高市早苗議員がここにきて「青少年をインターネット上の有害情報から守る為の法律案骨子について」とか「インターネット関係業者による法案反対記者会見への回答」とか、自分のサイトに上げる事態になっていて、必死になっています。で、まだこの線が完全には死んでいないという困った事態らしいです。
この骨子、自分で載せてるんだから過去のものと違って間違いなく最新版でしょう。もうほんとにこの線の息の根は誰か止めてほしいなぁ。ただ、本人が何を維持したいのかは、分かりやすくはなった。
「青少年有害情報等の定義」から。青少年条例と一緒だろ、と高市議員はおっしゃるわけなんだけど、「著しく」というのが情報内容の程度にかかっているのか、「影響」にかかっているのかで、全然違う話になる、というのは、以前書いた。さらに5月1日のMIAUシンポで話した内容(資料はここに。MIAUのサイトでの公開も他の発表者資料とあわせて追ってあるはず)をふまえていうと、これにCOPA違憲訴訟再審の地裁違憲判決のロジックを使って突っ込むことができるように思う。「十八歳に満たない」青少年には、17歳も、12歳も含まれる。もちろん、乳幼児も含まれる。高市法案の「青少年有害情報」の定義では、個々の表現の程度は問われていない。青少年に対し「著しい」影響があるとするとき、その「青少年」は総体として問われているので、16、7歳程度にとって「著しい」影響があるとまではいえない内容に対しても、「著しい」影響があるといえてしまう場合があるだろう。より細かくいえば、そういう判断をすることを政令で定める基準として設けることを排除しない内容になっている。そして、とくに「性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼすもの」という表現は客観的なものではなく、広範に18歳未満の者の情報へのアクセス権を阻害する可能性がある。「その他の性欲を興奮させ又は刺激する内容の情報」についても程度を問わないということになれば、性教育や避妊に関する情報を広く規制対象とすることすら可能だろう(「青少年インターネット環境整備審議会」の意見聴取で一定の配慮をしているつもりなのだろうけれども、そういう問題ではない)。
「ウェブサイト上の青少年有害情報が青少年に閲覧されないようにするための措置」は、ISPの責任制限は入ったが、ISPに罰則つきで義務を課している点は相変わらず。携帯電話フィルタリングについて、親が外すオプションを許さない点も変わらず。
「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」について「青少年の発達段階及び利用者の選択に応じ、きめ細かく設定できる」ことを求めているのは、法案の定義する「青少年有害情報」にまで至らないものを対象としていて、「青少年有害情報」はカスタマイズによらず「閲覧が制限されないものをできるだけ少なくする」ことを求めている。
高市議員は、「保護者の子どもの教育に関する決定権」について「配慮」しているとしつつ、しかし、制限することを肯定している。表現の自由に対する制約の面も現状認められている程度だとしているけれども、すでにみたように同じ程度でもない(カテゴリも増えているし)。「削除義務」ではない、とするけれども、「フィルタリングソフトへの連動措置」でさえも言論表現一般に対して求めるのは表現の自由への大きな制約だろう(風営適正化法を改正して、すでに規制対象の商業的アダルトサイト(映像送信型性風俗特殊営業)に関してサイト入り口を含めた「フィルタリングソフトへの連動措置」を求める程度であれば、出会い系サイト規制法の改正案がすんなりと全会一致で衆議院を通過しているように、おそらく大きな抵抗はないだろうから、そうじゃなくて広汎な規制をしたいんですよねぇ…)。
児童ポルノ禁止法の単純所持処罰の改正の動きで、与党PTから「性的好奇心を満たす目的」に処罰するという案が出ているという報道について、奥村弁護士が「ほんとにできれば、性欲刺激要件とダブルので、限定にならないような気がします」と述べている。実際問題、全体からみればごく一部であろうとはいえ、成人ポルノと児童ポルノを確たる区別なく配布しているネット上のサイトはそれなりにあり、要件を「性的好奇心を満たす目的」としたところで、成人ポルノを目的としてアクセスして児童ポルノを所持してしまった場合、処罰される恐れがあるように思う。
最近、アイルランドで興味深い事例があった。 アイルランドのウェストミース州アスローンの地元紙 Athlone Advertiser によると、190枚の静止画と7つの動画で児童ポルノ所持罪に問われていた男性が無罪となった。この男性、実は「巨乳が好き」ということで、検索して出てきた有料サイトに登録して画像を自動的にダウンロードしてハードディスクに溜め込んだりCD-ROMに複製したりしていたところ、その中に児童ポルノが混ざっていて罪に問われた、ということのようだ。そして、「アジア系の(女子高生に見える)制服姿の女性」の画像について、しばしば大人が演じているから、そのような姿だからといって児童ポルノだと判断できるわけではない、と主張した。また、大量の画像について、そもそも中身を確認しないで複製することが少なくなかったとしている。こうした主張が通り、また、動画のほうは少なくとも1つがアイルランドの国内検閲制度を通過した映画からのものだ、ということが分かり、無罪となった(ただし、この訴追を通じて男性が職場である大学のネット環境をポルノ入手のために濫用していたことも明るみになってしまい、辞職に追い込まれている)。
楠さんが簡単にふれている英米の場合のような過酷・過剰な制裁を伴う場合もあれば、この例のように、非常に慎重な「疑わしきは被告人の利益に」を地で行く判断を陪審が下す環境にある国もあり、その程度は様々だと言える。日本での単純所持罪も関しても、その気がない人を罰するような定義が成されてはならないと思う。
日々の意見やコメント、出来事などを書いていきます。
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| << < | > >> | |||||
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | |