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兵庫県は親子のプライバシーを踏み荒らすそうです

2008/12/20

Permalink 01:13:18, by Nobuo Sakiyama Email , 3 words   Japanese (JP)
Categories: プライバシー, 検閲

兵庫県は親子のプライバシーを踏み荒らすそうです

兵庫県が18歳未満の携帯電話でのフィルタリングを義務付ける条例骨子案を発表したという報道があった(神戸新聞朝日新聞読売新聞)。各紙報道のほか、兵庫県のサイトで青少年愛護条例改正骨子案に係る県民意見提出手続き(パブリックコメント)の実施についてという文書が発表されていて、条例改正概要、条例改正案の目的・背景、条例改正骨子案などがMicrosoft Wordフォーマットで公開されている(条例案はインターネットカフェ規制、出会い喫茶規制、深夜外出制限の強化、乳幼児への条例対象への拡大とセット)。どうやら、昨年度からの検討のようだが、その経過の一部を青少年愛護審議会の議事録として読むことができる。県当局が主導して検討していくのを審議会に諮ってきた模様。

この条例案、なんとも気持ち悪い。青少年ネット規制法では保護者が「青少年有害情報フィルタリングサービスを利用しない旨の申出」をする場合、その理由を問われることはない。しかし、この条例案では、

  • 障害や疾病を抱えた青少年がコミュニケーションの手段として利用する場合
  • 就労している青少年が業務に関連する情報を受発信する必要のある場合
  • 保護者が携帯電話インターネットの利用履歴提供サービスの活用等を行い、青少年の携帯電話インターネットの利用状況の全てを把握する場合
  • その他これらに類するものとして、知事が別に定める場合

のみが、フィルタリング解除の「正当な理由」として許される。それ以外の理由で判断しようとすることは、条例の義務違反とされる。その上、その「理由」は携帯電話事業者に 書面で提出しなければならず、その記録は3年間保存される。そして、県の「事業者に対する立入調査」において、この記録は調査対象となる。

親が、どのような理由で子どもに携帯電話をどのように使わせるか、というのは、フィルタリングを含めて、その家庭の自治でありプライバシーに属するはずだ。しかし、兵庫県はそこに土足で上がり込むことを平気でやると宣言している。さらに、青少年愛護審議会の議事録を読むと分かるのだが、この条例は当初、フィルタリングの義務化と違反した保護者への罰則までが検討されていたようだ。フィルタリングが「有害」とも思われない有用な情報をブロックする弊害はそれなりに認識されていて、それでかえってプライバシーに首を突っ込むような条例案になっているようだが、罰則については県当局と審議会の一部の委員はかなり拘っていた様子も伺える。将来についての線としては消えておらず、今後ブラックリストのカスタマイズ化が普及すると、むしろ復活する可能性がありそうな議論になっている。

気持ち悪さにはもうひとつ別の要因があって、ネットとケータイを使う「親」への、県や審議会委員の目線だ。大抵の親はすでに成人で、20代〜30代が中心で10代と40代もそれなりにいるだろうが、そういう世代には、ネットとケータイで当たり前にヘビーにコミュニケーションしている、そういう層が少なからずいるわけだけれども、それこそを矯正したい、という感じが漂っている。これは、条例改正の他の部分についての議論でも伺える。下限を撤廃して従来対象になっていなかった乳幼児を含める、という文脈では、さすがに他の委員から支持されず、審議会の会長からも検討対象外だとされていたが、「青少年条例の年齢の上限を上げたい」という議論がでていた。

(会長) 条例上の青少年の定義を「6歳以上18歳未満の者」から「18歳未満の者」に変更するということについて、ご意見はありますか。

(委員) 国民投票を18歳以上にするという議論もある。それについて、ある大学で調査したところ、18歳は若すぎる、まだ物の判断ができないとその年代に近い学生が答えている。そうなると、犯罪を起こしているという行為自体は大人と寸分違わず起こしていますけれども、精神的にはまだ20歳になっても、子どもじゃないかなと思うんですけれども。これからは、18歳という上限についても議論していかなければならないと思います。

平成20年度青少年愛護審議会(第2回)議事概要 - 兵庫県

まぁ、こういうパターナリスティックな気持ち悪さというのは、なにも兵庫県限定ではなくて、内閣府の青少年育成施策大綱でも、従来からして、青年期といって30歳未満までカバーしてきたところを、今度はさらに「ポスト青年期」といって30代まで政策の対象としてきていて、個別の政策の是非とはまったく別の「枠組」レベルの問題として、どんだけお前らパターナリズム好きなんだ、というほかないのだが。ただ、それでも兵庫県の気持ち悪さは特質に値する。