フィルタリングソフトなんてろくでもないことは世界的には常識

2008/02/07

Permalink 03:57:49, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 3846 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲, 言論・表現の自由

フィルタリングソフトなんてろくでもないことは世界的には常識

直前のエントリにややお怒りのトラックバックを頂いたんだが、率直にいって blogosphere 的に私のブログに文字通りの少年少女諸君が大勢辿り着くとも思っていないわけで、携帯電話キャリアの中の人のほうが先に見ていたりするらしいのが実際のところです。そもそも、フィルタリングなしのWeb閲覧にリスクが大きいとも思っていないし、少ないリスクをフィルタリングで除去できるかというとそんなものでもないという考えで書いています。jigブラウザFREEって基本的に一日10ページまでらしいし。

さて、実際に携帯フィルタリングサービスを試したり、データベースをいろいろ検索している方々の話がすでにいくつか出てきています(その1その2その3)。異常に不便になったり、そのわりに変に穴があいていたり、いろいろしています。個人的には、うーん、あそこ載ってないってそれでちゃんとcrawlingしてるのかよ、と思う部分もあるのですがそれはともかく。

フィルタリングソフト・サービスが、false positiveにもfalse negativeにも信用ならんね、という話は、英米の話としてはかなりしつこく調査されてすでに終わった話題でもあったりするのですが、どうも日本ではその前提が共有されていないなと。まぁ、日本で家庭向けにメジャーな業者がアメリカなどとは異なるという状況があるので、決め付けるのはよくないということで慎重に語りすぎてきたのかもしれないですね。

アメリカでは、フィルタリングソフトウェアが出て早い時期から、Peacefireという団体がこの問題を扱っていてサイトには実例も載っています(CNET Japanに紹介記事あり)。そのほかに、Seth Finkelsteinという人の活動もあり、こちらはCensorware Project、というのもやっていました。これらは Net Activismとして行われてきており暴露攻撃的な要素も強かったのですが、正統アカデミズムの中では、ハーバード大学のBen Edelman(最近はspywareなどのオンラインプライバシーの問題に研究対象が移っている)による調査が広く知られています。詳細はそれぞれのサイトに出ている個別の例をみればわかりますが、結構ひどいものです(調査自体は、すでに数年前のものとなってしまったので現状を反映している保証はないけれども)。

楠さんがURLベースのフィルタリングであること自体が時代遅れと指摘しているのだけれども、それ以前に、昔のパソコンは今に比べればはるかに性能が低いわけで、そうなると、仕様としてはともかく現実の動作としては細かいディープリンクの単位でラベルを貼って制御、なんて、無理があるわけで、おおざっぱにいいかげんなラベルを貼ってきて、それが積み重なった上に現在のデータベースがある、というのが現実のように思います。上で挙げたような海外の具体例には、どうみても単にcrawlerから拾ってそのまま突っ込んだだけにしか思えない例もあり、それとは別に、宗教保守の同性愛嫌悪とか反フェミニズムに迎合してるだろ、という例もあり。日本国内の論文などでは、こういった動向を情報倫理とか図書館情報学とかの研究者の一部はおさえてきているし、大学向けの教科書(とくに翻訳物)では言及例もある(例えばサラ・バーズ著「IT社会の法と倫理」第2版)のだけれども、日本国内でフィルタリング導入の旗振り役をしてきた人々は、大学人を含め、そのあたりの話を、かなり意図的にしないようにしてきたように思います。

もちろん、アメリカのベンダーが酷かったことが日本のベンダーが酷いと証明するわけではないのだけれども、アメリカのベンダーのように徹底して調査され、叩かれてこなかった状況があるというのを、どう考えるかですよね。何故私がやらなかったかといえば、法的・社会的に、辛いよ、としかいいようがないですし。インターネット協会のフィルタリングソフトについて過去いくつかやったわけだけれども、私がやった最後の暴露とそれに対するインターネット協会の対応を考えると、そこから先をあえてやっていたら、インターネット協会から訴えられる危険がありましたから(最終的には、インターネット協会は内容を外部に明かさないことを前提としたカスタマイズツールによってラベルデータをチェックできる体制をつくったけれども、それは透明性が確保されたとはいえません)。

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コメント, トラックバック, ピンバック:

コメント: syamane [訪問者] Email · http://www.cpsr.org/Members/syamane
おおざっぱにいいかげんなラベルを貼ってきて、それが積み重なった上に現在のデータベースがある、というのが現実のように思います。


そう思う。また仕様不明瞭なおそまつなインフラ議論で世界に恥をさらすことになるかと...。

「情報セキュリティ技術大全」のロス・アンダーソンも書いてる論集「Access Denied」では最近の情報も載ってるみたいだが、まだ入手していない。

http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=11329
http://mitpress.typepad.com/mitpresslog/2008/02/internet-censor.html
Permalink永続的リンク 2008/02/12 @ 12:40

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