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医薬品流通制限と憲法の問題は厚生労働省も認識しているはず

2009/03/08

Permalink 12:06:56, by Nobuo Sakiyama Email , 2 words   Japanese (JP)
Categories: 政治

医薬品流通制限と憲法の問題は厚生労働省も認識しているはず

薬事法施行規則での医薬品ネット販売禁止問題って、ネット通販の個人輸入に流れるだけだろというのは以前書いたとおりで、実態はもう進んでいて、花粉症シーズンのこの時期、とあるアメリカ住所の日本語通販サイトで日本だと処方薬だけれどもアメリカではOTCになっているクラリチンのジェネリック版がものすごい勢いで売れていて、一日あたりの単価が一番安い、コストコのプライベートブランドの300錠が送料込み2000円強というのが売りきれて、次は30錠800円弱というのが売れ筋商品になっているこのごろ、というのが実態。コストコのやつは300錠って一日一錠として10ヶ月弱分、法令上許可が要らないのが2ヶ月とか処方薬で1ヶ月とかなので、なんで厚生労働省の個別の許可がなくて通関できてるのか謎だけれども、実態はそんなもんです。会社半日休んで初診料・再診料払って診察受けて処方箋もらって調剤薬局に行き、というのを避ける人たちが大勢いるのは、まぁ、それはそうだろという感じ。普通の風邪薬なども国内ドラッグストアなみの値段だし、ブランドも、コンタックみたいに日本と共通してるものって多いから、6月以降は間違いなく医薬品をネット通販で買っている人たちのかなりの部分はこうしたサイトに流れるだけで終わるんじゃなかろうか。

厚生労働省も、何も考えていないわけではなく、2007年の「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」報告書というのをみると、医師等以外による個人輸入を制限していきたい、という話にはなってはいる。

(2)個人輸入の制限等

医薬品の個人輸入については、国内でその品質や安全性が確認されていない医薬品であっても、海外で受けた治療の継続や、国内未承認の抗がん剤などを使用した治療法等への配慮から、①他者に販売や授与をしないことを前提に、②自己の疾病治療等に必要な医薬品について、③自らの責任で使用するために個人輸入することまでは薬事法において禁止していない。

しかしながら、医薬品の個人輸入により入手したシルデナフィルを服用した男性が死亡した事例や経口妊娠中絶薬を服用した女性に健康被害が発生した事例等がみられるほか、インターネットの急速な普及に伴い、インターネット上で医薬品の輸入代行を行う旨の広告が氾濫するなど、本来は医師等の専門家が関与すべき医薬品でありながら、それ以外の者がインターネット等を通じ安易に個人輸入し、使用することによる健康被害の発生が危惧される。

このようなことから、医薬品の安易な個人輸入を行わないよう、注意喚起を図るとともに、上記のような医師等以外の者による個人輸入については、保健衛生上の観点から一定の制限を加えるべきである。

有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会 報告書 - 平成19年7月27日

とはいえ、医薬品の個人輸入を原則レベルで制限することは、少なくとも現行の業法としての薬事法の枠組では不可能だし、以下のように憲法問題になることも認識されていて、上記報告書の工程表には、個人輸入の制限については記載がない。

○ 高久座長

 結論としては、薬監証明を必要とするような薬については、個人輸入は基本的には認めないようにすると。そういう方向に行くということで。それから、医師個人輸入の場合に、これはこれから具体的にどうするかが問題であるにしても、外国の例を参考にすると、品質の確保という意味では薬剤師の関与を十分に考慮するということで。ちょうど時間になりました。どうぞ。

○ 高橋医薬食品局長

 ちょっとその辺はよくお考えいただかないといけないのですが、この個人輸入はある意味では野放しではないかという、ありていに言えばそういうようなお話になるのかもしれませんが、個人によるこういったものの所持や輸入がだめだということは、これはある意味では非常に大きい問題なので、例えば麻薬とかああいうものに、こういうものを持ってはいけないという罰則つきで完全禁止をするような話になるかどうかなんですね。その場合、ちょっとぐらい品質が悪いからだめなんだとか、個人には情報が十分いっていないからやはり禁止する方向がいいんだということは、これはある面憲法問題になりますので、本当にそこまで非常に危険だという証明ができるかどうかというのは、ちょっと私の方の目からいうとかなり難しいのかなという気はいたします。ですから、実態として現実には個人は余り情報を持っていませんから、できるだけ普及・啓蒙をやると同時に、できるだけお医者さんの方がきちっと管理をする方向で進めていくという方向は全く問題がないと思いますが、今問題になっている最後に禁止ということになるとかなり難しい側面があるということはひとつ御理解いただきたいと思います。

 それから、先ほどの13ページ、個人の輸入で届出があるものと同時に、届出が必要ないものがあります。これは山のようにあります。薬か食品かもわからないようなものがいっぱいあります。そこを全部何か国がチェックしろといったら、これはもう行政事務が大変なことになりますので、そこはあと個人責任でどう考えるかという問題が一つあるというのは御理解いただきたいと思います。

 それからもう一つは、輸入する場合に、では医者が責任を持って輸入するんだと。同時にあと内容のチェックというお話が出ましたが、医者が責任を持っているというのは、現行の法制度で医者が今の医療制度の中で、患者に対して全責任を負っているという格好になっているわけです。これは全体の法律の組み立てが。そのとき例えばそこで今度は品質の方もちゃんとチェックを誰かがやろうという話になれば、それは参加する誰かがもしかすると責任をともに担う立場になるわけで、それはいいときはいいですが、悪いときになったら必ずそこには責任を負うという問題が発生します。そこはよく慎重に考えていただかないといけないということを、ちょっと御理解いただきたいと思います。

○ 高久座長

 確かに禁止になると非常に大きな問題になるから、今おっしゃったようにPRをしてだんだん減らす方向に行くということしか仕方がないと思います。それから、薬剤師の方がどの程度関与するかということは、これは今後の検討課題になるのではないかと思います。よろしいでしょうか。おっしゃるとおりだと思います。どうもありがとうございました。

07/04/19 有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会 第6回速記録

こういう経過のあとで、今回のネット通販禁止の話が出てきている。このとき、少なくとも買うほうについては、「その場合、ちょっとぐらい品質が悪いからだめなんだとか、個人には情報が十分いっていないからやはり禁止する方向がいいんだということは、これはある面憲法問題になりますので、本当にそこまで非常に危険だという証明ができるかどうかというのは、ちょっと私の方の目からいうとかなり難しいのかな」と、医薬食品局長が述べているというのは、厚生省側の発言として注目すべきだろう。今回の薬事法施行規則改正が業法の枠組の中であるとはいえ、上記の局長発言との整合性はツッコミに値するのではないか。