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FBI児童ポルノおとり捜査は(あまり)影響ないのでは

2008/04/24

Permalink 00:58:58, by Nobuo Sakiyama Email , 58 words   Japanese (JP)
Categories: 監視社会, 児童ポルノ問題

FBI児童ポルノおとり捜査は(あまり)影響ないのでは

児童ポルノ単純所持がらみのFBIおとり捜査が日本在住者に与える影響の件だけれども、個人的にはこれはそれほど心配するほどのことではないと思っている。逆に、心配しなければいけないレベルの法改正が行われるとすれば、それは現在の単純所持処罰の検討でされている議論をはるかに越えた、広範な行為を処罰対象とする議論として、より大きな問題としなければならないと思う。

どういうことかというと、そもそも最近話題になった「おとり捜査」では、えのさんが書いているような「サムネイル画像」のもとになる画像がFBIから提供されたわけではない。児童ポルノは被害児童がいる犯罪である以上、麻薬と違っておとり捜査でも現物を用いることは許されない(直ちに検挙できなければ、さらなる画像の拡散を招くことが確実)。

事実関係をGIGAZINE記事(元ネタはCNETのDeclan McCullagh記事)でみれば分かるが、この件は、児童ポルノが存在しないサイトをFBIが用意し、そのサイトに児童ポルノがあるよという偽記事をリンク込みであちこちにばらまいて誘導した、偽リンクによるおとり捜査となっている。アメリカの連邦法で具体的にどのようなことになっているかというと

(b) (1) Whoever violates, or attempts or conspires to violate, paragraph (1), (2), (3), (4), or (6) of subsection (a) shall be fined under this title and imprisoned not less than 5 years and not more than 20 years, but,...

US CODE: Title 18,2252A. Certain activities relating to material constituting or containing child pornography

という具合に、明示的に未遂や共謀を含めた形で処罰対象としている。ここでは(州間通信における)受信の「未遂」(attempt)を容疑として強制捜査の端緒としたことになる(2259A(b)(2)が一定条件での単純所持(未遂など同様に含む)の罰則だが、これは問題のおとり捜査での家宅捜索令状請求の根拠とはならない)。

仮に当該おとり捜査のIPアドレスを警察庁が保持していたとして、そのアクセスでは児童ポルノの取得は行われていないのだから、それ自体が単純所持の原因とはなりえない。また、仮に児童買春・児童ポルノ禁止法の改正において単純所持処罰に加えて未遂罪をも入れたとして、それで処罰することは法の不遡及ゆえに許されない。万一、当該のおとり捜査のデータで強制捜査が行われたら、それ自体が違法だと思う。だから、現時点ではあまり心配しても意味がないのかなというところだ。ただし、おとり捜査のリンクをばらまいた場所が常習的な児童ポルノ交換用のフォーラムなどに限定されていたら、上記の理由付けは通らないかもしれない。正確なところは刑法や刑事訴訟法の専門家や弁護士に尋ねるべきかな。

あと、ひっかかったっぽい人が現状で何も心配しなくていいかというとそういうことはなくて、日本とアメリカの間では日米刑事共助条約が結ばれていてすでに批准されており、ここでは「双罰性」が緩和されている。アメリカで犯罪であれば日本で犯罪でなくてもアメリカからの要請で任意捜査まではできることになっている。捜査関係事項照会書での個人情報開示は警察にとっては任意捜査だから、ISPがそれで開示すれば、アメリカに出かけて入国したら逮捕、という展開が待っている可能性が、現状でもありえないわけではない。