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インターネット協会 SafetyOnline3.1 の問題点など

2008/11/06

Permalink 01:03:59, by Nobuo Sakiyama Email , 13 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

インターネット協会 SafetyOnline3.1 の問題点など

少し忙しくしたり体調ダメだったりした間にいろいろとネット規制・自主規制がらみの動きがあってパブリックコメント募集も出ているのだけど、とりあえず 、インターネット協会「青少年の安全なインターネット利用環境の整備を目指して関係者に望まれる取組みについて〜書き込み可能なCGMサイト増加への対応〜(中間とりまとめ)」について書いてみる。

この中間まとめそれ自体をどう考えるのか、というのもあるのだけれども、個人的にはその中の SafetyOnline3.1の問題についてとりあえず並べてみたい。SafetyOnlineは、インターネット協会が長らくやってきたレイティング基準策定の最新版だけれども、一般からの意見募集は今回が初めてだ。ということで、SafetyOnline3 から 3.1 への差分についての意見ではなく全体について過去の経緯を踏まえた形で意見を述べておく、というのは意味があるのではないかと思っている。以下、冗長かつまとまりがない形になるけれども、個別の話。

まず、「性行為」カテゴリの「キーワード」やその説明が、価値中立ではなく「青少年の安全なインターネット利用環境の整備」を越えた価値の押し付けになっている。「変態性欲」というキーワードに「SM、フェチ、獣姦等の変態性欲に基づく性行為」とあるのだけれども、Wikipediaにもあるように、この言葉は現代的には異常性を強調する偏見でしかなく、用いられるべきではない。言い替えの「性的倒錯」にしても、精神医学上の診断基準では、本人が苦しんでいるとか社会的に受け入れられない行動で困ったことになっているとか、いずれにせよ実害が存在していることが前提で、実害が無ければ単なる嗜好の問題としてスルーされるべきもの。レイティング基準でここに分類される行為が「性行為」カテゴリに入れられる意義は、性器を用いた人間の間の典型的な性行為以外のものを包摂することにあるのであって、異常性を処断するためではない。したがって、なんらかの適切な言い替えが必要になる。そもそも、このキーワードがなぜここに存在するのかといえば、SafetyOnline3で検討で既存のフィルタリングソフトのカテゴリを参考にしたがゆえで、既存のフィルタリングソフトのカテゴリは国産であってもアメリカのフィルタリングソフトのカテゴリを引き継いだ、あるいは影響を受けた経緯があり、アメリカでは、そもそもキリスト教文化のもとソドミー法が2003年までいくつかの州で生きていたということがある。ソドミー法は最終的には同性間の性行為を処罰することについて違憲が確定したけれども、そもそもの禁止対象ははるかに幅広い、男女間の性器による性交以外の性行為を取り締まるものだった経緯があり、それは「変態性欲」のリストとかなり一致する。SafetyOnline3でも、当初は同性愛を「変態性欲」に分類して発表したが後でこっそり差し替えたことは以前述べた。必要以上の価値の押し付けをするべきではない、という見地からは、「乱交」について「背徳的な性行為」とわざわざ分類する必要はなく(「異性間・同性間の性行為」に含まれる)、キーワードとしても3人以上によるとか多数によるといった表現で十分だろう。「不倫」に至っては、具体的な性行為描写があれば他のものに包摂されるだろうし、そうでなければ「性愛表現」カテゴリで十分だろう。「官能小説」も同様。

「性暴力・性犯罪」カテゴリも若干問題で、「近親姦」というキーワードがあり、少なくとも片方が18歳未満の児童である近親姦が日本において児童福祉法違反の性犯罪であることは間違いないし、また典型的な近親姦が性暴力であることは疑いないのだが、では成人間で性暴力ではないケースはどうなるのだ、という話がある。直近に話題になったものではオーストラリアのJenny Deaves と John Deavesのケースがあり、これはオーストラリアでは二人とも有罪となったケースだが、日本において同様のケースがあっても性犯罪でも性暴力でもなかろう。別の記事によればヨーロッパ内でも成人間の近親姦が犯罪になるかどうかは国によって異なる。この分類も、結局のところインセストタブーが極めて強い文化の影響を受けているということだ。一般論として、どこまでの近い血縁がインセストタブーに属するかは国や文化、そして年代によって異なるし、日本の近代においても、赤松啓介が『非常民の性民俗』で述べたように社会階層によっても大きく意識が異なるものだったという論が存在しているので、それがそのまま横滑りで入ってきていることには違和感がある。いずれにせよ、日本においては「近親姦」を直接のターゲットとした犯罪化が行われているわけではない(児童福祉法も児童淫行罪が適用されるのであって「近親」との関係が特別扱いされる条文ではない)のだから、正確さを欠いているように思うし、価値の押し付けの恐れがある。

「ギャンブル」カテゴリにおいては、パチンコ、パチスロと「競馬、競艇、競輪」を同列に置いているところに問題がある。パチンコ、パチスロは18歳未満をアクセス対象から完全に除外することが容認されうるが、競馬、競艇、競輪はそうではない。競馬、競艇、競輪に競技者として携わるということは10代の児童の進路の選択として存在していて、それらのための学校の入校資格は中学卒業が下限である。進路にかかわる情報として、遅くても中学生以上にこれらの情報にアクセスを許容する必要があるのではないか。もちろん、馬券、車券などのオンライン購入(がもし可能でもそこ)まで許容する必要はないし、単に賭ける立場からの予想などの情報へのアクセスも許容する必要はないだろう。しかし、「ギャンブル」カテゴリがそこまで限定的なものとは読み取れないし、コンテキストラベルの「スポーツ」「教育」による例外措置で救済できる範囲は十分ではないのではないか。

「その他禁止行為」カテゴリのうち、「その他の違法行為」が、「不正アクセス、フィッシング詐欺等」の例示があるものの、限定列挙ではない点が問題だ。SafetyOnline3の検討過程においては、一部の「過激」な政治的コンテンツをこれを口実としてレイティングしてアクセス制限するという議論が登場している。どうやら想定されているのは街宣右翼や暴力的な新左翼党派のようだが、それに限定されず、「政治的ビラの集合住宅ポストへの投函」や「首相私邸外観見学ツアー」なんかも入れたがる人達はいるだろうね!あと、最近の流れだと、自衛隊員(幹部)が懸賞論文に応募しちゃう話、とかね!第三者レイティングとしてもセルフレイティングとしても、「その他」はないだろ、と思うよ。

コンテンツ分類についてはこれくらいだけれども、最後にコンテキストラベルについて。芸術、教育、医学、スポーツ、青少年に対する配慮、というのがあがっているのだけれども、これじゃ足りないんじゃないかな。純文学・古典文学などは芸術の文脈に入ると明示しないと、学校の教科書に載ったり、入試で出たりするような本が著作権切れでネットにあってもアクセス制限対象って話になりかねない。それから、歴史、あるいは歴史的文書といったラベルも必要だろう。歴史なんて、暴力的な内容で溢れているし、思想家でも革命を語っているようなもの、マルクスとかレーニンとか北一輝とか、(厳密に考えてないが)「客観的」にカテゴリでひっかかる可能性がある気がする。でも、中高生ぐらいだったら読みたい奴が読めないのはおかしいしね。