改正薬事法施行規則は個人輸入を拡大してしまうのではないだろうか

2009/02/09

Permalink 00:23:48, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 3603 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: コンピュータとインターネット, 政治

改正薬事法施行規則は個人輸入を拡大してしまうのではないだろうか

ブログをしばらく更新していなかった。いろいろネタはあるけれども、とりあえず前のエントリの続きで薬のネット販売規制の問題から。結局、「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」は、ネット販売規制部分はそのまま出てきた。

省令が出る前の楠さんのコラムに次のように書いてあった。

ネット通販に関しては、大衆薬の販売以上に、未認可の漢方薬や処方薬が販売され薬害で死者を出すことの問題が深刻だ。こうした悪質な事案にさえ対処できていない現状にあって、コンビニで売ることのできる薬までネットでの販売を禁止することは、かえって真面目な事業者を市場から退出させ、成長の続く医薬品のネット通販市場を、規制の届かない海外や違法サイトに潜らせてしまう懸念が大きい。

医薬品のネット販売禁止、フェアな議論の場で再考を - インターネット- 最新ニュース: IT-PLUS

違法はともかくとして、規制の届かない海外、という問題はけっこう大きいのではないかという気がする。厚生労働省サイトの「医薬品等の個人輸入について」という文書によれは、医薬品の個人輸入は「特例的に、税関の確認を受けたうえで輸入することができ」るとのことなのだけれども、この特例には、とりあえずは分量の制限以内であればあてはまる。その上で、ブラックリストがあるということになる。ひとつは「医師の処方せん又は指示によらない個人の自己使用によって、重大な健康被害の起きるおそれがある医薬品」として列挙されたものが要処方箋で、もうひとつの大きなカテゴリとして「麻薬及び向精神薬」などが挙がっている。けれども、逆にいえばそれだけ。ワシントン条約違反とか知的財産侵害物品とかは、医薬品としてというのとはちょっと違う。

とりあえず、英語で適当に検索してみたところ、「処方箋なしで処方箋薬を売ります」というサイトはけっこうな数がみつかる。これ、アメリカを市場としているサイトなのだけれども、サイトの国籍はアメリカではない。アメリカではFDAの規制と監視、業界自主規制で、処方箋薬は処方箋無しでは売らない。日本と違って処方箋のファックス等送付での通販は認められてはいるけれども、処方箋は必要ということになっている。「処方箋なしで処方箋薬を売ります」の会社は、いくつか見たところではカナダやイギリスの住所を連絡先として出していて、薬そのものはジェネリック医薬品生産の大国として知られるインドから直接配送するとしている。この手のサイトで一番売れているのはどうやらよくあるspamそのまんまにバイアグラの類や毛生え薬、ホルモンなどのようだが、その方面に特化しているサイトでなければ、実になんでも売っている。抗うつ薬などもあれば(これは個人輸入すると違法ですね)、抗生物質、抗HIV薬もあったりする。そして、ネット販売禁止される第二類医薬品にあるような、アセトアミノフェン、イブプロフェンやインドメタシンなどの鎮痛剤なども普通に売っている。値段も、ものによっては送料を加えてもこの円高のおりかなり安いように見える。

多くの医薬品のネット販売を禁じたら、ある程度はたしかにコンビニなどの新たに認められた場所で買うようになるかもしれない。ただ、所詮、政令は新たな販売手段を「可能にする」ものであって、はたしてスペースに限りのあるコンビニに政令で定める枠組でどれだけの医薬品が置かれるか、というとかなり怪しいのではないだろうか。以前の医薬品から医薬部外品へのスイッチという規制緩和で、たしかにコンビニでうがい薬や薬効成分入りののど飴が置かれるようになったが、だからといって個人が欲しいと思う医薬部外品がなんでも近所のコンビニにあるかというとそういうものではない。結局、輸入だろうがなんだろうがネットで買えるなら買う人が増えるのではないだろうか。

医薬品の個人輸入のひとつの壁となるのは言語の問題だろう。日本人は英語に苦手意識を持つ人が多すぎるし、まして医薬品の名称や英語の効能書きとなればなおさらだ。個人輸入代行業というビジネスは、そういうところを狙っているのだろう。そして、厚生労働省も個人輸入代行業については厳しく規制し取り締まっている。しかし、問題はそれで終わるのか、ということだ。ネットで医薬品を今まで買えていたものが買えなくなる、という状況を作り出せば、それを埋めるというのは、ビジネスとしては十分に考えられることだろう。それは、これまでのような、特殊な薬を輸入したいと思うが英語や海外サイトとのやりとりが苦手な人達がそれなりのマージンを払って輸入代行してもらうのとは、全く違う話になる。例えば、海外の通販サイトが自ら日本語対応を行う場合もあるだろうし、あるいは、日本語でアフィリエイトサイトを作る人達も出てくるだろう。実際、「処方箋なしで処方箋薬を売ります」というサイトでアフィリエイト募集をしているところはいくつかあるようだ。前述の厚生労働省の個人輸入代行業規制の枠組や、あるいは薬事法そのものでも無承認医薬品の広告を禁止するなど厳しい規制がある(だからこの記事では具体的な医薬品販売サイトの例示は一切行っていない)というけれども、外国に存在するサーバーで日本語アフィリエイトサイトを作られたところで、違法行為として責任追及できるとも思えない。

こういう事態を招かないためには、6月より前に安全性を確保する手続きを確立して国内のネット医薬品通販の市場を潰さないことが必要なんじゃないかと思う。

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コメント: あらいしゅんいち [訪問者] Email
ご無沙汰しています。

抗うつ薬の多くは向精神薬でも麻薬でもないので、個人輸入しても合法だと思います。

さすがに睡眠薬などの規制薬物などは取り扱っていないネットショップが殆どですよ。これらは国際条約で規制されているので、どこの国でも犯罪になるのだと思います。
Permalink永続的リンク 2009/02/11 @ 01:19
コメント: Nobuo Sakiyama [メンバー] Email · http://www.sakichan.org/
うーん、たしかに「抗うつ薬の多く」は違いますね。ただ、リタリンを扱っている(と言っている)ところがいくつかあります。

睡眠薬については、日本では政令で向精神薬に指定されて規制がかかっているゾルピデムを扱っている(と言っている)海外ネット薬局は多いですね。健康保険制度の外で買う利益はないと思いますが。
Permalink永続的リンク 2009/02/11 @ 20:02
コメント: nmaeda [訪問者] Email
何か勘違いがあるような気がしますが、向精神薬は、中枢神経に何らかの作用をして、精神に影響を及ぼす医薬品全般を指す言葉なので、抗不安薬も、抗うつ薬も、抗精神病薬も、睡眠導入薬も含みます。

麻薬及び向精神薬取締法で指定されている薬剤のみを向精神薬と呼ぶわけではありません。
Permalink永続的リンク 2009/02/12 @ 01:33
コメント: nmaeda [訪問者] Email
ごめんなさい、続きというか、本題ですが‥‥

日本でうつ病の第一選択薬ともいえる三環系抗うつ薬は入っていませんが、抗不安薬は該当します。いわゆるベンゾジアゼピン系やチエノジアゼピン系の一部で商品名だとセルシンやセレナール、リーゼなどです。

医薬品の個人輸入が広がると、プロザックのような国内未承認のSSRIを輸入する人が増えるのではないかと考えられますね。三環系抗うつ薬の不快な抗コリン作用が少ないのは事実ですが、副作用がないわけではないので、変な勇気を持たなければ良いのですが。
Permalink永続的リンク 2009/02/12 @ 02:56
コメント: 乾一彦 [訪問者] Email
長期常用する医薬品はコストの問題でかなりの部分で個人輸入のシェアが増えている。

今回の通販禁止となれば、その多くが個人輸入になり、一般ユーザにとっては異常に高い国内医薬品から解放されるので、最終的にはユーザメリットのある施策かと思いますね。

その分、楽天などの利益が減り、医薬品通販会社の利益が無くなるのが、デメリットでしょうが、ある意味での産直なんでしょうかね・・・

毒薬、劇薬又は処方せん薬でも1か月分、それ以外の医薬品なら2か月分なら届出不要。

ただし、サリドマイドなど特定の成分が含まれているものは禁止になっているが、極めて例外的。下記URL参照。

http://www.mhlw.go.jp/topics/0104/dl/tp0401-1a.pdf



Permalink永続的リンク 2009/02/14 @ 17:36
コメント: hori [訪問者] Email
いまいちネット通販を禁止する理由がピンとこないんですよね。医薬品のネット通販どのぐらいの被害者がいるのかよくわからないです。消費者から見て、効果的な医薬品をレビューを見て選べるのは凄い便利なんですけどね。
Permalink永続的リンク 2009/05/28 @ 15:10

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