アーカイブ: 8月 2008

2008/08/29

Permalink 02:23:26, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 4498 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 地域情報化

青梅マラソンって情報化してるんじゃない?

地域情報化ネタって全然追ってなくて、まったく素人なんだけど、最近のブログ界隈の議論をみていてなんでもそこに引きつけて語るのって違うんじゃね?と思ったのでちょっと。

POLAR BEAR BLOGの小林さん曰く

地方でネットの利用が進んでないのはある程度想像できるとして、東京都にも「地方」並の例がありますよっと。

東京都にも「地方」があるよ、という話。 - POLAR BEAR BLOG

といって、以下、青梅市公式ページ内の青梅マラソンのページがいかにそっけなくパンフレットのPDFを貼っているか、ということを語って「紙媒体が一番、ウェブは二の次」だったのではとのことなのだけど、それはかなり間違った認識なんじゃないかな、と。

そもそも、スポーツ競技イベントというのは、万人が参加するものなのか、できるものなのかというと、違います。まず、競技を成立させるために、規模に一定の枠をはめています。小林さんが比較対象としている東京マラソンでは、一般ランナーは抽選制であり、青梅マラソンでは小林さんが書かれている「毎年1万5千人以上」という規模は、一般ランナー30kmの部1万5千人、10kmの部5千人という枠があらかじめあり、先着制です。走りたいひとは定員よりたくさんいるのが実態と考えられ、エントリーのレベルで「集客不足」という状況にはないでしょう。走りたそうな層に確実にリーチできれば、その外に参加者を募る必要はないイベントのように見えます。

加えて、長距離走という競技がけっこうハードだというのも、ここでは重要でしょう。小学校の運動会で「じゃぁパパ走っちゃうぞ」とは、ちょっと違うレベルのものです。大会要綱をみれば分かりますが、この大会は招待選手もいて全日本陸上連盟のポイントの対象となる、という、上のレベルはかなり高いものですし、中間地点やゴールなどでの時間制限からすると、ジョギングぐらいのスピードでも走り続けられる人が対象で、ちょっと走ったらあとは歩くしかない、というレベルの人は対象外です。日常的に走っている人なら難しくないでしょうが、普段何もしていない人が出来心で出られるレベルには見えません(10kmの部は女子は全年齢だけれども男子は高校生と40歳以上のみ)。ということで、この大会では、アマチュアでもそれなりのスポーツ愛好家にリーチできればよく、その範囲での参加の利便性が高まればよい、というのが妥当なところでしょう。

そして、利便性についてですが、PDFの要綱をみるとスポーツエントリーRUNNETのURLが書いてあります。前者はさまざまなアマチュアスポーツの大会参加手続きを行える決済機能つきのサイトで、後者はランニング専門の同様のサイトです(後者は専門誌の雑誌社が運営)。すでにスポーツエントリーでもRUNNETでも専用エントリはできていて、受付開始日を待っている状態です。それぞれ、公式サイトのPDFの内容はおおむね網羅されたデータをHTMLの文書として読むことができます。ランニング愛好家は、青梅のいろんなイベントに出たい人たちではなくて、マラソンのいろんな大会に出たい人たちですから、この種のサイトで他の大会と一緒に参加要綱をみることができ、申し込みができ、データを蓄積できたり、あるいは愛好家同士で交流できたりする、という文脈に青梅マラソンの情報があるので、すでに利便性は十分にあるのではないでしょうか。ここで、青梅市公式サイトの中の公式ページからスポーツエントリーやRUNNETに直接リンクが貼ってあれば、より親切ではあるでしょうが、大勢に影響はないでしょう。

そんなわけで、青梅マラソンは不適切な例だと思うのですが、世の中に課題がないわけではなくて、前述のようなスポーツ参加ポータルに情報が載らないイベントも多数あるでしょう。私はスキーの大会目当てでスポーツエントリーと、もうひとつデジエントリーにアカウントを持っていますが、両者に出てこない、申し込みが不便な大会も結構あります。FAXや郵送前提とか、より極端には、開催スキー場に通ってる人前提の現地事前申し込みのみ、というのも見たように思います。まさに公式サイトにそっけなくPDFとかHTMLでパンフレットの内容が置いてあるだけで、あとはネットを使わずにやらないといけないというケースは多く見ます。ただ、その解決は地域ポータル的な話ではなくて、この場合であればスポーツ系のポータルにどう情報を載せてもらうとか、どこでもいいので決済サービスを使ってもらうとか、そういうのを(ポータルはすでに営業活動をしているんだと思うのだけれどもそれとは別に)どう促進していくかという話になるんじゃないかと思います。そして、スポーツ参加以外でも、趣味性が高い参加型イベントの場合は、大抵は地域じゃなくてイベントの属性にあってどう情報を流してもらうかのほうが重要なんじゃないかと。

2008/08/25

Permalink 01:02:04, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 4716 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲

改正出会い系サイト規制法のもとでは中立的なCGMプラットフォームは否定されるのだろうか

先の国会で「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」いわゆる出会い系サイト規制法の改正があっさりと成立し、その結果、警察庁から「「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン案」及び「インターネット異性紹介事業者の閲覧防止措置義務(いわゆる削除義務)に関するガイドライン案」に対する意見の募集についてインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する規則案に対する意見の募集についての2本の意見募集が開始された。前者は任意の意見募集であり、後者は行政手続法に基づく意見募集であるため、締切りが前者は9月5日、後者は9月20日と、後者には若干余裕があるが前者はほとんど時間がない状況だ。

今回の出会い系サイト規制法改正でもっとも大きいのは、サイト開設者に事前届出の義務が罰則つきで課されている点で、後者のパブリックコメント募集はその具体的な手続きを施行規則として定める部分が中心となっている。ただ、今回問題にしたいのは前者の「ガイドライン」について。なかでも「「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン案」のほうだ。

従来から、出会い系サイト規制法には「インターネット異性紹介事業」の定義が曖昧だという批判があった。コミュニティサイト一般を含みかねない、ということだ。ただ、従来は、サイト開設者の観点では、問題になるような18歳未満がかかわる書き込みが放置されるかどうかが問題であって、自身の事業が定義にあてはまっているかどうか、というのは、大きな問題ではなかった。

今回、届出義務が発生することで、そのような曖昧さはそのままに出来ない。18歳未満を排除する運営をきっちりやっていようが、削除義務が発生するような書き込みを積極的にパトロールして削除していようが、「出会えないサイト」とする努力をしていようが、該当性判断でインターネット異性紹介事業となるものが届出していなければ、刑事罰の対象となる。もっとも、コミュニティサイト関連の事業をむやみやたらと萎縮させることが法律の意図ではないはず、というのが法案が国会に出る前から議論されていて、従来のガイドラインを上書きする形で新しいガイドラインの案が意見募集という形で公表された、というのが今回のものになる。

ということで、今回のガイドライン案の具体的な中身だが…、やっぱりダメではという感じがする。

基本的な骨格は、従来と変わっていない。「異性との交際」というのは、「男女の性に着目した交際」であり、異性であることへの「関心が重要な要素となっている感情」に基づくものであれば、「他人と知り合い、交流する行為全般」が対象であり、リアルワールドで対面しないものを含む。つまり、サイト内で完結する関係でも該当する。そして、「サイト開設者がサイトの運営方針として、「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供している」ということが「インターネット異性紹介事業」にあてはまるかどうかの要件であって、個々の利用者の意図にはかかわらないとしつつも、

なお、異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的で利用している実態がある場合でも、サイト開設者が異性交際を求める書き込みの削除や当該投稿者の利用停止措置を行っていれば、当該サイトは、 基本的には「インターネット異性紹介事業」に該当しませんが、当該書き込みを知りながら放置するなど、サイト開設者がその実態を許容していると認められるときは「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があります。

ということで、「異性交際目的での利用を禁ずる規約等」を設けて、notice and takedown の手続きをとるなどしていなければ、いつのまにか「インターネット異性紹介事業」に該当しうる、ということは、従来のガイドラインと変わっていない(なお、積極的な監視義務までは負わせてはいない)。

以下、該当性判断の具体例をみていく。

問 いわゆるSNSは、「インターネット異性紹介事業」に該当するのか。

(答)

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)とは、一般に、会員制をとり、参加者が互いに友人を紹介し合うなどして、共通性を持つ新たな友人関係を広げるサイトのことを言います。このようなサイトは、サイト開設者がサ イトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供していない限り、「インターネット異性紹介事業」には該当しません。

なお、サイトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供していないことを明らかにするためには、利用規約等においてその趣旨を明確にし、これに基づく措置がとられていることが望ましいと考えられます。

日本に拠点はないが、facebookのアプリケーションには出会い系機能をもったものもあったような気がするが、どのように評価されるだろう?

問 あるサイトが、開設者が知らないうちに実質的に出会い系サイトとして利用されていた場合、そのサイトは「インターネット異性紹介事業」に該当するのか。

(答)

自らが運営するサイトが知らないうちに、実質的にインターネット異性紹介事業に利用されていた場合、サイト開設者はサイトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供していないことから、基本的には「イ ンターネット異性紹介事業」には該当しませんが、異性交際を求める書き込みを知りながら放置するなどサイト開設者がその利用実態を許容していると認められるときは、「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があります。

従来のガイドラインにもあった項目だと思ったが、閑古鳥が鳴いてるサイトならともかく、ある程度の利用実態があるところで「知らずに放置」がありうるかというと、サイト利用者の誰かがサイト開設者に「通報」すれば知らなかったという実態はなくなり、もし「異性交際を求める書き込みを禁止」する項目が規約にないということで放置しておくと、該当する可能性があるということになる。

問 サイト開設者は「異性交際」を目的としないサイトとして開設しているものの、当該サイトの中に利用者が異性交際希望者を対象としたジャンルを設け、サイト開設者が提供するサービス(利用者間で一対一の連絡をす ることができる機能等)とあわせて実質的に出会い系サイトとして利用されていた場合、当該ジャンルは「インターネット異性紹介事業」に該当するのか。

(答)

サイト開設者ではなく利用者が当該ジャンルを設けている場合でも、サイトを更に細分化したジャンルがサイト開設者が提供するサービスとあわせて独立した一つのサイトとしての機能を果たしており、かつ、当該ジャンルの存在や 異性交際を求める書き込みを知りながら放置するなどサイト開設者がその利用実態を許容していると認められるときは、当該ジャンルのみについて「インターネット異性紹介事業」に該当し、サイト開設者が「インターネット異性紹介事業者」に該当する場合があります。

ここの最大のポイントは「「インターネット異性紹介事業者」に該当する場合があ」るのは、そのジャンルを設定した利用者ではなく、サイト開設者だという点。また、「サイトを細分化したジャンル」が「独立した一つのサイトとしての機能を果たして」いれば、当該ジャンル部分のみに限定して「インターネット異性紹介事業」に限定可能ということであって、独立性がなければ「インターネット異性紹介事業」にならないかというとそうではなく、おそらくは全体がそうみなされうるという点だろう。コミュニティーサイト開設者としては、「ジャンル」や「コミュニティ」の設定を完全にユーザーに開放すると、「インターネット異性紹介事業」に該当することになる危険があることになる。しかも、「異性交際」であれば、「リアルに出会う目的かどうか」は問題にならないから、インターネット異性紹介事業者として届出をしない前提では、かなり幅広いものを禁止する必要がある。もっとも、すでにある程度の事業規模があれば、18歳未満ユーザーと18歳以上ユーザーが出来ることに大幅に違いをつけて、後者の部分について実態にかかわらずインターネット異性紹介事業として届け出ておくという割り切ったアプローチもありうるのかな、とは思われる。

問 複数の事業者が分担してインターネット異性紹介事業を行っている場合には、各事業者は「インターネット異性紹介事業者」に該当するのか。

(答)

例えば、A会社がサイトの運営を、B会社が顧客管理をそれぞれ担当し、両社が共同してインターネット異性紹介事業を行っている場合、共同して行う事業が全体として「インターネット異性紹介事業」に該当することから、両社と もに「インターネット異性紹介事業者」に該当します。なお、「共同してインターネット異性紹介事業を行う」というには、それぞれの者が、一のインターネット異性紹介事業を共同して行う意思を有していることが必要です。

OpenIDとか使って出会い系サイトを作ると、どうなるんだろうね。「共同して行う意思」がないからサイト運営者だけがインターネット異性紹介事業者で、OpenID プロバイダーは関係ないということなのか、「共同して行う意思」がないからそもそも許容されない形態という意味なのか。mixi OpenIDなんかは、mixiプロフィールページへのリンクをサイト側で設定できて、そのプロフィールページに性別の記載があるので例としてうってつけかもしれない。現実に現れたらmixi はガイドライン の「その他」の項にあるような形で「認証を停止」するんじゃないかと予想するけど、ね。

2008/08/24

Permalink 03:20:17, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 12697 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: セキュリティ, プライバシー, 社会

Googleストリートビューと部落差別

Googleストリートビュー問題についてはてブで追いかけていて気づいたのだが、北口学さんというジャーナリストの方が「ストリートビューというサービス開始の日ー爆発的に増殖する深刻な問題を見つめて」というネット連載を書いていた(上記連載の本サイトはジャーナリスト・ネットというところで、北口氏は日本人権ジャーナリストの会事務局長でもあるということ。日本人権ジャーナリストの会はごく最近設立された団体だが、設立が朝日新聞で報道されている)。北口氏について私はこれまで知らなかったのだが、名前でググるとキャリアが長い方のようだ。

その北口氏の上記連載を通読したところ、すでに部落差別に関連して結構いろいろ起きているようだ。2ちゃんねるのスレッドで部落差別と結びつける形で特定の場所の位置を公開し、ストリートビュー写真が削除されれば、事前に保存しておいたその写真を画像アップローダーで公開して示す、といったことになっている。ただ、これはGoogleがオプトアウトであることも問題だが、悪意は別のところから来ているのですべてをGoogleのせいだというわけにもいかないかもしれない。

一方、気になりつづけている空白地帯問題だが、最初は1ヶ所だけしか認識していなかった大規模被差別部落との相関について、私自身は土地勘がまったくない都市だが空白地帯のいくつかについて調べると、そこもまた被差別部落の地名として著名、といった状況があることがわかった。ただ、空白地帯とそうでない部分の境界と部落との関係がどこまで密接なのか、というのは、さすがに簡単にわかる公開資料程度では分からない。問題の性質上、そんなものがネット上に簡単に見つかるわけがない(差別を意図した掲示板への地名列挙の書き込みといったものは見つかるが信頼できる資料になりえないのは当たり前だ)し、見つかってもまずいし、そもそもそこまでセンシティブなものを私が追いつづけるのが適切かというと多分適切でない。ということで、一般にも著名な部落問題の研究者(誰なのかは少なくとも今のところは伏せる)に、本件についてご意見を伺うべく、問い合わせのメールを出してみた。まったく面識がない方なので、どういうことになるかは分からないが。個人的には、本件(Googleストリートビューと部落差別の関係)については「部落差別問題へ取り組むことを主要な関心としているわけではない私が被差別部落の正確な場所について詳しくなることが適切とは思えない」という事情により、今回連絡をとった研究者の方や、あるいは北口氏のような専門性の高いジャーナリストの方に引き取ってもらって撤退したいと考えている。

最後に、私の見込みが当たっているという仮定でのこの問題についての意見だけれども、Googleストリートビューが仮に存続しつづけるとした場合、公開範囲は大幅に制限する必要があるだろうし、また、サポート範囲の道路の縁取りもやめるべきだと思う。ストリートビューとしての有用性は、場所を起点として道路からの風景を眺められれば十分で、どこが撮影されていてどこが撮影されていないのか、という俯瞰的な視点を厳密に提供することの有用性は薄いのではないか。もっとアバウトに、どのあたりの区域が撮影されているかを面で色分けする程度でいいのではないか(この場合、その中の空白地帯はサポート範囲として色をつけて他の地域と区別できないようにする)。

追記: 上記の著名な研究者から返事を頂いた。それによると、当該都市のストリートビューで部落を識別できる状況にはないとのこと。中途半端に知られている地名で余計な心配をしてしまったのかもしれない。まぁ、私の心配事がFUDで済めばそれはむしろ幸いなので悪いことではない。

2008/08/16

Permalink 16:55:59, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 5047 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: プライバシー

Google ストリートビューのプライバシー問題について改めて

前のエントリでは、Googleストリートビューについて、まだあまり出ていなかったであろう論点を出してみたのだけれども、ここらでやや包括的に。

プライバシー問題については、いろんな切り口があるのだと思うのだけれども、個人的にここでおさえておきたいと思うのは、明治大学の夏井高人教授が提唱しているデジタル情報化されない権利。こういうのを無限定にふりかざすとなれば、池田信夫氏にLudditeと非難されることうけあいだが、ものは程度ということもある。高木さんが指摘するように、Googleのスト(略)カーの撮影視点はかなり高く、多くの生活空間における家屋のアーキテクチャーが想定する視点とは異なるので、個人が私的空間として確保している場所への侵襲性は高い。ちなみに、高木さんが示している例の道では、同レベルの視点を確保できるような座席高の高い車、例えば大型トラックやバスなどはそもそも通れる場所ではないように見える(RV車やワンボックスカーなどの車高の高さはたかが知れている)。その上で、仮にそういう車が通れると仮定しても、高木さんが引用した榎本さんのブックマークコメントは、たとえば前記の「デジタル情報化されない権利」を主張する立場を仮にとると、適切ではないと言える。見えることと、撮影しデジタル情報化し公開することは同等ではない。

「デジタル情報化されない権利」を支持するかどうかはいったん留保するとして、今のところ、Googleはオプトアウトを提供することで苦情を解決しようとしている。オプトアウトによる対処それ自体が弱者保護の観点から問題となるが、それに加えて前のエントリで書いたように、網羅的に地図に情報がマッピングされている、という状態では、真のオプトアウトは不可能だ。画像は消されるかもしれないが、画像が消されたということがわかり、その場所はURLでピンポイントに特定できる。これ自体が「何かセンシティブなものが映っていた可能性がある」というメッセージになる。たまたま被写体として人が映り込んだだけかもしれないが、場所特有の問題かもしれない、という情報だ。その上、一部の道路だけを撮影対象から外せば、それは地図の上で俯瞰できて、そこから(余分かもしれない)メッセージを読み取ってしまうことができるわけだ(結界はネタとして、buyobuyo氏のこれはひどい。大田区の例はむしろメッセージを読み取れない広さで、公開スケジュールありきで巡回が間に合ってないのだろうと個人的には思う)。

個人的な直感としては、この問題は単に写真をめぐるプライバシーの問題として扱うのはスジが悪いように思う。おそらく、そういう問題にすると、私人間(Googleと個人)の選択の問題に帰着してしまい、写真はオプトアウトできても、オプトアウトしたという情報が公開されている状況は解決できないのではないか。何がオプトアウトされているかも含めてセンシティブ情報である可能性を含めた検討が必要で、そういう前提においてプライバシーと利便性の折り合いをつけるにはどうしたらいいかという問題設定が行われる必要があると思う。この場合、オプトアウトを選ばない邸宅写真の公開も制限される方向に倒れる部分があり、単にGoogle対個人という話ではなくて、より公衆的な選択という文脈になるように思う。専門じゃないので把握していないけれども、GISとプライバシーの問題ってかなりいろいろあって、それなりに検討が行われてきているのではないだろうか。けれども、Googleはそういう検討をしたかというと、その必要を認めていないからこそこういう形でサービスを始めちゃったのだろう、と思うわけで、悩ましいですねぇ。

2008/08/14

Permalink 17:11:59, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 7247 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: プライバシー

Googleストリートビューの空白地帯の可視化は妥当なのだろうか

Googleマップのストリートビュー機能が日本でも有効になってあちこちで論議を呼んでいるのだが、これには実にやっかいな問題があることに気づいた。

ここで言う問題は、すでに多くの議論の対象となっている「何が映っているか」ではない。逆の話だ。ストリートビュー機能を有効にしたGoogleマップでは、ストリートビュー写真が用意されている道路は青く表示されてそれとわかるようになっている。逆にいえば、ストリートビューのないところも分かる。

オプトアウトを要求した場合にどう変化するかまでは確認していないが、東京都では、大田区の大半のような大きな空白地帯のほかにも生活道路的な道に入り込んでいない場所も多い。例えば、吉原や山谷の一部もそうだし、大久保・百人町もそういう部分が多い。湯島駅の近辺も粗め。根津・千駄木あたりは単に道が細いところを通っていないような気もするが、高木さんの挙げた目白の事例では、かなり細い道まで入り込んでいるから、単純に道路の幅の問題ともいえないだろう。東京以外では、有名な大規模被差別部落(ここは地域団体がドメインとってWebサイトまで持っているが一応都市名も含めて実名は避ける)についてストリートビューが外周以外はあまりないなどが分かる。もっとも、この都市の空白地帯はそれ以外にも多いし、また、2ちゃんねるの人権問題板などをみると、被差別部落だからといってGoogleがストリートビューを避けているという因果関係もないようだ。ただ、その地域のおおよその所在を知っていれば地図の上で可視化されてくるという要素はある。

今のところ、Googleマップのストリートビューは「不完全」なので、空白地帯であるということだけをもって特別な意味は見出しにくいが、今後カバー率が上がっていくと、Google側で避けたか、あるいは住民などがオプトアウトの要求を出したか、そういう道だけがストリートビュー空白地帯として浮かび上がってくることになる。これって、どうなんだろうなぁ。

2008/08/09

Permalink 02:55:48, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 4145 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: セキュリティ, 検閲

URLフィルタリングによって生じうるセキュリティの問題

前のエントリでコミックマーケット公式サイトやとらのあな公式サイトのフィルタリング向けのカテゴリ分類状況を紹介したところ、消費日記@はてなで、他の同人誌販売店や即売会も性風俗や成人嗜好と分類されていて、どうやらこの分類はアクシデントではなく方針のようにもみえる(ただし、消費日記@はてなで調査されたもののうち、同人誌販売店については、とくに通販の部分ではURL の階層で18禁とそれ以外を分けることができていないようだ。確認ボタンをクリックすると Cookie で状態保持とか、URLのqueryの引数で区別とか。COMITIAは通販部分だけカテゴリを分けられるはずだが区別されていない)。なんでこんなことになってるんでしょうね。

ところで、はてなブックマークのトップページをみていて、コミックマーケット公式サイトがケータイ全キャリアでフィルタリング対象になるようなカテゴリ分類されていることについて、重大な問題が発生する可能性が出てきたことに気づいてしまった。これは急いで「該当カテゴリなし」に修正される必要がある。ということで、ネットスターのカテゴリ修正依頼ページを通して以下のような内容を送った。

今回報告するURLですが、コミックマーケット公式サイトになります。当該サイトを閲覧してみても、「文章による性的表現」を確認することは出来ませんでした。

加えて、間もなく開催されるコミックマーケットでは、ネット上の脅迫行為の存在から、過去行われていなかった参加者の手荷物確認を実施すること、会場である東京ビッグサイトで先日起きたエスカレータ事故により一部のエスカレータを停止することの2点を以下のURLで緊急告知しています。

http://www.comiket.co.jp/info-a/C74/C74Oshirase.html

コミックマーケットは18歳未満の子どもも少なからず参加が見込まれる日本国内有数の大規模イベントであり、フィルタリングのために適切な情報伝達が妨げられた場合、現地での混乱などにより安全上の問題が発生する可能性もあります。従って、当該サイトがフィルタリングされる可能性のあるカテゴリに入れられることには問題があります。サイトの一部に「文章による性的表現」がある場合も、階層を限定するなどして上記の緊急告知の閲覧が妨げられないようにする必要があると考えます。

8月12日追記: コミックマーケット公式サイトのカテゴリ登録は解除された。一営業日で対応された。

2008/08/08

Permalink 02:19:18, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 1959 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲, 言論・表現の自由

フィルタリングって文化戦争の一環なんだよね

ひとつ前のエントリには(はてブとかのブックマークは少ないけれども)多大な反響があったようで、リファラをみていると2ちゃんねるのあちこちで紹介されたりもして、ネットスターのサイトのカテゴリ修正依頼機能やメールによる抗議などがあったようだ。その日のうちにネットスターの社内用グループウェアのWebMail経由(インターネットからアクセスできるのにSSLしていない状況もいかがと思うが…)でうちのブログにアクセスがあったのち、コメント欄にあるように、「創作物の規制/単純所持規制に反対する請願署名」のサイトはデータベースから削除された。

「2ちゃんねるのあちこち」のひとつでは

868 :朝まで名無しさん:2008/08/06(水) 04:32:50 ID:DGOakrwl

とりあえず、いろいろ調べてみた。

AMIのトップは見事に「主張一般」にカテゴライズされておりました。鳥山氏のブログも同様。 で、とらのあなのトップは「性風俗」に分類され、コミケホームページトップは「文章による性的表現」。 規制派団体は見事に「登録されていません」。

ネットスターは完全な規制派企業とはいえ、馬鹿にしてるとしか思えんな、これは。良い攻撃材料になりそうだw

【表現規制】表現の自由は誰のモノ【大谷昭宏102】
とあった(改行はこのブログにあわせてあるほか、サイトへのリンクを補った)。私が確認したところだと、「鳥山氏のブログ」については、私の想定するサイトであれば、全体は大手ブログ事業者傘下では標準的な「掲示板」扱いだが、他は上記に紹介した内容通りだ。「とらのあな」は、コンテンツのダウンロード販売については18禁をうたっているが、それはサーバーを分けてあり、他の部分は基本的に全年齢向けの内容に見える。サイト構成も階層的なので、厳しめの分類をしようとする場合には個別対応が可能。にもかかわらず上記の扱いである(実店舗でも区分陳列が行われているようであり、とくに大規模店舗では成年向けはフロアを分けているようだ)。コミックマーケット公式サイトは、そもそも参加サークルのコンテンツは含まれておらず、過去のイベントレポートにも「文章による性的表現」は基本的に含まれていないようだが。

上記とは別に、「反ヲタク国会議員リスト」メモによれば、本サイトである「反ヲタク国会議員リスト」が、「違法と思われる行為」と分類されているそうだ (ただ、こちらは、ディレクトリをひとつ上に上がったトップから同じ評価をされていて、18禁明記がそこにあることなどから、当該リストではなく全体として評価されている可能性が高い)。

やや微妙な「反ヲタク国会議員リスト」の例はともかく、2ちゃんねるで紹介されていた事例などからすると、フィルタリングはアメリカでの場合と同様に、文化戦争(英語版Wikipediaの説明)の道具としての色合いがついてきているのではないだろうか。アメリカの場合、妊娠中絶問題(おもにPro Choiceをターゲットとしたフィルタリング)や同性愛問題(同性愛肯定をターゲットとしたフィルタリング。ソドミー法違憲以降はカテゴリー見直し時に削除するベンダーが少なくないなどの変化もみられる)といったあたりの文化戦争的フィルタリングで揉めたりしたのだが、日本では「オタク文化」に対する文化戦争の道具に利用されているのだろうか(もっとデータがたくさんないとはっきりしたことはいえないにせよ)。

2008/08/06

Permalink 01:23:06, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 4206 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲

日本における政治的フィルタリングの例

一月ほど前にネットスターのフィルタリングのカテゴリ分類で新左翼党派や各種の右翼団体がほとんどテロリスト扱いである件についてふれたのだけれども、つい先日ネットスターがカテゴリ分類をチェックできる専用サイトを改めて公開していたので、ふと思いついて調べてじつに興味深いことが分かった。

前回調べたとき、革マル派のサイトが(他の党派とは異なり)「主張一般」というカテゴリに分類されていることについてふれた。このカテゴリはネットスターの定義によれば、「サイト主宰者の主張の場としての情報提供一般」とのことで、一見、かなり幅広いようにとりあえずは見える。しかし、これには

個人情報の売買や「別れさせ」工作など、社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張や各種情報の提供を含みます。

カテゴリ一覧 - ネットスター株式会社

という注釈がついている。本文の定義に自然に「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」が自然に含まれているという話なのか、それとも、「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」という価値判断にコミットした分類が実は主眼であるところ、それを定義としてしまうと分類されたサイトの主宰者やその主張の支持者からつっこまれること大なので曖昧にぼかしているのか、実は問題だ。同様のカテゴリは他のフィルタリングソフトでもしばしば存在する。実データとして、極めて穏健なものもふくめて市民団体などを全部突っ込んである場合も多い。企業における生産性管理ツール、といった位置づけでのフィルタリングソフトでは、主張の質を問わずにブロックする需要も多いだろうから、それはそれでアリ、とは言える。

さて、ネットスターの「主張一般」の場合だが、ケータイの子ども向けフィルタリングでブロック対象とされていること、PC向けでも推奨設定で基本的にブロック対象であることから、文字通りの主張一般というよりは、「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」についてのブロックを目的としているのではないか、というふうに思われるふしがある。事実として、多くの穏健な反グローバリゼーション団体のサイトは含まれていないし、グリーンピースジャパンやアムネスティ・インターナショナル日本といった団体のサイトも含まれていない(個別ページについて調べてはいないが少なくともトップページについての話)。

そういった前提の上で創作物の規制/単純所持規制に反対する請願署名市民有志について調べてみたら…「主張一般」に分類されていた。当該サイトは最近作られたものだから、他の市民団体にはネットスターのクローリングが及んでいないがここには及んだという偶然が存在するとは考えにくいだろう。内容面では、当該サイトは児童ポルノ禁止法の改正などにあたって「実在の児童を被写体としない(中略)創作物を規制の対象としないこと」「児童ポルノの単純所持を刑事罰の対象としないこと」を請願する署名を集めるサイトだ。新鮮なコンテンツに新鮮なレイティングがされたということになる。ネットスターの価値判断では、前記のような主張は「社会通念的に不適切と思われる行為を助長、促進する主張」なのだろうか。

追記: 日本ユニセフ協会の実在の児童を被写体としない「子どもポルノ」の違法化と児童ポルノの単純所持処罰を求める署名運動サイトは(もちろん)カテゴリ付けされておらずフィルタリングの対象にはならない。

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