池田さんの言動が基本的な事実から離れている件

2008/06/09

Permalink 05:52:44, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 1386 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲, 言論・表現の自由

池田さんの言動が基本的な事実から離れている件

池田信夫さんは、ときにとても鋭いことを書くのだけれども、なぜか日本語が理解できていないのではないかというレベルで困ったことを書いていることがある。

率直にいって、これは自主規制の限界である。ISPでフィルタリングが始まれば、2ちゃんねるがその対象になることは確実だが、そうすると「うちは2ちゃんねるが見られます」というのを売り物にするISPが出てくるだろう。もちろん彼らは自主規制団体に入らないから、制裁もできない。

自主規制をどうワークさせるか - 池田信夫 blog

基本的な話だが、「選択の余地なく、あるサイトを見られなく」するような規制は、表現の自由や通信の秘密、ネットワーク中立性などの観点で重大な問題を孕む。そういうわけで、今回の青少年ネット規制法案でも、携帯電話のフィルタリングでも、対象は18歳未満であり、親の申し出で外せる、という総務大臣要請の形からは外れていない。ISPの義務についても、国会に提出されたものそれ自体は見ちゃいないが(いまだに衆議院サイトに議案が出てないでこのまま成立かね?)、その手前と報道の内容、楠さんのITMedia寄稿記事からすれば、ISPは「顧客の求めに応じて」フィルタリングソフトの提供とか、フィルタリングつきのプロキシーサーバーの利用サービスなどを提供すればいい(無料・標準である必要もない)のであって、すべてのWebの通信をフィルタリングするような自主規制は求めていないし、現実にそのようなことが自主規制として行われる、というわけでもないだろう。もちろん、ISPによっては、ぷららのように、URLフィルタリングサービスを実質的に標準サービスの一部として提供してデフォルトで有効としている場合もあるが、これはあくまでデフォルトに過ぎず契約者の家庭でオフにできる。そして、そもそもこれはぷららの他のISPに対する差異化要素であって、こういう世の中にみんななるという前提ではない。大手ISPではオプションでプロキシーによるサービスを提供しているところも多いが、中小ISPならフィルタリングソフト販売代理店を兼ねてダウンロード販売とか課金代行をやるとか、そんな対応になるのではないか。

また、別途、自民党が提案する児童ポルノ禁止法改正案で児童ポルノサイトのブロッキング(全利用者が解除できないフィルタリング)についての研究について盛り込まれると報道されているが、イギリスや北欧の例でもそれはISP自主規制の体裁で行われているのが大半だが、いずれにせよそれらは「児童ポルノ」というネット上の「違法情報」のそのまた一部の話であり、「有害情報」という話ではない。とりあえず、高市議員の心の中までは知らないが、彼女にしても「大人が2ちゃんねるを見られなくなるような規制」を今回の法案に関係して公に求めたことはないのであって、今回の「青少年」ネット規制法の枠組では、基本的には関係ない。

だいたい、今回は青少年健全育成とか、青少年の保護とか、そういう話での規制法の流れなのだから、大のおとな同士の誹謗中傷等(かどうかの事実は判断していない。片方はそういう認識だということ)に関しては、そもそも議論にあがっていない。プロバイダ責任制限法を使うなり、それで十分でなければ民事訴訟を起こすなり、粛々と対処するメカニズムは一応あり、それに欠陥があるという話であれば、それは「別に」やらなければならない。そして、プロバイダ責任制限法は「通告があった場合に業者が違法なファイルを削除すること」を義務づけるものではなく、民事的な権利侵害について、明確なケースだけを扱うものであって、明確でなければ訴訟を通じた解決しかありえず(明確かどうかの線引きに判断ミスがあったということであれば、それは被害者がプロバイダも民事訴訟で訴える対象とすることになる)、刑法的な違法情報の削除義務がどれだけのレベルの判断を必要とするかは、これまでは結構微妙で、 今回の立法で「法的義務の形式的根拠を得たことになる」と奥村弁護士は述べているが、現実問題としての線引きが変わるような話にも見えない。

自主規制機関は、EMAのような、おもに管理されたコミュニティサイトを携帯電話フィルタリングのブラックリストから外すことに主眼を置いた団体が2ちゃんねるを扱わないのは自明といっていいが、逆に「有害性」を判定するような自主規制機関が2ちゃんねるを対象とするかどうかは自明ではない。仮に3類型をベースとしたミニマムな有害性判断基準を作ったとして、それらに2ちゃんねるが該当するかといえば、「板」単位でも該当しないところが少なくないだろうし、スレッド単位なら平和なスレッドはいくらでもあるという話になる。PC向け需要を考えて、登録フィルタリング推進機関とすることを目的としてこれから組織と基準を作って実績を積んで登録したっていいわけで。2ちゃんねるやしたらば掲示板、ミルクカフェといった、匿名性の高いコミュニティサイトを細かくレイティングしてフィルタリング可能とすることはそれなりに技術上・運営上の課題がありそうだが、立法が後押しとなって市場が広がれば、需要を当て込んで始める事業者が出ても不思議はないだろう。

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コメント: 東方不敗 [訪問者] Email
だが硫化水素事件での警察庁の行動は、はっきり有害情報を「大人も見られなくする」狙いを示していた。

つまり青少年ネット規制法へ、なしくずしに織り込んでいこうという考えはある。

今回の法案について、実際には成人向けにも言論統制は必要だがカバーしきれていない、という主張は、提案者の意図(あるいはそう吹き込まれた考え)を無視して、あるいは捻じ曲げて登場してくるだろう。

というか、小倉秀夫弁護士なり、池田信夫氏なりは、従前からそこ、つまり悪の処罰としての隔離、村八分、アウトロー宣告に主眼を置いているのであり、未成年の保護は渡りに船でしかなく、しかも池田氏にいたっては最初から未成年うんぬんは問題にしていない。

これは、堰に小さな穴が開くと海水がそこへ一気に流れ込むようなもので、さまざまな思惑で規制派(本人はすでないと思っていても)が同船しようとやってくる。ああした理論派ならまだいいが、官僚の心を知るすべもない。

かくしてフィルタリングはいつのまにかサーバーからの削除に変わり、目的は健全育成ではなく、風紀の維持になっていく。

留保つきの規制を許した時点で、決壊への道はつけられてしまう。
Permalink永続的リンク 2008/06/09 @ 23:54
コメント: 通りすがり [訪問者]
△留保つきの規制を許した時点で、決壊への道はつけられてしまう。

〇立法を許した時点で、決壊への道はつけられてしまう。
Permalink永続的リンク 2008/06/10 @ 11:59

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