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児童ポルノの定義拡大問題について(1)

2008/03/12

Permalink 04:03:55, by Nobuo Sakiyama Email , 27 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

児童ポルノの定義拡大問題について(1)

児童ポルノ禁止法改正問題にからんで、日本ユニセフ協会のキャンペーンが、アニメ・漫画・ゲームの違法化をも訴えるものとして、ネット的に強い反発を買っている。といって、多分、そういう反発は「想定内」であり、それをも含めてのメディアキャンペーンなのだと思う。ここで必要なのは、定義拡大の主張に「事実」として含まれる内容の吟味だと思っている。

被写体が実在しない場合についての違法化について、キャンペーン側では、すでに欧米で処罰対象の国があるとしている。ここで国名が出ていないのがやっかいだが、とりあえず有名どころというとドイツ・アイルランド・カナダ・オーストラリアか。イギリスは「擬似」までは対象。

ドイツの場合、基本法で表現の自由が結構明示的に制限されているので、さもありなんといったところだろうか。ナチス関連が有名だけど、青少年保護も入っているという。その前提でドイツの刑法(リンク先は英訳)をみると、ポルノ頒布罪を定めた184条の第3項から第6項が児童ポルノ関連となっている。第3項は暴力行為、児童(14歳未満)の性的虐待、獣姦といったものを対象(object)として含むポルノの頒布などを罪としている(表現形態は問うていない)。第4項は、「児童の性的虐待」が実際のものか、真に迫ったもので、商業的な頒布などの場合に罪を重くしている(これで、第3項が実在の児童に結びつくものでないことがわかる)。第5項は、「児童の性的虐待」が実際のものか、真に迫ったものの場合の入手や単純所持を罰している。「児童の性的虐待」は第176条で規定されている。実在の児童を使った児童ポルノ製造は続く第176a条の「児童の深刻な性的虐待」の中に規定されていて、「児童の前で性的行為をすること」が含まれる一方で、単なる児童ヌード撮影は含まれないように読める。

[追記: 上記の説明の前提となる英訳はやや古いものだった。現在は、児童ポルノ罪は現実の児童に関するものの単純所持を含むように改正され、184b条(リンク先はドイツ語)となっている。]

イギリスの場合、何度も改正されているので分かりにくいのだけど、1978年に「みだらな児童(16歳未満)の写真」の頒布などが罪となり、1988年に単純所持が罪となり、1994年に「みだらな児童の擬似写真」が対象に加わり、2003年に「児童」の定義が18歳未満に引き上げられた。ただし、この年齢引き上げには、16歳以上で婚姻関係にあるないしは同棲している状況で、児童の同意があって第三者にそれが見せたり配られたりしていない状況は罪としない、という例外措置がとられている。この「みだらな児童の写真」には、単なるヌードが入ることは判例で確立している。「擬似写真」は、「写真のように見えるもの」ということで、「みだらな児童の写真」をPhotoshopなどで加工して性的虐待との関係をごまかそうとする動きを封じよう、その場合に大人を子どもっぽく加工した写真とか、空想産物のリアルな超精細CGもひっかかるけど、それは児童の性的虐待の問題を考えたら許容されるよね、ということでそうなっている。ここで、漫画やアニメは「擬似写真」に含まれていない。 その上で、イギリス内務省は、昨年、 Consultation on the possession of non-photographic visual depictions of child sexual abuseというペーパーを出している。ここでは、「児童の性的虐待を描いた」漫画やアニメの違法化について提案されている(おそらくはUNICEFやECPATの働きかけによる)が、一押しは「みだらな児童の擬似写真」の定義拡大ではなくて、独立した法律を作ることとなっている。「みだらな」では定義が広すぎるし、罪も重すぎるので、範囲を限定して罪も軽くする、ということ(ただし、これでひっかけて捜索すれば本物の児童ポルノもどうせ持ってるだろ、という見込みも入っている)。しかし、結果としては、現在イギリス議会で審議中で、もう貴族院に来ている Criminal Justice and Immigration Bill 2006-07 to 2007-08では、「写真や擬似写真ではないが、それらに由来するもの」(鉛筆やコンピュータソフトでのトレースによるものなど)を児童ポルノに含めるということで、現実の児童の性的虐待からは離れない水準での改正に留まっている。

長くなってきたし、寝かしつづけるのもなんなので以降はまた後で。

ということで続きもどうぞ。