アーカイブ: 6月 2009

2009/06/28

Permalink 14:30:30, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 6260 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: プライバシー, 検閲, 通信傍受, 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

あなたにも分かる児童ポルノ単純所持処罰化の未来

前ふたつのエントリ、児童ポルノ禁止法改正に関して、 ブロッキングが拡大する危険性と、通信の秘密が大幅に侵される危険性について書いてみたのだけれども、長くて読みにくいよ、ということらしいので、両方合わせてもっと簡単に書くことにした。簡単に書くので仮定が入ってるってことやロジックの飛躍が出るけど、それはそういうものだと思ってね。あと、微妙に新しく気づいたネタも少し入れます。


児童ポルノ禁止法の自公案は、附則で「インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置」の技術の開発の促進というのに言及して、三年後改正で技術開発の状況をみて、「必要な措置」つまり義務化を法改正で盛り込みたいっていっていて、これがトンでもなくヤバい。この技術的制限、というのが、一般には「児童ポルノブロッキング」と呼ばれている。

それから、国会質疑であきらかになったように、自公案の目的は、児童の被害を防ぐことではなく、「ペドファイルとのたたかい」だ。これもヤバい。

まず、自公案でも民主案でも同じなのだけれども、改正後の摘発には、必ず「ケータイ児童ポルノサイトの利用者の摘発」が含まれてくる。だって、ケータイってドコモとかAUとかソフトバンクのシステムの中に、Web閲覧履歴が残ってるんだもの。これをURLベースで総ざらいするのって、技術的には簡単だし、令状はきっと出るよ。

次は、「ケータイだと徹底して取り締まれるのにPCだと取り締まれない」という不満の声が警察から出るよ。一部マスコミも同調するよ。そのころには、ブロッキングが現実の日程に入ってきているので、「PCからのWebアクセスも全部ISPでログ取れ」という話になっていたりするだろうよ。ブロッキングのシステム構成によっては、これは簡単。

同時に、「ペドファイルとのたたかい」の「国際標準」にあわせろという声として「未遂・予備」を取り締まれという話になるよ。「自己の性的好奇心を満たす目的」が認定できれば、例えばブロッキングされてばっかりで一枚も児童ポルノを入手できていなくても、逮捕すべき、という議論だ。FBIおとり捜査とかって、そういうことだし。そういう面も、「全部ログ取れ」の主張を補強するし、ブロッキングされて児童ポルノを入手しなかったからといって安心できず、むしろブロッキングされたらそのうち警察から人が来て捜索・逮捕がおかしくない、ぐらいになるよ。

そして、そもそも、ブロッキングって憲法的にどうなの、みたいな話、推進派のひとたちは、問題だと思ってないみたいだよ。「児童ポルノはとっても悪いからやれ」とは言っていても、「原則ダメだけど、児童ポルノだから例外」とは言ってないみたいだよ。

ブロッキング推進派のひとたちは、被害児童の人権だけじゃなくて、「社会的法益」もよく言っているよ。でも、社会的法益でブロッキングしていいなら、児童ポルノだけじゃなくて、創作物はもちろん、あちこちのオトーサンが楽しんでいたりするカリビアンコムとかの海外無修正ポルノサイトだってブロッキングしていいっていう話になるよ。海外無修正ポルノサイトを見たりそこからダウンロードしたりすること自体は、今は違法性を帯びないけれども、刑法改正でそのへん微妙になってくるし、その延長の法改正が提案される可能性もあるよ。

で、今の関税法の輸入禁制品の一覧をみるとわいせつ物輸入を禁止しているのは「公安又は風俗を害すべき」物品というカテゴリーだから、そもそも、「違法コンテンツ」ですらないものだって、法的に海外からの流入を阻止してもいいっていう議論は必ず起きて、エロ以外にもブロッキングの対象は広げられる危険はあるよ。

ここまで全部の話、憲法の表現の自由とか通信の秘密とか、いったいどこへ行ったんだ、って感じだけれども、暴走されたら日本の裁判所が「法令違憲」と言って仕組を全部吹っ飛ばす可能性は、たぶんないよ。コンテンツ単位の「適用違憲」はありうると思うけどね。

Permalink 02:28:24, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 1817 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: プライバシー, 検閲, 通信傍受, 児童ポルノ問題

児童ポルノブロッキングで黄昏ていくであろう通信の秘密

いよいよ始まった児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の審議、いきなり最初から、自公案の提案者の葉梨議員が、いろいろと飛ばした発言をして話題となっているけれども、ここで注目したいのは、彼が連呼した「ペドファイルとのたたかい」という言葉。枝野議員が軽くツッコミを入れていたけれども、これはとても重要なポイント。実在の児童への人権侵害という「罪」を憎むだけでは足りず、内心において「ペドファイル」であれば、外部にいかなる影響を与えていなかろうと、社会から排除していこうという姿勢だ。これは、日本のみの話ではなく、米国や英国で先行している話であり、「創作物規制」の検討というのはそういう文脈で出てきていることは、この問題に一定の関心があれば、規制強化に賛成側であろうが反対側であろうが、気づいている人が多いのではないかと思う。

で、「ペドファイルとのたたかい」の強化の方向性は、もちろん、禁制品の定義の拡大だけではない。米国刑法典の児童ポルノ処罰の条項では、未遂・予備や共謀も、既遂と同等の罰則が定められている(連邦法では「単純所持」を問えるのは管轄上ワシントンD.C.やその他の直轄地域などの特別な場合に限られるが、州間ないし外国からの取得はカバーされている)。参考人質疑で保坂議員が共謀罪に言及したのはこれが念頭にあったと思われるが、いまいち参考人の前田教授に伝わりきらずにピントが定まらない返事が返ってきた。今回の改正の範囲ではなくとも、罪を憎むのではなく人を憎む方向を肯定するのであれば、将来の改正において、共謀はともかくとして未遂・予備を対象に含める動きは出るだろう。関税法による児童ポルノ輸入罪では、すでにこれらはカバーされている。こういうありうる将来がいかなる結果をもたらすか、というのがこのエントリーのテーマだ。

自民党案であれ民主党案であれどちらでもいいのだが、改正が成立したとして、いかなる児童ポルノ取得が実際に摘発されていくのか、ということを考えた場合、そのうちのひとつには、間違いなく、携帯電話向けサイトが含まれるだろう。摘発例として、「さくらんぼ女学院」という名称のサイトに関するものが報道されたが、そういう類のものだ。

そもそも、携帯電話でのWeb閲覧は、通信の秘密というものが非常に弱い。いわゆるケータイの世界では、Webのアクセスはすべてゲートウェイ経由となっている。そして、アクセスしたURLは、すべてログに残る。例えば、NTTドコモの「iモードアクセス履歴検索サービス」は、要申し込みのサービスだが、申し込んだ時点で「31日前まで」の履歴を閲覧することができる。つまり、申し込んでいなくても最低限それだけの履歴は蓄積されているということだ。こうした履歴は、もちろん契約者本人以外に開示されることは原則としてないが、警察が捜査令状を持ってくれば、もちろん開示する。NTTドコモの場合、プライバシーポリシーにも明記されている。報道でも、事件がらみで携帯電話のサイト閲覧履歴に言及されることは、少なくない。

ここに、仮に携帯電話向け児童ポルノ配信サイトがひとつあって警察がその存在を認知し、配信元が国外などで強制捜査やそれに基づく情報入手にやや困難があったり、あるいは配信元の摘発前に閲覧者情報を集めておきたいと考えたら、どうするかといえば、「被疑者不詳」の児童ポルノ単純所持、ないし有料・反復取得の事件として、サイトURL閲覧者一覧を得るような捜査令状を請求するのではないか。そういう網羅的な令状を許可する裁判官はおそらくいるだろうし、携帯電話事業者も、最初こそ問題視して不服申し立てをするかもしれないが、おそらく通らず、次からは素通しということになるだろう。そして、必要な一覧を生成するデータベース操作は、難しくない。そうして得た一覧から、例えば有料エリアのURLをアクセスしているとか、あるいは繰り返しアクセスしているとか、そういう端末の利用者を摘発していくということになる。萎縮効果を狙って、捜査手法は捜査の差し障りにならない程度に発表され、そして「ケータイからの児童ポルノサイトアクセス」は激減していく。

ここまで、まだ児童ポルノブロッキングは出てこない。しかし、発表のタイミングは、まさにブロッキングの導入の是非の議論が本格的になっている段階で行われるだろう。それは、児童ポルノブロッキングの「方式」をめぐる議論に影響を与えるためだ。

児童ポルノブロッキングで、すでに外国で導入されているものでメジャーなのは、DNSポイズニングと、ハイブリッドフィルタリングだ。DNSポイズニングは、ホスト名単位で児童ポルノサイトについて嘘のIPアドレスを返すようにする方式。ハイブリッドフィルタリングは、まずはホスト名からIPアドレスを返すところまでは真正のもので、その後、児童ポルノサイトや画像を含むホストへの経路を曲げ、透過プロキシーサーバを通し、そのプロキシーサーバでURL単位でフィルタリングを行う。DNS単位のブロッキングは、無関係なものもブロックしてしまうオーバーブロッキングが起こりやすい。しかし、DNSの問い合わせは、通常の運用ではログは残らない。また、残ったところで、それと「児童ポルノサイトへのアクセスの意図」との結びつきを証明するとも言い難い。一方、ハイブリッドフィルタリングの場合、プロキーシーサーバを通ったものは、通常の運用でログが残る。ただし、事前にIPアドレスで振り分けられている。

ハイブリッドフィルタリングが用いられている背景は、対象サイトが少数という前提の場合、全ユーザーの全HTTPトラフィックをプロキシーサーバーに通すよりも、設備投資の面で合理的だということにある。しかし、やっていることは複雑だから、例えば3号児童ポルノが現行法どおり残ることになって海外合法サイト多数をブロッキング対象から外せなくなり、さらに創作物が加わって、ということになって対象サイトが多くなりそう、ということになった場合、どこまでコスト面の優位性があるかは不透明だ。ISP内で経路をルーティングするルータ上に、細かいIPアドレス1つずつをプロキシーサーバに通す経路情報を加えていくと、性能上の問題が出る場合がある。IPアドレスをブロック単位でまとめるようにすれば、プロキシーサーバの性能強化が必要になる。いっそのこと、ユーザーのアクセス線から近いところに比較的安価な機器をたくさん置いて、全トラフィックをフィルタリングしたほうが楽、という話が出てくるかもしれない。そうしたタイミングで「全トラフィックのログがあったほうがペドファイルとのたたかいに望ましい」という議論が出てくる可能性がある。 全トラフィックのログがあれば、例えばサイト通報でブラックリストにサイトを追加したさい、今後のアクセスをブロックするだけではなくて、遡及的にログと突き合わせてアクセスした人物を特定していくことができる、といった議論だ。もちろん、「スマートフォンやPCが、ケータイから逃げたペドファイルの居場所になっている」という掛け声がついてくる。また、「未遂・予備」が処罰対象になると、ブロッキングの意味合いも異なってくる。そうしたものが処罰対象でなければ、ブロッキングには、「ユーザが違法行為を犯してしまうことから守る」というパターなりスティックな効果もあるのだが、未遂・予備罪のある状況では、ブロッキングされたということは、自らが捜査対象となる覚悟をしなさい、という話になる。

そして、ユーザーの全HTTPトラフィックがプロキシーサーバ経由となり、すべてログをとられるようになれば、そのログの捜査令状が児童ポルノ捜査目的のみということはおそらくなく、あらゆる犯罪捜査目的に「活用」されていくだろう。こうして、私たちの「通信の秘密」は、大幅に損なわれていく。これは、ありうる未来のひとつだと、私は思っている。

2009/06/26

Permalink 04:07:42, 著者: Nobuo Sakiyama Email , 2245 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 検閲, 通信傍受, 児童ポルノ問題

Great Firewall of Japan が構築される可能性について

今回書く内容には、あえて物騒なタイトルをつけた。これは、ひとつの論理的な可能性であって、私が具体的な動きを認知しているわけではない、というのは念のために冒頭で述べておく。

6月26日から、児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の審議が始まる。与党案と民主党案の間に大きな開きがあり、明らかに衆議院解散が近く、その後の議会構成が大幅に変わることが分かりきっている状況、そして、犯罪を新設する重い法案であり、かつ、憲法上の問題もクリアにしておく必要がある、ということを考えれば、強行採決→再可決による与党案成立、というのを、反対運動の人々の力で「今国会で」阻止することは不可能ではないだろうし、与党と民主党との修正案を含めた妥協の成立を時間切れに持ち込むこともまた、可能性はなくはないだろう。ただ、ざっくり言って、それを永続化できるかといえば、結構厳しいんじゃないかとは思っている。

ネットの問題を考えるさいに本当に悩ましいのはその先、で、すでにいろいろ話題となっている「児童ポルノブロッキング」の問題だ。ブロッキングは、ユーザの HTTP でのISP外への通信すべてについて、根こそぎ調べて「児童ポルノとして登録されたサイト/URLか」を判断するわけで、児童ポルノに関係あろうがなかろうが事実上すべてのネットユーザに関係する問題であり、個人的には、そのような通信への介入は基本的人権という面で到底受け入れがたいし、技術的にも問題が多く、無関係のはずの多数のユーザの利用に悪影響を与えると思っている。後者については、MIAUからの総務省報告書へのパブコメでかなりの内容を突っ込んだかいもあり、「ブロッキング」のフィージビリティが今後調査されるさいのハードルをかなり上げることができたのではないか、と思っている。とはいえ、ブロッキング導入派の熱心さはおそるべきものがあり、はたして、数年後の日本のISPがおしなべてブロッキングを導入するはめに陥っているか、あるいは一部ISPにとどまるか、はたまた「無かったこと」になるかは、まったく読めない。ここで重要なのは、ブロッキングが導入されるかどうか以上に、ブロッキングとユーザの権利との関係が、いかなる形で決着されるかだ。

日本の憲法には「通信の秘密」があり、また電気通信事業法にも「通信の秘密」があり、これらは篤く保護されてきた。もっとも、例外はあり、1999年に通信傍受法が成立して実際に使われている。私自身は、通信傍受法は違憲だとずっと思っているけれども、最高裁判所が違憲判断を出す現実的な可能性はない。ただ、通信傍受法の成立に至る過程で、これは極めて例外的な基本的人権の制限だということから、実施は厳格な制限のもと行われる枠組となっているし、適用犯罪の拡大も、今のところはないとは言える。

ところが、ブロッキングについての推進派のここらへんへの主張はというと、ゆるゆる、だ。単純所持禁止などの法案が国会に出て成立、というのを待たずに話が出ていることもあり、現行法のもとで可能、という議論をしている。そして、児童ポルノ拡散の害悪がブロッキングの必要性として縷々語られるが、ユーザの権利との関係について、「原則ダメだが児童ポルノという特別なものだから例外的に優先」というロジックは、見られない、ないし希薄だ。「原則ダメ」とは言っていない。とくに、児童ポルノ拡散の害悪について、社会的法益の面が強く語られるというのが問題で、それなら児童ポルノでブロッキングできるのなら、他の「重大な社会法益」を理由としたブロッキングもできるだろう、という議論が、児童ポルノ関係以外のところで起こる。そういう話を始めている人達はいるらしい。単純所持規制の導入を前提に、児童ポルノに架空の創作物を足したいという議論が広く行われているが、ことブロッキングについてはそれで止まるのかね?ということだ。

ポルノといえば、児童ポルノや「児童を描いた創作物ポルノ」に限らない。犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案という内閣提出法案がある。これは巨大な法案で、その一部が「共謀罪法案」ということで、野党の大反対があり、過去の国会では審議が行われたこともあったが、「ねじれ国会」を反映して実質審議が止まっている。法案の性質上、衆議院再可決で強行するのは無理筋で、普通に考えて、衆議院解散で廃案になるだろう。ただ、与野党で意見対立があるのは、共謀罪のほか、サイバー犯罪条約関連での電磁的記録の保全や差し押さえ、通信ログの保全などで、サイバー犯罪条約関連での野党の要求は手続きの厳格化やログ保全日数の短縮で、完全反対論ではない。総選挙後の国会で、共謀罪を切り離した法案が提出されれば、遠からず成立するだろう。この法案に、次のような条項がある。

第百七十五条中「図画」の下に「、電磁的記録に係る記録媒体」を加え、「、販売し」を削り、「又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する」を「若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する」に改め、同条後段を次のように改める。

電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

第百七十五条に次の一項を加える。

2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案

「情報処理の高度化」に対応するために、刑法のわいせつ物頒布、公然陳列の罪について、現在は「物」有体物にこだわっているところ、「電磁的記録の頒布」という概念を持ち込もう、というものだ。この法案が最初に出たころ言われたのは、「メールマガジンでのポルノ画像の頒布を対象にできる」といったことだ。現在の法解釈では、例えば「Webサーバのハードディスク」が公然陳列されている、という判断となっている。電子メールの場合、個々のメールは個別のユーザに送られていて、公然陳列されているハードディスクはない。物を送ってないから、頒布でもない。これが、「電磁的記録の頒布」となれば取り締まり可能だと言われている。もっとも、すでに取り締まられて法解釈を争ってないケースは世の中あるのかもしれないが。

で、それで止まるかというと違う可能性がある、と考えている。海外にWebサーバを設置して、日本では「わいせつ物公然陳列」となるような映像配信サービス、というのを日本に対して行っている事業は現実にある。これを、日本在住の人間とか日本法人がやれば罪に問われるが、そこは迂回して「合法的」にやっているというやつだ。ビデオリサーチインタラクティブのデータの上位にも、そういうサイトはある。これは、今は国外の会社が国外で勝手にやっているものを、日本在住者が見に行っているだけ、だ。「公然陳列」の場所は日本の主権の及ばない国外であって、実行行為のどこも日本に関係なければ、日本が犯罪に問う対象ではなく、それを日本在住者が電気通信で受信しているだけだ。これが、刑法が改正されると、「わいせつな電磁的記録が日本国外から日本国内に頒布されている」という形で、問題化しやすくなるのではないだろうか。次のステップは、「わいせつな電磁的記録の輸入の禁止」だ。現在、「わいせつな写真集」や「わいせつなDVD」を、貨物として国内に輸入しようとして税関検査で発覚すれば、よくて放棄させられ、悪ければ罪に問われる。これは、関税法の「輸入してはならない貨物」に「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」とあるからだ(児童ポルノは別扱い。なお、昔は関税定率法だったので、そちらで覚えている人も多いと思う)。関税法の枠組は貨物という有体物のためのものだから、その中で「電気通信の受信によるわいせつな電磁的記録の輸入の禁止」を行うことは、およそ考えられない。しかし、輸出入の規制を行う法律は関税法に限らない。外国為替及び外国貿易法(外為法)では、対象となる貿易取引は有体物に限定されていない。外為法にわいせつな電磁的記録の輸入の禁止を入れるのは無理筋のようにも思うが、国境を越えたデータのコピーを輸出入として扱う法的枠組はすでにあるのだから、「わいせつな電磁的記録の輸入の禁止」を定める法律を技術的に作れないとは思われない。なお、最近のWIRED VISION記事にあるように、アメリカではわいせつなデータの州をまたぐやりとりは違法であり、これは条文をみると国境をまたぐ場合も同様だ。

ここまで想像を広げて話を戻すと、社会的法益を理由として「わいせつな電磁的記録の輸入の禁止」が定められた場合、すでに「児童ポルノブロッキング」が導入されていて、そこに「原則ダメだが児童ポルノという特別なものだから」というロジックが欠けていた場合、「わいせつな電磁的記録」もまたブロッキングの対象に加えるという提案に、抗することができるのだろうかというと、難しいだろう。また、関税法をいま一度見れば、そういう拡大が「公安又は風俗を害すべき」電磁的記録へとさらなる拡大を呼び込むこともまた、可能性としてはあるだろう。また、詳細はここまで論じていないが、ブロッキングを実施するとなれば、方式によって程度は異なるが、ユーザの閲覧履歴がISPのサーバにログとして残る。このログは、捜査当局の保全・差し押さえ対象となることにも留意したい。ここまで至れば、「児童ポルノブロッキング」と呼んでいたものは、Great Firewall of Japan へと変貌をとげる。

ここまでの話、ワーストケースとして考えてみたのだが、しかし、ブロッキング対象の拡大という話は、すでにブロッキングが導入されているヨーロッパの国では現実のアジェンダとしてあがり始めている。児童ポルノブロッキングは、こうした全面的な検閲体制への一里塚になる可能性が十分にあるから、なるべくなら阻止すべきだし、仮に阻止できなくとも、きっちりと児童ポルノに限定されるような形にする必要がある。

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