なぜセルフレイティングは日本で普及しなかったのか

2008/02/04

Permalink 04:19:13, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 1665 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲, 言論・表現の自由

なぜセルフレイティングは日本で普及しなかったのか

ICPC緊急シンポを受けて、楠さんがいろいろ書いている。 全体についてもぼちぼち考えていきたいところではあるのだが、その前にひとつ、 PICSベースのセルフレイティングが日本で普及しなかった点について。 ことここに至ると、コンテンツ事業者側の対応がほとんど無かった点について、 今からでも取り入れる方向で提案していく、というのは、それはそれで重要なのだが、 何故普及しなかったかについては、やはりちゃんと把握しておいたほうがいいと思うので。

PICSやP3Pは普及しなかったじゃないかという反論も考えられるが、これはインセンティブがないからであって、

携帯コンテンツ規制 次の論点は - 雑種路線でいこう

もちろんインセンティブ問題はあって、アメリカでは法規制と違憲訴訟が繰り返されるなか、法規制を代替するよりよい手段としてのレイティングとフィルタリングという主張をネット業界として主張してきている以上は、セルフレイティングを業界挙げて採用していく、というのが必要だった、ということがあるだろう。実際、MSNやYahoo.comは、今も ICRA のPICSラベルを採用しているし、多くの大手英語圏アダルトサイトも同様。もっとも、新興ネット企業では採用していないところが多いし、ニュースサイトでも見ない。セルフレイティングを義務づける法案もあったと思ったが、それ自体が表現の自由に抵触するということで没になっている。なお、ICRAのRDFフォーマットのラベルのほうは、Internet Explorer 7 でサポートが始まったぐらいでマイナーなので、まだあまり見ないのが実状だろう。

一方の日本では、これまで新たな法規制の動きがあまり無かった、という意味でインセンティブに欠けていた、というのは一面で事実なんだけれども、逆の方向でも、またインセンティブに欠けていたのだと思う。コストをかけてセルフレイティングすることで「共存共栄」をはかることができたかどうか、なのだが、そもそもフィルタリングの普及推進を業界団体としてやってきたインターネット協会の国分副理事長以下の面々が、そういう意識でセルフレイティングの普及活動をやったことがあったか、というと、はっきりいってそうは見えない。

インターネット協会(それ以前は電子ネットワーク協議会)のフィルタリングについての活動は、初期の段階からどうみてもセルフレイティングよりも第三者レイティングに重点を置いた活動をしてきているし、より広く「違法・有害情報対策」という観点でみれば、「青少年に有害な情報」を含めて、棲み分けではなく抑制されることが望ましいという態度で一貫しているといえる(正面から尋ねれば否定するだろうが、全体としてはそう評価するほかない)。業界団体の立場ということを考えれば、公的規制への防波堤的な役割を多少はしてもいいと思うのだが、少なくとも国分氏の長年の公的な発言からはそういう部分を感じ取ることはできず、むしろ推進の立場だ。

インターネット協会がやっているインターネット・ホットラインセンターの運用にあたっても、「運用ガイドライン対象外」の「まんが子どもポルノ」について、なんら違法性がないと判断しているにも関わらず、外部のNGOに情報提供している。このNGOがECPAT/ストップ子ども買春の会なのか日本ユニセフ協会なのかは明らかではないが、いずれにせよ彼らは「まんが子どもポルノ」の違法化を望んでいて、その活動のために情報提供を受けており、インターネット協会はその活動を助けている。そもそも、運用ガイドラインの決定にあたっても、狭くポイントを押さえてという形ではなく、どちらかといえばなるべく広く扱おうをする姿勢が明白だし。

一方、いつの間にかインターネット協会は ICRA 改め Family Online Safety Instituteとの関係を組織としては持っていないようだが、そのFOSIは、準会員として、Sex Toyショップをはじめとしたアダルト系といっていい企業を少なからず抱えるようになっている。これこそ win-win の関係といっていいだろう。ちなみに正会員のほうは大手通信業者が中心。こういうスタンスをインターネット協会の今の体制でとれるかというと、とれないだろうしとる気もないのではないかという気がする。

もちろん、インターネット協会を中心として自主規制フレームワークが作られる必然性はなく、実際モバイルコンテンツフォーラムは独自の枠組の構築を始めているわけだけれども、おそらくはモバイル、というか携帯電話限定でこの話が済むとも思えない。フィルタリング義務化への法的規制への動きが消えていないなか、インターネット協会のスタンスをこのまま放置することの有害性というのは、きちんと考えられるべきだと思う。

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コメント: 珈琲好き [訪問者] Email · http://likecoffee.iza.ne.jp/blog/
始めまして

国際的な枠組みや文化を吸収しようと考えると時間ばかりが掛かってしまうと思われます。

日本の民間でやれる事はまずやって、政府・議員に呼びかけていくのも一つの手では無いかと思って居たりします。

TBしておきましたので、ご意見頂ければ嬉しいです。
一応、自民党法務委員会の議員の方のブログには書いているのですが、今の所反応はありません。
Permalink永続的リンク 2008/02/04 @ 08:37

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