Google ストリートビューのプライバシー問題について改めて

2008/08/16

Permalink 16:55:59, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 4035 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: プライバシー

Google ストリートビューのプライバシー問題について改めて

前のエントリでは、Googleストリートビューについて、まだあまり出ていなかったであろう論点を出してみたのだけれども、ここらでやや包括的に。

プライバシー問題については、いろんな切り口があるのだと思うのだけれども、個人的にここでおさえておきたいと思うのは、明治大学の夏井高人教授が提唱しているデジタル情報化されない権利。こういうのを無限定にふりかざすとなれば、池田信夫氏にLudditeと非難されることうけあいだが、ものは程度ということもある。高木さんが指摘するように、Googleのスト(略)カーの撮影視点はかなり高く、多くの生活空間における家屋のアーキテクチャーが想定する視点とは異なるので、個人が私的空間として確保している場所への侵襲性は高い。ちなみに、高木さんが示している例の道では、同レベルの視点を確保できるような座席高の高い車、例えば大型トラックやバスなどはそもそも通れる場所ではないように見える(RV車やワンボックスカーなどの車高の高さはたかが知れている)。その上で、仮にそういう車が通れると仮定しても、高木さんが引用した榎本さんのブックマークコメントは、たとえば前記の「デジタル情報化されない権利」を主張する立場を仮にとると、適切ではないと言える。見えることと、撮影しデジタル情報化し公開することは同等ではない。

「デジタル情報化されない権利」を支持するかどうかはいったん留保するとして、今のところ、Googleはオプトアウトを提供することで苦情を解決しようとしている。オプトアウトによる対処それ自体が弱者保護の観点から問題となるが、それに加えて前のエントリで書いたように、網羅的に地図に情報がマッピングされている、という状態では、真のオプトアウトは不可能だ。画像は消されるかもしれないが、画像が消されたということがわかり、その場所はURLでピンポイントに特定できる。これ自体が「何かセンシティブなものが映っていた可能性がある」というメッセージになる。たまたま被写体として人が映り込んだだけかもしれないが、場所特有の問題かもしれない、という情報だ。その上、一部の道路だけを撮影対象から外せば、それは地図の上で俯瞰できて、そこから(余分かもしれない)メッセージを読み取ってしまうことができるわけだ(結界はネタとして、buyobuyo氏のこれはひどい。大田区の例はむしろメッセージを読み取れない広さで、公開スケジュールありきで巡回が間に合ってないのだろうと個人的には思う)。

個人的な直感としては、この問題は単に写真をめぐるプライバシーの問題として扱うのはスジが悪いように思う。おそらく、そういう問題にすると、私人間(Googleと個人)の選択の問題に帰着してしまい、写真はオプトアウトできても、オプトアウトしたという情報が公開されている状況は解決できないのではないか。何がオプトアウトされているかも含めてセンシティブ情報である可能性を含めた検討が必要で、そういう前提においてプライバシーと利便性の折り合いをつけるにはどうしたらいいかという問題設定が行われる必要があると思う。この場合、オプトアウトを選ばない邸宅写真の公開も制限される方向に倒れる部分があり、単にGoogle対個人という話ではなくて、より公衆的な選択という文脈になるように思う。専門じゃないので把握していないけれども、GISとプライバシーの問題ってかなりいろいろあって、それなりに検討が行われてきているのではないだろうか。けれども、Googleはそういう検討をしたかというと、その必要を認めていないからこそこういう形でサービスを始めちゃったのだろう、と思うわけで、悩ましいですねぇ。

この記事へのトラックバック アドレス

http://blog.sakichan.org/htsrv/trackback.php/b43b7dfc3f972cce27bddb2c94508191f76a9d4b49baf7bf9de153fc716932b3

コメント, トラックバック, ピンバック:

コメント: marutetsu [訪問者] Email
地理情報については、以下にあるURLからダウンロードできる政府のガイドラインがあって、その26ページに判断フロー(あくまでも行政機関個人情報保護法ですが)があります。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gis/guidelineq&a_200406.pdf
それでこの事例をたどると、GかHのどちらかに辿り着いて、それ以降の判断がわからなくなってしまうんですが、Googleは、オプトアウトの方針をもって、Gの「条件付提供可能」の方向へ判断しているように思います。ただ、見切り発車の印象は強いので、3月に日経に掲載された地理情報に対する政府規制方針の記事をふまえると、行政機関に指導を受けてしまうような、スキを与えてしまった印象がとてもあります。
Permalink永続的リンク 2008/08/17 @ 19:31
トラックバック: GrayRecord [訪問者]
Google ストカー問題
Google ストリートビュー、通称 ストビューが軋轢を引き起こしている。代表的...
Permalink永続的リンク 2008/08/20 @ 08:07

コメントを残す:

頂いたメールアドレスはこのサイト上には表示されません
頂いたURLは表示されます。

許可される XHTML タグ: <p, ul, ol, li, dl, dt, dd, address, blockquote, ins, del, span, bdo, br, em, strong, dfn, code, samp, kdb, var, cite, abbr, acronym, q, sub, sup, tt, i, b, big, small>
(改行が自動で <br /> になります)
(名前、メールアドレス、URLを記憶する Cookie を発行します)
(ユーザがメッセージ・フォームを通してあなたに連絡することを許可します (あなたのメール・アドレスは表示されません))

崎山伸夫のBlog

日々の意見やコメント、出来事などを書いていきます。

12月 2008
 << <   > >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

検索

いろいろ

XMLフィード

RSSとは?

オンラインユーザ一覧

  • ゲスト ユーザ: 24

powered by
b2evolution