タイトルは有名な1993年のジョン・ギルモア(EFFの創設者の一人)の言葉だけれども、うん、楠さんが日経で書いた出会い系規制でSNSを標的にした警察の動きに対しても、そういう事態が現在進行形で起きているようだ。
4月2日に警視庁が出会い系の書き込みの削除を要請したSNSなどという6社のうち、社名が報じられた4社のサイトはEMA認定サイトだけれども、他の2社は名前が出ていない。口頭要請だったとはいえ、関係する内部文書を情報公開請求でもすれば分かるかな、という気はするが、それはおいておく。数日して、これは神奈川県警なのだけれども、「児童買春:25歳消防士逮捕」という記事があり、
「エスタ」とサイトの名前が出ている。エスタ(ケータイからのみアクセス可能)は、携帯電話コンテンツの事業を行っている株式会社アブサンが運営する「コンテンツ搭載型SNS」で、当初は掲示板サイトだったらしいが、2007年にリニューアルして会員数をそこそこ増やしてきていたということらしい。簡単に言えば、モバゲータウンやグリーと同類サービスということになる。エスタの特徴は、同業他社の多くがアバターを使っているところ、各利用者が携帯電話で撮ってメールで送る写真、「写メ」を積極的に利用してもらおう、という点にあった。2人は「エスタ」と呼ばれる携帯電話のコミュニティーサイトを通じて知り合ったという。
児童買春:25歳消防士逮捕 神奈川県警 - 毎日新聞 2009年4月6日 21時52分
株式会社アブサンは、2006年設立の資本金1000万円の企業で、本社所在地を検索してみると、レンタルオフィスで間取りをみる感じ、数人がやっとという感じになる。スタートアップ企業がネットサービスをやるというとこんな規模というのは珍しくないだろうが、とりあえず、「健全化」のために大手企業のような人海戦術をやる、というのはどう見ても無理、という状況で、事実として、野放しに近い運用だったようだ。ユーザー登録しなくても登録利用者のメンバー検索や、そこから日記を見るなどはできるので覗いてみると、友達数の多いユーザーのかなりの割合が自分の裸をさらしていらっしゃっていて、18歳未満の年齢も多い。「出会い」的な自己紹介も見ることができる。前記の事件は、そういう環境で起きている。で、その結果、「健全化」をものすごい勢いで警察から要求された、ように見える。が、前述のように、運営者はそのリソースがある企業ではない。
ということで、株式会社アブサンは、一度、エスタを4月末日で「運営終了」するというアナウンスをエスタの中で出したそうだ(これ自体は私は直接みていないが、後述するように現在もそれが事実であることは分かる。登録利用者にはメールも送られたかもしれない。私は運営終了がサイト外で話題になっていたのに気づいて追いかけている)。結果、何が起きたか。
SNSのユーザーは、利用者同士の結びつきがあって、継続的なコミュニケーションをとっている。サイトが無くなるということは、この結びつきを壊すことになる。ということで、実のところ、ゲームとかマンガとかのコンテンツはどうでもいいがコミュニケーションは続けたいユーザーの考えることは、他のSNSへの移動だ。ただ、前記のようなフリーダムすぎるコミュニケーションぶりを、例えばモバゲータウンに移ってやろうとしても無理なことは自明だ。ということで、以前のOpenPNEブームのころに作られた「アダルトSNS」のうち、招待制でないところを、誰かが移転先として選んで広まった。移転先SNSについて調べてみると、OpenPNEの開発元の手嶋屋のASPサービスを利用していた。ということで捨てアカウントを作って検索をかけてみると、相変わらずフリーダムすぎて18歳未満で登録して性器無修正の写メを大量投稿して運営者に通報されてアカウント削除されるといった具合。しかしそのうち学習して、年齢はとりあえず18歳未満でも18歳にするとか、自己紹介欄を修正するとか、そうやって定着していきそうな雰囲気になっていた。
一方、株式会社アブサンのほうだが、事業の買い手でもついたのか、
過日より今月末日をもって運営停止の告知をさせていただきましたが、このたび、来月5月1日より運営を株式会社デジタルマートに移管することとなりました。
(略)
来月以降も今までと変わらず運営を続けて参りますのでご安心下さい。
なお、今後はユーザーの皆様に快適にご利用いただくために、悪質な投稿により一層、監視体制を強化して参ります。携帯を巡る未成年の事件が頻発する世相に鑑み、不可欠の措置ですのでご理解賜りますようお願いいたします。
このたびは、まぎわらしい終了告知の件、皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。
今後とも変わらぬご愛顧をいただきますよう、引き続きよろしくお願い申し上げます。
というアナウンスをサイト内に出した。これで登録ユーザーの移転騒ぎはいったん落ち着いたようにも見える。問題は移管先だ。「デジタルマート」という商号、検索すると家電量販店が複数ひっかかるのは関係ないとして、アダルトサイト関係でひとつ同じ商号の会社がある。ただ、よくある名前なので同一かどうかは分からないし、既存事業が何であろうと「監視体制を強化」できればそれでいいとは言える。ただ、これで疑念をもったという状況ではある。ということで、上で略したところ、「株式会社デジタルマート」の住所と電話番号、FAX番号があったので、これを調べてみることにした。住所は「東京都千代田区九段南4-7-22」。Googleで検索すると、上位にバーチャルオフィス九段南・南青山というサイトが出てくる。バーチャルオフィスということで、電話転送や郵便物受け取りをして、登記も置かせてくれるが机はない、という形態のサービスだ。もっとも、同じ住所で店舗などもあるので、これだけでは断定できない。ということで、FAX番号で検索したところ…、同じFAX番号の企業が少なからずあり、上記のバーチャルオフィスを利用していると明記しているところが含まれていた。ということで、移管先の企業の実態が公表された住所にないことは確実だ。その後、エスタ内の告知は更新され、電話番号とFAX番号は削除された。この状況で「監視体制を強化して参ります」という言葉を額面どおりに受け取れるかというと、無理だろう。そして、多分ユーザーもそれを望んでいないし。
ユーザーの動き、事業者の動き、両方とも、素直に警察の過剰な要請を受け入れる話にはなっておらず、今はまだ稚拙な動きに見えるが、遠からず、海外流出は現実のものになるのではないだろうか。
ネットスターの人にウイルスバスターは関係ないと言われてしまった前エントリだが、それはそれとして、「活動家グループ/反体制的団体」がフィルタリングソフトでブロックされるというのは、ウイルスバスターに限った話ではない。フィルタリングソフト業界も淘汰やM&Aがいろいろあり、新規参入もあるので昔の情報だけでは問題があるので、メジャーなものをいくつか簡単に調べて同様の状況があるかどうか見てみた。
簡単にみつかるところで、企業向けで有名なSmartFilterがある。SmartFilterを開発・販売してきたSecure Computingの日本法人サイトにはほとんど情報がない のだが、リセラーであるバーテックスリンクが用意したサイトには、カテゴリ一覧が説明つきであり、"Non-Profit Organizations/Advocacy Groups"というカテゴリがあることが分かる。このカテゴリ一覧だけだといまいち位置づけが分からないが、SmartFilter含め複数のSecure Computingで使われているデータベースであるTrustedSource(これは単なるコンテンツに対するURLリストではないとのこと)のTrustedSource Web Database Reference Guideという文書を参照すると、フィルタリング用のカテゴリについて、リスクの種類に応じたグループ分けがされていて、"Non-Profit Organizations/Advocacy Groups"カテゴリは Information というリスクグループで、ポルノなどのコンテンツが Liability というリスクグループに分類されているのとは異なる位置づけだということが明確になっている。TrustedSourceではURLがどのカテゴリに入っているかの検索機能を一般に提供していて、日本生活協同組合連合会サイトが当該カテゴリである一方、みやぎ生協はMarketing/Merchandisingになっていることなどが分かる。なお、リンク先を適宜みるとすぐに分かることだけれども、Secure Computingは昨年秋にMcAfeeに買収されていて、TrustedSourceもMcAfeeブランドに移行している。ただ、SmartFilter はMcAfee ブランドにはまだなっておらず、McAfeeサイト上にはほとんど情報がない。マカフィーの日本向けの個人向け製品の2009年版には、「保護者機能」としてURLフィルタリングを含むものが搭載されているけれども、同じ機能は以前から Parental Control として提供されているし買収時期のことを考慮すると買収効果が反映されているかというと、まだのようにも思う(判断する情報はない)。個人向け製品としてウイルスバスターと競合するものなので、「保護者機能」の詳細がどうなっているかと思ったら、サイトの説明をみる限りでは、年齢設定のみでカテゴリのカスタマイズなどはないようだ(個別のサイトをブロック対象に入れたり外したりという機能はある)。よく分からない。
もうひとつ、さらに企業向け製品として、Websenseというのがある。ここは歴史が長いところで、そもそも、ネットスターでサイト分類作業を行っている、仙台の「URLリサーチセンター」は、もともとはネットスターの設立前、親会社のアルプスシステムインテグレーション(ALSI)がWebsenseの国内代理店をやっていたころに、日本語コンテンツの分類を担当していたことに遡る。その後、ALSIはWebsenseとの契約を段階的に解消する一方で自社フィルタリングソフト InterSafe を発表し、URL分類作業とデータベース化の部分を分離してトレンドマイクロと合弁してネットスターを設立、という流れになる。そういう経緯から、Websenseのカテゴリとネットスターのカテゴリは共通のルーツをもつため似ているが、その後の双方のカテゴリ改訂で別のものになっている。Websense と InterSafe に分かれたころに聞いた話では、Websense が企業向けにフォーカスする方針の一方、ALSI は教育・家庭市場をめざした、ということのようだった。で、このWebsenseなのだが、Master Databaseといって、URLのほか、プロトコルやアプリケーションも分類したデータベースを持っている(Websenseは企業向けとして、HTTPのフィルタリング以外にも他のさまざまなプロトコルへの対応や、企業内パソコンにインストールされ動作するアプリケーションの監視といった機能まで提供している)のだが、URLカテゴリとして、次のように説明している。
Adult Material
Parent category that contains the categories:
Websense.com — URL Categories
- Adult Content - (引用時略)
- Lingerie and Swimsuit - (引用時略)
- Nudity - (引用時略)
- Sex - (引用時略)
- Sex Education -(引用時略)
- Advocacy Groups - Sites that promote change or reform in public policy, public opinion, social practice, economic activities, and relationships.
つまり、Websenseでは、「活動家グループ」のコンテンツは明確に「成人向けマテリアル」とされ、未成年のアクセスは制限されるべきという意味でカテゴリ分けされている。なんだか、ウイルスバスターの場合と似た状況ではないだろうか。「フィルタリング業界」的には、こういうスタンスは珍しくないということだろうか。なお、Websenseでは、MyWebsenseといって、登録ユーザにさまざまな情報を提供するサイトを用意していて、ここで個別のURLがどのようなカテゴリに属するかも確認できるそうだけれども、MyWebsenseの登録ユーザとなれるのは、製品の有効なアクティベーションキーを持っている場合に限るので、実際にどういうサイトが「成人向けマテリアル」としての「活動家グループ」に属するかの確認はしなかった(30日体験版の申し込みをして確認するという手段もありそうだけれども、製品そのものをインストールして評価する気でないのに申し込むのはどうかと思ってやってない)。ケーススタディによれば、玉川学園や東京都庁で使われているようだ。
最後に重大な追記あり:
数日前、トレンドマイクロのウイルスバスター2009について、生協関連のウェブサイトが、軒並み有害サイトとしてアクセスが規制されたという報道があり、報道で表沙汰になってまもなく規制が解除されたという報道があった。これは、トレンドマイクロの弁解するような「何らかのミス」というよりも、フィルタリングをめぐる政治的な動きの一端として極めて興味深い。
報道によれば、生協のウェブサイトが分類されていたのは、「活動家グループ/反体制的団体」だったという。トレンドマイクロは、自社でURLの分類を行っているのではなく、自社が40%の株式を有するネットスターのデータベースを使っていると考えられる。企業向けのプロキシタイプのフィルタリングソフトである Interscan Web Manager の説明では明記されている一方、ウイルスバスターに関しては明記されていないが、違うものを使う理由はあまりないだろう。ただ、「活動家グループ/反体制的団体」という分類は、有名になった携帯フィルタリングのカテゴリには出てこない。ネットスターの「URLリスとを用いたソリューションビジネス」におけるカテゴリ一覧にも問題の分類はないが、説明をよくみれば、この分類はあくまで代表的なもので、内部でより詳細な分類を行っていて異なった見せ方をする可能性があることが分かる。実際、ネットスターのデータベースを使っている各社の個別の製品やソリューションをみると、フィルタリングカテゴリは共通要素は多いが統一されているわけではない。「活動家グループ/反体制的団体」という分類は、新しいものか、従来のものを再分類したのだろう。追記: と思っていたら、ネットスターの方から、ウイルスバスターではネットスターのデータベースは利用していないとのことで、独自か別会社のものということに。
一方、ウイルスバスターのURLフィルタのカテゴリ全体がどうなっているかというと、ウイルスバスター2006、ウイルスバスター2007、ウイルスバスター2008、ウイルスバスター2009と、全てサポートサイトに情報がある。2008と2009で比較すると、以前は「性教育/同性愛」だったカテゴリから同性愛が落ちて「性教育」となり、「アドウェア/ジョークプログラム/クッキー」というカテゴリは無くなり(おそらくウイルスバスターの別の機能でカバーされる)、「ピアツーピア」カテゴリが「ファイル共有」カテゴリに改名され、「インターネット電話」「翻訳」「着信メロディ/携帯電話向けダウンロードサービス」などとともに 「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリが追加されている。
ここで紹介したカテゴリは、アクセスブロック可能なカテゴリであって、実際にはさらにどれをブロックするかという設定が別にある。ウイルスバスター2009についてどのような設定かはやはりサポートサイトに情報がある。「高: 13歳未満の児童に適さないWebサイトをブロックします。」という設定の場合、ブロック候補のカテゴリのものは全部ブロックされる。「中: 10代の青少年と児童に適さないWebサイトをブロックします。」では、ある程度ブロック対象が絞られるが、なお「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリはブロック対象となる。公共端末やネットカフェなどで想定される設定でこのようになる。さらに緩い「低: 暴力、ポルノ、または悪意のあるWebサイトのみをブロックします。」や「最低限: 悪意のあるWebサイト以外はブロックしません。」では「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリはブロックされない。このほか、ユーザーが完全に任意にカテゴリ設定をして保存しておく「カスタム」がある。要は、「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリは、未成年には見せるべきでない、というかなり強い設定をトレンドマイクロ社としては推奨しているといえる。
ここまでみて、いくつか問題があって、まずは「活動家グループ/反体制的団体」というのはどの程度のものを想定しているのか、というのがある。とりあえず字義だけではいえば、生協は消費者運動の一種としての生協運動というのが原点としてあって、今はともかく昔は対企業のデモなどもよくやっていた。そういう経緯もあって、大学によっては大学生協の設立を認めないところもある(現在では「過激派」セクトとの関係で生協を潰した大学もあるが、例えば筑波大学などは設立当初からの学生自治否定の文脈で生協を認めなかった)。フィルタリングソフトのカテゴリ追加を熱心に依頼する層のイデオロギー的偏りを想像すると、生協がここに入れられることは、そもそも不思議なことではない。
次に、なぜウイルスバスターの「改良」として「活動家グループ/反体制的団体」がブロック推奨カテゴリに追加されたのだろうかという問題がある。やはり、以前紹介したように千葉学芸高校の高橋邦夫校長に代表されるように、思想信条、宗教に関わるようなフィルタリングを望む「現場の声」があるのだろうか?そして、携帯フィルタリングの「主張一般」カテゴリに特定の政治的意見を突っ込むことが問題視されるや個別に外す状況になっていることに対して、カテゴリ定義としてフィルタリングを外さないで突っぱねられる状況が求められているのだろうか?
ウイルスバスターの利用者のほとんどは、おそらく、どのようにURLフィルタリングの内容が変わったか、ということを明示的には知らされていないだろう。そもそも、URLフィルタリングがメインの製品でもないし。そういうところで、いったい何が起きているのか、明らかにしてほしいよね。
追記: ネットスターの方から連絡があり、ウイルスバスターではネットスターのデータベースは使ってないとのことです。
楠さんがmixiの出会いコミュ大量削除問題に言及し、続報も書いている件、実のところ、かなりやっかいんだよね。
楠さんは今回の出会い系サイト規制法改正に問題があったという認識のようなんだけれども、全ての根は、そもそもの2003年の出会い系サイト規制法の立法に遡る。「ネット上に限った交際相手を募集していても『出会い系』とみなされてしまう」というのは、今回の警察庁の要請に限った話ではなく、規制法の当初の解釈基準において、実際に出会うかどうかではない、と明記されていた。最初の解釈基準もパブリックコメント募集があり、その上で堅持されたものだ。今回の問題は、届け出制によって警察が法執行力を大幅に強化できたから表面化したにすぎない。私は、2003年の法案が出る前の段階でJCA-NETとCPSR/Japanの共同声明を起草して発表して懸念を示した。当時は、今もある某商業コミュニティサイトからの反応を頂いたのだが、私はヤバいと思って声明を出したものの、JCA-NETっていう左翼色の強い市民団体で声明を出す賛同を取り付けるだけならともかく、ネット企業とどう組むか、という話を私が主導権を握って回す状況にもなく、CPSR/Japanも実働はかなり厳しい団体なので、そのまま放置してしまった苦い思い出がある。
異性交際、というか、もう少しぶっちゃければ性的な関心が主導する交際相手探し、というのについて、警察サイドの見方を想像してみると、リアルかバーチャルかは関係ない、というのは、それなりに根拠がある。最終的に防ぎたいのが、児童買春を中心とした「不適切な大人と子どもの性的な関心での出会い」であるとして、それを手前で防ごうとすればどうなるの、ということだ。「通信の秘密」を前提とすると、児童側の通報があるのでなければ、つまり両者の「合意」が継続している限りにおいて、両者の通信内容に警察はタッチできない。そうなると、両者が接触すること自体を防ぐという話になる。実際に出会うことを前提としている場合は当然対象になるとして、「出会わないこと」を当初の前提としていても、通信の秘密で保護された二者の間の通信のなかで、その前提が覆されることはありうる。そして、それが現実であることはここまでに至る事件が証明している。
とはいえ、通信の秘密をアメリカ並に弱くするのと、業法でさらに手前で抑え込むのと、どちらが副作用が弱くみえて容易かといえば、警察からみても圧倒的に後者という話になるだろう。アメリカの話ついででいえば、アメリカでは児童をオンラインで誘う、いわゆるグルーミングについて、おとり捜査がかなり行われていて、端的には捜査員が子どものふりをしていたりするのが少なからず報道されているけれども、おとり捜査の合法性/違法性について、この場合、犯意誘発型と機会提供型のどちらなのかというのもあるけれども、現実の児童でない者を児童と思って誘うことを処罰対象とすることが日本の場合、はたして可能なのかというのもなかなか大きな問題のように思われる。ネット上のやりとりで、両方が児童でないとして、それは児童と思い込んで誘おうとしているのか、Age Play、日本のネット文化圏では「イメチャ」の一種になるだろうが、それと客観的な証拠で区別つけられるのか、といった問題もあるだろう。さらに、あらゆる困難を乗り越えてグルーミング処罰化を実現したとして、警察がどれだけ法執行のリソースを割けるのか、という問題はある。誘う段階の処罰だから、実際の児童買春や青少年条例の淫行処罰規定より、重くできるようには思えない。出会い系サイト規制法の禁止誘引行為の罰則は今のところ100万円以下の罰金に過ぎず、その水準で通信傍受捜査とかおとり捜査とか、ありえないだろう。逆にいうと、淫行処罰規定を構成要件を限定して条例から法律に移行して、全体として児童相手の性犯罪の量刑をアメリカのように大幅に引き上げて、その上でグルーミング処罰化をそれなりに重い罰則でやらないと、実効性はない。そこまでやるという選択が、日本で現実的なんだろうか。
処罰対象を公然と性的目的で児童を誘い出すことに絞る、というのは、それはひとつのアプローチではあるのだろうけれども、児童が全て無垢ではないわけで、それで児童買春や、青少年条例で問題になるような児童と成人との関係を十分に抑制できるかというと、警察を納得させられるものでもないだろう。
出会い系サイト規制法がネット規制という観点からは最低・最悪の部類だというのは、もうずっと前から思ってはいるのだけれども、ではどうしたらいいか、というと、なかなかいい代案が浮かばないんだよなぁ。
日々の意見やコメント、出来事などを書いていきます。
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