日本でのフィルタリングと思想・信条の自由の関係

2008/07/09

Permalink 23:55:08, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 2029 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲, 言論・表現の自由

日本でのフィルタリングと思想・信条の自由の関係

「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が成立し、議論がこれから先に進むであろう、ということで、実際に現状どうなっているのか、ということで。というか、サミット反対デモがものすごい扱いを受けていた件から書きたくなった。

この青少年ネット規制法成立に先行して、広島市で青少年と電子メディアとの健全な関係づくりに関する条例が成立している。罰則などがあるわけではないようだが、審議会でフィルリング基準を定めるといったあたりは、成立した法律に比べると表現内容に行政が踏み込む度合が強くなっている。審議会会長は広島大学の越智貢教授。応用倫理学、とくに情報倫理については著書も多い第一人者といえる。かつてのFINEプロジェクトのコアメンバーであり、問題には精通しているといえる。それゆえ、家庭レベルのカスタマイズができる将来に期待しつつといいつつ示された暫定基準の広範さには軽い失望を抱いた。

とりあえずここで問題にしたいのは、この基準にある「軍事・テロ・過激派」という分類だ。これは、いくら「青少年対象」といえども、表現の自由、思想・信条の自由との関係を気にせざるをえない。カテゴリの文言からすると、18歳未満の青少年対象に規制するのは当たり前ではないか、という印象をもつ人も多いかもしれない。現在の携帯電話フィルタリングでも全キャリアがフィルタリング対象としている領域だ。でも、キャリアの18歳未満へのデフォルト適用の話と、行政が基準として示す話はまったく別のレベルであるし、そもそも、このカテゴリがどの程度の範囲のものを指しているのか、という問題もある。ちなみに、インターネット協会のSafetyOnline3の検討では、千葉学芸高校の高橋邦夫校長が『反社会的な集団やカルト集団のサイト」というキーワードを追加してはどうか?』と提案し、思想信条、宗教に関わるような内容は扱わない(暴力やテロ活動は犯罪行為として既存カテゴリで対処)と一度却下されたが、さらに粘って脅迫活動も違法行為として例示することで対処するというところまで行った(詳細は2006年度第2回研究会資料3第3回研究会資料3を参照。ともにPDF)。ここで高橋氏が「示威活動」をフィルタリング対象に明示的に加えたいとする意思をしつこく表明していたこと自体興味深いのだが、それだけは発表された基準でも避けられている。

さて、ここで、現状の携帯フィルタリングで使われているネットスターの分類について、公開されているWebプロフィール確認ツールで調べたら、実に興味深かった。まず、メジャーな街頭宣伝活動を行うような右翼団体は、大抵、「軍事・テロ・過激派」に分類されるようだ。日本青年社、大日本愛国党(ここはWebは青年隊のみ)、大行社といったあたりも分類されているが、一水会もここに分類されている。新左翼団体では、中核派、日本革命的共産主義者同盟(JRCL、通称かけはし)といったところはここに分類されている。不思議なのは、革マル派は「主張一般」カテゴリにしかなっていないということだろうか。現状の携帯フィルタリングではこれはブロック対象だが、広島市条例ではカテゴリとしては対象でないようだ。なお、(新左翼党派とは別の)反グローバリゼーション団体で、「軍事・テロ・過激派」扱いされている団体はいまのところまだ見つけていない。

個人的な考えとしては、個別のテロ活動などの暴力への誘引や勧誘と、各組織の政治信条の表現に対する扱いは峻別される必要があり、後者を公的な形でフィルタリング対象とするのは極めてまずいのではないかと思う。また、どこまでが表現の自由であり、どこからが逸脱かという問題もある。前記のインターネット協会のSafetyOnline3では「その他法律、条例その他の法規で禁止された行為の手口に関する記述」というものが入ってくる。これを18歳未満閲覧制限としている。前述の高橋氏のように「示威活動」を最大限、閲覧させたくない立場からすれば、ジグザグデモ、フランスデモ、サウンドデモなどを称揚するコンテンツは検挙事例の存在を理由に閲覧制限する方向の内部基準をフィルタリング会社に設けるように申し入れるといったこともおこりうるのかもしれない。さらに、集合住宅ポストへの政治ビラ投函についての正当性主張の言論もここに入れようとする動きもありうるかもしれない。

一水会の創設者の鈴木邦男氏は、最近、右翼が暴力に訴えがちであったことや街宣車を使ってきたことについて、表現の場を持たなかった(排除されてきた)ことが要因のひとつとしてあるということを繰り返し述べている。今やフラットなWebの空間で右翼団体も左翼団体も自由に表現活動ができるようになってきている(中核派の前進社がブログをMovable Typeを使って構築し、YouTube に公式チャネルを持ってるっていうのは、思想信条と手段の関係でどうなのよ、と思わなくもないが)のだが、「違法・有害情報対策」は、こういう場も変えていこうとするのだろうかと、心配になりつつある。

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