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全ての子どもにスマートフォンを持たせよう

2008/12/22

Permalink 00:32:50, by Nobuo Sakiyama Email , 17 words   Japanese (JP)
Categories: 情報社会

全ての子どもにスマートフォンを持たせよう

このところの子どもの携帯電話・所持にまつわるモラルパニック的な騒動について、規制という意味の問題というのとは別に、そこで語られる、子どもを情報機器とICTを使ったコミュニケーションからなるべく遠ざけたい、という「教育」的議論に、ずっと気持ち悪さを感じていた。ただ、私自身はとうに子どもから遠い年齢であり、といって、子どもがいるわけではなく、そして教育の専門家でもないので、このもやもやさをあんまり深く突っ込まずに放置してきていた。でも、ふと気づいたので書く。少なくとも中長期的には、昨今のモラルパニック的な方向とは逆に「全ての子どもにスマートフォンを持たせよう」ぐらいの勢いでものごとをすすめるのがいいのではないか。

こう思い始めたきっかけは、一ヶ月前ほどにクリステンセン(正確には弟子と、大学学長経験のある公共政策専門家の3人の共著)の新著「教育×破壊的イノベーション」が出たばかりのところをたまたま本屋で見かけて購入、2,3時間で読み切ったあたりから。原著も数ヶ月前に出たばかりらしいけれども、関係論文は、2、3年前から出ていたようだ。クリステンセンということで、モジュール化による破壊的イノベーションを学校教育に適用していく議論で、教師中心の指導システムを個別の生徒中心の学習システムに置き換えていくということが話の中心となる(原著タイトルは "Disrupting Class")。こうした変革の道具立てとして、インターネットにつながったパソコンでの e-Learning、それも少数のプロが作ったコンテンツだけではなく、ユーザー生成コンテンツが重要な位置を占めるような姿が未来として描かれている。そうだこれだ、というのがひとつ。もうひとつ、この本では全く引用されていないのだけれども、こういう学びの変革はOLPCプロジェクトとも共通点が多い。

ここで日本のケータイ騒動に戻る。弊害論全体はともかくとして、その後の「学校への携帯持ち込み禁止」議論は、いったい何を守ろうとしているのだろうか。ケータイの利用それ自体についてではなく、「学校への持ち込み」で問題にされているのは、結局のところ、「教師中心の指導システム」としての学校の秩序維持、という観点じゃなかろうか。それに対しての反論も、家庭との連絡や緊急時対応、GPSによる居場所監視などの「セキュリティ」的なものが中心となり、議論が総じて後ろ向き。かくて、GPSはついているが能動的にネットを使えないようにしたケータイを「子ども向け」として売れ的な、非常に後ろ向きな話が大手を振って歩いている。

あと、思ったんだけどね。従来の「ケータイ」って、製品としてかなり垂直統合されていたわけで、ちょっと機能がついたり変わったりするたびにニューモデル、という感じだったけれども、もはやケータイはこれまでほど短い買い替えサイクルが維持できないという話もあり、それは「機能限定子ども向けケータイ」にしたって変わらない。販売奨励金モデルが終わったというのはそういうことだ。そういう状況で「今のうちの子にはこれで十分」と思ったものが、はたして数年後にミスマッチがないか、というと、厳しいのではないだろうか。子どもの成長は早い。さらに、たいして安くもない低機能ケータイを「セキュリティ」関心で買った親が、子どもにそれとは別のさらなる情報化投資ができるかどうか、というと、社会階層や可処分所得によっては、つらい場合も少なからずあるのではないだろうか。

そこで、スマートフォンだ。スマートフォンもいろいろあるだろうけれども、例えば Windows Mobile携帯電話や Android携帯電話は、かなり明確にハードウェアとソフトウエアがモジュール化により分離している。さらに Windows Mobile の端末メーカーにとってのカスタマイズ化の要素の大きさは広く知られているし、Androidに至ってはオープンソースだから、端末メーカーが許せばサードパーティのカスタマイズができる。そして、多くのスマートフォンはサードパーティのものを含むアプリケーションをインストールでき、出来ることの幅も広い。

こういうスマートフォンに教育向けアプリケーションを載せて教育現場で活用できるようにして、ケータイ上のアテンションのいくらかを「遊び」から「学び」に転換する、というほうが、普及がすすんでいる子どものケータイ保有率を考えれば、よほどポジティブなんじゃないだろうか。OLPCの5つの基本原則には「子供の所有権」とあり、スマートフォンを活用できれば、学校の特別教室の共用パソコンよりも、はるかに効果的かもしれない。

ペアレンタルコントロールという観点では、端末メーカーの方針次第では、複数のバージョンのファームウェアを一種類の端末でサポートすることもできるし、内部のさまざまなモジュールを個別に有効・無効にしたり、あるいは場所や時間を用いたきめ細かいペアレンタル・コントロールも実装可能だろう。こうした実装をサードパーティが行うことができるようになっていれば、その提供者は大企業である必要もなく、地域のニーズを拾い上げやすいかもしれない。子どもの発達段階に応じて出来ることをソフトウェアで変えていくのであれば、端末を短いサイクルで買い換える必要もなく、家庭の財布にもやさしいだろう。

そういえば、上でリンクを貼った楠さんのブログ記事では、任天堂DSをひきつつ次世代(以降)のポータブル・ゲーム機のモバイルプラットフォーム化の可能性をみているのだけれども、ここでの文脈だと、すでにDSを使った e-Learning ソフトというのは結構な数が出ているので、教育コンテンツプロバイダとしてはその方向もうれしいのかもしれない。