つい先日の5月19日、アメリカの児童ポルノ取り締まり法のひとつについて、最高裁で逆転合憲判決があった。 青少年ネット規制法案の動きがいろいろあったのでスルーしていたのだが、以前ブログでふれたこともあるのでフォローしておく。
United States v. Williamsという名前で知られてきた裁判で、報道についてはAP電とNew York Timesをとりあえず紹介。最高裁判決はネット上に出ている(HTMLで読めるコーネル大版、PDFの米国連邦最高裁公式サイト版)。
問題となっていたのは、panderingと言われる、児童ポルノの宣伝、誘引などを(児童ポルノ画像等の実在性にかかわらず)犯罪とする条項である米国連邦法典第18編第2252A条(a)(3)(B)。
(3)knowingly-
(B) advertises, promotes, presents, distributes, or solicits through the mails, or in interstate or foreign commerce by any means, including by computer, any material or purported material in a manner that reflects the belief, or that is intended to cause another to believe, that the material or purported material is, or contains—
(i) an obscene visual depiction of a minor engaging in sexually explicit conduct; or
US CODE: TITLE 18,2252A. Certain activities relating to material constituting or containing child pornography
(ii) a visual depiction of an actual minor engaging in sexually explicit conduct;
具体的な事件としては、児童ポルノ画像のやりとりをしていると思われたネットのチャットルームに潜入捜査官が入ってきて、探りを入れに接触してきたチャットルームのメンバーの一人と児童ポルノではない子どもの画像の交換を繰り返したのち、このメンバーが「こいつはポリだから本物だせないぞ。俺はだせるぞ(URL)」といった内容のメッセージをチャットルームに投げて正体をばらしたところで、提示されたURL先の画像が児童ポルノだったのでFBIは早速令状をとって家宅捜索を実施、児童ポルノ画像がたくさん出てきました…、といったもの。画像の単純所持とは別に捜査官とのやりとりの最後の部分が pandering として起訴されて2罪で有罪となったため、pandering部分だけ違憲訴訟が起こせることになったということのようだ。
判決の多数意見のロジックをざっくり追うと、こんな感じ。ざっくりと追っただけなので、正確なところは法律の専門家に聞いてね。まぁ、そのうち解説記事がどこかに出るかもしれないし。
まず、これはかなり限定している条項だぞ、と。「知って」とあたまについているし、"advertises, promotes, presents, distributes, or solicits" というのは、児童ポルノの具体的な授受(実際に行われる必要はないが)に関するものに限定して解釈すべきだし、"in a manner that reflects the belief" というのは、罪の対象となる人が主観的に「児童ポルノだと」と信じて宣伝等していなければならず、同時に、その様子が客観的にそう思って宣伝等しているように見えないといけない、とする。これと or の関係になっている "(in a manner) that is intended to cause another to believe" というのは、他人に信じさせようというとことだから、対象者の主観的要素のみで決まるとしている。けれども、証拠は普通をそれを客観的に裏付けるものが必要だね、と。
その上で、"sexually explicit conduct" の定義(2256条(2)(A))で、"actual or simulated-"とあたまについてるうちの "simulated" の意味について、これは、「実は行為をしていないのだがはっきりそう描かれているもの」ということだとしている(explicitがついているので、示唆する程度のものは入らない)。そして、わいせつなものは憲法の保護の外だし、わいせつよりも広い定義となる(2252A(3)(B)(ii)は実在の児童のことであってバーチャル児童ポルノや幼く見える大人は含まれないとする。こういう解釈のもと、広範だから憲法修正1条違反だとして弁護側などが出した具体例は基本的に該当しない、としている。「本物だと思い込んで宣伝していたけれども実はバーチャル児童ポルノだった」というケースは、麻薬の売人が麻薬と思ってそうでないものを宣伝しているような場合も違法なのだから、それと同様で違法として問題ないとしている(贋物と知って売り込みをかけているような場合は、そもそも詐欺行為だから保護に値しないともしている)。
もうひとつ、曖昧だから憲法修正4条に由来するデュ-プロセスに違反するのではないか、という論点も出ていた。前述の "in a manner" 云々、の部分についてだ。これについても、控訴審判決で提示されていた例は、それってそもそも普通有罪って判断されないだろ、と述べている。その上で、そもそもが曖昧さの問題ではなくて、「合理的疑いを越える証明」の問題であり、「下品な」といった定義そのものが曖昧なものとは根本的に異なるとして、控訴審の判断を覆している。
少数意見のほうは、あんまりちゃんと読んでいないけれども、やはり、実在児童ポルノではない、修正一条で保護されるものを宣伝等するのがひっかかる場合があるのはおかしいのではないか、ということのようだ。麻薬の広告等とは違うぞ、と述べているようだ。
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