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「青少年閲覧防止措置」はとんだ毒饅頭かもしれないな

2008/05/30

Permalink 02:19:50, by Nobuo Sakiyama Email , 0 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由

「青少年閲覧防止措置」はとんだ毒饅頭かもしれないな

自民党「青少年による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」/民主党「子どもが安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」が来週にも一本化して表に出たら議論しないで通すっぽい報道が出ていて、かなり危機感を覚えている。追いかけきれていないけれども、変なものが出たらほんとに困る。

とりあえず、手元の自民党案要綱も微妙に更新されたけれども、これが最新かどうかは知らない。とりあえず、公布日施行とか言ってたのはやめたようで、「青少年閲覧防止措置」の政府からの要請も「違法情報について」という限定は入り、情報発信者に対するサーバー管理者の損害賠償責任の制限も同様の趣旨で限定はされた。しかし、ここからが問題で、「違法情報」と言っているのだけれども、これには、厳密な意味で公然陳列等が違法となる情報ばかりではなく、「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」が含まれている。

昨今の「殺人請負人が登場してしまう闇仕事サイト」といったものや自殺サイトといったものを念頭に、そういうものを制限しよう、という考えなのだろう。でも、「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」の発信は、それ自体は今のところ、違法じゃない。それを制限するのは表現の自由の制約で問題だ。

…と言ったところで、「闇サイト殺人」とか「硫化水素自殺の続発」とか、そういうのを防ぐのには表現の自由の制約も仕方ないのではないか、という意見は当然強くあるだろう。それに、現行法でも、売春広告や違法薬物売買の広告は違法だから、公共の福祉によって表現の自由はある程度制約できる、という人も多いだろう。

しかし、ここで踏みとどまって考えてほしいのだが、まず、ここで出てくるような「青少年閲覧防止措置」は、ターゲットを絞り込んだように見える文面ゆえに、実務的には、結局、当該情報の発信を停止させる措置として運用される可能性がより高まっているのではないか。私が見ている自民党案では、サーバー管理者の責任制限について「当該措置が青少年間覧防止措置として必要な限度において行われたものである場合」という限定があるけれども、社会的に一定の地位のあり、かつ、現状でアダルト系のためのアクセス制限のシステムをもっていないサーバー事業者にしてみれば、「違法情報」のために「青少年の閲覧を防止しつつ成人には閲覧ができるようにする措置」のためのシステムを組む動機は乏しい。措置が「必要な限度」かどうかは、サーバー管理者がどのようなシステムを持っているかどうかにも依存するはずだしね。

その上で「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」というのを考えてみるのだけれども、この案では、「犯罪」の内容について限定がない。殺人・傷害・誘拐、といったものを列挙してみると、なるほど仕方ないな、という雰囲気が漂ってくるのだけれども、犯罪って一番広くいえば、違反すると刑事罰を課せられる違法行為がみんな含まれてくる。政治的なビラのマンションのドアポストへの投函で住居侵入罪で有罪になって最高裁で確定した場合もあれば、高校の卒業式で君が代斉唱時に着席するよう式典中に呼びかけた元教諭が威力業務妨害罪で高裁でも有罪になった、というニュースがちょうど流れている。あるいは、日本では公務員のストは違法で、有罪判決もたくさんあって、最近は公務員スト自体かなり減ったがそれでもたまにある。で、行為が犯罪になるかどうかはそれはまた別の問題として、そういったジャンルにおける「直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」というのが、「違法情報」扱いを受けて表現の自由を制限される可能性を帯びるとなると、特に野党や野党支持者のみなさんにとってはそれはどういうことか、ということをよく考えてほしい。

直接刑罰の対象となるという話ではないが、「共謀罪」の議論と話は似てくる部分もあるのではないか。ここで、対象犯罪の列挙と個別検討なしに「犯罪又は自殺を直接的かつ明示的に請負、仲介又は誘引をする情報」の制限を広く認めてしまうというのはあまりに問題が大きい。そういう検討は、今の日程では不可能だから、どうしても「青少年間覧防止措置」というのをこの国会でやりたければ、ホットラインセンターで現在「違法情報」として処理しているような厳密な違法情報の限定列挙だけにするべきだ。可能ならまるごと先送りしてじっくりと検討するべきだけどね。