていると2ちゃんねるのあちこちで紹介されたりもして、ネットスターのサイトのカテゴリ修正依頼機能やメールによる抗議などがあったようだ。その日のうちにネットスターの社内用グループウェアのWebMail経由(インターネットからアクセスできるのにSSLしていない状況もいかがと思うが…)でうちのブログにアクセスがあったのち、コメント欄にあるように、「創作物の規制/単純所持規制に反対する請願署名」のサイトはデータベースから削除された。
「2ちゃんねるのあちこち」のひとつでは
とあった(改行はこのブログにあわせてあるほか、サイトへのリンクを補った)。私が確認したところだと、「鳥山氏のブログ」については、私の想定するサイトであれば、全体は大手ブログ事業者傘下では標準的な「掲示板」扱いだが、他は上記に紹介した内容通りだ。「とらのあな」は、コンテンツのダウンロード販売については18禁をうたっているが、それはサーバーを分けてあり、他の部分は基本的に全年齢向けの内容に見える。サイト構成も階層的なので、厳しめの分類をしようとする場合には個別対応が可能。にもかかわらず上記の扱いである(実店舗でも区分陳列が行われているようであり、とくに大規模店舗では成年向けはフロアを分けているようだ)。コミックマーケット公式サイトは、そもそも参加サークルのコンテンツは含まれておらず、過去のイベントレポートにも「文章による性的表現」は基本的に含まれていないようだが。【表現規制】表現の自由は誰のモノ【大谷昭宏102】868 :朝まで名無しさん:2008/08/06(水) 04:32:50 ID:DGOakrwl
とりあえず、いろいろ調べてみた。
AMIのトップは見事に「主張一般」にカテゴライズされておりました。鳥山氏のブログも同様。 で、とらのあなのトップは「性風俗」に分類され、コミケホームページトップは「文章による性的表現」。 規制派団体は見事に「登録されていません」。
ネットスターは完全な規制派企業とはいえ、馬鹿にしてるとしか思えんな、これは。良い攻撃材料になりそうだw
上記とは別に、「反ヲタク国会議員リスト」メモによれば、本サイトである「反ヲタク国会議員リスト」が、「違法と思われる行為」と分類されているそうだ (ただ、こちらは、ディレクトリをひとつ上に上がったトップから同じ評価をされていて、18禁明記がそこにあることなどから、当該リストではなく全体として評価されている可能性が高い)。
やや微妙な「反ヲタク国会議員リスト」の例はともかく、2ちゃんねるで紹介されていた事例などからすると、フィルタリングはアメリカでの場合と同様に、文化戦争(英語版Wikipediaの説明)の道具としての色合いがついてきているのではないだろうか。アメリカの場合、妊娠中絶問題(おもにPro Choiceをターゲットとしたフィルタリング)や同性愛問題(同性愛肯定をターゲットとしたフィルタリング。ソドミー法違憲以降はカテゴリー見直し時に削除するベンダーが少なくないなどの変化もみられる)といったあたりの文化戦争的フィルタリングで揉めたりしたのだが、日本では「オタク文化」に対する文化戦争の道具に利用されているのだろうか(もっとデータがたくさんないとはっきりしたことはいえないにせよ)。
一月ほど前にネットスターのフィルタリングのカテゴリ分類で新左翼党派や各種の右翼団体がほとんどテロリスト扱いである件についてふれたのだけれども、つい先日ネットスターがカテゴリ分類をチェックできる専用サイトを改めて公開していたので、ふと思いついて調べてじつに興味深いことが分かった。
前回調べたとき、革マル派のサイトが(他の党派とは異なり)「主張一般」というカテゴリに分類されていることについてふれた。このカテゴリはネットスターの定義によれば、「サイト主宰者の主張の場としての情報提供一般」とのことで、一見、かなり幅広いようにとりあえずは見える。しかし、これには
個人情報の売買や「別れさせ」工作など、社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張や各種情報の提供を含みます。
カテゴリ一覧 - ネットスター株式会社
という注釈がついている。本文の定義に自然に「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」が自然に含まれているという話なのか、それとも、「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」という価値判断にコミットした分類が実は主眼であるところ、それを定義としてしまうと分類されたサイトの主宰者やその主張の支持者からつっこまれること大なので曖昧にぼかしているのか、実は問題だ。同様のカテゴリは他のフィルタリングソフトでもしばしば存在する。実データとして、極めて穏健なものもふくめて市民団体などを全部突っ込んである場合も多い。企業における生産性管理ツール、といった位置づけでのフィルタリングソフトでは、主張の質を問わずにブロックする需要も多いだろうから、それはそれでアリ、とは言える。
さて、ネットスターの「主張一般」の場合だが、ケータイの子ども向けフィルタリングでブロック対象とされていること、PC向けでも推奨設定で基本的にブロック対象であることから、文字通りの主張一般というよりは、「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」についてのブロックを目的としているのではないか、というふうに思われるふしがある。事実として、多くの穏健な反グローバリゼーション団体のサイトは含まれていないし、グリーンピースジャパンやアムネスティ・インターナショナル日本といった団体のサイトも含まれていない(個別ページについて調べてはいないが少なくともトップページについての話)。
そういった前提の上で創作物の規制/単純所持規制に反対する請願署名市民有志について調べてみたら…「主張一般」に分類されていた。当該サイトは最近作られたものだから、他の市民団体にはネットスターのクローリングが及んでいないがここには及んだという偶然が存在するとは考えにくいだろう。内容面では、当該サイトは児童ポルノ禁止法の改正などにあたって「実在の児童を被写体としない(中略)創作物を規制の対象としないこと」「児童ポルノの単純所持を刑事罰の対象としないこと」を請願する署名を集めるサイトだ。新鮮なコンテンツに新鮮なレイティングがされたということになる。ネットスターの価値判断では、前記のような主張は「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」なのだろうか。
追記: 日本ユニセフ協会の実在の児童を被写体としない「子どもポルノ」の違法化と児童ポルノの単純所持処罰を求める署名運動サイトは(もちろん)カテゴリ付けされておらずフィルタリングの対象にはならない。
楠さんは「ケータイ的な世界がPCに浸食するとは考え難い」というのだけれども、楽観的にはそうだろうし、そうあってほしいけれども、悲観的な見方は可能だ。ふとニュースサイトをみると、Yahoo! BBという巨大ISPが主要事業のソフトバンクBBがSyncLock for OWA提供開始といってニュースになっていた。いろいろと嫌な予感がしてググると、高木さんが1年近く前に「対策にならないフィッシング対策がまたもや無批判に宣伝されている」という日記を書いていた。ただ、ここでは表題通りの批判が主眼で、認証方式自体についての高木さんの評価は
ちなみに、フィッシングの観点を除けば、この携帯電話を用いた認証方式は他の方式に比べて優れた点のあるものであることに間違いない。
ユーザがパスワードを自己管理するのは難しく、安易な弱いパスワードを使ってしまったり、どこのサイトにも同じパスワードを登録したりしてしまうのはなかなか避けられそうにないところ、ワンタイムパスワード方式と同様にこのソリューションは、ユーザに認証用秘密情報を決めさせないので、その意味での危険をなくすことができる。
対策にならないフィッシング対策がまたもや無批判に宣伝されている - 2007年09月23日 高木浩光@自宅の日記
というものだった。
このSyncLockだが、サービス紹介サイト上の説明によれば、
携帯電話の個体識別番号に紐づいた 「Key ID」をカギとすることで、携帯電話保有者以外のアクセスを防止します。また、ユーザは、面倒な複数のID・パスワード管理の必要がありません。
シンクロックとは - 確かなセキュリティ
という説明があり、対応機種の条件としても「携帯電話個体識別番号を送出可能であるか、または送出可能に設定できること」が明記されている。
あらかじめ断っておけば、SyncLockにおける「個体識別番号」は単体で認証に用いられているわけではないし、「オプション」として、「暗証番号、Q&A、指紋認証、声紋認証」を加えて「セキュリティ強度を高める」ことが出来るとされているから、高木さんが今回述べているような『「簡単ログイン」の危うさ』と同列に見ることができるかどうかは自明ではない。高木さんが前述の引用部分で認証方式自体をあまり問題視していないのは、携帯電話個体識別番号がそれ単体では認証(authentication)ではなく高々同定(identification)に用いられているに過ぎない、という判断なのだろう。が、それでも、少なくともサイトで喧伝されている上記の文章は正確な表現ではなく、読む者の携帯電話個体識別番号への誤った信頼を促進しかねないだろう。SyncLock 自体はニッチなサービスだと思われるので、存在自体がケータイ認証もどきのPCへの決定的な侵食になるということではないが、こういう方式が大手メディアで無批判に繰り返し宣伝されていくことで、日本のICTにかかわる層が少なからず(高木さんの言葉を借りれば)「退化」していく面もあるのではないだろうか。
「日本のインターネットが終了する日」を読み返しつつ、ここで描かれた最悪のストーリーが『「PCもケータイWeb同様に固有IDの送信を義務づける」という法案が浮上する』ことなく、成立しうることに気づいたので書いておく。
通信技術、とくに公衆移動通信技術というのは、検討開始から標準化、そしてサービス開始してそれが広く行き渡るまで、ものすごく長い時間がかかる。というわけで、携帯電話のネットワークは、やっと3Gが本格化したところで、3.9Gとか4Gとかいった次世代の話の検討が続けられている。インフラにかけたコストの回収に時間がかかるから、4Gは長く3Gと共存するらしいけれども。こうした次世代規格は、これまでの携帯電話と違って IPネイティブになるそうだ。サービス開始するころには、IPv4はとっくに枯渇しているし、おそらくはその他のネットワーク層での進歩を取り込むためにも IPv6 が前提。
一方、別口では、Fixed Mobile Convergence(FMC)といって、固定網と移動網を統合するような話がある。古くは電話的サービスに主眼があったようだけれども、少なくとも現状や今後はそれと同等以上の水準で、Webとか動画配信などのサービスも(現状の携帯電話サービス同様)重視されるだろう。マーケット用語としてはFMCというのはものすごく幅が広いのでとらえようがないのだけれども、とりあえず家庭用途としてはNTTドコモのホームUというサービスがスタートしている(技術的にどんなことになっているかは、ITpro記事が参考になる)。将来ビジョンについては、KDDIが固定網と移動網に、さらに放送(Broadcast)を加えた FMBCというビジョンを打ち出している(Wireless Japan 2008でのKDDI小野寺社長講演のケータイWatch記事、ITpro記事)。ホームUのサービスでは、インターネットへのアクセスも、無線LANルーターから普通にインターネットに出るのではなく、VPNのむこうのiモードネットワーク経由のアクセスとなっている。こうすることで、「ケータイ」として物理的なネットワークによらずWebアクセスのたびにiモードIDがつく環境が実現されている。FMCは少なくとも日本ではケータイキャリア主導ですすめられていて、ケータイ的なものを固定網に持ち込むものになっている。また、KDDI社長講演の中身では、端末が携帯電話であることが前提のようだが、FMCというくくりでは、端末が携帯電話である必然性はない。通信事業者は、結局端末で儲けているのではなくて通信やコンテンツサービス、そして認証プラットフォームで儲けているので、ケータイ通信事業者の考える意味でのセキュアな環境がPCの上に作れるのであれば、それもありだろう。極端な話、契約者本人相手に固定網認証専用のSIMはいくらでも発行し(不正譲渡を防ぐ技術的・法的手当がなされていると仮定)、それがノートパソコンや情報家電、そして家庭用ルーターに刺さり、そして機器と利用者はすべて認証されて動く、という枠組は、5年後はともかく10年後となると、ありえない話ではないと思う。
日本の場合、ISPがそもそもものすごくたくさんありますね、という話があり、それが前提であれば、「ケータイを無線LANでもつなぎたい」という程度のFMCはともかく、ケータイ的な前提が固定網を完全侵食するというのはありえないようにも、一見思える。でも、楠さんが先日指摘したように、日本のアクセスISPの多さってNTT法とフレッツサービスが作り出している、かなり人為的なものに過ぎないわけで、そこの制度が変われば、物理的にアクセス網を持っている少数の会社にアクセスISPが収斂されていく可能性がそれなりにあり、そして、移動通信事業者と少数のアクセスISPの関係が濃ければ、ケータイの世界の侵食は、かなり容易なことになるのではないかと思う。ケータイと固定網ISPサービスとFMCが一つの契約で料金安くて他にインターネットに出るためのISP契約が要らない、という状況が仮に生まれたとして、そこであえてFMCしないとか、インターネットのために別のISP契約をするとか、そういう選択は、ごく少数派のものになり、そして日本むけWebサービスがPC向けも含めて契約者固有IDの送信を求める方向に動いてしまえば、「PCもケータイWeb同様に固有IDの送信を義務づける」という法案が無くても、あとはネットワーク外部性で市場の中で「日本のインターネットが終了する」ということは、ありえないことではないだろう。
なお、本稿は仮定に仮定を重ねて最悪のストーリーを考えてみたに過ぎず、必ずこうなるといった話をしているわけではないことに注意。
高木さんからご批判いただいたようだけれども、私は「iPhoneがきっとそれを止めてくれる」という話をしているのではなくて、高々、可能性の話をしているだけ。
とりあえずの確認。契約者固有IDというのは「ケータイ」向けゲートウェイのサービスとしてくっついてくるだけのもので、高木さんが想定されるような「法規制としての契約者固有ID義務化」はケータイにおいても行われていない。オプトアウトできる。ただし、オプトアウトするとさまざまな「ケータイ向けサービス」が利用できない、というだけだ。
イー・モバイルのEMnetの場合、単にWebにアクセスできます、というところを越えたケータイ的なコンテンツサービスを受けられる環境をユーザーに提供するべきと、イー・モバイルが経営上の判断をし、それ以上のことは深く考えずにそうしたように見える。イー・モバイルの端末は、Windows Mobileだけれども、イー・モバイルのブランドがついた端末で、供給しているメーカーがイー・モバイルのやることをコントロールするわけではない。一方、iPhoneの場合、いくらソフトバンクモバイルが売るにしてもブランドはまぎれもなくAppleで、Appleが主導権を握って供給している。少なくとも現状は主要なコンテンツサービスはアプリ含めてAppleのそれであって、キャリアの色をつけたものではない。「Yahoo!ケータイがiPhoneでもご利用可能になりました!」という、キャリアがMobileMeなどと競合するようなポータルを提供する環境を、少なくとも現状のAppleが望むかといえば望まないのではないか(そこまで契約で縛ってあっても不思議はない)。
そして、私は単にiPhoneって少なくとも現状は携帯キャリアを土管化しているので、そういう人気端末が出たことはいいことですね、続くのがいっぱい出ると契約者固有IDをデフォルトあらゆるところに送信とかそういう非常識な事態が成り立たなくなるといいですね、という、ポジティブな可能性をあえて拾ったわけであって、ネガティブな話なら、高木さんが出した以上のものを考えていますよ(これは別記事に)。
米国のChild Online Proetction Actについての違憲訴訟で、連邦巡回控訴裁判所でも連邦地裁の判決を支持した違憲無効の判決が出たそうだ。日本語ではまだ国立国会図書館のカレントアウェアネス・ポータルの記事ぐらいしか見ないが、英語圏では多くのニュースサイトで報道されている(原告筆頭のACLUのプレスリリース)。
判決文(第三連邦巡回控訴裁判所サイト掲載(PDF))をみると、細かいところで1ヵ所だけ連邦地裁と異なる事実認定をしているけれども、「結論に影響なし」との明記までされる程度のもので、ほぼ連邦地裁の判決をそのまま支持する内容となっていて連邦政府は全面敗訴となっている。
5月のMIAUのシンポで「まだ連邦地裁だしびみょー」と思いつつ結構細かく紹介したものがほぼそのまま支持された控訴審判決だったので、とりあえずお知らせまで。
前回のエントリは、あまりにポジティブすぎる気もしたので、高木さんの懸念を補強するようなネガティブな話も。
総務省、というか、テレコム業界用語的な意味での「通信プラットフォーム」という言葉には、インターネットが基本でものごとを考えてきた身には極めて独特なニュアンスがあって、その言葉で差されているのは、端末やサービスサイトのサーバーといった end の中のアプリ層までのプロトコルスタックも含むが、中心となるのはネットワーク側の機能で、そこの「高度化」を前提に、それを「オープン化」すべきというのが最近の論調。endだけが賢くて、ネットワークは何もしない前提、というのとは、全然違う世界がそこにはある。具体的なネットワークは固定系では NGN、携帯電話は現行の3G から将来の 3.9G、4Gといったあたりまで見すえた議論となっている。総務省の通信プラットフォーム研究会では、そういう前提で、いかに、ユーザーに物理的にアクセスするネットワーク事業者だからこそ持ちうる情報やサービスを、「オープン化」して、サービス事業者のビジネスを盛んにしていくか、というのが主要な議題になっている。もちろん、セキュリティやプライバシーのことは問題になるので、それらとどう調和してやっていくか、というのは、一貫した課題となっている。
この研究会ではオブザーバーとしてさまざまな通信事業者、サービス事業者を呼んでプレゼンテーションをしてもらい、それをネタに議論をしている。「IDポータビリティー」についても盛んに議論されているが、IDポータビリティという言葉が差す内容は非常に広く、必ずしも全てが「固有IDの問題」というわけではない。例えば、携帯キャリアを移るときに現状では公式コンテンツサービスやメールアドレスを引き継げないがこれを引き継げるようにしたい、という議論も「IDポータビリティー」の議論として行われる一方、シングルサインオン(固有IDをクロスドメインで使うという制約はとくにない)によるサービス連携も「IDポータビリティー」の一実現方法として語られたりする。IDと結びつく個人情報の深さについては、IDポータビリティはLife Logポータビリティだという感じのインデックスのプレゼンもあり、なかなか興味深い(議事録も参考のこと。インデックスの興味はライフログのオープン化にあり、それはセキュアである必要があるという認識はあり、固有IDに必ずしもこだわってはいない)。
ざっとみて、一番気になったのは、6月に行われたJCBのプレゼン。携帯電話公式サイトの課金モデルは制限があるので、「端末機体番号と暗証番号の組」をクレジットカード番号と紐付けた認証・決済プラットフォームをクレジットカード会社が構築する、という提案だ。さらにこれを公式サイトのみではなく、非公式サイトにも提供するというストーリーになっている。認証・決済プラットフォームが端末機体番号を使うからといって、これを認証・決済のユーザーとなるコンテンツプロバイダで必要とするかは自明ではない(ID連携を前提とすれば必須とはいえない)が、直近の7月の研究会での構成員からの追加質問への回答(JCBに関しては5ページから)には
2.携帯端末について、現在の端末製造番号が送出される仕様を今後とも維持していただくことが必要になります。また、自社だけでなくクレジットカード会社等も端末機体番号を用いることになりますので、仕様変更や不具合等の情報について必要な連携をしていただく必要があります。
(ジェーシービー)プレゼンテーションについての追加質問に対する回答
とある(なお、6月の回の議事録では、必ずしも肯定的な反応というわけではない)。NTTドコモの場合、iモードID以前からのユーザーに都度確認を求める形での端末製造番号通知機能があるので「現在の仕様」がどちらを差すかは自明ではないが、auやソフトバンク、そしてイー・モバイルのサービスについてはサブスクライバIDであることはほぼ自明だろう。ところで、これらのIDってSSLでは送れないものもあった気がするのだが、まさか平文なのだろうか?日本のケータイサイト開発者の技術力が後退していくどころの話ではないかもしれない。認証・決済プラットフォームについでだけ端末機体番号を使うのであって、対コンテンツプロバイダではそんなことしないよ、当然ID連携だよ、というのが言葉足らずなだけと思いたい。
大変な反響を呼んだ高木さんの「日本のインターネットが終了する日」への応答として。日本のネットを終わらせないためには、ケータイビジネスのほうに変化を促す必要があり、そして、そのチャンスは今ちょうど現れている。そして、多分、なるべく早く変化を促すべく仕掛けていったほうがいいのではないかと思う。
高木さんの「ガラパゴス携帯」への問題意識は、もともと契約者固有IDの問題に留まっていない。今回は技術的に別件だからか言及していないけれども、ブラウザーにアドレスバーが存在しない問題にも繰り返し言及している( アドレスバーのない携帯電話はPhishing詐欺に耐えられるか(2004年4月24日)、太古の昔、アドレスバーが入力欄でなかったのを知ってるかい?(2004年4月26日)、 ケータイWebはそろそろ危険(2007年6月24日)、アドレスバー百景 その1(2007年7月01日)、アドレスバー百景 その2 「iPod Touch」的UIの活用を考える(2007年10月20日)、EZwebブラウザの「お気に入り登録」は偽サイトを見分ける手段にならない(2007年12月08日))。
また、高木さんはPhishing対策ツールバーなんていらない! 元々あるIEの機能を使う(2005年12月24日)というエントリで次のように述べていた。
もうひとつの道は、高額料金で「認証」するのではなしに、主観的基準によって、販売先を選ぶという方向性である。これは、携帯電話会社の「公式サイト」のモデルに似ている。しかしそれは、「インターネット的」でない代物だ。
インターネットが旧来の電話会社がやってきたことと根本的に異なっていたのは、常に自由と平等が尊重され、独占を避けるよう技術が設計されてきたことだ。だからこそこれまでのような発展があったはずだ。
(略)
携帯電話上のサービスは所詮、電話会社の恣意的なコントロールの下に置かれたものであり、自由がない代わりに一定の安全が安易に得られている。
インターネットを電話のようにしてしまえという発想をする人もいる。通信路だけでなく、ユーザ認証やコンテンツまで通信会社がコントロールすることで、「インターネットの危険をなくせ」という発想だ。自由を削がれたそれは、もうインターネットとは似て非なるものである。
Phishing対策ツールバーなんていらない! 元々あるIEの機能を使う - 高木浩光@自宅の日記
高木さんがここで述べているように、そもそも、「ケータイWeb」の世界は、公式サイトモデルで作られ、それが(限られた表示領域の中で)閲覧サイトのURLの常時表示がなく、あまつさえ、おそらくはコンテンツ保護的な意識で確実なURL確認すら不可能にした端末のみを許可し供給するキャリアがある、という状況で発展してきた。ついでにいえば、Webサイトの文字列のコピペとか、view source とかもできないキャリア、端末も少なくない。サイトは信頼されていて、ユーザーは信頼されていない前提でもある。
そして、約一年前の「ケータイWebはそろそろ危険」では、「数件程度のブックマークから直接サイトにアクセスして利用している」という前提が、検索サービスの普及で崩れてきたとしてフィッシング詐欺の現実化を憂慮している。ここで高木さんが例示していないけれどももうひとつ問題にしないといけないのが、「青少年ネット規制」で問題にされた子どもが多いコミュニケショーン系CGMでの問題。あえて実際のサービスをひとつ挙げると前略プロフィール(ここはケータイ専用ではない)では、登録ユーザーはプロフィール中に「My リンク」として自由にURLを書くことが出来る。ページに表示されるのはユーザーがリンク先タイトルとして置いた文字列であって、URLそのものは表示されない。他のCGMサービスではケータイでは外部リンクはケータイからは辿れなくしたり、リンクを辿るのに外部サイトへの遷移のための中間ページを置いてURLを見せる配慮をしているものが多いけれども、前略プロフではリンク先へのダイレクトなアクセスが基本となる。標準の足跡帳(ゲストブック)ではリンクは URL が自動的にリンク化されるスタイルをとっているので事前確認ができるけれども、ゲストブックで前略プロフ内に作った「釣りプロフ」に誘導した上で、そこから悪意のサイト(フィッシングに限らず、ワンクリック詐欺とか、単にアクセスするであろうユーザーの意図とは異なるアダルトサイトとかも含む)に誘導することは可能だ。実際、そういう「釣りプロフ」は以前はいくらでも見られたが、青少年ネット規制の論議の高まりの中で運営会社が方針転換して、出会い系サイトへの誘導などは(他の問題があるものと一緒に)消去するようになったようだ。
「釣りプロフ」程度であれば、実のところ内容がおかしかったりするものも少なくないので、技術的な手当てではなく、プロフとしての個々のコンテンツを判断するリテラシーがあればそうそう引っかかる人は多くないかもしれず、むしろ釣られているのは「エッチな女子高生けしからん」といってる一部の大人じゃないのか説もありそうだが(荻上チキ「ネットいじめ」P.190ではその可能性に言及している)、より高度な偽装もありうるだろうし、コンテンツ判断リテラシーの個人差も考えれば問題ないとはいえない。
そもそも、公式サイトを前提としたケータイ文化隆盛を前提として、ニッチとしての勝手サイトビジネスが生まれ、そこがいつのまにか十分な発言力を持つに至り、さらにはPCサイトで発達したサービスがさらなる市場をケータイに求め、そこで楠さんが述べるように公式サイト・勝手サイト間の競争条件の公平化という文脈でさらに歪んでしまった、というのが現状だろう。検索サービス然り、CGM系サービスの公式サイト化然り。歪んでしまったとはいえ、多くの実ユーザーがいるサービスだから、ケータイからインターネットにアクセスできる機能を止めろとか、子どもはケータイ禁止とか、(表現の自由とかアクセスの自由とか以前に)まったくもって現実的ではない。それは多くの人々のコミュニケーションを奪うことになるし、多大な経済的な損失をもたらす。
ゲートウェイ改修というのは個体識別番号に特化した解決法で、とりあえず急いで提案されるべき話だとは思うが、それはそれとして、中・長期的には、そもそもの公式サイト前提のケータイWebアクセスサービスとそれに特化した端末、そしてそれを前提としたケータイコンテンツサービスといった総体を変えていかないといけないと思う。そして、今はそのチャンスなのかもしれないと思う。
Web屋のネタ帳のiPhoneと携帯契約者固有IDと複アカと青少年ネット規制によるケータイ闇ナベ狂想曲がそれを示唆する。「ケータイ文化」と切れている携帯電話端末は、決してiPhoneが最初ではない。先行して、いくつものスマートフォンが出ている。基本的にアドレスバーの問題はないはずだし、「ケータイ文化」向けのゲートウェイを使うのでなければ、個体識別番号送信の問題はないはずだ。ただ、これまでのスマートフォンはニッチだったし、ネットアクセスという意味ではあまりにもPC然としていたから、ケータイコンテンツサービス的には無視できる存在だっただろう。これが、iPhoneとなると、単一機種が大量に出回り、あるいは出回ることが予想される状況で、話題性も含めてコンテンツプロバイダーとしても無視できないだけのボリュームがある。iPhoneはyomoyomoさんがFSFの批判を紹介しているように決して自由な端末ではないが、日本のケータイ文化の文脈とは縛るところが明らかに異なる端末であって、そうした多様性が日本のケータイ文化を市場を通して揺るがし、コンテンツプロバイダーとキャリアの態度を変えさせることに私は期待している。iPhoneの影響で多くのケータイコンテンツプロバイダーがPC的アクセスを許し、あるいは代替物を提供するようになれば、スマートフォンというジャンル全体がニッチから抜け出ることができるかもしれない。そうやって、日本の「ガラパゴス携帯」が5年から10年ぐらいのスパンでまっとうなネット携帯化していけばいいのではないかと思う。
「犯行予告」してしまった皆さん、今や、ネット上で「犯行予告」っぽい書き込みを目立つところでしてしまうと、それは必ずといっていいほどに通報されてしまいます。文から読み取れる現実的な危険性の程度は関係なくなってきています。
犯行予告を集めて通報する予告.inというコミュニティサイトでは、すでに、秋葉原の大量殺人事件のようなことが繰り返されないように、という当初のコンセプトを越えて、ネット上のコミュニティサイトによくある偏向・先鋭化(サイバーカスケードと言ったりします)の兆候があり、なにより、予告.in管理人自らがその傾向を助長しているようにもみえます(例)。
このような、過剰とも言える通報による「犯行予告」の見える化によって、「犯行予告」っぽい書き込みをした皆さんのリスクは確実に高まっています。「コウナゴを焼き殺す」で逮捕されてしまった人の件も、予告.inでの通報が要因のひとつのようです。いったん通報されてしまうと、それによって、警察や予告場所の人達が警戒するなどの「迷惑」がかかる場合があります。これで、警察は逮捕理由ができたと判断することがあります。どの場合に警察が動いて、どの場合に動かないか、ということは普通の人には判断できません。必ず動くだろう、というのは分かっても、どういうのが動かないかは、もはや分かりません。
「犯行予告」っぽい書き込みをすることは、現実的におすすめできない状況ですが、しかし、してしまった皆さんがどうすればいいか、ということはあります。放置はよくありません、事態はどんどん悪化します。ネット上での釈明も効きません。「コウナゴ」で逮捕された人は、懸命に釈明の書き込みをしていましたが、「犯行予告狩り」をしている人達にとっては、それは楽しみのスパイスにはなっても、通報をやめる理由にはなっていません。
こういう場合、通報から個人情報の特定に至る動きに先んじて警察に申し出て、危険性がないことを示すのがひとつの手です。警察や予告場所の現地の人々の手を患わせてしまうと、そこで「業務妨害」が発生してしまっていることになります。それに先んじることです。先んじるのが無理でも、「業務妨害」の程度が客観的に軽ければ軽いほどいいのは間違いありません。こうすることで、逮捕を逃れることができるかもしれません。一度逮捕されると、それは日常生活にとっては破壊的なダメージです。
といって、いきなり警察に行って「自首」してしまうのも、実はおすすめできません。普通の人が、警察官といきなり話をして、自分の権利を守ってきちんとした話ができるとはいえません。あなたは動揺しているでしょうし、警察官は秩序の味方であってあなたの味方ではありません。時間に余裕がありそうなら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士の知り合いがいない人も多いでしょうから日弁連のガイドを紹介しておきます。弁護士なら、依頼すれば依頼人の味方となって、内容によって、きちんと不利にならないように書類を整えて自首の段取りをするとか、あるいは「書き込んだのは認めるが犯罪予告ではない」という申し開きの書類を作って警察に提出するとか、あなたの意向をふまえつつ適切に対処してくれるでしょう(多分)。もっとも、誰が見ても重大な犯行予告書き込みだな、という内容の書き込みをしてしまった場合、通報から捜査までのスピードも速く、弁護士に相談する時間がないかもしれません。そう思ったら、とりあえずは自首してしまうのも仕方がないかもしれません(自首する前に当番弁護士に連絡して対応してもらえるかもしれません。ここはよく知らないのであとで修正)。
努力むなしく、あるいは予想外に逮捕されてしまったら、まずはおちついて、「当番弁護士を頼みたい」と言いましょう(事前に弁護士に相談していたら当番弁護士ではなくてその人)。そして、面会に来てくれた弁護士とよく相談してから、取調べをどう受けるかを決めたほうがいいでしょう。慌てて弁解してもしょうがないのです。動揺して余計なことや間違ったことを言ってしまうほうがまずいことは多々あるでしょう。警察官に対しては、自白するでもなく、否認するでもなく、まずは「気持ちを整理したい」とでも言ってあとは黙って弁護士との面会を待てばいいでしょう。
一部未完成だけど、転載自由ということで。
楠さんが挙げている新司法試験で出題されたネット規制の問題の話で、
死刑反対のNPOがWebサイトが公開する処刑などの写真が概ね有害情報に指定され、対抗してフィルタリングに穴をあけるソフトを提供したところ起訴されたという設定
新司法試験にネット規制の出題 - 雑種路線でいこう
という部分について。かなり驚いているはてブ民がいるので書いておくと、この設定自体は問題のような法案が成立した場合には驚くに値しないほどにリアリティがある。前にもふれたことがあるのだけれども、ベトナム戦争のころ、ベトナムでの被害状況の写真を、日本の税関は「風俗を害する物品」のうち、「極端に残虐性を持っているもの」として関税定率法上の輸入禁制品として通関させなかったことがある。
古いことでネット上に資料は乏しいのだけれども、第55回国会 予算委員会第二分科会 第3号 昭和四十二年五月二十四日(水曜日)の最後のところで、須藤五郎議員の質問で登場し、政府委員も事実関係を認めた上で税関の判断が正当だとする答弁をしている。その後、異議申し立てがあり輸入映画等審議会(現在の関税等不服審査会輸入映画部会に相当)を経て判断がくつがえっていて、それを受けて第56回国会 大蔵委員会 第1号 昭和四十二年十月十三日(金曜日)で、フォローアップの質疑が行われている。
40年以上前とはいえ、今につながる法体系の中で起きたことなんだよね。法学系の人は知ってる可能性が高い話だし、既存大手メディアの人もリアルタイムでなくても座学的にきっちり把握してる人が多そうな話なんだけど、ネットでみる感じ一般にはそれほど有名じゃないし、国会議事録に載っているのをみつけたのでエントリにしてみた。
「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が成立し、議論がこれから先に進むであろう、ということで、実際に現状どうなっているのか、ということで。というか、サミット反対デモがものすごい扱いを受けていた件から書きたくなった。
この青少年ネット規制法成立に先行して、広島市で青少年と電子メディアとの健全な関係づくりに関する条例が成立している。罰則などがあるわけではないようだが、審議会でフィルリング基準を定めるといったあたりは、成立した法律に比べると表現内容に行政が踏み込む度合が強くなっている。審議会会長は広島大学の越智貢教授。応用倫理学、とくに情報倫理については著書も多い第一人者といえる。かつてのFINEプロジェクトのコアメンバーであり、問題には精通しているといえる。それゆえ、家庭レベルのカスタマイズができる将来に期待しつつといいつつ示された暫定基準の広範さには軽い失望を抱いた。
とりあえずここで問題にしたいのは、この基準にある「軍事・テロ・過激派」という分類だ。これは、いくら「青少年対象」といえども、表現の自由、思想・信条の自由との関係を気にせざるをえない。カテゴリの文言からすると、18歳未満の青少年対象に規制するのは当たり前ではないか、という印象をもつ人も多いかもしれない。現在の携帯電話フィルタリングでも全キャリアがフィルタリング対象としている領域だ。でも、キャリアの18歳未満へのデフォルト適用の話と、行政が基準として示す話はまったく別のレベルであるし、そもそも、このカテゴリがどの程度の範囲のものを指しているのか、という問題もある。ちなみに、インターネット協会のSafetyOnline3の検討では、千葉学芸高校の高橋邦夫校長が『反社会的な集団やカルト集団のサイト」というキーワードを追加してはどうか?』と提案し、思想信条、宗教に関わるような内容は扱わない(暴力やテロ活動は犯罪行為として既存カテゴリで対処)と一度却下されたが、さらに粘って脅迫活動も違法行為として例示することで対処するというところまで行った(詳細は2006年度第2回研究会資料3、第3回研究会資料3を参照。ともにPDF)。ここで高橋氏が「示威活動」をフィルタリング対象に明示的に加えたいとする意思をしつこく表明していたこと自体興味深いのだが、それだけは発表された基準でも避けられている。
さて、ここで、現状の携帯フィルタリングで使われているネットスターの分類について、公開されているWebプロフィール確認ツールで調べたら、実に興味深かった。まず、メジャーな街頭宣伝活動を行うような右翼団体は、大抵、「軍事・テロ・過激派」に分類されるようだ。日本青年社、大日本愛国党(ここはWebは青年隊のみ)、大行社といったあたりも分類されているが、一水会もここに分類されている。新左翼団体では、中核派、日本革命的共産主義者同盟(JRCL、通称かけはし)といったところはここに分類されている。不思議なのは、革マル派は「主張一般」カテゴリにしかなっていないということだろうか。現状の携帯フィルタリングではこれはブロック対象だが、広島市条例ではカテゴリとしては対象でないようだ。なお、(新左翼党派とは別の)反グローバリゼーション団体で、「軍事・テロ・過激派」扱いされている団体はいまのところまだ見つけていない。
個人的な考えとしては、個別のテロ活動などの暴力への誘引や勧誘と、各組織の政治信条の表現に対する扱いは峻別される必要があり、後者を公的な形でフィルタリング対象とするのは極めてまずいのではないかと思う。また、どこまでが表現の自由であり、どこからが逸脱かという問題もある。前記のインターネット協会のSafetyOnline3では「その他法律、条例その他の法規で禁止された行為の手口に関する記述」というものが入ってくる。これを18歳未満閲覧制限としている。前述の高橋氏のように「示威活動」を最大限、閲覧させたくない立場からすれば、ジグザグデモ、フランスデモ、サウンドデモなどを称揚するコンテンツは検挙事例の存在を理由に閲覧制限する方向の内部基準をフィルタリング会社に設けるように申し入れるといったこともおこりうるのかもしれない。さらに、集合住宅ポストへの政治ビラ投函についての正当性主張の言論もここに入れようとする動きもありうるかもしれない。
一水会の創設者の鈴木邦男氏は、最近、右翼が暴力に訴えがちであったことや街宣車を使ってきたことについて、表現の場を持たなかった(排除されてきた)ことが要因のひとつとしてあるということを繰り返し述べている。今やフラットなWebの空間で右翼団体も左翼団体も自由に表現活動ができるようになってきている(中核派の前進社がブログをMovable Typeを使って構築し、YouTube に公式チャネルを持ってるっていうのは、思想信条と手段の関係でどうなのよ、と思わなくもないが)のだが、「違法・有害情報対策」は、こういう場も変えていこうとするのだろうかと、心配になりつつある。
有害情報という言葉はもう10年以上使われている。「2002年の青少年有害社会環境対策基本法案をみたが有害情報という言葉はなかった」というのは、あの法案がメディア独立なより大きなフレームワークだったというだけなのではないかと思う。
国会では、国会会議録検索システムによれば、参議院文教委員会の平成9年05月22日が初出となる。これは1997年。現在は衆議院議員の馳浩氏の参議院議員としての国会質問となる。馳議員は、携帯フィルタリング義務化についても法案以前から積極的に動いていた議員の一人で、フィルタリング問題については長く取り組んできていると言える。
○馳浩君 最後の質問をさせていただきます。
ホームページに私なども自分の馳浩という名前で情報を載せておるわけですが、匿名で有害情報、これは最近問題になっておりますけれども、わいせつな映像などを載せて、あるいは写真などを載せてしまうということで、これはもしかして大変子供たちに対する悪影響を及ぼすのではないか。
というのは、このインターネットということで考えますと、オン・ディマンド、見たいときにいつでも見ることができるということでありますから、この辺の規制というものは、これはやはり児童生徒への影響ということを考えましたときに文部省としても考えなきゃいけないんじゃないかな。ちょっと資料を私も見ましたら、郵政省の方は法的規制は当面見送りといったようなことを言っておって、いわば自主規制をしなきゃいかぬなということだそうでありますが、最後にお聞きいたしますけれども、文部省としてはこの点どうお考えになっているのでしょうか。
参議院文教委員会 平成9年05月22日
これより前について、少なくともWeb上では、100校プロジェクトの東金女子高等学校(当時)の平成8年度実施状況レポートの中でネットニュースを導入しなかった理由のひとつとして言及されている。レポートは1997年2月10日付で、「東金女子高等学校 総務部長 高橋邦夫」によるもの。高橋氏は、その後、東金女子高等学校が共学化した千葉学芸高校の学校長となっている。フィルタリングの文脈では、インターネット協会の「レイティング/フィルタリング連絡協議会」委員をやってきている(少なくとも2006年まで。SafetyOnline4 の委員に入っているかどうかは知らない)。なお、前年の平成7年度実施状況では、次年度の構想として「そのほか、有害なWWWコンテンツを排除する仕組み(w3.orgのPICSなど)が開発されるらしいので、これを含めた学校教育で生徒が安心して利用できるシステム構築技術の研究も継続していきたい。」と述べられるにとどまっていて「有害情報」という言葉にはまだなっていない。当時を思い出してみると、1995年度の時点では、この領域での高橋氏の関心は、ネチケットガイドラインの翻訳にあり、その次のステップとして有害情報という話をはじめたので、1996年からということになるだろう。
と、さすがにこれだけじゃないだろうなぁ、と思ったら、当時の郵政省で電気通信における利用環境整備に関する研究会が1996年9月から開催されていて、報告書が12月末には出ていた。3ヵ月ほどで急いで出したということになる。ここで「違法又は有害な情報」といった表現が出てくる。 また、平成8年警察白書には、「パソコンを通じて少年が有害な情報に接する機会が増加しており」と、前年度のこととして記述されている。
単に言葉ということではなくて実質面をとるならもう少し遡ることができて、一部で密かに、ということではなくて日本で世間が盛大に騒ぎ出したのはあきらかにアメリカのTIME Magazine のCYBERPORN特集(1995年7月3日)からで、これが1996年1月末のベッコアメ事件の強制捜査、そして2月のアメリカでの通信品位法成立とにつながっていった。そんな感じだったように思う。
ただ、おそらく最も古いのは児童の権利条約で、1994年に批准しているからそれまでには訳されている。外務省訳では、第17条(e)項は「児童の福祉に有害な情報及び資料」という言葉を使っている。
世の中、G8北海道洞爺湖サミットということで大騒ぎなこのごろ。
個人的には、サミットってそんなに関心ない、というのは、各国政府首脳も思いつきでトンでもないことをいきなり約束できたりはしないし、何か決まることがあれば、事前にさまざまなな折衝がなされるわけで、そりゃその場で首相とか大統領とかが集まって何か出せば重みはあるし、ギリギリのところの政治決断がそこで行われるのかもしれないが、だからといって予測不能なほど派手なことは起こりようがない。「非公式かつ自由闊達な意見交換を通じてコンセンサスを形成し、トップダウンで物事を決定します」と言ったところで、独裁国の集まりじゃないわけで。地球環境問題が最大のテーマということは、裏返せば差し迫った大テーマはないってことだろうしね。過去のサミット(1999年まで、2000年以降)では、熱かった時もあるだろうけれども、今、G8で外交問題で熱い話題でその場の組み合わせで劇的な展開がありそうな話題ってないんじゃなかろうか。派手なことがないからどうでもいいというつもりはないけど。
そんなわけで、個人的にサミットに関心が薄いので、それにわざわざ反対するのって、奇特な人達だなぁ、と、率直には思う。まぁ、実際には、彼らもサミットというイベント数日それ自体というよりは、G8諸国が日々積み上げている外交や政策の中身全般に不満があり、それへの反対運動を、カウンターイベントとして並行実施して盛り上げる、というのが、そういう人達のやりたいことで、それはそれで戦略的な宣伝活動なわけです。当たり前だけど。個人的には、そういった主張の数々について是々非々で賛否や無関心、ものによっては積極的なコミットを考えることが出来るかもしれない(表現の自由や国家の市民一般の活動への監視からの自由、といった領域は関心事だし)が、まとまったパッケージとなった「オルタナティブ」「反グローバリズム」には、相当に疑問というか、それで貧しくなく平和な世界が出来れば誰も苦労しないわけで、リアリティを感じて時間と人生を割く気にはなれず。というか、もうちょっとぶっちゃけると、巨大なオフ会やって楽しんでますね、あいにく私の趣味じゃないです、ぐらいの気分。もちろん、個々の人にはそれぞれの抱える現実や人生があるので、そこで訴えることに意義があるテーマを抱える人もいるのでしょう。
といった立ち位置表明をあらかじめしておいて本題なんだけど、札幌のデモで逮捕者が出ているわけです(参加者報告、それを受けた参加してない人の記事、報道紹介、参加者一部に問題あったんじゃね?という参加者側記事)。逮捕者の一人は理由はどうあれロイター通信のジャーナリスト。デモ参加者の逮捕については、警官がデモ参加のトラックの窓を叩き割って引きずりだしているところとか、海外のテレビのクルーが撮影して中継放映されたようです。たまたま見たサンデースクランブルで現場でモニター画面を見せてもらうところを放映とかやっていたので日本のお茶の間にも流れてますが。あれ、映像として、警察が当たり前に違法行為を取り締まったように見る人っているんですかね。事実はどうあれ、どうみてもあの映像はデモ弾圧にしか見えません。
それ以前に、外国からの反G8サミット会合参加者について、入国拒否とか入国手続きでものすごく待たせるとか、イベントのパネリストだって分かった上でそのイベントに参加できない出国期限をつけちゃうとか、活動家だけじゃなくてジャーナリスト相手にやってると騒がれていると。
背景としては、公安警察が「サミット成功」を掲げた猛烈なシフトをひいていることは首都圏の駅のゴミ箱封鎖をみてもわかるように自明だけど、テロや暴動の警戒をするのはいいんだけど、反対運動潰し方向に行きすぎてるように見えちゃうのって、「国益」を考えてもそまずいんじゃないのと思うんだ。ソフト・パワーっていう概念があって、「その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力」ということなんだけれども、これには、例えば、市民的自由が尊重されている国、といったことも含まれてくる。政権とそれ以外の非国家勢力の関係では、インターネットが普及したことでさまざまなプレイヤーが情報発信をして影響力を行使しうる状況にあるといったことも考慮する必要がある。こういう条件のもと、日本の公安警察は、反グローバル勢力と一般市民の「分断」(って分断しなきゃいけないほど反グローバル勢力がそもそも一般市民から魅力ある存在と見られているかという問題はある)に熱心なあまり、日本のソフト・パワーを損ねる事態になってるんじゃないだろうか。今回の件は普通に国際的に見たまんま報道されているし、反グローバル勢力の国際的なネットワークを通しても伝えられているし、各種Web2.0系メディアで大量の画像・映像や文字でのレポートが文字通り世界に向けて送り出されている。
こういう事態って、今回のサミットの少し前からあって、グリーンピースジャパン(GPJ)の職員が調査捕鯨の鯨肉の横領疑惑だといって運送会社から荷物を持ち出して届けた件で窃盗容疑で逮捕されて勾留延長になって今なお釈放・保釈されず、一方で告発した疑惑のほうは素早く幕引きになった件もそう。西欧各国の報道をGoogle Newsでざっくり見た感じでは、どうみても政治犯的な扱いが多いし、そもそも報道のたびにGPJ職員の非よりもGPJの告発内容や「日本は鯨を殺し続けてます」的な解説のほうがスペースが大きいわけですよ。反捕鯨運動が強いオーストラリアだけじゃなくて、アメリカでもそういうトーンの報道は少なくなかった。日本国内には「グリーンピースざまぁ。警察GJ」的なブログが圧倒的に目立ったけれども、鯨肉は機会があればおいしく頂くがぶっちゃけ捕鯨問題の先行き自体には関心が薄い身としては、こんな形で日本のイメージが悪くなるほうが困るわけで。問題の事案が窃盗罪かどうか微妙という話はグリーンピース側でない第三者的な弁護士からも出ていたと思うが、だからといって捜査しない方向はありえないとして、それでも、この内容で勾留決定と勾留延長とあわせて20日の勾留(このノリだと起訴後保釈も異議を出して蹴っ飛ばす方向が十分ありうる)とか、GPJ事務所の家宅捜索で総ざらい的な押収とか、グリーンピースの国際的な情報発信力で世界中に状況は伝えられているわけで、GPJにダメージを食らわすことは公安的にはやりたかったことかもしれないが、トータルで日本の国益にかなったことなのかどうか、かなり疑問。マイルドに騒がれないようにやる手はあったはずなんだけどね。
公安警察の中のひとは、昔通りの手法を今に適用しているだけなのだろうけど、冷戦が終わって伝統的な左翼勢力が退潮しても仮想敵の大きさを維持してこんなことになってるんだろう。警察って捜査機関っていう性質上、外部からの適切なコントロールが難しいのだろうけど、実際問題、日本のイメージを悪くしているんだから、もうちょっと政治がなんとかしてほしいね。
楠さんが予告.inの素早さに興奮していたところまではいいのだが、その後も予告.inで十分じゃんと言っているのをみると、ちょっと待ってよ、と言いたくなった。
予告.inが2時間でやった仕事のクオリティを否定するつもりはない。多分、ネットにどっぷり浸かっていればこういう発想は、思いつきレベルはわりと出てくると思うのだが、そこから動くサイトを作る決断をして即作る、というのは、(これまでの蓄積が効いているにしても)誰にでもできる話ではない。プロトタイプとしては秀逸。でも待ってほしい。
そもそも、「犯罪予告」をこんなに露骨に可視化することは、望まれていたことなのだろうか。これまでも、ネット上には(密度はともかく数としては)大量の犯罪予告と解釈できる書き込みはあふれていたはずで、その多くは、参照する人も少なく、といって、書いた本人も実際には犯罪を犯すつもりもなく、そのまま放置で終わっていたのだろう。たまに、偶然に注目を浴びる犯罪予告があり、各所に通報され、そのことによって犯罪内容によっては避難や警備強化などの「威力業務妨害」たる実害が発生し、かつ書き込みをした人物が謙虚される、という経過をたどっていたものがあった。そして、それよりもはるかに少ない頻度で、犯罪予告が実行に移された。今回は、この、稀なものにあたる。予告.inは、単に通報するシステムではなくて、可視化することによって、これまで注目されていなかった犯罪予告を無理やり表舞台に引っ張り出したという一面を持っている。そのことによって、「威力業務妨害」程度の実害は、むしろ発生しやすくなっているのではないだろうか。表舞台に引っ張り出された以上、少なくとも書き込みした人物が特定され法執行機関が物理的に接触するまでは、危害を予告された側としては自衛的な対処をするほかなくなるし、そのことで経済的な損害も発生しうる。今回の事件のような通報が行き届かずに深刻な被害に行き着いてしまったような事態の起きる確率を減らすことはできるかもしれないが、しかし、それは敏感なアラートが上がることによる経済的損失とのトレードオフの関係にある。
政府の犯罪予告検知システム開発ニュースのほうは、その意味では報道などをみる限り、予告.in の真逆をいくアプローチが想定されている(ってそう決めたって話でもなく、官僚なり報道しているメディアの想像力がその範囲なのかもしれないが)。集合知ではなくかき集めて全部マシンで処理して判定、という、なんだか Google っぽいなという感じがしなくもないが、そんな話に見える。この場合、一連の動きは表に出てこないまま静かに進み、ある場合は実害なさそうとあえて放置され、ピンポイントにまずそうなものだけを迅速に人物特定して検挙などし、問題の書き込みは静かに削除依頼に出し、静かに消されていく、そして威力業務妨害の実害は極力避けられる、そんなフローが理想として想定されるんじゃないだろうか。こちらの場合、透明性は問題になるだろう。そして、すでに散々言われているように、とても高くつく。
予告.inと政府の想定と言われるもののどちらにしても、システムの存在によって軽微な愉快犯的な犯罪予告は減るだろうが、後で自分はどうなってもいい、というタイプの犯罪予告は、実行する気のあるタイプにせよ無いタイプにせよ、減らすことはできない(抑止効果がどの程度、という定量的な違いはありうるだろうけれども)。また、どちらのアプローチが社会的なコストが安いか、というのは、定量的な問題でもあるから、本格的に比較しないとなんともいえない。ただ、予告.inが作る世界と、官製犯罪予告検知システムが作る世界では、そのありようがずいぶんと異なる、ということは認識しておく必要がある(LessigのCODEの4規制力のうち、アーキテクチャと規範の違い)。
さらに、アプローチはこれだけなのだろうか、という議論もできるだろう。中間的なアプローチとして、例えば、予告.inのように候補情報を集めて集合知で判定するにもかかわらず、可視化しないアプローチも考えられる。各エントリは会員レビュアー10人(これは一例)がチェックしたらそれで終わり、といった感じにする。レビュアーのインセンティブが正義感だけで持たないかもしれないので、そこはポイントをあげることにする、といったことも考えられる。まじめにレビューしてもらうには、モデレーションが必要かもしれない。要は、Amazon Mechanical Turk的な世界。ポイントは、何もAmazon に限らなくても、はてなのポイントでも、モリタポでも、あるいは、多くの携帯ゲームサイトや携帯SNSのポイントシステムでもいい。携帯サイトのポイントは、その携帯サイト内の情報の処理にはすごく馴染むようにも思う。こうすると、高価なシステムは組まなくてもいいし、過剰な可視化も避けられるだろう。ポイントの原資は、政府が直接出さなくていい場合も多いだろうし、あるいは出しても現実にはたいした金額にならないんじゃなかろうか。
そして、現段階で政府が考えるべきことは、いきなり犯罪予告検知システムの仕様を書くことじゃなく、まずはいろんなアイデアを出してもらって、コンペでもするところからなんじゃないだろうか。他にもアプローチはいろいろありそうな気がするわけで。
ちょっと間があいてしまったが、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案(以下青少年ネット規制法案)が成立したので、時期をあんまり過ぎないうちに一言書いておこうかと。
まず、今回の法案成立について、型通りのコメントを述べるとすれば、MIAUの声明の通りになる。で、それはそれとして、個人的にもっとぶっちゃけた話。今回、関係者各位の努力によって今回ぐらいの水準で収まった。もちろん、こんな法律案が成立した、ということ自体に対して、不満はたくさんあるが、しかし、今回、「法案を何も成立させないこと」を勝ち負けの基準に置くとすると、そもそも4月のどこかの時点で、その負けは見えていた。与野党の議員が超党派でなんらかの形で成立させたいと思っている法案を押し止めるというのは、ものすごいパワーの要ることで、それは、私だとかMIAUだとか、あるいはネット業界だとか、だけがジタバタしてどうなるものでもない。
あとでもう一度言及するけれども、共謀罪法案なんてのが、ずーっと成立しないままになっているのは、伝統的な野党支持基盤組織が結束して反対し続けていることもあれば、与党内でも懸念がそれなりに大きいこと、そして、そもそもが全体として条約批准を目的とした立法で成り立ちから国内的な動機に乏しく、政治家として熱心に進めたい人が必ずしも多くない、ということもあるだろう。一時は簡単に成立しても不思議でない状況を乗り切って、参議院で与党が過半数を割って店晒し状態。与党は衆議院再議決をすることだって数字の上では出来るけれども、そこまで懸けて刑法・刑事訴訟法の改正案を通すという無茶をする状況にはない。
対して、青少年ネット規制法案のほうはといえば、政治家主導で進んだ話であり、与野党双方に懸念の声はあったけれども法案提出そのものを潰せるほどの情勢にはなく、各党支持基盤についても、伝統的に保守系のところがこういう法案にどちらかといえば賛成のところが多そうなのは当然として、左派系も、強い反対のところって目立って存在していた印象は無かった。というか、今回、いかにも左派ですね、という人の中で目立っていたのって(議員は別として)日隅弁護士ぐらいじゃないのかな(そして、日隅弁護士は、いかにも左派ですね、という以上にメディアの自由に主要な関心のある方で、そういうくくりであれば、法案に反対していた人は少なくないとも言える)。そもそも「青少年健全育成」的な枠になると国家統制的な動きに左派が甘くなるのか、それとも、単純に、ネットの問題が重要な位置にない人が多いのか、はよく分からないけれども。個人的には、その昔のこともあって、そもそも期待してなくて、ほとんど声かけなかったんだけど、マスメディアでもそれなりに報道されてたんだから、関心があれば動いたはずでしょうということで。ぐたぐだ書いているけれども、とにかく、懸念する方向での関心は、社会全体という単位で言えば、あまりにも薄かった。対して、立法を求める声は、見える形で出されていた。内閣府の、どうみても高市議員が大臣時代に作らせた誘導たっぷりの世論調査とか、京都市の半官半民の運動とか、ツッコミどころは多い内容であれ、規制派は目に見えるかたちを出してきていた。規制の問題点を綿密に訴えるとか、カウンター的な調査結果の公表とか、いろいろあったのは、法案の中身を弱めて実をとるという戦術に関係者多数が突き進む上では大成功だったとはいえるけれども、法案を葬るという意味においては、後手に回っていた。手遅れ。議員にしても、それなりに時間をかけて派手にブチ上げてきた手前、「実は法律は何も要りません」では通らない人が多かっただろう。メディア関係も、新聞協会や民法連が最後の最後になって反対声明を出したが、あのタイミングは、法案の成立に影響を与えないタイミングといってよく、出ないよりはマシだが、という状況。そもそも、主要紙やキー局の報道においてネット規制の問題よりはるかに多くネット規制を煽る論調が多かったなか、アリバイ的でもよく声明を出せたなというところで、廃止を求める民法連声明に至っては、よくぞ踏み込んだとさえ言っていいように思う。そういう中、高市私案とか自民党内閣部会案とかのヤバさを考えれば、よくここまで粘れたものだ、という感じで、最後には参考人質疑にまで呼ばれた楠さんには本当にお疲れ様というほかない。
さて、今回の法案の国会での提案・採決に至るまでの駆け引きの結果から今後の自主規制とかさらなる法改正とかにつながっていく要素っていくつもあって、それぞれまた大変そうなんだけれども、個人的に一番注目すべき点と思うものをここで紹介しておく。
(青少年有害情報の発信が行われた場合における特定サーバー管理者の努力義務)
第二十一条 特定サーバー管理者は、その管理する特定サーバーを利用して他人により青少年有害情報の発信が行われたことを知ったとき又は自ら青少年有害情報の発信を行おうとするときは、当該青少年有害情報について、インターネットを利用して青少年による閲覧ができないようにするための措置(以下「青少年閲覧防止措置」という。)をとるよう努めなければならない。
青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案
第四条 インターネットを利用して公衆の閲覧に供することが犯罪又は刑罰法令に触れる行為となる情報について、サーバー管理者がその情報の公衆による閲覧を防止する措置を講じた場合における当該サーバー管理者のその情報の発信者に対する損害の賠償の制限の在り方については、この法律の施行後速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案: 附則
二十一条の「青少年閲覧防止措置」が「有害情報」を広く対象とするものの努力義務に留まり、一方で、違法情報と判断したものの閲覧防止措置の責任制限が今後の検討として附則となり、先送りされた。このあたり、先送りになる前の段階で一度ふれたことがあるのだけれども、これ、まったく別の意味で、ものすごく難しい話なんだよね。違法情報の閲覧防止って結構な話じゃないか、と、単純に考えれば素直に肯定できそうなのだけれども、違法な情報といってもレベルがいろいろあって、どうでもいいものもあれば、警察としては面倒みきれないけれども閲覧防止しておいてほしい、というレベルのものもあれば、確実に捕まえたいので、むしろ下手なことしてくれるな、という状況もありうる。最後のって、要は、「とても悪い犯罪者」が、「閲覧防止措置」をきっかけに証拠隠滅して逃亡する、という問題。とりあえずの解はあって、「閲覧防止措置」の前に、ログとかの保全をさせましょう、という話がある。サイバー犯罪条約にもそういう条項があり、とりあえずISPなどにログやデータなど証拠になるものを保全してもらっておいて、後から記録を差し押さえましょう、というアプローチになる。ログ保全の段階は、とりあえずのもので警察に渡す段階じゃないから、容疑とか固まっていなくてよくて、後での差し押さえの段階できっちりした令状を出します、という話になっている。もっとも、これでログ保全を乱発されまくるとISPの負担が大変だしユーザーのプライバシーや通信の秘密の観点から問題だね、ということで、保全の日数には制限がつく。現行法にはこういう制度がないので、改正法案が出ている。そこでは、ログ保全は強制ではなく任意の要請という形になっていて、保全日数は90日となっている。そして、この法案の本体は犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案というやつで、実は共謀罪法案とセットで1本になっている。ということで、目下、成立の見込みはない。条約批准の承認自体は共謀罪部分にしろサイバー条約関係部分にしろすでに通っているのだけれども、立法措置という面で争いがある、という話になっていて、決着がついていない。政府案に対して与党側が野党に歩み寄るための修正案を出していて、対して民主党も修正案を出している。共謀罪の部分だけではなく、上記の保全の日数が与党修正案で60日、民主党修正案で30日になっている。保全と記録差し押さえの部分について、そのほかにも細かい文言の修正が修正案にはある。
一定水準の適正な法執行を確保した上での違法情報の閲覧制限措置っていうのは、要するに共謀罪と一緒に止まっているその部分が存在しないと本来はうまくまわらないはず。現状のインターネットホットラインセンターでの「警察に通報して暫く待ってストップかからなければISP通報」という運用も、実のところ結構微妙なもので、だからこそ警察からの受託事業になっている、という部分もあるはず。ピースが欠けたまま、むやみやたらと拡大をしたり、責任制限が先行して警察の関与しない自主措置が大きくなりすぎると、表面的には「安全」っぽいが、そもそも犯罪が警察の網にかからなくなっているだけ、という事態もありうる。といって、応急保全や記録差し押さえ部分をさっさと片付ける、という話にはならない。ここは基本的人権の観点からは慎重さが求められる。そして、個々の法律が矛盾をきたさないように、整合性のある制度設計を誰かがやる必要がある。もとより青少年特別委員会で扱うような枠を越えている話だったので、先送り自体は正解として、さて、どうするんでしょうね。
池田信夫さんは、ときにとても鋭いことを書くのだけれども、なぜか日本語が理解できていないのではないかというレベルで困ったことを書いていることがある。
率直にいって、これは自主規制の限界である。ISPでフィルタリングが始まれば、2ちゃんねるがその対象になることは確実だが、そうすると「うちは2ちゃんねるが見られます」というのを売り物にするISPが出てくるだろう。もちろん彼らは自主規制団体に入らないから、制裁もできない。
自主規制をどうワークさせるか - 池田信夫 blog
基本的な話だが、「選択の余地なく、あるサイトを見られなく」するような規制は、表現の自由や通信の秘密、ネットワーク中立性などの観点で重大な問題を孕む。そういうわけで、今回の青少年ネット規制法案でも、携帯電話のフィルタリングでも、対象は18歳未満であり、親の申し出で外せる、という総務大臣要請の形からは外れていない。ISPの義務についても、国会に提出されたものそれ自体は見ちゃいないが(いまだに衆議院サイトに議案が出てないでこのまま成立かね?)、その手前と報道の内容、楠さんのITMedia寄稿記事からすれば、ISPは「顧客の求めに応じて」フィルタリングソフトの提供とか、フィルタリングつきのプロキシーサーバーの利用サービスなどを提供すればいい(無料・標準である必要もない)のであって、すべてのWebの通信をフィルタリングするような自主規制は求めていないし、現実にそのようなことが自主規制として行われる、というわけでもないだろう。もちろん、ISPによっては、ぷららのように、URLフィルタリングサービスを実質的に標準サービスの一部として提供してデフォルトで有効としている場合もあるが、これはあくまでデフォルトに過ぎず契約者の家庭でオフにできる。そして、そもそもこれはぷららの他のISPに対する差異化要素であって、こういう世の中にみんななるという前提ではない。大手ISPではオプションでプロキシーによるサービスを提供しているところも多いが、中小ISPならフィルタリングソフト販売代理店を兼ねてダウンロード販売とか課金代行をやるとか、そんな対応になるのではないか。
また、別途、自民党が提案する児童ポルノ禁止法改正案で児童ポルノサイトのブロッキング(全利用者が解除できないフィルタリング)についての研究について盛り込まれると報道されているが、イギリスや北欧の例でもそれはISP自主規制の体裁で行われているのが大半だが、いずれにせよそれらは「児童ポルノ」というネット上の「違法情報」のそのまた一部の話であり、「有害情報」という話ではない。とりあえず、高市議員の心の中までは知らないが、彼女にしても「大人が2ちゃんねるを見られなくなるような規制」を今回の法案に関係して公に求めたことはないのであって、今回の「青少年」ネット規制法の枠組では、基本的には関係ない。
だいたい、今回は青少年健全育成とか、青少年の保護とか、そういう話での規制法の流れなのだから、大のおとな同士の誹謗中傷等(かどうかの事実は判断していない。片方はそういう認識だということ)に関しては、そもそも議論にあがっていない。プロバイダ責任制限法を使うなり、それで十分でなければ民事訴訟を起こすなり、粛々と対処するメカニズムは一応あり、それに欠陥があるという話であれば、それは「別に」やらなければならない。そして、プロバイダ責任制限法は「通告があった場合に業者が違法なファイルを削除すること」を義務づけるものではなく、民事的な権利侵害について、明確なケースだけを扱うものであって、明確でなければ訴訟を通じた解決しかありえず(明確かどうかの線引きに判断ミスがあったということであれば、それは被害者がプロバイダも民事訴訟で訴える対象とすることになる)、刑法的な違法情報の削除義務がどれだけのレベルの判断を必要とするかは、これまでは結構微妙で、 今回の立法で「法的義務の形式的根拠を得たことになる」と奥村弁護士は述べているが、現実問題としての線引きが変わるような話にも見えない。
自主規制機関は、EMAのような、おもに管理されたコミュニティサイトを携帯電話フィルタリングのブラックリストから外すことに主眼を置いた団体が2ちゃんねるを扱わないのは自明といっていいが、逆に「有害性」を判定するような自主規制機関が2ちゃんねるを対象とするかどうかは自明ではない。仮に3類型をベースとしたミニマムな有害性判断基準を作ったとして、それらに2ちゃんねるが該当するかといえば、「板」単位でも該当しないところが少なくないだろうし、スレッド単位なら平和なスレッドはいくらでもあるという話になる。PC向け需要を考えて、登録フィルタリング推進機関とすることを目的としてこれから組織と基準を作って実績を積んで登録したっていいわけで。2ちゃんねるやしたらば掲示板、ミルクカフェといった、匿名性の高いコミュニティサイトを細かくレイティングしてフィルタリング可能とすることはそれなりに技術上・運営上の課題がありそうだが、立法が後押しとなって市場が広がれば、需要を当て込んで始める事業者が出ても不思議はないだろう。
つい先日の5月19日、アメリカの児童ポルノ取り締まり法のひとつについて、最高裁で逆転合憲判決があった。 青少年ネット規制法案の動きがいろいろあったのでスルーしていたのだが、以前ブログでふれたこともあるのでフォローしておく。
United States v. Williamsという名前で知られてきた裁判で、報道についてはAP電とNew York Timesをとりあえず紹介。最高裁判決はネット上に出ている(HTMLで読めるコーネル大版、PDFの米国連邦最高裁公式サイト版)。
問題となっていたのは、panderingと言われる、児童ポルノの宣伝、誘引などを(児童ポルノ画像等の実在性にかかわらず)犯罪とする条項である米国連邦法典第18編第2252A条(a)(3)(B)。
(3)knowingly-
(B) advertises, promotes, presents, distributes, or solicits through the mails, or in interstate or foreign commerce by any means, including by computer, any material or purported material in a manner that reflects the belief, or that is intended to cause another to believe, that the material or purported material is, or contains—
(i) an obscene visual depiction of a minor engaging in sexually explicit conduct; or
US CODE: TITLE 18,2252A. Certain activities relating to material constituting or containing child pornography
(ii) a visual depiction of an actual minor engaging in sexually explicit conduct;
具体的な事件としては、児童ポルノ画像のやりとりをしていると思われたネットのチャットルームに潜入捜査官が入ってきて、探りを入れに接触してきたチャットルームのメンバーの一人と児童ポルノではない子どもの画像の交換を繰り返したのち、このメンバーが「こいつはポリだから本物だせないぞ。俺はだせるぞ(URL)」といった内容のメッセージをチャットルームに投げて正体をばらしたところで、提示されたURL先の画像が児童ポルノだったのでFBIは早速令状をとって家宅捜索を実施、児童ポルノ画像がたくさん出てきました…、といったもの。画像の単純所持とは別に捜査官とのやりとりの最後の部分が pandering として起訴されて2罪で有罪となったため、pandering部分だけ違憲訴訟が起こせることになったということのようだ。
判決の多数意見のロジックをざっくり追うと、こんな感じ。ざっくりと追っただけなので、正確なところは法律の専門家に聞いてね。まぁ、そのうち解説記事がどこかに出るかもしれないし。
まず、これはかなり限定している条項だぞ、と。「知って」とあたまについているし、"advertises, promotes, presents, distributes, or solicits" というのは、児童ポルノの具体的な授受(実際に行われる必要はないが)に関するものに限定して解釈すべきだし、"in a manner that reflects the belief" というのは、罪の対象となる人が主観的に「児童ポルノだと」と信じて宣伝等していなければならず、同時に、その様子が客観的にそう思って宣伝等しているように見えないといけない、とする。これと or の関係になっている "(in a manner) that is intended to cause another to believe" というのは、他人に信じさせようというとことだから、対象者の主観的要素のみで決まるとしている。けれども、証拠は普通をそれを客観的に裏付けるものが必要だね、と。
その上で、"sexually explicit conduct" の定義(2256条(2)(A))で、"actual or simulated-"とあたまについてるうちの "simulated" の意味について、これは、「実は行為をしていないのだがはっきりそう描かれているもの」ということだとしている(explicitがついているので、示唆する程度のものは入らない)。そして、わいせつなものは憲法の保護の外だし、わいせつよりも広い定義となる(2252A(3)(B)(ii)は実在の児童のことであってバーチャル児童ポルノや幼く見える大人は含まれないとする。こういう解釈のもと、広範だから憲法修正1条違反だとして弁護側などが出した具体例は基本的に該当しない、としている。「本物だと思い込んで宣伝していたけれども実はバーチャル児童ポルノだった」というケースは、麻薬の売人が麻薬と思ってそうでないものを宣伝しているような場合も違法なのだから、それと同様で違法として問題ないとしている(贋物と知って売り込みをかけているような場合は、そもそも詐欺行為だから保護に値しないともしている)。
もうひとつ、曖昧だから憲法修正4条に由来するデュ-プロセスに違反するのではないか、という論点も出ていた。前述の "in a manner" 云々、の部分についてだ。これについても、控訴審判決で提示されていた例は、それってそもそも普通有罪って判断されないだろ、と述べている。その上で、そもそもが曖昧さの問題ではなくて、「合理的疑いを越える証明」の問題であり、「下品な」といった定義そのものが曖昧なものとは根本的に異なるとして、控訴審の判断を覆している。
少数意見のほうは、あんまりちゃんと読んでいないけれども、やはり、実在児童ポルノではない、修正一条で保護されるものを宣伝等するのがひっかかる場合があるのはおかしいのではないか、ということのようだ。麻薬の広告等とは違うぞ、と述べているようだ。
むしろ政府の役割は、着実に違法行為を摘発することだ。
フィルタリングより肝なネット時代の自助教育 - 雑種路線でいこう
この問題は確実にあって、特定の違法行為がろくに摘発されず、自主規制のメカニズムからもこぼれ落ちていれば、おそらくはアンダーグラウンドの評判メカニズムが働き、弱い場所を確信的な違法事業の業者は徹底的に利用する。現状だと、アンダーグラウンドとまで行かず2ちゃんねるに出ていたりするが。
以前、12月下旬にホットラインセンターに通報した児童ポルノDVD販売サイトの情報が2月下旬に通報としては処理されて3月上旬にサイトの閉鎖に至ったという話を紹介したが、その後、このサイトはどうやら数日のうちにまったく同内容で復活していたようで、4月29日に再通報した。まだ再通報の処理はされていない。ドメイン名でググると、2ちゃんねるその他の掲示板で大量に宣伝的にURLが貼られていたことが確認でき(つまり、誰も知らないマイナーなサイト、という状態とは言えない)、また、サイト自体は、ごく最近、日本からの通報ではなくイギリスの Internet Watch Foundationからの通報で Google の検索結果からは除外されるようになった。
ドメイン登録情報のうち、サイトを特定しないよう一部を伏せ字にした情報を出すとこのようになっている。
Domain Name: *****.com Registrar: GMO INTERNET, INC. DBA ONAMAE.COM AND DISCOUNT-DOMAIN.COM Whois Server: whois.discount-domain.com Last Updated On: 2008-03-1* **:**:**.* Status: ACTIVE Registrant Name: Domain Management Representative Registrant Organization: paperboy and co. Registrant Email: privacy@whoisprivacyprotection.info
COMドメインだが、レジストラは国内で、直接の登録にはどうやらムームードメインサービスを使っているようだ。料金支払いがコンビニ決済や銀行振込やゆうちょ振替でできるため、クレジットカード支払いよりもはるかに匿名性が高いし、whois情報はサービス会社のものとすることができるので、この Registrant Email でググるとスパマーや詐欺的なサイトにも愛用されてきたようだ。
その上で、サーバーは別の国内の会社のホスティングサービスとなっている(これは公表しない)。最初の通報のときとは、異なる業者だ(これも国内)。最初のサーバーではたしかに take down したが、すぐに別のサーバーで同内容を再現してDNSも変更した、ということになる。
通報が法執行につながっていればこのようなことにはならないはずで、ホットラインセンターからの通報を受け取った法執行機関が強制捜査を行っていない、あるいはそれが不十分だったことは明らかだ。COMドメインのレジストリこそ海外だが、レジストラやドメイン取得代行業者は国内なのだから、基本的に国内に閉じた問題と言える。
ここで、それではレジストラやドメイン取得代行業者もホットラインセンターのスキームに入れればいいか、というと、そう簡単ではない。ムームードメインサービスのWHOIS関連の見解にあるように、ドメイン利用自体の停止はサーバー提供の停止に比べて法的にハードルが高い。フィッシングに関するJPRS堀田氏の講演でも、現状では課題があることが述べられているし、また、違法性と高さと緊急性の高さは必ずしも一致するものではないから、緊急性が高い場合に認められる措置が、違法性が高い全ての場合に認められるかどうかは自明ではない。といって、ドメインの場合、幅広い違法情報の発信について(情報に対する管理可能性のない)レジストラやドメイン取得代行業者に義務を課したり登録者に対する責任制限を認めたりする立法をするというのは問題が多いという話にもなるだろう。
そう考えると、やはり、これは警察・検察がきちんと摘発をする、ということが必要だろう。そうすることで、はじめて民間事業者が動ける部分もあるわけで。単にかけ声で終わらせるのではなくて実効的なものとするには、現状行われるべき法執行がなぜすすまないでいるのか、ということに焦点をあてて調査研究が行われて、それに基づいた政策立案が行われるべきだろう。
自民党「青少年による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」/民主党「子どもが安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」が来週にも一本化して表に出たら議論しないで通すっぽい報道が出ていて、かなり危機感を覚えている。追いかけきれていないけれども、変なものが出たらほんとに困る。
とりあえず、手元の自民党案要綱も微妙に更新されたけれども、これが最新かどうかは知らない。とりあえず、公布日施行とか言ってたのはやめたようで、「青少年閲覧防止措置」の政府からの要請も「違法情報について」という限定は入り、情報発信者に対するサーバー管理者の損害賠償責任の制限も同様の趣旨で限定はされた。しかし、ここからが問題で、「違法情報」と言っているのだけれども、これには、厳密な意味で公然陳列等が違法となる情報ばかりではなく、「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」が含まれている。
昨今の「殺人請負人が登場してしまう闇仕事サイト」といったものや自殺サイトといったものを念頭に、そういうものを制限しよう、という考えなのだろう。でも、「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」の発信は、それ自体は今のところ、違法じゃない。それを制限するのは表現の自由の制約で問題だ。
…と言ったところで、「闇サイト殺人」とか「硫化水素自殺の続発」とか、そういうのを防ぐのには表現の自由の制約も仕方ないのではないか、という意見は当然強くあるだろう。それに、現行法でも、売春広告や違法薬物売買の広告は違法だから、公共の福祉によって表現の自由はある程度制約できる、という人も多いだろう。
しかし、ここで踏みとどまって考えてほしいのだが、まず、ここで出てくるような「青少年閲覧防止措置」は、ターゲットを絞り込んだように見える文面ゆえに、実務的には、結局、当該情報の発信を停止させる措置として運用される可能性がより高まっているのではないか。私が見ている自民党案では、サーバー管理者の責任制限について「当該措置が青少年間覧防止措置として必要な限度において行われたものである場合」という限定があるけれども、社会的に一定の地位のあり、かつ、現状でアダルト系のためのアクセス制限のシステムをもっていないサーバー事業者にしてみれば、「違法情報」のために「青少年の閲覧を防止しつつ成人には閲覧ができるようにする措置」のためのシステムを組む動機は乏しい。措置が「必要な限度」かどうかは、サーバー管理者がどのようなシステムを持っているかどうかにも依存するはずだしね。
その上で「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」というのを考えてみるのだけれども、この案では、「犯罪」の内容について限定がない。殺人・傷害・誘拐、といったものを列挙してみると、なるほど仕方ないな、という雰囲気が漂ってくるのだけれども、犯罪って一番広くいえば、違反すると刑事罰を課せられる違法行為がみんな含まれてくる。政治的なビラのマンションのドアポストへの投函で住居侵入罪で有罪になって最高裁で確定した場合もあれば、高校の卒業式で君が代斉唱時に着席するよう式典中に呼びかけた元教諭が威力業務妨害罪で高裁でも有罪になった、というニュースがちょうど流れている。あるいは、日本では公務員のストは違法で、有罪判決もたくさんあって、最近は公務員スト自体かなり減ったがそれでもたまにある。で、行為が犯罪になるかどうかはそれはまた別の問題として、そういったジャンルにおける「直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」というのが、「違法情報」扱いを受けて表現の自由を制限される可能性を帯びるとなると、特に野党や野党支持者のみなさんにとってはそれはどういうことか、ということをよく考えてほしい。
直接刑罰の対象となるという話ではないが、「共謀罪」の議論と話は似てくる部分もあるのではないか。ここで、対象犯罪の列挙と個別検討なしに「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」の制限を広く認めてしまうというのはあまりに問題が大きい。そういう検討は、今の日程では不可能だから、どうしても「青少年間覧防止措置」というのをこの国会でやりたければ、ホットラインセンターで現在「違法情報」として処理しているような厳密な違法情報の限定列挙だけにするべきだ。可能ならまるごと先送りしてじっくりと検討するべきだけどね。
フィルタリング法案がここにきて進展をみせていて、民主党が骨子をサイト上で発表する一方、自民党は、サイト上にはないが報道はされている。自民党案は、困ったことにきっちりと公表されておらず、ニュアンスも報道によって違いがある。リンクをしたスポニチ報道は、通信社記事だと思うが自民案は民主案に比べて「国の関与が強まる」ことが明確となっている。すなわち、
といったあたり。日刊スポーツにも同内容あり。このあたり、朝日・読売・毎日といった三大紙は、なぜか弱めのニュアンスの報道。
というわけで、かなり新しい自民党案の要綱を見ているのだけれども、これはまずい。規制推進派がかなり巻き返した印象。
報道にある部分では、「有害情報の基準策定や有害サイトを判定する民間機関を政府が審査・登録する」というのが問題。ここの「民間機関」の権限が、フィルタリングソフトの適合認定を含んでいて、それが携帯電話ISPのフィルタリング提供義務やISPのフィルタリング提供努力義務、PCメーカーのフィルタリングソフト組み込み義務とリンクしている。一段間接的になっているけれども、政府がかなりのコントロールをできる内容になっている。「有害サイトを判定する」という部分にも問題があるのだけど、後述。
この法案は、さらに「青少年閲覧防止措置」というのを定めていて、サーバー管理者が「知ったとき」に措置する努力義務を、とりあえずは違法情報に対して課している。のだけれども、政府が「通報処理団体」(審査・登録される民間機関と重なる部分もあるけれども同一ではない模様)からの「申出」に応じてサーバー管理者に「要請」する場合、その対象情報がどのようなものであるかは限定されていないようだ。「申出」については「青少年の健全育成のために必要があると認めるとき」であれば、情報の種類は問うてないように見える。前述のように、政府が審査・登録した民間機関が有害サイト情報を収集してサイトに通知し、さらに政府要請の対象とすべく申出できるということで、サーバー管理者の努力義務とは別に、「青少年閲覧防止措置」は幅広いものだと想定されている。そして、サーバー管理者は、「青少年閲覧防止措置」について情報発信者からの損害賠償責任について免責をされるのだが、これが無限定の免責になっているようだ。情報発信者にとっては著しい不利益が発生する可能性がある。プロバイダ責任制限法第三条2項二号のように、情報発信者の同意を得る機会を設けるなどのデュープロセスを課すような内容になっていない。
そして、そもそも論的には、「青少年有害情報」というのが定義されている(これは報道とは異なる)のだが、民主党案にあるように「著しく〜」という限定をつけることなく、「性欲を興奮させ又は刺激する情報」や「残虐な内容の情報」というのが含まれている。「青少年有害情報」は、サーバー管理者の努力義務とはリンクしていないのだが、その他の部分には広く影響するものとなっている。程度を問わないということは、社会的に問題ないとされるような性教育教材も対象とされる可能性があるし、残虐な内容については戦争被害についての教材なども該当してしまう可能性があるだろう。そして、よくよく見れば、「その他青少年の健全な成長を阻害するおそれがある情報」というキャッチオールの文言まであり、「青少年有害情報」は、謙抑的な意味で定義されていないのではなく、なんでもありの規制をかけられる方向で曖昧な定義になっているように見える。
また、誤解甚だしいと思われるのは「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」の定義で、インターネット上の情報について「利用者の発達段階に応じた一定の基準に基づき選別した上で」とあるのだが、一般に流通しているフィルタリングソフトウェアの多くの前提は、事業者は、インターネット上の情報をある程度客観的な属性で分類した上で、利用者側の設定で情報の分類に基づいて閲覧許可・不許可を判定することで情報の閲覧を制限するプログラムを提供している、というものだ。これは、携帯電話フィルタリングのデータを提供しているネットスターからしてそうだ。つまり、「利用者の発達段階に応じた一定の基準に基づき選別」することは行われておらず、利用者側に委ねられているということ。推奨設定として利用者の発達段階に応じた閲覧許可・不許可の設定を提供している製品も多いけれども、それらは推奨値に過ぎない。また、現時点では一律の基準となっている携帯電話フィルタリングサービスや、その他のフィルタリングサービスで利用者側でのカスタマイズができず一律の基準や発達程度に応じた設定が提供されている場合もあるけれども、それらは技術上・サービス提供上の制約としてそのような形態になっているに過ぎず、「利用者の発達段階に応じた一定の基準に基づき選別」が行われているわけではない。つまり、法案の定める「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」には、多くのフィルタリングソフトは該当しないのだ。
フィルタリングソフトは、そもそもが一律な情報受信の法規制に対するオルタナティブとして、受信者側の設定での選択を重視するソリューションとして出てきたものだ(それの建前と本音の差とか理念と現実の乖離とか透明性の問題とかはとりあえず置いておく)。民主党案はそこを理解して「子ども用フィルタリングソフトウェア」を定義しているが、自民党案では「選択」の視点がない。
おまけ的には、民間機関と関係閣僚会議の設置以外の部分が公布日施行って、どうみてもいきなり回らない仕掛けなので即日で日本のネット産業死亡とかそういうことをしたいのかしらと素で疑ってしまうよ。
楠さんが指摘する自主規制機関のガバナンス問題というのは、実に困難かつ深刻な問題なんだよね。
仮に第三者機関としてSafety Onlineを策定しているインターネット協会を念頭に置いているとすると、窓口機関業務に関する警察庁との受発注関係など4月末の警察庁による「硫化水素」有害指定で顕在化したガバナンスの問題を整理する必要がある。
神は細部に宿る - 雑種路線でいこう
日本の場合、インターネット協会のその出自からして、法人化のタイミングで日本インターネット協会と電子ネットワーク協議会の合併があったが、それ自体が主務官庁の強力な要請、というか財団法人としての認可の条件だったという話があり、自主規制関係の部門はほとんど電子ネットワーク協議会から取り込まれた経緯がある。
国分明男副理事長が電子ネットワーク協議会時代からその部分は一貫して統括しているけれども、彼の公的な言動からは、インターネット協会の取り組みが業界団体としての企業利益や、あるいは実際にネットを使っているネットユーザーの利益を反映する、という面は、率直にいって希薄で、ネット規制の積極推進派的なものが目立っている(もっとも、さすがに国会での参考人質疑となると法規制に慎重な態度とはなっているが)。それが、彼個人の考えなのか、そのぐらいのポジションをとらないと主務官庁からのプレッシャーに対して組織を守っていけないのかは定かではない。私が知っているインターネット協会関係者の話からすると、インターネット協会の自主規制事業(レイティング事業やインターネットホットラインセンターなど)は、主務官庁や警察庁の意向を背景として、会員企業の声を反映することなくやりたい放題と なってきた趣きがあり、携帯フィルタリング原則化騒動のあとのSafetyOnline4検討開始にあたっては、レイティング/フィルタリング連絡協議会からの宮本潤子氏(ECPAT/ストップ子ども買春の会)のパージといった、ある程度まともなガバナンスが働いた話も聞こえたけれども、NHKニュースにこの件で登場した国分氏の発言は、受信者側の自主的な選択に資する、というのとはかなり異なる方向性を向いたものといわざるを得ず、困ったものだと思った。
世界的には、イギリスの違法コンテンツ通報機関として Internet Watch Foundationが有名で、ここが児童ポルノブロッキングのURLリスト作成などもしているが、2006年末のThe Register記事によれば、イギリスでも政府の規制強化の圧力のもとガバナンス構造の変質があり、組織の透明性や説明責任は大きな問題となっているようだ。IWFは設立当初はネット業界関係者のコミットがきちんとあったのだが、実質的な規制能力の高まりと共に、ネット業界からのチェックは入れにくい形に変質し、だからといって代替できるチェックの仕組みが育っているわけでもない、という状況のようだ(なお、The Register誌のサイトは、IWFやイギリスの児童ポルノブロッキングについて良質な記事が大量にあるようなので、関心のある人にはググって一通り読むことをおすすめする)。
検索していて参議院法務委員会の5月8日の議事録にいきあたって、以前ちょっとふれた松浦大悟議員がフィルタリングとLGBT差別の問題について質問していて、最終的に鳩山法相が答弁しているのだけど、結構まともな答弁になっていたので以下に紹介。まずは松浦議員の質問からだけど、文字になってると結構長いので途中を端折った。全文は議事録をみてほしい。基本的に、私が以前問題にしたの(のらさんのところに転載されたmixiのコミュでの話のほうが分かりやすいかな)と問題意識は同じ。
○松浦大悟君 何が言いたいかといいますと、実は現在、携帯電話会社各社は、子供に対して違法、有害なサイトから子供を守るためとしてフィルタリングサービスの提供を行っています。……
このように、現在、急速に未成年者の携帯電話へのフィルタリングの適用が進んでいるのですが、実はここで一つ指摘しておきたいことは、現在のフィルタリングの一部が性同一性障害者や同性愛者といったセクシュアルマイノリティーの人権を侵害しているということなんです。
どういうことかといいますと、携帯電話会社四社のうち大手を含め二社では、フィルタリングで排除するカテゴリーにライフスタイルというのを設けているんです。このライフスタイルというのがどういうものかといいますと、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダー、いわゆる性同一性障害などの生活スタイルに関する各種情報の提供ということになっているんですね。
……
民間企業であるとはいえ、今や携帯電話会社はかなり公共性の強い事業であり、社会的影響の大きさからいってかなり問題のあるやり方ではないかというふうに思うのですが、法務省としてこうした企業に対し指導すべきだと思いますが、その辺りのお考えをお聞かせください。
これに対して、政府参考人の法務省人権擁護局長は、「具体的な事案を見てみないと」分からない、と逃げる答弁を続けていたのだけれども、これに対して鳩山法相は次のように答弁した(これもやや長いので若干端折った)。
○国務大臣(鳩山邦夫君) ……
そうしますと、同性愛の方や性同一云々の方の人権というのも、それは立派に守っていかなければならない。松浦さんが先ほどからおっしゃっていることの論旨は、私は決して間違っていないと思います。ただ問題は、そのフィルタリングして有害情報を排除したいというのは国民全体の願いだろうと思います。むしろ、だから性同一障害とか同性愛というのはおかしいんだ、おかしいんだというめちゃくちゃな書き込みがあれば、そういうページこそ本当は除外をしたいということですから、あくまでも中身の問題ということになるわけでしょうが。
今後フィルタリングの問題が本格化してくる。現在総務省で、今年の秋までにはインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会が結論を出そうとしている。その結論を受けて携帯電話やインターネットの会社に対してどういうフィルタリングを求めていくかということになっていくんだろうと、こう思います。ただ、そういう中で、性同一の問題あるいは同性愛の方々の問題を、これは明示的にフィルタリングするようなことがあれば、これはあってはいけないことでございますから、人権擁護の観点で我々は物を言わなければならないだろうと。それは、人権局長はなかなか苦しい答弁をしておりますけど、私はその辺はある程度は割り切ってもいいのではないかと、こう思っております。
ただ、内容が問題ですからね、本当は。内容は一つずつ本当は大問題なんだけど、一つずつフィルタリングするということはこれは絶対不可能ですから。そう考えた場合に、一つの概念として性同一の方の情報をフィルターに掛ける、あるいは同性愛の方々のことをフィルターに掛けるということは基本的にはあってはならないことと思っています。
明確に、「有害サイト規制」としてのフィルタリングにおいて、LGBTを対象としたフィルタリングを「あってはならないこと」と答弁している。国会質問の内容は基本的に事前通告されていることを考えると、どこまでを官僚が答弁をし、どこからが政治家として大臣が答弁するかは事前に考えられていたとも思われ、明確な答弁が鳩山法相から出た、というのは政府の明確な態度だと言えるはずで、これは実にいい仕事だなぁ、と率直に思った(踏み込んだ内容だから大臣から述べるべき、ということだったのだろうと思う)。
高市早苗議員がここにきて「青少年をインターネット上の有害情報から守る為の法律案骨子について」とか「インターネット関係業者による法案反対記者会見への回答」とか、自分のサイトに上げる事態になっていて、必死になっています。で、まだこの線が完全には死んでいないという困った事態らしいです。
この骨子、自分で載せてるんだから過去のものと違って間違いなく最新版でしょう。もうほんとにこの線の息の根は誰か止めてほしいなぁ。ただ、本人が何を維持したいのかは、分かりやすくはなった。
「青少年有害情報等の定義」から。青少年条例と一緒だろ、と高市議員はおっしゃるわけなんだけど、「著しく」というのが情報内容の程度にかかっているのか、「影響」にかかっているのかで、全然違う話になる、というのは、以前書いた。さらに5月1日のMIAUシンポで話した内容(資料はここに。MIAUのサイトでの公開も他の発表者資料とあわせて追ってあるはず)をふまえていうと、これにCOPA違憲訴訟再審の地裁違憲判決のロジックを使って突っ込むことができるように思う。「十八歳に満たない」青少年には、17歳も、12歳も含まれる。もちろん、乳幼児も含まれる。高市法案の「青少年有害情報」の定義では、個々の表現の程度は問われていない。青少年に対し「著しい」影響があるとするとき、その「青少年」は総体として問われているので、16、7歳程度にとって「著しい」影響があるとまではいえない内容に対しても、「著しい」影響があるといえてしまう場合があるだろう。より細かくいえば、そういう判断をすることを政令で定める基準として設けることを排除しない内容になっている。そして、とくに「性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼすもの」という表現は客観的なものではなく、広範に18歳未満の者の情報へのアクセス権を阻害する可能性がある。「その他の性欲を興奮させ又は刺激する内容の情報」についても程度を問わないということになれば、性教育や避妊に関する情報を広く規制対象とすることすら可能だろう(「青少年インターネット環境整備審議会」の意見聴取で一定の配慮をしているつもりなのだろうけれども、そういう問題ではない)。
「ウェブサイト上の青少年有害情報が青少年に閲覧されないようにするための措置」は、ISPの責任制限は入ったが、ISPに罰則つきで義務を課している点は相変わらず。携帯電話フィルタリングについて、親が外すオプションを許さない点も変わらず。
「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」について「青少年の発達段階及び利用者の選択に応じ、きめ細かく設定できる」ことを求めているのは、法案の定義する「青少年有害情報」にまで至らないものを対象としていて、「青少年有害情報」はカスタマイズによらず「閲覧が制限されないものをできるだけ少なくする」ことを求めている。
高市議員は、「保護者の子どもの教育に関する決定権」について「配慮」しているとしつつ、しかし、制限することを肯定している。表現の自由に対する制約の面も現状認められている程度だとしているけれども、すでにみたように同じ程度でもない(カテゴリも増えているし)。「削除義務」ではない、とするけれども、「フィルタリングソフトへの連動措置」でさえも言論表現一般に対して求めるのは表現の自由への大きな制約だろう(風営適正化法を改正して、すでに規制対象の商業的アダルトサイト(映像送信型性風俗特殊営業)に関してサイト入り口を含めた「フィルタリングソフトへの連動措置」を求める程度であれば、出会い系サイト規制法の改正案がすんなりと全会一致で衆議院を通過しているように、おそらく大きな抵抗はないだろうから、そうじゃなくて広汎な規制をしたいんですよねぇ…)。
児童ポルノ禁止法の単純所持処罰の改正の動きで、与党PTから「性的好奇心を満たす目的」に処罰するという案が出ているという報道について、奥村弁護士が「ほんとにできれば、性欲刺激要件とダブルので、限定にならないような気がします」と述べている。実際問題、全体からみればごく一部であろうとはいえ、成人ポルノと児童ポルノを確たる区別なく配布しているネット上のサイトはそれなりにあり、要件を「性的好奇心を満たす目的」としたところで、成人ポルノを目的としてアクセスして児童ポルノを所持してしまった場合、処罰される恐れがあるように思う。
最近、アイルランドで興味深い事例があった。 アイルランドのウェストミース州アスローンの地元紙 Athlone Advertiser によると、190枚の静止画と7つの動画で児童ポルノ所持罪に問われていた男性が無罪となった。この男性、実は「巨乳が好き」ということで、検索して出てきた有料サイトに登録して画像を自動的にダウンロードしてハードディスクに溜め込んだりCD-ROMに複製したりしていたところ、その中に児童ポルノが混ざっていて罪に問われた、ということのようだ。そして、「アジア系の(女子高生に見える)制服姿の女性」の画像について、しばしば大人が演じているから、そのような姿だからといって児童ポルノだと判断できるわけではない、と主張した。また、大量の画像について、そもそも中身を確認しないで複製することが少なくなかったとしている。こうした主張が通り、また、動画のほうは少なくとも1つがアイルランドの国内検閲制度を通過した映画からのものだ、ということが分かり、無罪となった(ただし、この訴追を通じて男性が職場である大学のネット環境をポルノ入手のために濫用していたことも明るみになってしまい、辞職に追い込まれている)。
楠さんが簡単にふれている英米の場合のような過酷・過剰な制裁を伴う場合もあれば、この例のように、非常に慎重な「疑わしきは被告人の利益に」を地で行く判断を陪審が下す環境にある国もあり、その程度は様々だと言える。日本での単純所持罪も関しても、その気がない人を罰するような定義が成されてはならないと思う。
小倉さんが
高市私案が通ったとして,どうやったら,統一協会的な純潔概念を私や楠さんに押しつけることができるとでもいうのですか?国会承認人事で,特定の宗教勢力から過半数の委員を選任することが実際にあり得るとお考えなのでしょうか。
それぞれができることをやる
と言っているのだけれども、小倉さんが否定する懸念は「ありえない」とするほどには小さくない。
「統一協会的な純潔概念」といってしまうとそれは狭すぎることになるが、もう少しラフに純潔概念の押し付けということでいえば、日本会議に代表される日本の保守・右翼勢力の影響力も大きい。高市議員自体、そうした勢力とのつながりは知られているし、そういった勢力による「ジャンダーフリーバッシング」が国政にも影響を与えて男女共同参画に関する政策を歪める努力をしていてそれがある程度は成功している。青少年への情報伝達の規制といえば、例えば2002年の厚生労働省『思春期のためのラブ&ボディBook』絶版と在庫回収は、まさに国会や地方議会を巻き込んだバッシングの結果であって、そのようなバッシングがノイジーマイノリティーによるものであれば結果は違ったはずで、そう考えると国会同意人事なら問題ないと言えるようなものではないと考えている。高市案では、対象情報は性交や性器の描写に限定されず「性欲を興奮させ又は刺激する」なら文章でも該当する(青少年条例でよくある「性的感情を著しく刺激する」よりも敷居が低い可能性がある)し、「性に関する価値観の形成」への「著しい悪影響」を問題にしているのだから、性教育コンテンツはむしろターゲットとされやすいし、保守系の方々のお気に召さない男女の固定的な性役割に反するような内容や、同性愛肯定的な内容もターゲットとされやすいのではないか。民間自主規制団体ではそういうバイアスがあるかというとそうでもないかもしれないが、内閣府のもとで人選する国会同意人事という文脈では、やはり政権の影響を受けやすいと思う。多少偏った人事だったところで、与党はそのまま受け入れるに決まっているから、現状のような参議院で野党が多数という状況が続かなければ、偏った人事にストップがかかる要素はない。小倉さんは保守勢力の「過激な性教育」バッシングを甘くみているのではないか。
アメリカでも、「青少年に有害な情報」の規制推進のコアにいる人達は、プラクティカルな意味での子どもの安全を守りたい人達というよりは、「家族の価値」を高く掲げる宗教右翼なんだよね。
bewaadさんの、ある意味無意味なMIAU批判が続いているのだけれども、あえて反論。
そもそも、「検閲」という言葉を、厳密に憲法における「検閲」という語の解釈についての最高裁判例に沿って使わないといけない、と誰が決めたのだろうね。
辞書で「検閲」をひけば、第一の意味としては「しらべあらためること」ぐらいの内容が普通は載っている。そして、歴史的にみれば、検閲という語は、圧倒的に軍隊用語として用いられてきた。近代軍において、兵器や練兵が要求水準を満たしているかどうか検査すること、あるいは軍人個人を試験すること、そういった用法が多い。 自衛隊において現在も用いられている用法だ。「日本法令索引〔明治前期編〕」で「検閲」というキーワードでの検索結果でのそのほとんどは軍事用語。最初のものが「検閲使職務条例 明治8年6月13日 太政官第100号達」で、その後ほとんどが軍隊における上記の意味での検閲。それ以外のものは「〔留萌支庁被廃ニ付宗谷出張所ノ文書等留萌出張所ノ検閲ヲ経ル義〕 明治8年6月20日 開拓使本庁達」「法律規則等ヲ外国語ニ翻訳発布ノ前外務省翻訳局ノ検閲ヲ経セシム 明治18年8月17日 太政官第45号達」であって、両方とも行政内の文書について「しらべあらためる」話。明治19年2月公文式公布以降を「日本法令索引」で検索した場合も、出てくるのは圧倒的に軍隊関連となる。ここまでくると、民間における表現の事前抑制としての検閲を法令名にもつものも入ってくるが、同時に貿易に関する検査なども検閲と呼ばれていて、また、郵便物や電話などの、今日的には信書の秘密や通信の秘密に関わって禁止されるような内容規制についても、検閲と呼ばれている。 なお、Wikipediaの日本における検閲の沿革にある代表的な諸法令では、必ずしも検閲の語は使っていないようだ。ちなみに、中国語で検閲といえば、もっぱら軍隊の話であって、censorshipの訳語は「検査」「審査」(のそれぞれ簡体字)であって、検閲ではない。
また、表現の事前抑制としての検閲を昔はどう呼んでいたかというと、江戸時代の浮世絵等の出版物については寛政の改革で株仲間における民間事前審査の強制があり、それが天保の改革では株仲間が解散ということで名主による直接規制となり、その後またもとに戻っているが、これらは「改(あらため)」と呼ばれ、検閲済証明としての印が「改印」「極印」「名主印」などと時期に応じて呼ばれてきたもので、「検閲」という名称の制度ではなかった。そして、「改」というと、日本において発行される出版物の事前チェックに限定されず、長崎の出島からの蘭学書の国内持ち込み時の検査(キリスト教禁制等のため)や、関所での検査も「改」であり、「江戸時代の検閲制度」の研究者は、なにも浮世絵等の改に限定して検閲と述べているわけではなく、普通に出島の検査や関所の検査も検閲に入れて扱っている。
私は、MIAUはユーザー利益をうったえる団体であって、法解釈をたれるための団体ではないのだから、プレスリリース程度の粒度のさいに、厳密に憲法における検閲という語の解釈についての最高裁判例に沿った用法で検閲という語を用いる必要はなく、censorshipの訳語として用いられる程度の幅で検閲という語を用いて問題ないと思うので、当初の声明にとくに問題を感じていない。だいたい、プレスリリースのどこにも「憲法」の文字はない。「法解釈的に誤解を招く、厳密さを欠く表現」と言われたらそれはそうだが、間違っているという批判を受け入れる必要があるとも思わない。個人で文章を書くならそういう場合は「(広義の)検閲」とかやる場合が多いけどね。
また、えのさんと議論になっている中身のほうだけれども、青少年条例の図書自販機規制をめぐる攻防は、最高裁判例のころとは全く違う状況が生まれていて、ネット規制の文脈で取り上げるのは、いろいろと微妙なものがあるという気がする。最高裁判例のもととなった事件のころは、自販機と言えば金を持っていれば誰でも購入できたものなのだが、タバコの自動販売機のtaspo導入でもわかるように年齢識別/認証装置つきの自販機というのは開発されており、タバコよりも図書等のほうがはるかに先行して導入され、それでまた攻防がある。過去の事例では「免許証読み取り機能はあるが購入者本人との対応が認証されていない」とか「遠隔監視装置(監視カメラで人間が青少年でないことを確認する)の画像が不鮮明」であるとか、運用が適切でないとか、そういった理由で年齢識別/認証装置や遠隔監視装置つきの自販機での有害図書販売を摘発して有罪が維持された下級審判例がある。しかし、さらなる技術の向上を背景にむしろこうした装置を条例上位置付けて義務化する自治体もあり(例えば東京都)、その一方で、まさに「青少年向けの規制の形式をとりつつ広範に流通ルートからの排除を試み青少年以外の者に対する販売すら」大きく制限する、萎縮させる意図を含んで、いかなる水準の年齢識別/認証装置つきの自販機であろうとも、有害図書の収納を禁じ、あるいは図書自販機の設置自体を禁止するという方向に動く自治体もある、というのが現状のようだ。そして、それに挑む事業者も存在する。このあたり、自動販売機と地域経済というブログがとても詳しい(開設者は、書斎研究家ではなくて、県レベルの条例がない長野県でフィールドワークをされている方)。
ところで、ここまで書いて気がついたんだけど、bewaadさんが「広範な代替的コミュニケーションチャネルが開かれていること」が「表現の自由の制約が許される一要件」だとされているロジック、あまりに酷いんじゃないかと思うんだ。だって、引用されているアメリカの最高裁判例の引用部分だけでも、それは「内容中立規制」の場合だってことは明らかなんだもの。その一部分だけ取り出して「規制ok!」と強調するのはどうかと思うよ。さらにいえば、引用されている判決は、裁判所の建物と敷地内の内容中立規制は合理的理由もあるし ok だが、そのまわりの歩道は、他の場所の歩道と区別がつかない "public forum" だし、そこに問題の内容中立規制を拡大解釈して適用してビラ配りとかピケを張ったのとかを検挙したのは違憲だよ、という判決だったりするわけで。
児童ポルノ単純所持がらみのFBIおとり捜査が日本在住者に与える影響の件だけれども、個人的にはこれはそれほど心配するほどのことではないと思っている。逆に、心配しなければいけないレベルの法改正が行われるとすれば、それは現在の単純所持処罰の検討でされている議論をはるかに越えた、広範な行為を処罰対象とする議論として、より大きな問題としなければならないと思う。
どういうことかというと、そもそも最近話題になった「おとり捜査」では、えのさんが書いているような「サムネイル画像」のもとになる画像がFBIから提供されたわけではない。児童ポルノは被害児童がいる犯罪である以上、麻薬と違っておとり捜査でも現物を用いることは許されない(直ちに検挙できなければ、さらなる画像の拡散を招くことが確実)。
事実関係をGIGAZINE記事(元ネタはCNETのDeclan McCullagh記事)でみれば分かるが、この件は、児童ポルノが存在しないサイトをFBIが用意し、そのサイトに児童ポルノがあるよという偽記事をリンク込みであちこちにばらまいて誘導した、偽リンクによるおとり捜査となっている。アメリカの連邦法で具体的にどのようなことになっているかというと
(b) (1) Whoever violates, or attempts or conspires to violate, paragraph (1), (2), (3), (4), or (6) of subsection (a) shall be fined under this title and imprisoned not less than 5 years and not more than 20 years, but,...
US CODE: Title 18,2252A. Certain activities relating to material constituting or containing child pornography
という具合に、明示的に未遂や共謀を含めた形で処罰対象としている。ここでは(州間通信における)受信の「未遂」(attempt)を容疑として強制捜査の端緒としたことになる(2259A(b)(2)が一定条件での単純所持(未遂など同様に含む)の罰則だが、これは問題のおとり捜査での家宅捜索令状請求の根拠とはならない)。
仮に当該おとり捜査のIPアドレスを警察庁が保持していたとして、そのアクセスでは児童ポルノの取得は行われていないのだから、それ自体が単純所持の原因とはなりえない。また、仮に児童買春・児童ポルノ禁止法の改正において単純所持処罰に加えて未遂罪をも入れたとして、それで処罰することは法の不遡及ゆえに許されない。万一、当該のおとり捜査のデータで強制捜査が行われたら、それ自体が違法だと思う。だから、現時点ではあまり心配しても意味がないのかなというところだ。ただし、おとり捜査のリンクをばらまいた場所が常習的な児童ポルノ交換用のフォーラムなどに限定されていたら、上記の理由付けは通らないかもしれない。正確なところは刑法や刑事訴訟法の専門家や弁護士に尋ねるべきかな。
あと、ひっかかったっぽい人が現状で何も心配しなくていいかというとそういうことはなくて、日本とアメリカの間では日米刑事共助条約が結ばれていてすでに批准されており、ここでは「双罰性」が緩和されている。アメリカで犯罪であれば日本で犯罪でなくてもアメリカからの要請で任意捜査まではできることになっている。捜査関係事項照会書での個人情報開示は警察にとっては任意捜査だから、ISPがそれで開示すれば、アメリカに出かけて入国したら逮捕、という展開が待っている可能性が、現状でもありえないわけではない。
はてなの中の人に確認をとったわけじゃないが、「モバイル版はてなダイアリーのゲストコメント制限について」という発表とその3日後の「モバイル版はてなダイアリーでのゲストコメント制限を実装いたしました」という発表は、直接には、携帯フィルタリングというよりは、昨年の7月17日からiモードの公式サイトになっているからだと思うよ。
多くの他の国内市場向けのブログサービスは、同等の制限をしているかというとしていない。それらのサイトも、一般のサイトとしての携帯電話対応をしているものは多いし、未成年携帯フィルタリングの影響を受けていないはずがないけれども、今回のはてなの動きに沿う話がとくに出てきているともいえない。
その一方、iモード公式サイトとしての「ポケットはてな」は、NTTドコモのiMenuからたどった「メニューリスト」の中では「コミュニケーション/SNS」というカテゴリに分類されていて、そこで一覧されているサイトをみると、網羅的に確認したわけではないけれども、会員登録無しに書き込みやコメントが出来るサイトは存在していないように見える。NTTドコモのサイトのiモードメニュー掲載基準というページには、「iモードユーザーが安心して利用できるサービスであること」という項目の細目として
コンテンツがコミュニティの要素を含む場合は、以下の規定を充足していること
- チャット・掲示板等、コンテンツのサービス利用者間でのコミュニティの形成を目的とするサービスについては、個人のプライバシーの保護に特に配慮し、他のメンバーに対する中傷を避け、トラブルが発生しないよう、適切に運営すること
とあり、具体例としては「電話番号、住所等」をプライバシー侵害して晒すような問題をシステムとして防止するというような話が載っているのだけれども、それに限定されるわけではなく、どういう水準の管理・運営が必要かは、NTTドコモの解釈や指示がコンテンツプロバイダに対してあるのだろう。これは、今回のはてなの発表の
モバイル版はてなダイアリーはこれまでも安心してお使いいただけるサービスとして提供して参りましたが、今後も低年齢層のユーザー様でもより安心してお使いいただけるサービスを目指し
という表現と符合する。はてなの収益源として、有料サービスの利用料よりは広告収入のほうがはるかに大きいというのは、よく言われている話だし、その状況で「iモード公式サイト」であり続けることを諦めて自由を取る、というのは、ページビューの実利の上でも、イメージの上でも、とれる選択ではなかったのではないかと推測する。そう思うと、この急すぎるとも言える動きにも納得がいく。ただ、この推測が正しいとして、今回はてなが発表している内容は説明不足が過ぎるというのは状況からして明らかで、きちんとした説明があるべきだろうね。NTTドコモとの契約上、難しいのかもしれないけれども。
小倉さんは未成年者の判断力が一般に成人のそれに劣ることは議論の前提だとして、ネットの「有害」法規制に反対する人々を批判しているわけだけれども、具体的に「MIAUの皆さん」と名指し対象に入っているので言っておく。
MIAUとしても個人としても、未成年の判断力が成人に劣るとされていることそれ自体は否定していない。しかし、そもそも、未成年者が保護されるのは、直接に「判断力が劣っているから」ではない。実体的な判断力がどの程度あって、どの程度ないか、というのは、そもそも年齢できれいに切れるようなものではなく、人の発達程度というのは個人差が大きいし、判断力の指標そのものも設定困難だというのが事実。その上で、法的な制度では、特別な場合を除けば、個別的な線引きを公平に行う手立てもないから、未成年者とか、児童とか、段階的にいくつかの年齢で線を引いて、能力が劣っているとみなしているだけ。そして、刑事責任のような代行しえないような責任を除けば、基本的に親権者が、足りない部分を補う(という言い方が悪ければ、例えば、法定代理人が許した範囲内で法律行為ができる、とでも言えばいいのでしょう。正確な言い方は、弁護士の小倉さんのほうがよほど詳しいはず)。
保護者が子どもを監督し、その一環としてフィルタリングを活用する、といったこと自体は、MIAUとしても、私個人としても、否定はしていない。ただ、それを実際どうするかは、家庭内の私的自治の問題だ。長所と短所を比べて、使うか使わないか、使うとしてどの程度のものにするか、あるいは携帯電話のネット機能をそもそも使わせないか、それは保護者が判断すればいいのであって、国家が判断することではない。青少年条例の図書規制の画一的な規制を容認するとしたら(私はその「程度」については必ずしも賛成ではない。もっと緩くていいと思う)、それは、未成年者とて、保護者の与える小遣い程度の金銭は自由に使えて(民法第五条第三項)、その程度の金額の範囲での図書等の購入のコントロールが保護者には出来ないから、だと、個人的には考える。そういう主張が法学的に過去なされたかどうかは知らないが、情報技術が個別的なコントロールを可能にしている以上、一律規制は個別的なコントロールが出来ない従来メディアに対するものであって、個別コントロールが可能なメディアではそれを前提に考えるべきだと思うのだ。少なくとも、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」は、その意味では、いかに個別的な判断をサポートするシステムを作り上げるかという真っ当な落とし所を探っていると思う。
しかし、現時点のネット規制法案のトーンは、保護者の自律的判断を一定部分について否定し、国家の判断基準を押し付けるものになっている。「青少年健全育成」と「児童の保護」では対象範囲が異なり、前者が後者よりはるかに幅広いものとなりうることも問題で、小倉さんは後者を理由に前者を押し付けるのを是としている。児童の保護という観点では、私自身、「悪い大人を取り締まる」道具を増やす方向で一部でかなり顰蹙を買っているらしいぐらい厳しい規制を提案してみているし、ネットに関する統合的な政策パッケージは(MIAUではないが)楠さんが取りまとめている(私の提案が統合的でないのは、彼がいろいろやっていることを前提として深堀りしてみたため。また、彼は私があえて厳しめに書いた部分までは採り入れていない)。いわゆる高市法案は、「青少年健全育成」をテコにして成人の情報アクセスにまで障壁を設ける方向になっていて、CDAの違憲無効部分ほど迂闊な書き方をしていないし、おそらくCOPAの違憲判決を、さらには、SafeSurfが提案しただけで終わったOnline Cooperative Publishing Actあたりも研究して書かれたもので、技術的には違憲判断を迂回しまくる方向で努力しているが、だからといって効果としてCDA路線やそれ以上のところを狙っているとしかとれないものを、趣旨ごもっともと賛同するわけには到底いかない。
で、小倉さんが私や楠さんの対案について現時点でスルーしてるのは、いったいなんでだろうなぁ。
「有害コンテンツ規制」の法案を押し止めるためには、楠さんが書いている通り、実効的な対案は確かに必要ではあるのだ。
現状、違法コンテンツについての法執行が明らかに徹底されていない状況というのがあり、さらにいえば、ネット上からの排除についても、優先順位もつけずに処理が溢れているというのが現状。2月に行われたインターネット・ホットラインセンターの運用ガイドライン改定案への意見募集の結果が『「ホットライン運用ガイドライン改訂案」に関する意見募集の結果及びホットライン運用ガイドラインの改訂について』として3月末に出ているのだが、提出された意見に対するホットライン運用ガイドライン検討協議会のコメントとして、「児童ポルノを優先処理したりはしません」というのがあって、要は全ての違法情報は平等に処理しますよ、ということである。ひとくちで「違法情報」といっても、その性質はさまざまであり、緊急性・重要性の高いものもあれば低いものもあり、正直どうでもいいものもあるといった状況にある。わいせつ画像の基準で「モザイクを容易に外せる」というのがあり、そりゃ判決はそうだが、モザイクが容易に外せるかどうかのチェックなんかに時間かけている場合なのか、というのが普通に生じる疑問ではるのだが、その基準は堅持するという。通報実績もほとんどないそうだが。そして、通報がオーバーフローしていても、ISP通報後の対処について実効性の乏しい「公序良俗に反する情報」の処理対象はむしろ拡大しているし、対象外情報についての分類作業、例えばどうやら今回の児童ポルノ禁止法改正では外れることとなった「まんが子どもポルノ」の分類なども、このままではやめないのだろう。そんな暇どこにあるのという気がするのだが。
今回、児童ポルノ禁止法改正で単純所持規制の方向が検討されていて、どこまでの規制するかという議論はあるにせよ、改正を完全に見送るのでもなければ、児童ポルノの大規模な収集行為が規制の範囲に入るのは間違いないだろう。そうすると、インターネット・ホットラインセンターは、現状のような民間法人の警察庁の受託事業でよいのだろうか、という問題が生じてくる。罪に問われるかといえば、ホットラインセンターの業務は刑法35条の正当業務だということになるだろうが、そのままでよいかというと疑問だ。個人的には、児童ポルノに限定した業務を扱う機関として、独立行政法人ないし国の機関とするのがいいと思う。こうすることで、業務や取扱い範囲を根拠法に列挙し、情報公開法や独法情報公開法の対象とすることにより運営を透明化し、中立性も確保する。違法でない情報については取扱い範囲外とすることは必須だ。現状のインターネット協会の中の機関はフロントエンドの窓口として残すことも考えられる。児童ポルノを特別扱いするのは理由があって、国際的な要求が高いこともあるし、表現の自由との緊張関係が薄い(全くないわけではあるが)上に、他の違法情報と異なり引用も基本的に許されない特別な性質があるからだ。わいせつ物は、基準をめぐって表現の自由との緊張関係があり、また日本の基準では性器描写を除去・修正すれば引用できる。社会的法益としての性質を考えれば、ゼロ・トレランスに摘発する必要があるものでもない。その他の違法情報は広告・誘引であって、文脈を違える形で合法的に引用できる。だから、機密保持の必要性は薄いし、国の機関で扱うことで表現の自由や検閲といった問題になりやすいので、児童ポルノ以外は民間でよい。ただ、インターネット・ホットラインセンターで独占して扱う必要があるとは思わないし、違法な活動についての広告・誘引などは、むしろ個々のサイト、特に大規模コミュニティサイト事業者であればユーザーからの直接の通報を受け付けて直接警察に通報する体制を自主的に作ったほうがいいのではないだろうか。処理に月単位の日数がかかるホットラインはホットラインと言えないだろうし。
また、公序良俗に反する情報について、対処がなされないからと「有害情報規制」へとつきすすむのは間違った方向で、むしろ個別の領域で違法化すべきものを違法化するべきだろう。ホットラインセンターのガイドラインには「情報自体から、違法行為(けん銃等の譲渡、爆発物の製造、児童ポルノの提供、公文書偽造、殺人、脅迫等)を直接的かつ明示的に請負・仲介・誘引等する情報」とあるが、それぞれの領域で「直接的かつ明示的に請負・仲介・誘引等する行為」を違法とすべきかどうかを検討すべきだ。「児童ポルノの提供の直接的かつ明示的に請負・仲介・誘引等する行為」については、日本ユニセフ協会言うところの準児童ポルノの違法化が見送られる方向となったこともあり、文字だけでは判別がつかないし、アメリカでも PROTECT Act of 2003 違憲問題として争われて控訴審で違憲と出た領域でもあり、なかなか難しい問題があるけれども、その他のものについて構成要件を明確化して違法化することは可能なのではないかと思う(その場合、そもそも立法事実が存在するかは問われるべきで、「爆発物の不正な製造を直接的かつ明示的に助長、教示」なんてのは、事例もあまり多くないのではと思うが。爆発物は正当業務のために製造されることも多く、その情報をコントロールできないしするべきでもなく、原材料のコントロールが徹底されるべきものだろうし)。自殺サイト問題も、自殺の請負広告や集団自殺の呼びかけなど、個別に違法化できる部分はあるはずだ。
青少年の保護、という観点からは、これらだけでは済まないのだが、そこについても、現行法の穴を埋めるのが優先されるべきだろう。例えば、現行の児童買春、児童ポルノ禁止法では、児童買春、児童買春周旋、児童買春勧誘、児童買春等目的人身売買等といったものが処罰対象になっているが、児童を自身の買春の相手方となるように誘引する行為自体は、処罰対象から外れている。議員立法での法律作成のさいに売春防止法をベースに作ってしまって抜け落ちたのではないか。一方で、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(出会い系サイト規制法)では、児童を性交等の相手方となるように誘引することや、対償を供与することを示して、児童を異性交際の相手方となるように誘引することを禁止しているが、その範囲は「インターネット異性紹介事業」の利用に関してに止まっている。この法律の改正案が今国会に提出されているが、業法としての規制が大幅に強化される一方で、「インターネット異性紹介事業」の定義が広汎でとくにユーザープロフィールが検索可能で個々のユーザー間で自由に連絡あとれるようなSNSが、とくに異性紹介を目的としていなくても該当と判断されてしまう可能性がある状況は変わっていない。警察庁はガイドライン見直しを表明しているが、その具体的内容は明らかではない。児童の保護の観点からはなるべく広くとったほうが児童を誘引する大人を処罰できることになるが、一方で、広くとる方向に解釈することは、コミュニケーションサービスの事業やその利用者の(性的誘引に関係しない)萎縮を招くことにもなりかねない。ここは、児童買春禁止法のなかで、児童を(児童と知って)買春の相手方となるように誘引することや、児童買春の相手方となる児童を募集する広告を(ネット限定ではなく)罰則つきで禁止するべきだろう。その上で、児童をユーザーとして抱える大規模コミュニティサイトなどでは、サイト上での当該誘引行為について、児童からの通報を積極的に受け付けて、問題ユーザーの退会・資格停止処分に止まらず、警察への通報(通信の秘密の観点からは、個人情報の提供は通報を受け付けた警察からの照会によって行われるべきだろう)を行っていく体制を自主的に作っていくのはどうか。常習的な児童買春目的ユーザーは、ピンポイントに相手を見つけているとも思えず、買春の相手となることを望まない児童にも少なからず誘引のためのメッセージを送っている可能性が高いだろうから、その段階で通報が行われるとなれば、常習的な児童買春目的ユーザーに対する萎縮効果は高いはずだし、それが他の正常な利用への萎縮となるとも思われない。
児童買春以外の児童を性関係に誘う行為はどうなんだ、という話もあるんだけれども、それにはまず、青少年条例での淫行処罰規定を廃止する一方で、性的同意年齢についての見直しをするべきじゃないかと思う。日本の刑法では13歳がひとつの線となっていて、条例での淫行処罰規定における淫行は、最高裁判例で「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうもの」と限定解釈されているので、一時の相手を求めることが多そうな出会い系サイトについての規制はともかく、サイト一般、あるいはネットに依存しない誘引へと規制を安易に広げると、「社会通念上およそ処罰の対象として考え難い」性行為への誘引などに処罰対象が広がってしまう。それを法律として行うことには無理がある。現行刑法の線引きは100年遡るわけで、前提とする社会状況が大きく異なる。100年前となると、学校における性教育はほぼ期待できない一方、義務教育といえば尋常小学校のみであって、村落共同体のなかでは若衆宿や娘宿があり、共同体の 閉じた関係のなかで、年齢差のある関係での性行為が共同体内では逸脱と考えられることもなく多く行われていたことは知られていて、民族学者の赤松啓介の著作に詳しいが、その他にも文献などはあるだろう(ただし、実際に何が行われていたかは集落での差異もあり、また、社会階層での差異もあるだろうから、全員が一律にそういう環境にあったとも言えない)。こうした状況が本格的に壊れていったのは戦後の高度成長期と思われる。地方によっては、祭などの行事のなかに痕跡をみることができるかもしれないが、風習の存在を前提とした配慮の必要性は薄れているのではないかという気はする。いまどき、近所のおっさん(昔と違って、濃密な共同体空間のなかの隣人のおっちゃん、ではなくて、郊外的な空間のよく知らないおっさん、ということ)が中学生の娘に「性のてほどき」をすること(近所のおばさんが中学生の息子、というのももちろん対応づけとしてはあるだろう)を容認する親、というのはあまりいないんじゃないか、ということ。性的な要素を含め、コミュニケーションはフラット化・グローバル化していることを前提として、「青少年健全育成」ではなくて、「児童の保護」の観点から、どの程度の規制が適切なのかを考えるべきじゃないかと思う。そこで諸外国の状況をみると、18歳未満のティーンエイジャーに関しては、性的同意について年齢差で規制をかけている事例が多い。例えば2歳以内とか、4歳以内とか、5歳以内といったものを、段階に応じて広げていくアプローチだ。金銭などの報酬によらなくても、年齢差が大きいとコミュニケーション能力の違いなどから、問題のある同意に至りやすいということが規制の理由となる。例えば、13歳以上16歳未満は2歳以内、16歳以上18歳未満は5歳以内年上であえば合意とみなすが、それ以上の年上であれば法定強姦とみなす、という形がありうる。個人的には16歳以上の規制は必ずしもいらないのではないかと思うが、どの程度の線引きが望ましいかはいずれによ専門的な議論が行われないとなんともいえないと思う。カナダでは、2月に性的同意年齢が14歳から16歳に引き上げられたが、14歳以上16歳未満については年齢差規制という形になった(以前は12歳以上14歳未満が年齢差規制の範囲だったが、そこがどうなったかは確認していない)。
年齢差規制のいいところは、これが極めて客観的な規制だということで、それを前提にすれば、容認される年齢差を越えた、あるいはそれを前提とする違法な性行為への誘引などをネットに限定せずに違法とすることに問題は少ないと思うし、前述の児童買春誘引と同じく、大手コミュニティサイトでの自主的通報体制で対処できるのではないかと思う。
有害コンテンツ規制を求める声に対応する別のアプローチということでは、上記で網羅しきれているかというとそうでもない気がするのだが、とりあえずこんなところまでは考えてみました、ということで。
bewaadさん、「何故政治にネット規制反対派の声が届かないのか?」の分析結果の結論そのものにケチをつけるつもりはないのだが、しかし、「ネット規制反対派の主張する内容に少なからず誤りがあり、説得力を減じている」とする指摘そのものに、少なからず誤りがあるという状況は、さすがにどうかと思うんで、突っ込んでおくよ。
まず、ヴァルさんが言及している「児童ポルノ規制」、これの文脈をまずはふまえよう。今は、日本で児童買春・児童ポルノ禁止法ができた1999年前後ではではなくて2008年、児童ポルノ法改正の動きとして、単純所持規制や、創作物への定義拡大を求める声が大きく出てきている、という、その文脈をさして「児童ポルノ規制」に言及しているということは、ほぼ自明だ。
次に、Communications Decency Act だが、FCCのサイトにある1996年連邦通信法改正法そのものをみても、そこに "child pornography" という単語は出てこない。違憲裁判で問題になったのは、"obscene, lewd, lascivious, filthy, or indecent" あるいは "obscene or indecent" 、またあるいは "patently offensive" といったフレーズで、そこの obscene(わいせつ)以外は、憲法修正一条で保護される領域であって、不明確・広汎ゆえ無効ではないか、ということが問われた。わいせつとか児童ポルノについて原告は争っちゃいないが、そもそも児童ポルノについては刑法典のほうに処罰規程があり、CDAでは言及すらされていなかった。ただ、被告の連邦政府側は、obscene以外の規制も合憲だと主張するためにも、obscene でない児童ポルノについて主張したりしていた。だから、Reno v. ACLU連邦最高裁判決主文で、下品とか明らかに不快とか、そういうのを取り締まるための条文はそれ自体無効だけど、政府がわいせつや児童ポルノを取り締まる権限を否定したわけじゃないよ、というふうな形で言及されただけで、児童ポルノ自体は裁判の争点でもなんでもない。だから、この裁判ではそもそも児童ポルノの定義についての議論はないし、CDAは単純所持を取り締まる法律でもないので、CDAと2008年の日本における児童ポルノ禁止法改正の議論は、単に無関係とするのが正しい。なお、CDAの問題の部分がその後どうなったかというと、2003年のPROTECT Actで「わいせつか児童ポルノ」と並べる記述に改正して決着している。
その上で児童ポルノの定義についての話をしておくと、CDAと同じ1996年にChild Pornography Prevention Actという法律が通っていて、これで、いわゆる有体物縛りを外したんだけれども、それと同時に「バーチャル児童ポルノ」を児童ポルノに入れた。ここまでだと、ほらやっぱりbewaadさん正しい!と早合点しがちだが、単にCDAで争う範囲じゃないというだけ。別の訴訟としてCDA同様に最初から差し止め訴訟になった Reno v. Free Speech Coalition というのがあって、これで下級審・控訴審と争って、最後の連邦最高裁のときは政権交代があって司法長官が代わったので名称が変わりAshcroft v. Free Speech Coalitionとして2002年に「バーチャル」を取り締まるのは違憲だろと決着した。その後PROTECT Act で「実写と区別がつかないもの」と「わいせつ児童ポルノ(マンガ込み)」の処罰が盛り込まれて、後者の条文の「わいせつ」からはみ出した部分や単純所持禁止に違憲の可能性があるけど、まだ違憲性を争った具体例がないのは以前言及した。
こうやってちゃんと事実をおさえていくと、bewaadさんが、「ネット規制反対派の主張する内容に少なからず誤りがあり」とする具体例に、誤りと歪曲があると言っていいと思うし、正直、ちょっと酷いんじゃないかな、と思うんだ。町田徹氏の記事が間違ってるんじゃね?という話は、そもそも池田氏の記事の初期バージョンでも言及されていたし、私自身言及していたことではある。「反対派」の水準底上げが必要であることは否定しないが、そもそも世の中の議論で誤りを含む水準の低い議論をしてしまう人が一定数いることは避けがたく、たまたま一人が変なこと書いたから反対派バーカってのはなんだかな、という感じがするね。
多少追記しておくと、池田さんがCDAに言及しているのを、法案の具体的な中身、というふうにとらえてしまうと、若干問題があることになる。自民党の法案の中身は、その後のCOPAやその違憲訴訟の内容を研究して作ったことが明らかな内容だから。ただ、池田さんは、条文の細かい話よりは、アメリカがネットの「有害コンテンツの法規制」に取り組み始めた(そして失敗した)象徴としてCDAに言及しているので、そう読めばCDAへの言及は適切だろう。
最近、児童ポルノ禁止法改正案ネタを続けていて、そちらの話題がないわけではないのだけれども、民主党と自民党が広汎なネット規制法案を準備しているという話題がここにきて一気に弾けてきた。
私もMIAUの幹事として、関係資料に目を通せているのだが、前提として、この種の資料はすべて未定稿として複数のルートで一定の範囲に出回っていて、その性質上、細かいバージョンの違いがありえる。MIAU幹事は共通して見ている資料が存在するが、個々のMIAU幹事によっては異なるバージョンを見ている場合もありえ、また、ましてMIAU幹事以外と同じものを見ている保証もない。池田さんは町田氏が古い資料を見ているのでは、としているけれども、同じぐらいの時期の資料を読み違えている可能性もある、とも思う。池田さんが明示的に紹介されている条文については、番号と内容では一致していて本質的な違いはないが、より細かく書かれていて、命令違反に対する刑事罰は存在するが、それは情報発信者ではなく接続事業者やネットカフェ事業者に対するものとなっていて、渋井氏の高市議員インタビューと符合するものになっている。池田さんのほうが古くMIAUのほうが新しいと主張するつもりはない。が、いずれにせよ出回っているものは不確定要素がまだ多く、おそらく自民党内でも総務部会との調整で変更される可能性があるだろうから、細かすぎる部分についてはあえてふれずに、ここではおおざっぱに問題点をみていこうと思う。
「青少年有害情報」が曖昧・広汎かどうか、という点については、私のみているものは池田さんの引用しているものよりもやや細かい(すべてについて「〜という情報で、〜するもの」という形になっていて、前半に内容を限定 する文言が入っている)が、いずれにせよ曖昧・広汎だと思う。
サイト管理者については厳密には「削除義務」となることを避ける構成となっていて、「青少年により青少年有害情報の閲覧がされないようにする措置」となっている。しかし、「青少年でない旨の証明をしたものでなければ」閲覧ができないようにする措置というのは、それなりに厳格な本人確認を伴う会員制サイトでなければありえず、クレジットカード制のアダルト有料サイトならともかく、ごく普通のサイトの大半は達成不能、という意味では削除を求められるに等しいとは言えるだろう。もっとも、「フィルタリングソフトウェアによる選別に資するための措置」をとればそれでいいともとれ、こちらは、これがセルフラベリングなどを意味するのであれば、影響範囲や表現の自由の観点からの問題を脇に置いてみた場合、個々の情報発信者にとっての敷居はそれほど高くないかもしれない。サイトにアクセスを提供するISPについて、「知ったとき」に前述の措置を求めたり、(それが実施されない場合に)「青少年により青少年有害情報の閲覧がされないようにする措置」を自らとる義務が生じているのは、これは大きな問題になりうる。ISPとしては、わざわざ透過プロキシでも設置するのでもなければ、回線を切断するか、あるいはポート単位でブロックするほかないように思われ、「削除義務」よりも強い措置になる。
携帯電話フィルタリングについては、現在の総務大臣要請で実施されている携帯電話事業者による「原則化」、および、その後の落としどころを検討している総務省検討会での多くの努力を、強権的に上書きするものと読める。現状では、サービス利用の「未成年ユーザーへの原則化」であるため、告知を行って未成年契約者について保護者によるオプトアウトが認められているが、法案では「全ユーザーへの原則化」であり、18歳以上のユーザーで、かつ希望しない申出をした場合に限ってのオプトアウトとなる。つまり、自民党案では現状のオプトアウトについて「やっぱり許さん」というポジションとなる。保護者が許可することは禁止、ということになっている。これまでの関係者の多大な努力を水泡と化し、さらに、なんだかんだいって成人のほうが多いはずの全携帯電話ユーザーを多大なコストをかけて巻き込む、ということになっている。
さらに、パソコンの製造事業者へのフィルタリングソフトの「組み込み」の努力義務がかかっている。この「組み込み」は、現状の家庭向けパソコンでよくあるような、フィルタリングソフトの試用版のインストール用ファイルをデスクトップに置いておく、といったものでは済まないだろう。「組み込み」なのだから。これが、企業向けパソコンにも一律に適用される。企業の場合、ゲートウェイでフィルタリングする場合も多いだろうし、あるいはモバイル用途も考えて企業としてのポリシーを一律設定できるような企業向け製品をボリュームライセンスで購入して用いる場合もあるだろうし、あるいは全くフィルタリングを使わない場合もあるだろうが、いずれにせよ、製造事業者の「組み込み」のものは、不要か機能が重複するため無駄なものになる。組み込む以上は試用版では済まないだろうから、ハードディスクへの著作権補償金どころではない、調達コスト上昇要因となるだろう。この努力義務は、努力義務とはいえ、フィルタリングソフトやフィルタリングサービスの事業者への努力義務と併せ、「規定を遵守していない」事業者に主務大臣が「必要な措置を講ずるよう要請」することができるとしているので、かなり強い努力義務となっている。ここまで書かれてしまうと、ビジネス用途だろうが大人が使うとわかっていようが、OSをインストールしていないパソコンや、組み込み対象のフィルタリングソフトがないようなOSを組み込んだパソコンの製造・販売は、「コンプライアンス」上、ほとんど禁止に等しい状況になる。
そして、インターネットカフェでは、青少年の客に対して、フィルタリングソフトが有効となっている端末の提供義務のみではなく、「他から見通すことのできる客席」の提供義務が掛けられている。従業員からのみならず、他の客からも見通せる状態が要求されているとなると、青少年はインターネットカフェではプライバシーの期待は一切持つな、ということになる(従業員は雇用契約上の秘密保持義務を課すことができるが、客の間ではそれは無理)。
「青少年健全育成推進委員会」は、基準を定めるとされているが、委員会メンバーは内閣が選ぶ国会同意人事となっている。端的にいって「高潔な有識者」を選ぶものであって、ネット利用者や事業者の利害が基準策定に反映されるとは見えず、むしろそこから遠い場所で決めるものとなっていると思う。「青少年健全育成推進委員会」は独立した存在としてその基準に異議を挟む余地はなさそうだ(個別のサイトが直接に指定されるわけではないので、行政訴訟の対象にはならないのではないか)。
実際の個別の「青少年有害情報」(をめぐる意見の不一致からくる係争)を扱うことになる紛争処理機関は、裁判とは異なり、手続きが非公開とされている。紛争処理機関が「相当と認める者」に傍聴を許すことができるとされているが、何をもって相当とするかは明らかとされていない。「ネットの有害性」を喧伝する新聞記者や、ネット規制の推進を願う団体の構成員は、法律の目的と合致する意図を持つから傍聴が許され、一方、ネットの自由を擁護する論者は、法律の目的と合致しない意図を持つからと傍聴を許されない、といったことが、あるともないとも言えない。また、これに限らず、全体として、主務大臣(実務的には所轄官庁)に情報を集めるが、それを公開していく精神が、この法案には存在していない。青少年健全育成推進委員会は情報公開法の対象だが、紛争処理機関は民間機関なので対象外だ。具体的な紛争処理を通して、「有害性」がどのように認定され、あるいはされないのか、そういった情報を係争外の一般の人たちが知り、共有し、おかしいと思えば声をあげていく、そういったシステムはそこには存在していない。
こうして全体をみていくと、この法案は、やはり(広義の)検閲を指向していると言わざるをえない。トップダウンで画一的な基準が定められ、個別の紛争は非公開で処理され、表に出てこない。静かに、「有害」とされた情報の発信やアクセスが制限されていく世界を作ろうとしている。
対して、総務省のインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会は、ここにきて、紆余曲折の末に穏健な落としどころに向かっているように見える。Internet Watchの報道などによれば、「『画一性・非選択性』から『多様性・選択性』へ」ということで、「ユーザーが個別ニーズに応じてカスタマイズを行なう」ことができる方向を打ち出している。個別のサイトのフィルタリングからの解除を含めて、中長期的に妥当な方向を打ち出している。私自身は、フィルタリングソフトやフィルタリングサービスの透明性の無さから、具体的な個別サービスに支持できるものはないが、(青少年と保護者をセットにした)「利用者の選択」をサポートするという方向で軌道修正されていくのであれば、そういう政策自体はおおいに支持に値すると考える。しかし、自民党案にせよ(若干趣きは違うが)民主党案にせよ、そこにあるのは多様な価値の尊重ではなく、特定の立場からみた価値の押し付けであって、保護者に選択することすら許さないものに見える。それは、検閲以外のなにものでもない。
もうひとつ、楠さんの児童ポルノ禁止法改正についての意見について。まず、「親告罪」というのは、処罰感情への対応になっていないし、そのわりに幅広い範囲を違法化しようという意見なので、スジが悪すぎるように思う。日本の援交ビデオはともかく、世界的にみれば、被害児童は「親告罪」で訴え出ることができない場合が多いだろう。遠い日本に訴えるすべがない場合もあるだろうし、殺されている場合もあるだろう。アメリカで児童ポルノ通報窓口を運営しているNCMECの正式名称が National Center for Missing and Exploited Children であることを思い出そう。「行方不明児童」が親告することなどできない。その一方で、「創作でモデルにすること」にまで広げるのは、児童ポルノの定義として広げすぎだ。実在人物をモデルにすることは、それ自体は非難に値するが、それは「モデルにする行為」を刑法の名誉毀損罪などに問えばいいだけではないのか。リアルでない絵柄、あるいは文章の創作物をみて、それに実在モデルかいるかどうかなど普通は分からないわけで。
「実写をレタッチで創作であるかのように加工することもできる」という問題であれば、以前言及したイギリスで審議中の法案のように「実在児童児童ポルノに由来するもの」を定義に入れるという方向はありうる。これと、「区別できないもの」や「擬似」を定義に入れるかどうかは、独立の問題だと考えられる。「由来するもの」は、「区別できないもの」や「擬似」よりも、むしろ保護法益にマッチするようにも思う。「区別できないもの」や「擬似」を定義に入れるべきかどうかは、思弁的な問題ではなく、「実在児童ではない」抗弁を考慮して立証コストが高すぎる事態に陥っているという立法事実があるかどうかが問題で、もし日本の司法上問題になっていない(被告が争わないとか、運用として立証のハードルが高くないとか)なら、とくに急ぐ理由はないように思われる。
なお、単純所持については、単純所持全体を処罰化するのか、特定の類型に限るのか、そもそも全部反対するのか、大きくわけて3つ、さらに特定の類型といってもそのバリエーションもあるわけだが、私は「全体を処罰化」するのには反対だが、長期的なビジョンとしては、それ以上は絞れていない。ただ、現状は実在児童について「先進国」内においてさえも国際的な定義の不一致問題があるわけで、それがもうちょっとまともに解決されないと、萎縮効果が大きすぎると考えている。また、先に述べた「由来するもの」を違法化する場合には、一目見れば分かるものではない場合、単純所持や単なる複製や配布などを処罰対象とするのは、問題があるように思う。「単なる複製や配布など」でも、情を知って、みたいなセーフガードがあったほうがいいような気がする。
楠さんの「ネットで子どもの安全を守る包括的な政策パッケージ私案」について、コメント。
「保護法益と政策目標を明確化して政策評価の枠組みを構築する」、というのには、なるほど、とは思った。モラルパニックを防ぐには持続的な評価や調査は不可欠だろう。ただ、そもそもが因果関係すら微妙な部分も少なくないのだから、そういう部分の基礎的な調査研究の枠組が必要だろう。
「有害コンテンツを廃止して違法コンテンツの範囲拡大を図る」というのは、やや疑問。まず、「有害コンテンツ」という言葉の定義の不確かさから、これはインターネットホットラインセンターでいう「公序良俗に反する情報」だと判断して話をすすめるが、基本的にこの種のものを「コンテンツとして」違法化するのは、表現の自由の観点から問題だと考える。インターネットホットラインセンターの分類は、「児童ポルノ判定を下し切れなかったもの」(これを違法化するという議論は児童ポルノの定義の議論に帰着すべき)を除くと、表現それ自体が問題だというよりは「違法行為を直接的かつ明示的に請負・仲介・誘引等」しているという、表現よりは行動としての面が問題になるので、「コンテンツ」だけで判断できるようなものではなく、極めて文脈依存なのであったりする(現状の「違法情報」でも、このようなものはあるが)。そんなものを一般に違法化しようとするのは無理があるだろう。インターネットホットラインセンターの統計では「公序良俗に反する情報」については大分類しか示されておらず細かい分類との対応が分からないのだが、そもそも一覧に「爆弾の製造法」とかあるのは、センセーショナルな「インタネットは有害だ報道」への対応という気がしなくもなく、実際に意味があるかというと微妙すぎるだろう。いずれにせよ、「明白かつ現在の危険」がありそうな情報については警察が個別の違法行為についての容疑(予備罪なども含む)で動かざるをえないだろうし、そうでもないものはどうでもいいだろう。幇助云々は、構成としては事業者に負わせる義務が重すぎるのではないか。現状、プロバイダ等への違法通報に対する対応義務が存在していない点を改善すれば足りる。
「サイバー犯罪の窓口機関を機能強化して民間事業者の参入を推進する」というが、とりあえずインターネットホットラインセンターは違法情報を含めた民間通報の受付窓口をやっているのだから、前提が少し間違っている。現状のインターネットホットラインセンターも、法律に基づいて設置されたわけではないから第三者参入を妨げるものではないが、どちらかというと窓口の乱立による混乱を防ぐ意識のほうが現状は先にあるのではないかとは思う。ただ、ポータルサイトやISPが総合ワンストップサービスを提供する意義はそれとは独立にあるとは思うが。とりあえず、インターネットホットラインの通報窓口の使いにくさはなんともいえないものがあるので、そういう部分は改善されるだろうし。ただ、違法判定部分について、違法情報の蓄積をしていかないと効率が上がらないだろうから、警察からの情報提供を可能にするという方向と、一定のセキュリティレベルを確保し反社会的な人間が運営に関与しないように縛りをかけるという方向と、両方の意味で法的に担保していくアプローチはあるだろう。出会い系サイト規制法の改正案に、「出会い系サイト」という限定領域での試みがある(天下り先増殖法に見える問題はあるが)。
「違法コンテンツへのアクセスに届出制を導入する」というのは、普通に考えて通信の秘密の侵害でアウト。たとえ情報発信が違法とされる内容でも、その全般へのアクセスや受信を原則違法化するのはダメだろう。「届出の行われた正当な業務目的」という縛りでは、その検閲への自由な検証は確保されえない。児童ポルノの単純所持違法化の議論も現在あるわけだが、仮に児童ポルノへの原則アクセス禁止を正当化できたとしても、それを「違法コンテンツ」全般に拡張するのは、無理があるだろう。
「ネット安全利用技術の評価手法を確立し有効な技術を推奨する」とのことだが、そもそもフィルタリング技術やゾーニング技術の「実現すべき機能や品質検証」の、どの程度までが価値中立なもので、どこから先が価値観に踏み込んだ領域なのか、という問題がある。前者の有効性は否定しないが、楠さんの以前の書き方をみていると、価値観部分に踏み込んでいるように思う。
「本人確認サービスを制度化し年齢属性証明の普及を図る」という部分は、事業者のビジネスを促す部分まではいいが、利用しないことに管理責任を問うというのは、やり過ぎだろう。年齢属性証明のない従来からの一般のコミュニティサイト(普通のブログも含むよ)を、そのままならつぶせといっているようなものだもの。管理責任を問うというのは、現実的な水準での対処ではなくて、大きな萎縮効果をもたらしうるだろうから。仮にSNSのようなユーザーコミュニケーションに重点のあるものをうまく定義づけるとしても、それはどうだろうというか。児童を中心とする若いユーザーが集まるコミュニティサイトに安心できる機能として加えていくという話であれば、それこそゾーニングとして、基準を満たしたサイトですよというラベルがついていればいいという話ではないのか。
全体として、「高めのボール」といっても高すぎるのではないか。そして、高くしようとして高くしたものの、それが効果的に高いというよりは、無駄に高いボールになっているような。
今回の児童ポルノ禁止法改正への動きの中で、なんとも不思議なのは、日本ユニセフ協会自身の発表などの中で、じゃぁいったいどうやって単純所持処罰や「子どもポルノマンガ・アニメ」の禁止がEUと言わずより国際的な枠組の中で基礎づけられうるか、ということが、ぼんやりとしか述べられていないことだ。
ということで調べてみた。まず、直近には、昨年12月に国連総会で "Rights of the child" という決議が採択されている。決議本文と総会議事録がPDFで取得できる(親ページからリンクをたどらないとアクセス拒否されるかもしれない)。このによれば、投票が行われて、賛成183、反対1(U.S.)、棄権0(他欠席がある模様)となっている。審議が行われたのは総会の第三委員会というところで、そこでの総会に上げるための議決では、賛成176、反対1(U.S.)、棄権0(欠席あり)となっている。委員会のプレスリリースによれば、アメリカの反対は、趣旨ごもっともだが親子の権利バランスなどについて国内法と整合性がとれない、要らんことを書きすぎてるのでそういうことになったよ、というものであった。日本は賛成しているが、起訴便宜主義について、決議が法執行を強めることを求めていることに矛盾するものではないよ、という断りのコメントを残している。具体的には、決議で
Elimination of violence against children
57. Urges all States:
(a) To take effective and appropriate legislative and other measures or, where they exist, strengthen legislation to prohibit and eliminate all forms of violence against children;
Rights of Children: United Nations General Assembly ARES/62/141/
と言っているが、これは全部を例外なく起訴しろという意味じゃないよ、と確認している (諸外国の法制度では、特定の犯罪で起訴しないことを認めなかったり、 法定の下限を下回る量刑を下すあらゆる情状酌量を裁判官が行うことを認めなかったりする条文が存在する場合があり、児童ポルノはじめ児童がらみの性犯罪が対象とされる場合があるが、それは日本ではやってないが決議には反しない、ということ)。前に言及した、日本ユニセフ協会要望書の(4)での処罰強化要求は、日本の司法における、こうしたスタンスへの圧力だと考えられる。
決議全体は、児童の権利や、児童に対する暴力全般についてのものでかなり広い内容だが、児童ポルノについては 以下のように、児童ポルノだけではなく、児童買春やその他もろもろについて、そういったことを目的としたインターネットやその他の情報通信技術の利用についても犯罪化を求めているし、「顧客」を罰するように求めている。 国際的な情報通信企業の責任について言及する項目もある。
Prevention and eradication of the sale of children, child prostitution and child pornography
38. Calls upon all States:
(a) To criminalize and penalize effectively all forms of sexual exploitation and sexual abuse of children, including all acts of paedophilia, including within the family or for commercial purposes, child pornography and child prostitution, child sex tourism, trafficking in children, the sale of children and the use of the Internet and other information and communications technologies for these purposes, and to take effective measures against the criminalization of children who are victims of exploitation;
(f) To combat the existence of a market that encourages such criminal practices against children, including through the adoption, effective application and enforcement of preventive, rehabilitative and punitive measures targeting customers or individuals who sexually exploit or sexually abuse children, as well as by ensuring public awareness;
(g) To give priority to the identification of norms and standards on the responsibilities of transnational corporations and other business enterprises, particularly those involved in information and communications technologies, related to respect for the rights of children, including the right to be protected from sexual abuse and exploitation, particularly in the virtual realm, as prohibited by the relevant legal instruments, and to outline basic measures to be taken for implementation;
Rights of Children: United Nations General Assembly ARES/62/141/
一方、「子どもポルノマンガ・アニメ」だが、この水準の決議文では、そもそも"child pornography"が具体的に何か、という中身について明示的に言及されることはない。「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」を参照しているが、そこではあくまで「現実」か「擬似」であって、マンガ・アニメは(普通に読めば)含まれない。上記(g)では、"virtual realm"での児童の保護もうたっているが、普通に読めばこれはネット上の仮想空間で活動する現実の児童を性的に誘い出したりすることの問題(child groomingとよく呼ばれる)であって、マンガやアニメを問題にしているとは読めない。もっとも、上記引用の84(f)での「市場の存在と闘う」ために、という単純所持処罰につながりうる条項を拡大解釈して、「マンガ・アニメ」も児童ポルノ市場の存在の撲滅のためには叩かなければならない、というふうに、読みたい人は読むのだろう。
この決議が今回、日本ユニセフ協会から紹介されないのは、まぁ、アメリカが反対した決議であり、キャンペーンがアメリカと組んでいるという事情かな、ととりあえず推測しておく。ちなみに、同様の決議は、2006年度の国連総会でもA/RES/61/146として可決されていて(こういうのは年を追って膨れ上がっていくのが相場で、例えば上記に引用した(g)の項目に該当するものは入っていない)、やはりアメリカだけが反対していることが2006年度の決議一覧をみていくと確認できる。もっとも、細かい内容はともかく、決議は毎年やっているようで、とりたてて言うほどのことでもない、という可能性もある。
さて、実はここまでは本題ではない。こうした決議が積み重ねられていくにあたって、国連は気まぐれでやっているわけではない。こういった決議は各種の調査研究事業と結びついていて、決議の中でも具体的に言及される。今問題にしている領域では、昨年の決議では、Promotion and protection of the rights of children (A/62/209)という事務総長覚書に言及している。これは、2005年まで行われていて2006年に国連総会で報告された、The United Nations Secretary General’s Study on Violence against Childrenという調査報告のフォローアップがその内容で、2006年の決議では、調査報告それ自体に言及している。
この調査事業は、Paulo Sérgio Pinheiroという人物を独立専門家としてトップに据えて行われたもので、UNICEF本体もサポート団体のひとつとなっている。こういう事業には、多くのNGOが積極的に参加して報告や提案を上げていくものなのだが、ECPATはこの調査事業における、主要なNGOの一つだ。こうした活動を通して、ECPAT/ストップ子ども買春の会が、マンガ・アニメ叩きの方向性で、日本ユニセフ協会が組織として乗っかれるだけの筋を通す働きかけをしたのではないか、と私は踏んでいる(日本ユニセフ協会自体をアレとする向きもあるけれども、一応ユニセフの看板を背負った公益団体としては、組織論理としての筋の通らないことはできないはずだし、広告塔であるアグネス・チャンの個人的意向でこうなっているわけでもないと判断するべきだろう)。
まず、調査報告について、調査報告書本体から見ていくと、そこでの中心は途上国の深刻な児童へのさまざまな暴力が話題の中心であり、日本とかマンガ・アニメとかは、そもそも存在の余地もない。また、より詳細な報告となるWorld Report on Violence against Childrenでも、マンガへの言及はない。しかし、話はこれでは終わらない。
この調査事業にあたっては、各国政府に質問表を送ったり、世界各地でさまざまな会議を開いたり、Public Submissionといってペーパーを受け付けたり、といったさまざまな形でのインプットが行われた(これ自体は、この種の調査報告としては普通)。そのひとつ、東アジア・太平洋地域会議がここでの話題に関係する。調査事業本体としての会合は、2005年6月14日から16日にかけてタイのバンコクで行われている。子どもとユースのフォーラムが11日と12日。そして、これらに挟まれる形で、Violence against Children in Cyberspaceという、ECPAT International主催のテーマ会合が持たれている。バンコクは、ECPATの本拠地ということで、全体としてECPATの仕切りで会合が行われたわけだ。
地域会合の結果報告の45ページをみると、次のような内容がある。Violence against Children in the Cyberspace and Online Environment というセッションの報告になるが、Dr. Ethel Quale のプレゼンとして、
Dr. Quayle’s presentation focused on sexual violence against children in and via virtual settings, with particular reference to depictions of child sexual abuse (child pornography). She noted that the criminal justice system’s general response has been to focus on the offender rather than the victim. Meanwhile, agreement is lacking within and between communities on definitions, laws and perceptions of what is appropriate, such as when children are sexualised within mainstream media or where abuse images remain legal, as in the case of some manga products in Japan.
Report on The East Asia and Pacific Regional Consultation on Violence Against Children
と、日本のマンガに焦点をあてている。さらに続くセッションの議論をまとめた文章では
The group noted that child pornography includes the recorded abuse of a real child, for example, through photographs, as well as digitally altered images and illustrations such as Japanese manga.
Report on The East Asia and Pacific Regional Consultation on Violence Against Children
と、この認識を共有しあう形となっている。これを問題とする論調は、サマリーレポートの18ページにもある。このセッション自体は、ECPAT/ストップ子ども買春の会のメンバーはそもそも出席していない。しかし、既に述べたように、直前にECPAT主催のテーマ会合がくっついていて、参加者も重なっている。そこで、ECPAT仕切りの「サイバースペース」テーマの会合がどんなだったか、ということになる。
サイバースペースのテーマ会合には、ECPAT/ストップ子ども買春の会のサイトによれば、宮本潤子共同代表とともに、綱野合亜人氏(当時18歳)が参加している。このテーマ会合のECPATが開催にあたって設置したページにある、Concept PaperやKey Issuesといった、事前に用意されたマテリアルには、「マンガ」という言葉は一切出てこない。それが出てくるのは、報告書のほうになる。この報告書も、上で述べてきた国連調査事業のPublic Submissionに提出されている。
さて、このECPAT報告書でマンガがどう扱われているかだが、非常に興味深い、というかアレである。32ページに次のように書かれている。
In some countries, material known as ‘virtual pornography’ is legal and big business. In Japan, for example, a report analysing developments in the country’s computer contents market (including software and publications such as comics) gives an indication of the business value of child abuse illustrations and cartoons in some anime or manga materials. The analysis estimates the market for moe products (books, images and games), which are related to anime and manga, was worth 88.8 billion yen (US$800 million) in 2003. The term moe is used in a neutral sense for economic analysis. But taken literally it refers to a fetishist sexual attraction that some fans of computer games, anime and manga have for female child characters, who may be depicted in pornographic and erotic contexts within games, animations and illustrations. Moe web pages sometimes link to other pages containing images, stories and chats in which very young characters are the objects of sexual violence, abuse and fantasy. A proportion of the moe market may therefore be regarded as related to child sex abuse images. The report expected the market for moe products to expand.
Violence against Children in Cyberspace
ここで参照されている「萌え」レポートは、浜銀総合研究所 信濃伸一氏による2005年4月1日発表の「少子化などにより伸び悩むなか新しい動きがみられるコンテンツ市場」−2003年のコンテンツ市場における「萌え」関連は888億円というレポートだ。このレポートを、ECPATは、まるでそれが、児童を性的に虐待することから日本が莫大な経済的利益を得ようとしているかのような印象を与えるべく紹介している(印象を与えようとしているだけでそう言っているわけではないが)。ここでの攻撃は「子どもポルノマンガ・アニメ」といった枠ですらなく、「萌え」というコンセプト自体に向けられている。こうした論調が、地域会合での「マンガ」言及につながっている。
この論調は、地域会合後のフォローアップ事業として立ち上げられたViolence Against Children East Asia and the Pacificというサイトのオンラインニューズレターでも同様である。これの第4号がECPAT責任編集のサイバースペース問題となっているが、これの4ページに、20歳となった綱野合亜人氏が登場して、意見を述べているが、ここではメイド喫茶、オタク文化といったものが児童の性的虐待を促すものとして否定的に紹介されている。
このように、ECPAT/ストップ子ども買春の会のマンガ・アニメ叩きが国際的なNGOやユニセフのメンバーからなる対児童暴力防止運動の流れの中で一定の賛同を得て、今回の日本ユニセフ協会のキャンペーンでの「準児童ポルノ」違法化の要望へとつなげた流れが、(宗教保守的なブッシュ政権下のアメリカからの流れとは別に)ある、のだと私は考える。とにもかくにも、彼らは極めて熱心に日本のマンガ・アニメカルチャー、にとどまらず、萌え・オタクといった文化領域に、継続的な攻撃を仕掛けてきていたのだ。
児童ポルノ禁止法改正がらみの話でのエントリが増えたので、専用カテゴリを作って過去の記事で該当しそうなものは入れておきました。どこぞのwikiとかでここにリンクをはっているケースはこちらが従来カテゴリより便利だと思うのでご活用ください。
このところこのブログで話題にし続けている日本ユニセフ協会の「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンだが、その要望が「子どもを守る」ことについて、ベストな方向性を目指しているのか、やや疑問に思うところがあるので、具体的に述べてみたい。要望書では
(4)検察・裁判所はじめ全ての法曹・司法関係者に対し、子どもポルノが子どもの人権ならびに福祉に対する重大な侵害行為であるとの基本認識の下、児童買春・児童ポルノ等禁止法事犯に対し厳格に同法を適用し、刑を科すよう求めます。
子どもポルノ問題に関する緊急要望書
と述べている。これは一見、ごく当たり前のことを述べているように見える。しかし、実は重大な問題がここにはある。
商業的児童ポルノ販売業者や、児童買春のさいに写真を撮っている人達、子どもを脅したり騙したりして児童ポルノを作成している、あるいは作らせている人達をターゲットとして、こういうことを要求するというのは、それは問題ない。しかし、「児童ポルノ等禁止法事犯に対し厳格に同法を適用」すると、それでは終わらない。
「携帯裏サイト」についてずいぶんと話題となり、そういう場所での18歳未満の児童のあけすけなコミュニケーションにも光が当てられ、それが携帯フィルタリングパニックとなったわけだけれども、そうした中で、携帯電話付属のデジカメで、自身のヌードを自発的に撮影し、掲示板に投稿してしまったり、あるいはメールで交換したり、という児童が、数の問題はともかくとしてそれなりにいることは知れ渡っている。児童ポルノ犯罪の裁判に広くかかわってきたことで知られる奥村徹弁護士のブログでも、「強要する場合もあれば、売買の場合もあれば、自己紹介程度で送ってくることもあるので」といった状況が語られている。「児童買春・児童ポルノ等禁止法事犯に対し厳格に同法を適用し、刑を科す」ということは、そうした児童を児童ポルノ製造罪の正犯としてきっちり刑を科すよう求める、ということにつながる。それは、「子どものため」になるのだろうか?
極めて興味深い話がある。今回の動きには、EUでの動きも関係していることは、規制推進サイドも自ら語るところであったと思う。そのヨーロッパでの動きだ。
ドイツは、前に書いたように、実在か否かという面では厳格な法律になっているが、その一方で、年齢の線引きは「14歳未満」だ。要は、小児性愛は取り締まるが、思春期の子どもの性的関心や行動をむやみに妨げるものではない、という状況になっている。といって、14歳以上がいきなり大人の世界に放り出されているわけではなく、性的自己決定について、14歳から16歳未満、16歳以上で扱いが異なる(一部、18歳が線引きのものもあるようだ)。ちなみに、ドイツで創刊50年以上になる代表的なティーンエイジャー向け雑誌BRAVO(発行部数40万部以上)では、長らく Dr. Sommer(バーチャル人格で、中では複数の専門家が書き継いできた)による性教育コーナーがあり、多くの読者の質問に答えるとともに、14歳以上(大半は16歳以上)20歳ぐらいまでの男女のヌードと彼らへの性生活についてのインタビューを一緒に掲載する、ということが続いている。雑誌全体は、10代向けの音楽やアイドルについての記事が多く、いわゆる「エロ雑誌」ではない。Spiegel国際版の2006年記事(英語)を読むと、雰囲気がわかるのではないかと思う。記事には、BRAVOのDr. Sommerコーナーの写真もついている(Spiegelの国外読者向けに、胸や陰部は大きく塗りつぶしてある)。ドイツ国内では、BRAVOのあり方を非難する声はあまり大きくなく、なによりも多くの成人がそういうBRAVOを読んで育った、という状況のようだ。
そういうドイツの議会で、EUのガイドライン並に規制を強化する法案が、昨年提出された。EUのガイドラインは、「子どもを守る」ためのものだから、児童ポルノの問題だけではなくて、性交同意年齢の引き上げなども含む内容になっていた。これが、10代同士の普通の性関係を大きく阻害するものだ、という強い批判を専門家から浴び、12月に法案が一度撤回された(Spiegel国際版記事、Deutsche Welle記事。ともに英語)。アメリカのピッツバーグの15歳の少女が自分のヌード写真を撮ってチャット上での知り合いに送ったら逮捕された、という事例が、「こうなるのはいかがなものか」という文脈で専門家から紹介されたという。結果、法案は見直されるようだ。
ここで言いたいのは、日本もドイツと同じ形に、ということではない。EU加盟国のドイツですら、(アメリカのピューリタン的な)「モラルの植民地化」に素直に従うことはないよ、というのが、強い声として上がっているということだ。日本は日本の状況を調べ、日本の子どもや、経済的な面も含めた社会全体の利益、そしてもちろん個人の基本的人権といったことについて、よく検討した上で、実際に規制をどのような範囲とするべきか、というのを決めていくべきだ、ということだ。
日本ユニセフ協会が言い出した「準児童ポルノ」問題に、細かく突っ込むのは前回ぐらいで終わりにしておく。いい具合にアクセスとブクマを集めて、彼らが言うほどに「多くの先進国」の足並みが揃っているわけでもなく、個々の憲法や法的伝統という前提条件も異なり、「よその国もそうならうちも」という問題ではない、というネタの入り口を作れたかなというところで。厳密な話をしようとすれば、それぞれの国の法制度と判例をそれなりの専門性を持った人間が分析・比較しなければならない。私がやけに詳しそうにみえたら、それは Google を使った上げ底に過ぎないので念のため。とある専門家からツッコミが入り始めているので以上断っておく。Googleをどう使えばいいかは、梅田望夫さんとか佐々木俊向さんとか勝間和代さんとかがいくらでも本やネット上で書いていると思うのでそういうのを見るといいと思う。
と、それでもあちこちの国の児童ポルノ禁止法制を読み比べつつ、悩んでしまったのは、(実在児童を前提とした)単純所持処罰の問題。この部分について、懸念が上がっているのは承知であり、私自身も単純に考えるところでは、単純所持処罰は、強制捜索と通信の秘密の制限を止めどなく拡大していくという点において反対ではある。すでに単純所持規制のある国では、児童ポルノが重大な犯罪だということから、通信傍受の対象となっている場合もあり、あるいは予備・共謀罪の対象の場合もある。しかし、まず、抽象的な懸念だけで、この動きを食い止められるのか、というのがひとつ。もうひとつ、具体的ケースに落として懸念を述べている人たちも多いのだが、それが防波堤になるかというと、結構微妙だと思わざるをえないという問題がある。「単純所持処罰」は、いわば劇薬なので、例外規定を設けている国も多い。よく見たのは、普通の人には全く関係ないが、一律禁止にしたら警察も困ったらしい、ということで、捜査・司法関係者など(検挙以降裁判終了に至るまでの弁護人も含むようだ)の正当事由による所持やアクセスを許可する改正を後からやった場合があるようだ。また、被害児童のカウンセラーが被害を把握するために、というのもあったと思う。これ以外でも、「個数が一定以下で適切な方法で削除して通報すればいい」とか、「意図してやった場合に限る」とか、いろいろ限定のつけようはあるようだ。また、自分(子ども)自身や、(片方あるいは両方が年齢上該当で)合法的な合意のカップルや夫婦の私的な範囲での所持を許す場合もある。「単純所持を処罰する改正を行う」という動きが揺るがないとなれば、各国法制を参考にいろいろな例外規定を求めるのに意味はあるが、一方で、各国でそのような例外規定を定めてやりくりしているということは、その手のケースにかかるような事例をもとに単純所持処罰に反対する、というのが、どれだけ意味や効果があるか、というのは、疑問を持たざるをえない。また、厳密に憲法上の問題に落とし込んで、というのも専門家がやる価値があるとは思うけれども、通用するかどうかは微妙なものがあると思う。
そんなわけで、あんまり明るい見通しがないのだが、個人的に「イマココ」の問題として、単純所持処罰がどう困る問題になるか、というと、やっぱり単純所持処罰があるとネットに安心してアクセスできなくなるのが困る。あえて非常にぶっちゃけた話をするのだが、英語圏はイギリスのInternet Watch Foundationあたりがものすごい勢いで通報処理をこなしたからか、とりあえず、GoogleとかマイクロソフトLiveとかの検索で、そう簡単に児童ポルノ画像に行き当たることはない。でも、日本語圏は、まだまだ通報機関がそんなに仕事をこなしておらず、警察もかなり強制捜査対象を厳選しているらしく、あまりに容易に検索経由でアクセスできてしまう。Googleやマイクロソフトのサーバーから児童ポルノのサムネイル画像が多数ブラウザーに読み込まれる、という状況がある。過去数十件の通報をしたけれども、処理に数ヶ月かかり、アメリカへの国際通報ですら明らかに放置されていて処理されないケースもあり、そうこうしているうちに、商業的児童ポルノ業者が、法制度がもっと不十分な国へとサーバーを移しつつある。ユニセフ協賛のヤフーサイトで「警察庁は「児童ポルノ画像自動検索システム」を各都道府県警で稼動させている。…02年の運用開始以降、立件されたのは1件しかない。」とか言っているが、警察庁や各地方警察の限られた予算でクローラーをやってどうするんだ。そんなものは、GoogleとかマイクロソフトLiveとか百度とかの画像検索にマッシュアップで乗っかれば、桁違いの数をこなせるはずだと本気で思うのだ。現状の延長で下手にアクセスを含めて単純所持処罰ということになると、道路がウンコだらけでうっかり踏んづけたら逮捕っていう、そういう状況になりそうで困る。せめてもうちょっとまじめに片付けてからにしてほしいね。