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根深い「ウイルスバスターによる誤判定」問題

2009/04/17

Permalink 23:43:55, by Nobuo Sakiyama Email , 12 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

根深い「ウイルスバスターによる誤判定」問題

最後に重大な追記あり:

数日前、トレンドマイクロのウイルスバスター2009について、生協関連のウェブサイトが、軒並み有害サイトとしてアクセスが規制されたという報道があり、報道で表沙汰になってまもなく規制が解除されたという報道があった。これは、トレンドマイクロの弁解するような「何らかのミス」というよりも、フィルタリングをめぐる政治的な動きの一端として極めて興味深い。

報道によれば、生協のウェブサイトが分類されていたのは、「活動家グループ/反体制的団体」だったという。トレンドマイクロは、自社でURLの分類を行っているのではなく、自社が40%の株式を有するネットスターのデータベースを使っていると考えられる。企業向けのプロキシタイプのフィルタリングソフトである Interscan Web Manager の説明では明記されている一方、ウイルスバスターに関しては明記されていないが、違うものを使う理由はあまりないだろう。ただ、「活動家グループ/反体制的団体」という分類は、有名になった携帯フィルタリングのカテゴリには出てこない。ネットスターの「URLリスとを用いたソリューションビジネス」におけるカテゴリ一覧にも問題の分類はないが、説明をよくみれば、この分類はあくまで代表的なもので、内部でより詳細な分類を行っていて異なった見せ方をする可能性があることが分かる。実際、ネットスターのデータベースを使っている各社の個別の製品やソリューションをみると、フィルタリングカテゴリは共通要素は多いが統一されているわけではない。「活動家グループ/反体制的団体」という分類は、新しいものか、従来のものを再分類したのだろう。追記: と思っていたら、ネットスターの方から、ウイルスバスターではネットスターのデータベースは利用していないとのことで、独自か別会社のものということに。

一方、ウイルスバスターのURLフィルタのカテゴリ全体がどうなっているかというと、ウイルスバスター2006ウイルスバスター2007ウイルスバスター2008ウイルスバスター2009と、全てサポートサイトに情報がある。2008と2009で比較すると、以前は「性教育/同性愛」だったカテゴリから同性愛が落ちて「性教育」となり、「アドウェア/ジョークプログラム/クッキー」というカテゴリは無くなり(おそらくウイルスバスターの別の機能でカバーされる)、「ピアツーピア」カテゴリが「ファイル共有」カテゴリに改名され、「インターネット電話」「翻訳」「着信メロディ/携帯電話向けダウンロードサービス」などとともに 「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリが追加されている。

ここで紹介したカテゴリは、アクセスブロック可能なカテゴリであって、実際にはさらにどれをブロックするかという設定が別にある。ウイルスバスター2009についてどのような設定かはやはりサポートサイトに情報がある。「高: 13歳未満の児童に適さないWebサイトをブロックします。」という設定の場合、ブロック候補のカテゴリのものは全部ブロックされる。「中: 10代の青少年と児童に適さないWebサイトをブロックします。」では、ある程度ブロック対象が絞られるが、なお「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリはブロック対象となる。公共端末やネットカフェなどで想定される設定でこのようになる。さらに緩い「低: 暴力、ポルノ、または悪意のあるWebサイトのみをブロックします。」や「最低限: 悪意のあるWebサイト以外はブロックしません。」では「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリはブロックされない。このほか、ユーザーが完全に任意にカテゴリ設定をして保存しておく「カスタム」がある。要は、「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリは、未成年には見せるべきでない、というかなり強い設定をトレンドマイクロ社としては推奨しているといえる。

ここまでみて、いくつか問題があって、まずは「活動家グループ/反体制的団体」というのはどの程度のものを想定しているのか、というのがある。とりあえず字義だけではいえば、生協は消費者運動の一種としての生協運動というのが原点としてあって、今はともかく昔は対企業のデモなどもよくやっていた。そういう経緯もあって、大学によっては大学生協の設立を認めないところもある(現在では「過激派」セクトとの関係で生協を潰した大学もあるが、例えば筑波大学などは設立当初からの学生自治否定の文脈で生協を認めなかった)。フィルタリングソフトのカテゴリ追加を熱心に依頼する層のイデオロギー的偏りを想像すると、生協がここに入れられることは、そもそも不思議なことではない。

次に、なぜウイルスバスターの「改良」として「活動家グループ/反体制的団体」がブロック推奨カテゴリに追加されたのだろうかという問題がある。やはり、以前紹介したように千葉学芸高校の高橋邦夫校長に代表されるように、思想信条、宗教に関わるようなフィルタリングを望む「現場の声」があるのだろうか?そして、携帯フィルタリングの「主張一般」カテゴリに特定の政治的意見を突っ込むことが問題視されるや個別に外す状況になっていることに対して、カテゴリ定義としてフィルタリングを外さないで突っぱねられる状況が求められているのだろうか?

ウイルスバスターの利用者のほとんどは、おそらく、どのようにURLフィルタリングの内容が変わったか、ということを明示的には知らされていないだろう。そもそも、URLフィルタリングがメインの製品でもないし。そういうところで、いったい何が起きているのか、明らかにしてほしいよね。

追記: ネットスターの方から連絡があり、ウイルスバスターではネットスターのデータベースは使ってないとのことです。