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高木さんがMIAU非難にノリノリな件

2009/08/30

Permalink 16:07:36, by Nobuo Sakiyama Email , 21 words   Japanese (JP)
Categories: プライバシー, 検閲, 情報社会, 著作権

高木さんがMIAU非難にノリノリな件

高木浩光さんがMIAUについての所感という日記記事を書いていて、その前後からはてなブックマークでも、ノリノリでMIAU叩きをしていて、そもそもMIAUとして何も意見表明していない楽天ad4Uの件までもMIAU叩きに使っているという状況になっている。ブックマークの件はとりあえず置いておくとしても、日記記事については、誤解や、人が組織を作って活動するということについての根本的な無理解があるのではないかと思うので、コメントしておく。

まず、「ダウンロード違法化」の件。一般には簡単に「ダウンロード違法化」と呼ばれているけれども、中身は、著作権の制限としての私的複製から(音楽と映画について)「著作権を侵害する公衆送信からの私的な複製」を除外するという話だ(実際にはもう少し限定する条件がつく)。そもそも著作権というのは有体物の所有権と比べると非常に人工的に作られてきた権利で、権利者と利用者の間でどうバランスをとるかという問題がそもそもある。ダウンロード違法化というのは、「私的複製」という、個人の利用者にとっては非常に大きな、かつ長らく確立されてきた領域を犯すものだから、利用者立場の団体が、それ以上の「具体的な弊害」に言及することなく批判するというのは、ポジショントークとしては当たり前だと言える。法案審議に関係したロビイングの中で具体的な修正案も用意したけれども、与野党の交渉に乗ることすらなく消えたものを具体的に公表することが、今まさにフェアユースなどの利用者側の利便を高める方向の検討が行われている状況で適切かどうかどうかという問題がある。まぁ、それでも、先日の小倉弁護士との勉強会で口頭で言っちゃっているので簡単にふれておけば、国外サイトの判断について日本の著作権法をあてはめて判断する(=現地では著作権の制限の範囲で合法でも違法公衆送信として扱う場合がある)という点と、権利者団体によるLマークの普及で「合法と信じられるサイト」のホワイトリスト的なものが形成されそれ以外のサイト(必ずしも違法ではない)の利用を抑制・抑圧するような社会規範が作られかねないという点から、それぞれの弊害を低減するような修正案を書いた、というぐらいのことは述べても問題ないのかな。

児童ポルノ単純所持の問題だけれども、そもそも、Winnyはそんなに大きい問題なのだろうか。もちろん、個々の被害者にとってみれば甚大な被害であることは間違いないけれども、現状、ググるだけで児童ポルノDVD販売サイトや児童ポルノ動画配信サイト、そしてそれらの広告ブログが大量にみつかり、それらのサイトでサムネイル画像という形で児童ポルノ画像が公衆送信されている。インターネットホットラインセンターへの通報で摘発につながっていると思われるケースもあるけれども、少なくとも、警察主導で根こそぎ摘発・閉鎖に追い込んでいるという状況はない。動画配信サイトで摘発されて大きく報道されたケースもあるけれども、摘発当時の報道からこれと推測されるサイトは、予告をしてから名称とドメインを変更する、ということを複数回行うという形で存続しているし、ドメイン変更が決済業者による規約違反に基づく契約解除だとされている点や、サムネイル画像未公表の「VIP専用」コンテンツの説明文に児童ポルノと疑わしい内容があることから、問題の摘発は末端の人間を捕まえただけに終わった可能性が高い。高木さん自身が公表されている Winny利用者数を考えても、Winnyのほうが深刻、と断言できる状況でもなく、技術的にも法的にも(撮影者が特定・検挙され児童が特定され有罪判決で確定しているものに該当性判断の上の困難はないはず)難しい点は何もないであろう Web ベースの児童ポルノ公衆送信を、まずは物量かけてきっちり取り締まれ、という議論をすることは、Winny を持ち出して非難されるいわれはないと思う。

ストリートビュー問題について。まず、プライバシー問題一般については、単純に現状のMIAUにリソースがないという問題はあり、いったいよちよち歩きの小規模団体に勝手な期待をしたあげくにそれをはたせないからと非難というのは、なんだかなという感じがする。極端な話、高木さんがネットのプライバシー問題をやりたいからとMIAUにコミットするという手はあったと思うよ。ノリノリに叩くポジションをとられた今となっては無理に見えるけどね。

そして、ストリートビューの問題だけれども、そもそも、MIAUというのは「インターネットユーザー」の利害を政策に反映させようということで作られた人工的な組織だ。当たり前のことだけれども、全生活がインターネット利用そのものであるという「純粋インターネットユーザー」というのはどこにもいない。人は、禄を喰むための仕事をしたり、あるいは学生なら勉強をしたり、ネットとは別に生活空間の暮らしというものが当たり前にある。そして、ネット以外の部分の利害反映については、既存の団体がいくらでもある。ストリートビューのプライバシー問題というのは、そのほとんどはインターネット利用ではなく生活空間上の問題だから、そもそもMIAUという枠組で何か言うべきなのかというと、言うことがないというのは、ごく自然なことだ。それでも、MIAUはストリートビューのシンポジウムを開いて注意喚起の火付け役の一翼を担った。その結果として、中川氏が総務省のWGに呼ばれた。彼と私ではストリートビューそのものの評価は異なり、たぶん私のほうがネガティブだが、中川氏は「ネットユーザー目線」を期待されて呼ばれたのであって、期待された役割は果たしたのだと思う。

ストリートビュー問題を含むパブリックコメントには、結果としてストリートビューへの批判が集まり、それを受けて総務省が対応を要請へ、という流れになっているけれども、それはそれで、「ネットユーザー目線」以外の意見が集まってよかったですねというところだと思う。細かくいえば、総務省に権限あるのかとか、権限が仮にないとして権限を持たせるのが適切かどうかというのは、別途検討が必要だろうし、あるいは、グーグルが要請に対応するとして、パブコメで強く指摘されていた差別や誹謗中傷目的のグーグルマップサービス(ストリートビューに限定されないだろう)の二次利用について、利用規約で制限をかけ、規約違反二次利用による著作権侵害としてあちこちの CGMサイトに削除依頼を出していくということになった場合、その運用が行き過ぎにならないかどうかは、気になるところではある。