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日本の「公安」ってソフト・パワーの観点でやばくね?

2008/07/07

Permalink 01:55:39, by Nobuo Sakiyama Email , 13 words   Japanese (JP)
Categories: 政治, 言論・表現の自由

日本の「公安」ってソフト・パワーの観点でやばくね?

世の中、G8北海道洞爺湖サミットということで大騒ぎなこのごろ。

個人的には、サミットってそんなに関心ない、というのは、各国政府首脳も思いつきでトンでもないことをいきなり約束できたりはしないし、何か決まることがあれば、事前にさまざまなな折衝がなされるわけで、そりゃその場で首相とか大統領とかが集まって何か出せば重みはあるし、ギリギリのところの政治決断がそこで行われるのかもしれないが、だからといって予測不能なほど派手なことは起こりようがない。「非公式かつ自由闊達な意見交換を通じてコンセンサスを形成し、トップダウンで物事を決定します」と言ったところで、独裁国の集まりじゃないわけで。地球環境問題が最大のテーマということは、裏返せば差し迫った大テーマはないってことだろうしね。過去のサミット(1999年まで2000年以降)では、熱かった時もあるだろうけれども、今、G8で外交問題で熱い話題でその場の組み合わせで劇的な展開がありそうな話題ってないんじゃなかろうか。派手なことがないからどうでもいいというつもりはないけど。

そんなわけで、個人的にサミットに関心が薄いので、それにわざわざ反対するのって、奇特な人達だなぁ、と、率直には思う。まぁ、実際には、彼らもサミットというイベント数日それ自体というよりは、G8諸国が日々積み上げている外交や政策の中身全般に不満があり、それへの反対運動を、カウンターイベントとして並行実施して盛り上げる、というのが、そういう人達のやりたいことで、それはそれで戦略的な宣伝活動なわけです。当たり前だけど。個人的には、そういった主張の数々について是々非々で賛否や無関心、ものによっては積極的なコミットを考えることが出来るかもしれない(表現の自由や国家の市民一般の活動への監視からの自由、といった領域は関心事だし)が、まとまったパッケージとなった「オルタナティブ」「反グローバリズム」には、相当に疑問というか、それで貧しくなく平和な世界が出来れば誰も苦労しないわけで、リアリティを感じて時間と人生を割く気にはなれず。というか、もうちょっとぶっちゃけると、巨大なオフ会やって楽しんでますね、あいにく私の趣味じゃないです、ぐらいの気分。もちろん、個々の人にはそれぞれの抱える現実や人生があるので、そこで訴えることに意義があるテーマを抱える人もいるのでしょう。

といった立ち位置表明をあらかじめしておいて本題なんだけど、札幌のデモで逮捕者が出ているわけです(参加者報告それを受けた参加してない人の記事報道紹介参加者一部に問題あったんじゃね?という参加者側記事)。逮捕者の一人は理由はどうあれロイター通信のジャーナリスト。デモ参加者の逮捕については、警官がデモ参加のトラックの窓を叩き割って引きずりだしているところとか、海外のテレビのクルーが撮影して中継放映されたようです。たまたま見たサンデースクランブルで現場でモニター画面を見せてもらうところを放映とかやっていたので日本のお茶の間にも流れてますが。あれ、映像として、警察が当たり前に違法行為を取り締まったように見る人っているんですかね。事実はどうあれ、どうみてもあの映像はデモ弾圧にしか見えません。

それ以前に、外国からの反G8サミット会合参加者について、入国拒否とか入国手続きでものすごく待たせるとか、イベントのパネリストだって分かった上でそのイベントに参加できない出国期限をつけちゃうとか、活動家だけじゃなくてジャーナリスト相手にやってると騒がれていると。

背景としては、公安警察が「サミット成功」を掲げた猛烈なシフトをひいていることは首都圏の駅のゴミ箱封鎖をみてもわかるように自明だけど、テロや暴動の警戒をするのはいいんだけど、反対運動潰し方向に行きすぎてるように見えちゃうのって、「国益」を考えてもそまずいんじゃないのと思うんだ。ソフト・パワーっていう概念があって、「その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力」ということなんだけれども、これには、例えば、市民的自由が尊重されている国、といったことも含まれてくる。政権とそれ以外の非国家勢力の関係では、インターネットが普及したことでさまざまなプレイヤーが情報発信をして影響力を行使しうる状況にあるといったことも考慮する必要がある。こういう条件のもと、日本の公安警察は、反グローバル勢力と一般市民の「分断」(って分断しなきゃいけないほど反グローバル勢力がそもそも一般市民から魅力ある存在と見られているかという問題はある)に熱心なあまり、日本のソフト・パワーを損ねる事態になってるんじゃないだろうか。今回の件は普通に国際的に見たまんま報道されているし、反グローバル勢力の国際的なネットワークを通しても伝えられているし、各種Web2.0系メディアで大量の画像・映像や文字でのレポートが文字通り世界に向けて送り出されている。

こういう事態って、今回のサミットの少し前からあって、グリーンピースジャパン(GPJ)の職員が調査捕鯨の鯨肉の横領疑惑だといって運送会社から荷物を持ち出して届けた件で窃盗容疑で逮捕されて勾留延長になって今なお釈放・保釈されず、一方で告発した疑惑のほうは素早く幕引きになった件もそう。西欧各国の報道をGoogle Newsでざっくり見た感じでは、どうみても政治犯的な扱いが多いし、そもそも報道のたびにGPJ職員の非よりもGPJの告発内容や「日本は鯨を殺し続けてます」的な解説のほうがスペースが大きいわけですよ。反捕鯨運動が強いオーストラリアだけじゃなくて、アメリカでもそういうトーンの報道は少なくなかった。日本国内には「グリーンピースざまぁ。警察GJ」的なブログが圧倒的に目立ったけれども、鯨肉は機会があればおいしく頂くがぶっちゃけ捕鯨問題の先行き自体には関心が薄い身としては、こんな形で日本のイメージが悪くなるほうが困るわけで。問題の事案が窃盗罪かどうか微妙という話はグリーンピース側でない第三者的な弁護士からも出ていたと思うが、だからといって捜査しない方向はありえないとして、それでも、この内容で勾留決定と勾留延長とあわせて20日の勾留(このノリだと起訴後保釈も異議を出して蹴っ飛ばす方向が十分ありうる)とか、GPJ事務所の家宅捜索で総ざらい的な押収とか、グリーンピースの国際的な情報発信力で世界中に状況は伝えられているわけで、GPJにダメージを食らわすことは公安的にはやりたかったことかもしれないが、トータルで日本の国益にかなったことなのかどうか、かなり疑問。マイルドに騒がれないようにやる手はあったはずなんだけどね。

公安警察の中のひとは、昔通りの手法を今に適用しているだけなのだろうけど、冷戦が終わって伝統的な左翼勢力が退潮しても仮想敵の大きさを維持してこんなことになってるんだろう。警察って捜査機関っていう性質上、外部からの適切なコントロールが難しいのだろうけど、実際問題、日本のイメージを悪くしているんだから、もうちょっと政治がなんとかしてほしいね。