自民党「青少年による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」/民主党「子どもが安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」が来週にも一本化して表に出たら議論しないで通すっぽい報道が出ていて、かなり危機感を覚えている。追いかけきれていないけれども、変なものが出たらほんとに困る。
とりあえず、手元の自民党案要綱も微妙に更新されたけれども、これが最新かどうかは知らない。とりあえず、公布日施行とか言ってたのはやめたようで、「青少年閲覧防止措置」の政府からの要請も「違法情報について」という限定は入り、情報発信者に対するサーバー管理者の損害賠償責任の制限も同様の趣旨で限定はされた。しかし、ここからが問題で、「違法情報」と言っているのだけれども、これには、厳密な意味で公然陳列等が違法となる情報ばかりではなく、「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」が含まれている。
昨今の「殺人請負人が登場してしまう闇仕事サイト」といったものや自殺サイトといったものを念頭に、そういうものを制限しよう、という考えなのだろう。でも、「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」の発信は、それ自体は今のところ、違法じゃない。それを制限するのは表現の自由の制約で問題だ。
…と言ったところで、「闇サイト殺人」とか「硫化水素自殺の続発」とか、そういうのを防ぐのには表現の自由の制約も仕方ないのではないか、という意見は当然強くあるだろう。それに、現行法でも、売春広告や違法薬物売買の広告は違法だから、公共の福祉によって表現の自由はある程度制約できる、という人も多いだろう。
しかし、ここで踏みとどまって考えてほしいのだが、まず、ここで出てくるような「青少年閲覧防止措置」は、ターゲットを絞り込んだように見える文面ゆえに、実務的には、結局、当該情報の発信を停止させる措置として運用される可能性がより高まっているのではないか。私が見ている自民党案では、サーバー管理者の責任制限について「当該措置が青少年間覧防止措置として必要な限度において行われたものである場合」という限定があるけれども、社会的に一定の地位のあり、かつ、現状でアダルト系のためのアクセス制限のシステムをもっていないサーバー事業者にしてみれば、「違法情報」のために「青少年の閲覧を防止しつつ成人には閲覧ができるようにする措置」のためのシステムを組む動機は乏しい。措置が「必要な限度」かどうかは、サーバー管理者がどのようなシステムを持っているかどうかにも依存するはずだしね。
その上で「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」というのを考えてみるのだけれども、この案では、「犯罪」の内容について限定がない。殺人・傷害・誘拐、といったものを列挙してみると、なるほど仕方ないな、という雰囲気が漂ってくるのだけれども、犯罪って一番広くいえば、違反すると刑事罰を課せられる違法行為がみんな含まれてくる。政治的なビラのマンションのドアポストへの投函で住居侵入罪で有罪になって最高裁で確定した場合もあれば、高校の卒業式で君が代斉唱時に着席するよう式典中に呼びかけた元教諭が威力業務妨害罪で高裁でも有罪になった、というニュースがちょうど流れている。あるいは、日本では公務員のストは違法で、有罪判決もたくさんあって、最近は公務員スト自体かなり減ったがそれでもたまにある。で、行為が犯罪になるかどうかはそれはまた別の問題として、そういったジャンルにおける「直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」というのが、「違法情報」扱いを受けて表現の自由を制限される可能性を帯びるとなると、特に野党や野党支持者のみなさんにとってはそれはどういうことか、ということをよく考えてほしい。
直接刑罰の対象となるという話ではないが、「共謀罪」の議論と話は似てくる部分もあるのではないか。ここで、対象犯罪の列挙と個別検討なしに「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」の制限を広く認めてしまうというのはあまりに問題が大きい。そういう検討は、今の日程では不可能だから、どうしても「青少年間覧防止措置」というのをこの国会でやりたければ、ホットラインセンターで現在「違法情報」として処理しているような厳密な違法情報の限定列挙だけにするべきだ。可能ならまるごと先送りしてじっくりと検討するべきだけどね。
フィルタリング法案がここにきて進展をみせていて、民主党が骨子をサイト上で発表する一方、自民党は、サイト上にはないが報道はされている。自民党案は、困ったことにきっちりと公表されておらず、ニュアンスも報道によって違いがある。リンクをしたスポニチ報道は、通信社記事だと思うが自民案は民主案に比べて「国の関与が強まる」ことが明確となっている。すなわち、
といったあたり。日刊スポーツにも同内容あり。このあたり、朝日・読売・毎日といった三大紙は、なぜか弱めのニュアンスの報道。
というわけで、かなり新しい自民党案の要綱を見ているのだけれども、これはまずい。規制推進派がかなり巻き返した印象。
報道にある部分では、「有害情報の基準策定や有害サイトを判定する民間機関を政府が審査・登録する」というのが問題。ここの「民間機関」の権限が、フィルタリングソフトの適合認定を含んでいて、それが携帯電話ISPのフィルタリング提供義務やISPのフィルタリング提供努力義務、PCメーカーのフィルタリングソフト組み込み義務とリンクしている。一段間接的になっているけれども、政府がかなりのコントロールをできる内容になっている。「有害サイトを判定する」という部分にも問題があるのだけど、後述。
この法案は、さらに「青少年閲覧防止措置」というのを定めていて、サーバー管理者が「知ったとき」に措置する努力義務を、とりあえずは違法情報に対して課している。のだけれども、政府が「通報処理団体」(審査・登録される民間機関と重なる部分もあるけれども同一ではない模様)からの「申出」に応じてサーバー管理者に「要請」する場合、その対象情報がどのようなものであるかは限定されていないようだ。「申出」については「青少年の健全育成のために必要があると認めるとき」であれば、情報の種類は問うてないように見える。前述のように、政府が審査・登録した民間機関が有害サイト情報を収集してサイトに通知し、さらに政府要請の対象とすべく申出できるということで、サーバー管理者の努力義務とは別に、「青少年閲覧防止措置」は幅広いものだと想定されている。そして、サーバー管理者は、「青少年閲覧防止措置」について情報発信者からの損害賠償責任について免責をされるのだが、これが無限定の免責になっているようだ。情報発信者にとっては著しい不利益が発生する可能性がある。プロバイダ責任制限法第三条2項二号のように、情報発信者の同意を得る機会を設けるなどのデュープロセスを課すような内容になっていない。
そして、そもそも論的には、「青少年有害情報」というのが定義されている(これは報道とは異なる)のだが、民主党案にあるように「著しく〜」という限定をつけることなく、「性欲を興奮させ又は刺激する情報」や「残虐な内容の情報」というのが含まれている。「青少年有害情報」は、サーバー管理者の努力義務とはリンクしていないのだが、その他の部分には広く影響するものとなっている。程度を問わないということは、社会的に問題ないとされるような性教育教材も対象とされる可能性があるし、残虐な内容については戦争被害についての教材なども該当してしまう可能性があるだろう。そして、よくよく見れば、「その他青少年の健全な成長を阻害するおそれがある情報」というキャッチオールの文言まであり、「青少年有害情報」は、謙抑的な意味で定義されていないのではなく、なんでもありの規制をかけられる方向で曖昧な定義になっているように見える。
また、誤解甚だしいと思われるのは「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」の定義で、インターネット上の情報について「利用者の発達段階に応じた一定の基準に基づき選別した上で」とあるのだが、一般に流通しているフィルタリングソフトウェアの多くの前提は、事業者は、インターネット上の情報をある程度客観的な属性で分類した上で、利用者側の設定で情報の分類に基づいて閲覧許可・不許可を判定することで情報の閲覧を制限するプログラムを提供している、というものだ。これは、携帯電話フィルタリングのデータを提供しているネットスターからしてそうだ。つまり、「利用者の発達段階に応じた一定の基準に基づき選別」することは行われておらず、利用者側に委ねられているということ。推奨設定として利用者の発達段階に応じた閲覧許可・不許可の設定を提供している製品も多いけれども、それらは推奨値に過ぎない。また、現時点では一律の基準となっている携帯電話フィルタリングサービスや、その他のフィルタリングサービスで利用者側でのカスタマイズができず一律の基準や発達程度に応じた設定が提供されている場合もあるけれども、それらは技術上・サービス提供上の制約としてそのような形態になっているに過ぎず、「利用者の発達段階に応じた一定の基準に基づき選別」が行われているわけではない。つまり、法案の定める「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」には、多くのフィルタリングソフトは該当しないのだ。
フィルタリングソフトは、そもそもが一律な情報受信の法規制に対するオルタナティブとして、受信者側の設定での選択を重視するソリューションとして出てきたものだ(それの建前と本音の差とか理念と現実の乖離とか透明性の問題とかはとりあえず置いておく)。民主党案はそこを理解して「子ども用フィルタリングソフトウェア」を定義しているが、自民党案では「選択」の視点がない。
おまけ的には、民間機関と関係閣僚会議の設置以外の部分が公布日施行って、どうみてもいきなり回らない仕掛けなので即日で日本のネット産業死亡とかそういうことをしたいのかしらと素で疑ってしまうよ。
楠さんが指摘する自主規制機関のガバナンス問題というのは、実に困難かつ深刻な問題なんだよね。
仮に第三者機関としてSafety Onlineを策定しているインターネット協会を念頭に置いているとすると、窓口機関業務に関する警察庁との受発注関係など4月末の警察庁による「硫化水素」有害指定で顕在化したガバナンスの問題を整理する必要がある。
神は細部に宿る - 雑種路線でいこう
日本の場合、インターネット協会のその出自からして、法人化のタイミングで日本インターネット協会と電子ネットワーク協議会の合併があったが、それ自体が主務官庁の強力な要請、というか財団法人としての認可の条件だったという話があり、自主規制関係の部門はほとんど電子ネットワーク協議会から取り込まれた経緯がある。
国分明男副理事長が電子ネットワーク協議会時代からその部分は一貫して統括しているけれども、彼の公的な言動からは、インターネット協会の取り組みが業界団体としての企業利益や、あるいは実際にネットを使っているネットユーザーの利益を反映する、という面は、率直にいって希薄で、ネット規制の積極推進派的なものが目立っている(もっとも、さすがに国会での参考人質疑となると法規制に慎重な態度とはなっているが)。それが、彼個人の考えなのか、そのぐらいのポジションをとらないと主務官庁からのプレッシャーに対して組織を守っていけないのかは定かではない。私が知っているインターネット協会関係者の話からすると、インターネット協会の自主規制事業(レイティング事業やインターネットホットラインセンターなど)は、主務官庁や警察庁の意向を背景として、会員企業の声を反映することなくやりたい放題と なってきた趣きがあり、携帯フィルタリング原則化騒動のあとのSafetyOnline4検討開始にあたっては、レイティング/フィルタリング連絡協議会からの宮本潤子氏(ECPAT/ストップ子ども買春の会)のパージといった、ある程度まともなガバナンスが働いた話も聞こえたけれども、NHKニュースにこの件で登場した国分氏の発言は、受信者側の自主的な選択に資する、というのとはかなり異なる方向性を向いたものといわざるを得ず、困ったものだと思った。
世界的には、イギリスの違法コンテンツ通報機関として Internet Watch Foundationが有名で、ここが児童ポルノブロッキングのURLリスト作成などもしているが、2006年末のThe Register記事によれば、イギリスでも政府の規制強化の圧力のもとガバナンス構造の変質があり、組織の透明性や説明責任は大きな問題となっているようだ。IWFは設立当初はネット業界関係者のコミットがきちんとあったのだが、実質的な規制能力の高まりと共に、ネット業界からのチェックは入れにくい形に変質し、だからといって代替できるチェックの仕組みが育っているわけでもない、という状況のようだ(なお、The Register誌のサイトは、IWFやイギリスの児童ポルノブロッキングについて良質な記事が大量にあるようなので、関心のある人にはググって一通り読むことをおすすめする)。
検索していて参議院法務委員会の5月8日の議事録にいきあたって、以前ちょっとふれた松浦大悟議員がフィルタリングとLGBT差別の問題について質問していて、最終的に鳩山法相が答弁しているのだけど、結構まともな答弁になっていたので以下に紹介。まずは松浦議員の質問からだけど、文字になってると結構長いので途中を端折った。全文は議事録をみてほしい。基本的に、私が以前問題にしたの(のらさんのところに転載されたmixiのコミュでの話のほうが分かりやすいかな)と問題意識は同じ。
○松浦大悟君 何が言いたいかといいますと、実は現在、携帯電話会社各社は、子供に対して違法、有害なサイトから子供を守るためとしてフィルタリングサービスの提供を行っています。……
このように、現在、急速に未成年者の携帯電話へのフィルタリングの適用が進んでいるのですが、実はここで一つ指摘しておきたいことは、現在のフィルタリングの一部が性同一性障害者や同性愛者といったセクシュアルマイノリティーの人権を侵害しているということなんです。
どういうことかといいますと、携帯電話会社四社のうち大手を含め二社では、フィルタリングで排除するカテゴリーにライフスタイルというのを設けているんです。このライフスタイルというのがどういうものかといいますと、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダー、いわゆる性同一性障害などの生活スタイルに関する各種情報の提供ということになっているんですね。
……
民間企業であるとはいえ、今や携帯電話会社はかなり公共性の強い事業であり、社会的影響の大きさからいってかなり問題のあるやり方ではないかというふうに思うのですが、法務省としてこうした企業に対し指導すべきだと思いますが、その辺りのお考えをお聞かせください。
これに対して、政府参考人の法務省人権擁護局長は、「具体的な事案を見てみないと」分からない、と逃げる答弁を続けていたのだけれども、これに対して鳩山法相は次のように答弁した(これもやや長いので若干端折った)。
○国務大臣(鳩山邦夫君) ……
そうしますと、同性愛の方や性同一云々の方の人権というのも、それは立派に守っていかなければならない。松浦さんが先ほどからおっしゃっていることの論旨は、私は決して間違っていないと思います。ただ問題は、そのフィルタリングして有害情報を排除したいというのは国民全体の願いだろうと思います。むしろ、だから性同一障害とか同性愛というのはおかしいんだ、おかしいんだというめちゃくちゃな書き込みがあれば、そういうページこそ本当は除外をしたいということですから、あくまでも中身の問題ということになるわけでしょうが。
今後フィルタリングの問題が本格化してくる。現在総務省で、今年の秋までにはインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会が結論を出そうとしている。その結論を受けて携帯電話やインターネットの会社に対してどういうフィルタリングを求めていくかということになっていくんだろうと、こう思います。ただ、そういう中で、性同一の問題あるいは同性愛の方々の問題を、これは明示的にフィルタリングするようなことがあれば、これはあってはいけないことでございますから、人権擁護の観点で我々は物を言わなければならないだろうと。それは、人権局長はなかなか苦しい答弁をしておりますけど、私はその辺はある程度は割り切ってもいいのではないかと、こう思っております。
ただ、内容が問題ですからね、本当は。内容は一つずつ本当は大問題なんだけど、一つずつフィルタリングするということはこれは絶対不可能ですから。そう考えた場合に、一つの概念として性同一の方の情報をフィルターに掛ける、あるいは同性愛の方々のことをフィルターに掛けるということは基本的にはあってはならないことと思っています。
明確に、「有害サイト規制」としてのフィルタリングにおいて、LGBTを対象としたフィルタリングを「あってはならないこと」と答弁している。国会質問の内容は基本的に事前通告されていることを考えると、どこまでを官僚が答弁をし、どこからが政治家として大臣が答弁するかは事前に考えられていたとも思われ、明確な答弁が鳩山法相から出た、というのは政府の明確な態度だと言えるはずで、これは実にいい仕事だなぁ、と率直に思った(踏み込んだ内容だから大臣から述べるべき、ということだったのだろうと思う)。
高市早苗議員がここにきて「青少年をインターネット上の有害情報から守る為の法律案骨子について」とか「インターネット関係業者による法案反対記者会見への回答」とか、自分のサイトに上げる事態になっていて、必死になっています。で、まだこの線が完全には死んでいないという困った事態らしいです。
この骨子、自分で載せてるんだから過去のものと違って間違いなく最新版でしょう。もうほんとにこの線の息の根は誰か止めてほしいなぁ。ただ、本人が何を維持したいのかは、分かりやすくはなった。
「青少年有害情報等の定義」から。青少年条例と一緒だろ、と高市議員はおっしゃるわけなんだけど、「著しく」というのが情報内容の程度にかかっているのか、「影響」にかかっているのかで、全然違う話になる、というのは、以前書いた。さらに5月1日のMIAUシンポで話した内容(資料はここに。MIAUのサイトでの公開も他の発表者資料とあわせて追ってあるはず)をふまえていうと、これにCOPA違憲訴訟再審の地裁違憲判決のロジックを使って突っ込むことができるように思う。「十八歳に満たない」青少年には、17歳も、12歳も含まれる。もちろん、乳幼児も含まれる。高市法案の「青少年有害情報」の定義では、個々の表現の程度は問われていない。青少年に対し「著しい」影響があるとするとき、その「青少年」は総体として問われているので、16、7歳程度にとって「著しい」影響があるとまではいえない内容に対しても、「著しい」影響があるといえてしまう場合があるだろう。より細かくいえば、そういう判断をすることを政令で定める基準として設けることを排除しない内容になっている。そして、とくに「性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼすもの」という表現は客観的なものではなく、広範に18歳未満の者の情報へのアクセス権を阻害する可能性がある。「その他の性欲を興奮させ又は刺激する内容の情報」についても程度を問わないということになれば、性教育や避妊に関する情報を広く規制対象とすることすら可能だろう(「青少年インターネット環境整備審議会」の意見聴取で一定の配慮をしているつもりなのだろうけれども、そういう問題ではない)。
「ウェブサイト上の青少年有害情報が青少年に閲覧されないようにするための措置」は、ISPの責任制限は入ったが、ISPに罰則つきで義務を課している点は相変わらず。携帯電話フィルタリングについて、親が外すオプションを許さない点も変わらず。
「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」について「青少年の発達段階及び利用者の選択に応じ、きめ細かく設定できる」ことを求めているのは、法案の定義する「青少年有害情報」にまで至らないものを対象としていて、「青少年有害情報」はカスタマイズによらず「閲覧が制限されないものをできるだけ少なくする」ことを求めている。
高市議員は、「保護者の子どもの教育に関する決定権」について「配慮」しているとしつつ、しかし、制限することを肯定している。表現の自由に対する制約の面も現状認められている程度だとしているけれども、すでにみたように同じ程度でもない(カテゴリも増えているし)。「削除義務」ではない、とするけれども、「フィルタリングソフトへの連動措置」でさえも言論表現一般に対して求めるのは表現の自由への大きな制約だろう(風営適正化法を改正して、すでに規制対象の商業的アダルトサイト(映像送信型性風俗特殊営業)に関してサイト入り口を含めた「フィルタリングソフトへの連動措置」を求める程度であれば、出会い系サイト規制法の改正案がすんなりと全会一致で衆議院を通過しているように、おそらく大きな抵抗はないだろうから、そうじゃなくて広汎な規制をしたいんですよねぇ…)。
児童ポルノ禁止法の単純所持処罰の改正の動きで、与党PTから「性的好奇心を満たす目的」に処罰するという案が出ているという報道について、奥村弁護士が「ほんとにできれば、性欲刺激要件とダブルので、限定にならないような気がします」と述べている。実際問題、全体からみればごく一部であろうとはいえ、成人ポルノと児童ポルノを確たる区別なく配布しているネット上のサイトはそれなりにあり、要件を「性的好奇心を満たす目的」としたところで、成人ポルノを目的としてアクセスして児童ポルノを所持してしまった場合、処罰される恐れがあるように思う。
最近、アイルランドで興味深い事例があった。 アイルランドのウェストミース州アスローンの地元紙 Athlone Advertiser によると、190枚の静止画と7つの動画で児童ポルノ所持罪に問われていた男性が無罪となった。この男性、実は「巨乳が好き」ということで、検索して出てきた有料サイトに登録して画像を自動的にダウンロードしてハードディスクに溜め込んだりCD-ROMに複製したりしていたところ、その中に児童ポルノが混ざっていて罪に問われた、ということのようだ。そして、「アジア系の(女子高生に見える)制服姿の女性」の画像について、しばしば大人が演じているから、そのような姿だからといって児童ポルノだと判断できるわけではない、と主張した。また、大量の画像について、そもそも中身を確認しないで複製することが少なくなかったとしている。こうした主張が通り、また、動画のほうは少なくとも1つがアイルランドの国内検閲制度を通過した映画からのものだ、ということが分かり、無罪となった(ただし、この訴追を通じて男性が職場である大学のネット環境をポルノ入手のために濫用していたことも明るみになってしまい、辞職に追い込まれている)。
楠さんが簡単にふれている英米の場合のような過酷・過剰な制裁を伴う場合もあれば、この例のように、非常に慎重な「疑わしきは被告人の利益に」を地で行く判断を陪審が下す環境にある国もあり、その程度は様々だと言える。日本での単純所持罪も関しても、その気がない人を罰するような定義が成されてはならないと思う。
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