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2008/03/19

Permalink 04:07:11, by Nobuo Sakiyama Email , 50 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

日本ユニセフ協会の言い分に突っ込んでみよう

日本ユニセフ協会の2008年3月17日の言い分の事実関係のひとつにしつこく論理的に突っ込んでみよう。

少なくともスウェーデン、カナダ、米国(連邦法)が、法律でこうした「子どもポルノ」を禁じています。…また、カナダでは2005年、米国でも2006年に、日本製の子どもポルノマンガ・アニメの所持に対する有罪判決が出ています。

子どもたちの権利を守るために、皆様のご理解とご協力をお願いします 【2008年3月17日 東京発】(財)日本ユニセフ協会

前に書いた内容でスウェーデンについてふれなかったが、ざっくり簡単にいうと、スウェーデンは不文憲法の国で、基本法は4つあって、うち2つが言論・表現の自由に関するもの(紙メディア対象の出版自由法と、それ以外のものに適用される言論自由法とに分かれている)。とても長い文章で表現の自由をうたっているから「素晴らしい」と思いきや、この領域ではどちらかといえば「ニュースピーク」だといっていい状況。長い基本法で改正が比較的容易という状況で、いろいろと表現の自由に制約をはめやすくなっている。表現の自由の制約を基本法に全て列挙してあるとも言えるのだが、その分、幅広い。スウェーデンでは公的な映画の事前検閲制度があり、これも言論自由法に基づく。これらの規制に違反した場合の訴追手続きは、結構慎重な手続きが両基本法に定められているのだが、架空のものを含めた児童ポルノについては、そもそも両基本法の適用外にする条項が両基本法の基礎的な部分に書かれている(出版自由法の場合言論自由法の場合)。さすがに政体法という最も基本となる基本法の基本的人権の他の条項の適用までは吹っ飛ばされないが。児童ポルノの基本法適用除外が実施されたのが1998年。罰則規定は正確なところはよくわからないが、前述の映画検閲機関のサイトに載っている関連条文には、頒布と頒布目的製造しか載っておらず、単純所持はない。別の条文かもしれないが。

こうしたスウェーデンの状況全体をひっぱってきてみれば分かるが、そもそもが表現に関する規制そのものの枠組が全く異なる国の話をもってきて、手本にしろと言われたところで、それは困るのだ。

カナダの件は、前に書いた芸術的価値(判決文によればartistic merit)による適用除外に触れないのは問題だ。

アメリカの件は、立法レベルと適用レベルでそれぞれに問題がある。日本ユニセフ協会は「子どもポルノ」と述べているが、実際にマンガやアニメに適用されうるのは「わいせつ児童ポルノ」(米国連邦法典第18編第1466A条: Obscene visual representations of the sexual abuse of children)であって、その射程は「子どもポルノ」よりも狭い。そして、その定義のうち、「わいせつ」という言葉を使っていない1466A(a)(2), 1466A(b)(2)の定義は、「わいせつ」でない、実在しない子どもの描写に適用された場合の違憲の疑いが出ている(米国議会調査局レポートRL31744、同95-406 A、同95-804 A。また、"The Aftermath of Free Speech: A New Definition for Child Pornography", Brian Slocum and Wendy Waldron, The United States Attorneys' Bulletin volume 52 Number 2, 2004にも指摘がある)。また、適用レベルでは、「2006年の有罪判決」の被告Dwight Whorley は、そもそも過去の性犯罪歴(実在児童ポルノ所持)で有罪になった後の仮釈放中に条件にいろいろ違反して子どもの集まる場所をうろついたあげくに図書館で問題の画像にアクセスしてプリントアウトして捕まったというかなり特異な事例で、捜索では問題の「日本製の子どもポルノマンガ・アニメ」以外に実在児童ポルノ画像の多数所持も発覚している。そして、「日本のマンガ子どもポルノ」については、1466A(b)(1)の「わいせつ」該当だと判定されているという事例である。1466A(b)(1)だけであれば、実はわいせつ物単純所持の処罰は違憲判例があるので争う余地がありそうな気がするのだけれども、本件は実在児童ポルノの所持もあったのでそうはなっていない事例と思われ、そもそも「日本製の子どもポルノマンガ・アニメ所持」が有罪になったとして宣伝するのが適切なのかどうか疑問がある(もちろん、摘発側は宣伝に使えることを狙ったはずだけど)。

実のところ、単純所持の問題を置いておくとすれば、アメリカの事例のような「わいせつ」なものであれば、日本での頒布や公然陳列は刑法175条が適用できるから、そもそも法改正は要らない。

2008/03/18

Permalink 00:40:45, by Nobuo Sakiyama Email , 38 words   Japanese (JP)
Categories: 児童ポルノ問題

ユニセフ協会に緊急にメールしてみる

前のエントリの話から続きの話をする前に、Yahoo! Japanとユニセフ協会に緊急に連絡したほうがいい件に気づいてしまったので連絡してみるよ。以下、その内容。

日本ユニセフ協会担当者御中

今般の「子どもポルノ問題に関する緊急要望書」の件に関連しまして、緊急にお伝えしたいことがありましてご連絡差し上げる次第です。

緊急要望書の求める法規制強化などについて、私個人としては賛成できませんが、要望書の(1)にある「子どもに対する性的虐待を性目的で描写した写真、動画、漫画、アニメーションなどを製造、譲渡、貸与、広告・宣伝する行為に反対します。」という内容について、(3)にあるように自主規制として対応する、ということについては、自由な社会においてそのような取り組みを行う意思を持つものが自主規制するという限りにおいては、とくに反対するところではありません。

そのような前提で今回のユニセフ協会特集ページ http://www.unicef.or.jp/special/0705/index.html をみて、この点について重大な問題があることに気がつきました。

それは、『「子どもポルノ」の現状についてYahoo!でも特集されています』というバナーです。そのバナーをクリックすると、Yahoo!JAPAN セキュリティ特集 2008春 http://special.security.yahoo.co.jp/ というページであることは当然ご存じだと思いますが、問題は、そこの「子どもが危ない 性暴力の被害現場の画像を世界中にばらまかれる少女たち」というページです。1ページ目 http://special.security.yahoo.co.jp/stpchpor/1/index.html に、特定の児童ポルノのシリーズのタイトルがあり、次のページ http://special.security.yahoo.co.jp/stpchpor/2/index.html の終わりに、もう2つの児童ポルノのシリーズのタイトルがあります。

堂々と頒布することが許されない違法な児童ポルノタイトルに人がインターネットでたどり着くのには、検索サイトでの検索が有効に働きます。特定の児童ポルノタイトルは、検索に資するキーワードとなります。つまり、児童ポルノのタイトルを明記することは、児童ポルノを「広告・宣伝する行為」になりえるという問題があります。1ページ目のシリーズ名については、あまりにも広く報道され、警察庁の研究会の公開議事録にも記載されるほどなので、このページの内容が必ずしも児童ポルノへのアクセスの増加に実質的な意味で資するとは言い難いかもしれません。しかし、2ページ目のシリーズ名2つは、1ページ目のものに比べれば一般の認知度は低いもののはずです。従って、当該ページの内容が児童ポルノへのアクセスの増加に実質的に資する可能性があります。

問題の記事は、そもそも月刊総合誌で報道されたものの転載ですが、さまざまな問題について扱った紙の雑誌でのタイトル記載と、「子どもポルノ問題」を特集するサイトでのタイトル記載では、インパクトが全く異なるもので、これは重大な問題ではないかと考えます。ユニセフ協会サイトからのバナーの除去、あるいは、ヤフーのサイトでの記事の修正や差し替えを検討したほうがよろしいのではないでしょうか。

なお、本件について、ヤフー株式会社の担当部署への送付もよろしくお願いします。ヤフーのサイトの問い合わせフォームでは、うまく送れませんでした。


追記: 日本ユニセフ協会からは何の返答もなく、ヤフーのサイトにも変化が無かったので、内容を簡略化して、問い合わせフォームで送信不能だった原因と考えられる本文でのURL記載をすべてやめて、あらためてヤフーのサイトの問い合わせフォームで連絡した。

2008/03/17

Permalink 01:31:09, by Nobuo Sakiyama Email , 59 words   Japanese (JP)
Categories: 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

児童ポルノの定義拡大問題について(3)

前の記事からの続き。ほんとはOCED各国ぐらいについて調査したほうがいいんだろうけど、そろそろしんどいのであとはアメリカの件で各国動向はいったん締め。というか法学系の人がやったほうがいいと思うし。

アメリカの場合、わいせつ物規制とアメリカ合衆国憲法修正第一条の関係は、1973年の連邦最高裁判決で提示された、Miller test というのを基準として判断することになっている。現実の児童を使った児童ポルノ禁止の合憲性はNew York v. Ferberという1982年の最高裁判例で示されている。児童は18歳未満。その後、Child Pornography Prevention Act of 1996(CPPA)という法律が作られて、これで連邦法典における児童ポルノ罪が「バーチャル児童ポルノ」に拡大された。具体的には、児童に「見えるもの」と、児童のような印象を与える形で宣伝などがされたり頒布されているものが対象となった。この法律は、直ちに違憲訴訟の対象となって、2002年にAshcroft v. Free Speech Coalitionとして知られる連邦最高裁判決で、前記の「バーチャル児童ポルノ」に関する部分は違憲無効となった。これを受けて、Prosecutorial Remedies and Other Tools to end the Exploitation of Children Today Act of 2003(略称 PROTECT Act of 2003)という、かなり大きい法律の中に、関係する部分を再改正する条項が盛り込まれた。

現在の連邦法典から定義の部分をみると、「児童に見えるもの」ではなく、「児童と区別がつかないもの」になっていて、絵画や漫画などは該当しないことが明記されている。また、内容としては性器・胸・陰部があらわになった性交等のほか、獣姦、自慰、サドマゾヒズム、性器や陰部の露出、といったものが挙げられている。その上で、何が罪になるかをみると、児童ポルノの頒布や受け取り・所持などが対象になる。この場合、含まれている「児童と区別がつかない人物」が現実の18歳以上の人物か、架空のものであることを訴訟の一定の段階までに証明すれば、訴追対象とはならない。この条文に含まれるもので、他にPROTECT Actで追加されたものをみると、児童に対し、違法な活動への参加を誘う目的で、児童と知って児童ポルノを提供することが罪とされていて、この条文に限っては「児童に見えるもの」が対象になっている。当該児童を性的搾取に誘い込むための材料としてのポルノの利用、ということで定義を拡大しているのだろう。もうひとつ、「わいせつ児童ポルノ」(現実児童に限定されない)か、「現実児童の児童ポルノ」を含むものと相手に信じさせるような宣伝などの行為も、罪とされている。これは憲法訴訟になっているので後述。

PROTECT Actでもうひとつ対象にしているのが、前述の「わいせつ児童ポルノ」で、これはわいせつ物規制の章に新設された条文になっている。前のCPPA違憲判決がMiller testを理由としていたので、それならMiller testによっても修正第1条で保護されない領域については禁止しよう、という方向で作られた。児童の性的に明白な行為の描写でわいせつなものであれば、製造・頒布・所持を、現実の児童ポルノと同様の罪とするもの。さらに、「わいせつ」の解釈の州間でのブレがあるためか、「児童や児童に見えるものが獣姦、サドマゾ行為、性交などをしている画像の描写で、まじめな文学的、芸術的、政治的、あるいは科学的価値を欠くもの」もこれに含めている。

[追記: わかりにくい!という指摘があったので追記すると、上記の「わいせつ児童ポルノ」は現実児童に限定されず、マンガなどを含む定義になっている]

現実の児童の性的搾取に関する内容は児童ポルノ罪とは別の条文で規定されている(こちらが元からある条項)。現実の児童ポルノの製造そのものは児童の性的搾取罪に含まれる。なお、これらの児童ポルノ罪全般について、リンク先の各条文を読めば分かるのだが、実はもいろいろ限定がついて、州間や外国とのやりとり、メールや通信などがからむ必要があり、純粋に州内のface to faceの中で完結しているものは含まれていないのだが、それは連邦法典と州法典の管轄の問題から来ると思われ、実際には各州の法典も見ないと全体像はつかめないのだが、それはとりあえず省略。

とりあえず現行法の説明は以上だが、このPROTECT Actが現在違憲訴訟になっている問題についても簡単に。問題は上述の「宣伝」の罪で、これが現実の児童ポルノの存在を必要としていないので、修正第1条違反に問われる状況になっている。United States. v. Williams という訴訟として知られていて、連邦第11巡回区控訴裁判所で違憲判断が出て、連邦最高裁で審理中になっている。最高裁での原告・被告双方、および法廷助言人による意見書もAmerican Bar Associationのサイトで公開されている。

このほか、アメリカでは州憲法レベルでの違憲訴訟もあった。フロリダ州の16歳の女性と17歳の男性が合意の性行為をして、それを二人でデジカメで撮り、女性のコンピュータから男性のメールアドレスへ電子メールで送付した、という件について、女性が児童ポルノ製造・提供罪、男性が児童ポルノ単純所持罪にそれぞれ問われ、それぞれ有罪となったもの(双方とも保護観察程度で済んだらしいが)。ここでの児童ポルノ罪はフロリダ州のものであって連邦犯罪ではない。女性の弁護側が州憲法のプライバシー権侵害で違憲無効だと控訴していたが、州第1区控訴審の判決では、複製容易なデジカメでの撮影や、コンピュータへの格納、電子メールでの送付といった一連の行為それぞれがプライバシー権の期待を放棄するものとみなして、合憲とされた。Declan McCullagh によるCNET記事が状況をもう少しわかりやすく説明している。

国外事例の説明はこんなところだろうか。最後のフロリダ州の事例は、児童ポルノ禁止をどこまで厳しくするべきか、というのを考えさせられる事例だと思う。

2008/03/16

Permalink 17:59:37, by Nobuo Sakiyama Email , 42 words   Japanese (JP)
Categories: 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

児童ポルノの定義拡大問題について(2)

前の記事からの続き。

アイルランドは小国だけれども、日本ユニセフ協会のキャンペーンサイトに登場するDr. Ethel Quayleがアイルランドということで。アイルランドの憲法40条第6項1-iでは表現の自由をうたってはいるけれども、マスメディアなどを通して「公共の秩序、モラルや国家の権威」が傷つけられることがないように国家が努力すべし、としていたり、冒涜的、煽動的、あるいはみだらな出版などは犯罪として処罰すべし、としていたりして、明示的に表現の自由を制限している。実際、アイルランドには、Irish Film Censor's Office(映画やビデオ対象)と The Censorship of Publications Board (出版物)という2つの独立検閲機関(レイティング機関を兼ねる)があり、広範な言論表現を規制してきた。過去には、同性愛表現や妊娠中絶に関する情報などについても幅広く規制してきたが、同性愛表現の禁止については撤廃されているようだ。妊娠中絶については緩和されているもののまだ規制があるようだ(妊娠中絶はアイルランド憲法で違法とされていて、この条項が渡航の自由や国外での妊娠中絶情報の流通を制限するものではないと憲法に修正条項が追加されたのが1990年代)。カトリックが過去特別な地位にあった国らしいといえばらしい。といったところで本題の児童ポルノだが、Child Trafficking and Pornography Act, 1998に規定され、児童ポルノの製造・頒布・所持が罪となっている。そして、児童ポルノの定義だが、年齢は17歳未満で、視覚表現と聴覚表現の両方が対象とされていて、実際の児童の場合だけではなく、児童として描かれているものは対象になっている。描かれる内容としては、児童の明示的な性的活動のほか、児童に性的活動を見せること、性的目的で児童の性器や肛門の表現を主題とするもの、といったあたりになる。ただし、前述の検閲機関を通ったものは児童ポルノには含まれない。

カナダは、憲法ではかなり単純に表現の自由をうたっている一方、刑法典で性犯罪についてかなり「モラル」に踏み込んだ規定をもともとしている(これは英米法の国では結構多いみたいだ)。その上で、刑法163条の1、で児童ポルノ罪を定めている。年齢は18歳未満、内容についてはアイルランドとだいたい同じだが、「性的活動を児童に見せる」表現は含まれていない(文章についても違いがある)。児童の実在性は問題とされていない。処罰の対象は製造・頒布・所持・アクセス。ただし、カナダでは児童ポルノ禁止の範囲について複数の刑事事件で憲法問題になっていて、その結果、条項が無効とはなっていないものの、一定の範囲で制限をかける解釈が判例で示されている。1つは、カナダで児童ポルノ罪が定められてまもない1993年に、トロントの画家のEli Langerが子どもの性行為を描いた作品を展示したものが罪に問われたもので、1995年に、 児童を現実的に害するものでもなく、芸術的価値がある、ということで、そういうものは憲法が保護するものだから、と無罪になっている。その後、別の事件に関して、2001年にR. v. Sharpeとして知られる最高裁判決があり、想像の産物の個人的利用目的の製造と所持と、合法的な性行為(例えば14歳以上18歳未満同士のもの)を、行為者自身が撮影し自身で所持している場合、の2つの場合は表現の自由とプライバシーの権利で保護されるので児童ポルノ罪に含まれないとされている(被告自身は、新しい解釈基準での差し戻し審で、数は減ったがそれでも児童ポルノ所持はあったということで有罪になっている)。前者の例外は、その前からの「芸術的価値」のテストが外れているというのがポイントになる。

オーストラリアは、憲法で明示的に表現の自由をうたっていない(もし主張するならコモン・ローに頼ることになるようだ)。オーストラリアでは、Classification Act という、レイティングのための法律があり、ここでRefused Classification となると、頒布や上映は禁止される。もうひとつ、オーストラリアは連邦国家として、権限が連邦と 州・特別地域で分離されているので、話が複雑になる。州などをまたぐ頒布や、インターネット経由のアクセスなどは連邦の権限だけれども、州内はもっぱら州政府などの管轄になる。連邦の刑法では、児童ポルノの定義は18歳未満で実在は問わず、性的ポーズをとったり性的行為をしている場合や性的行為などをしている人物と一緒にいる場合の表現、性器や肛門、女性については胸の表現、といったあたりになる。しかし、実はこれはもっぱら通信サービス(事実上インターネット)経由での頒布やアクセスを禁じるに留まる。Classification ActのRefused Classificationに何が分類されるかは、法律本体ではなくてガイドラインになるが、ここでの年齢基準も18歳になっている(しかし、以前は16歳だったようだ)。 リアルワールドでの児童ポルノの製造や所持、頒布の取り締まりは、もっぱら州レベルとなる。 ここで実は基準がさまざまで、クィーンズランド州刑法では、child explotation material としては、16歳未満の実在の児童を基準として、製造・頒布・所持を罪としている。非実在の場合は、わいせつ物頒布罪の中で、16歳未満、12歳未満を描いている場合にそれぞれ罪を加重しているに留まる。ニューサウスウェールズ州刑法の場合も、児童ポルノ罪は16歳未満の実在の場合。非実在の場合は CLASSIFICATION (PUBLICATIONS, FILMS AND COMPUTER GAMES) ENFORCEMENT ACT 1995で連邦のレイティングに基づく頒布・上映の規制や禁止でカバーされるようだ。と、規制のありかたは州によって違うのだが、これを他の州にもわたってみていくのはそろそろ面倒なのだけれども、どうやら、16歳未満という線が現行の規制のようだ(追記: 性交同意年齢が17歳の州があり、そこではおそらくそれが線引きの下限となる)。ただ、連邦レベルの動きをみていくと、これはいずれ18歳へと引き上げられるのではないかという気はする。

あとは、アメリカの話があるのだけれども、それはまた後でということで。

ということで続きはこちらへ

2008/03/12

Permalink 04:03:55, by Nobuo Sakiyama Email , 27 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

児童ポルノの定義拡大問題について(1)

児童ポルノ禁止法改正問題にからんで、日本ユニセフ協会のキャンペーンが、アニメ・漫画・ゲームの違法化をも訴えるものとして、ネット的に強い反発を買っている。といって、多分、そういう反発は「想定内」であり、それをも含めてのメディアキャンペーンなのだと思う。ここで必要なのは、定義拡大の主張に「事実」として含まれる内容の吟味だと思っている。

被写体が実在しない場合についての違法化について、キャンペーン側では、すでに欧米で処罰対象の国があるとしている。ここで国名が出ていないのがやっかいだが、とりあえず有名どころというとドイツ・アイルランド・カナダ・オーストラリアか。イギリスは「擬似」までは対象。

ドイツの場合、基本法で表現の自由が結構明示的に制限されているので、さもありなんといったところだろうか。ナチス関連が有名だけど、青少年保護も入っているという。その前提でドイツの刑法(リンク先は英訳)をみると、ポルノ頒布罪を定めた184条の第3項から第6項が児童ポルノ関連となっている。第3項は暴力行為、児童(14歳未満)の性的虐待、獣姦といったものを対象(object)として含むポルノの頒布などを罪としている(表現形態は問うていない)。第4項は、「児童の性的虐待」が実際のものか、真に迫ったもので、商業的な頒布などの場合に罪を重くしている(これで、第3項が実在の児童に結びつくものでないことがわかる)。第5項は、「児童の性的虐待」が実際のものか、真に迫ったものの場合の入手や単純所持を罰している。「児童の性的虐待」は第176条で規定されている。実在の児童を使った児童ポルノ製造は続く第176a条の「児童の深刻な性的虐待」の中に規定されていて、「児童の前で性的行為をすること」が含まれる一方で、単なる児童ヌード撮影は含まれないように読める。

[追記: 上記の説明の前提となる英訳はやや古いものだった。現在は、児童ポルノ罪は現実の児童に関するものの単純所持を含むように改正され、184b条(リンク先はドイツ語)となっている。]

イギリスの場合、何度も改正されているので分かりにくいのだけど、1978年に「みだらな児童(16歳未満)の写真」の頒布などが罪となり、1988年に単純所持が罪となり、1994年に「みだらな児童の擬似写真」が対象に加わり、2003年に「児童」の定義が18歳未満に引き上げられた。ただし、この年齢引き上げには、16歳以上で婚姻関係にあるないしは同棲している状況で、児童の同意があって第三者にそれが見せたり配られたりしていない状況は罪としない、という例外措置がとられている。この「みだらな児童の写真」には、単なるヌードが入ることは判例で確立している。「擬似写真」は、「写真のように見えるもの」ということで、「みだらな児童の写真」をPhotoshopなどで加工して性的虐待との関係をごまかそうとする動きを封じよう、その場合に大人を子どもっぽく加工した写真とか、空想産物のリアルな超精細CGもひっかかるけど、それは児童の性的虐待の問題を考えたら許容されるよね、ということでそうなっている。ここで、漫画やアニメは「擬似写真」に含まれていない。 その上で、イギリス内務省は、昨年、 Consultation on the possession of non-photographic visual depictions of child sexual abuseというペーパーを出している。ここでは、「児童の性的虐待を描いた」漫画やアニメの違法化について提案されている(おそらくはUNICEFやECPATの働きかけによる)が、一押しは「みだらな児童の擬似写真」の定義拡大ではなくて、独立した法律を作ることとなっている。「みだらな」では定義が広すぎるし、罪も重すぎるので、範囲を限定して罪も軽くする、ということ(ただし、これでひっかけて捜索すれば本物の児童ポルノもどうせ持ってるだろ、という見込みも入っている)。しかし、結果としては、現在イギリス議会で審議中で、もう貴族院に来ている Criminal Justice and Immigration Bill 2006-07 to 2007-08では、「写真や擬似写真ではないが、それらに由来するもの」(鉛筆やコンピュータソフトでのトレースによるものなど)を児童ポルノに含めるということで、現実の児童の性的虐待からは離れない水準での改正に留まっている。

長くなってきたし、寝かしつづけるのもなんなので以降はまた後で。

ということで続きもどうぞ。

2008/03/10

Permalink 01:21:58, by Nobuo Sakiyama Email , 10 words   Japanese (JP)
Categories: 言論・表現の自由

カルチャーファーストはどこへ行った?

小倉さんが言及している「靖国神社を題材にしたドキュメンタリー映画」に対する自民党の一部議員による事前試写の要求の件、文化庁の「助成金の支払われ方がおかしいと取り上げられている問題を議員として検証する」のに中身を見る、というのは、検閲を意図したもので、配給会社だけではなくて、映画・コンテンツ業界が自らのこととして抗議に立ち上がらなくてどうするのだ、と思うのだが、ちょっと前に「カルチャーファースト」と言っていた面々はどこに行った?

ちなみに、Google News英語版でcensorshipを検索というのをこのところ見ていると分かるのだが、ちょうど今、このキーワードでとてもホットなのはカナダの話だ。従来から、カナダでは映画やテレビ番組の製作について、文化振興の目的で税の減免措置をとってきたらしいのだが、今、審議が行われている歳入法案では、“offensive” あるいは “contrary to public policy”と担当官僚が認めた場合には減免措置を取り消すことができる、という改正条項が含まれていて、まさにこれを検閲だとして、映画産業挙げての反対運動が起きている。なお、日本でこの件がどれだけ報道されているかは知らないが、とりあえずGoogle News 日本版では見つけることが出来なかった。

2008/03/01

Permalink 23:31:39, by Nobuo Sakiyama Email , 3 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 児童ポルノ問題

インターネット・ホットラインセンター通報後の一例

  1. 2007年12月24日 画像検索で対象サイトを発見。児童ポルノDVD販売サイト。各タイトルにスクリーンショット画像サムネイルがありこれが児童ポルノ公然陳列に該当。児童かどうかの明白性においては、明白な画像が多数。国内のサーバー(これ以上のサイト特定に資する情報の公開はまずいと思うのでしない)。
  2. 同日 上記サイトを含めて10サイトほどインターネット・ホットラインセンターへ通報。通報後に表示される「参照番号」は上記サイトの分は1198478189-1054。
  3. 2008年2月22日 「2008年1月12日ごろまでに通報いただいた方の処理結果を見ることができます」とホットラインセンターのトップページに表示される。
  4. 同日以降 処理結果確認ページのフォームに上記参照番号 1198478189-1054 を入力すると結果が表示される。

    あなたが2007年12月24日15時36分頃に通報された情報への対応状況は以下の通りです。

    通報された情報は違法と判断しましたので、警察へ通報しました。これからも通報をお待ちしております。

  5. 2008年3月1日 警察への通報から少なくとも1週間たっているのに当該サイトにアクセスするとまだ全然生きている ←イマココ

昨日、「ホットライン運用ガイドライン改訂案」に関する意見の募集が締め切られた(コメントは出した)が、改定案は処理の迅速化に資すると思えなかったので、いろいろコメントを書いて送った。また、国会では児童ポルノ禁止法の改正の議論が持ち上がっているのだけれども、ボトルネックの解消という意味では現状の改正議論は(弊害が多いわりに)意味がない。

追記: 3月10日までにサイトが削除されたようだ。

2008/02/18

Permalink 23:54:42, by Nobuo Sakiyama Email , 20 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

やはりフィルタリングは差別と偏見を助長するなぁ

INTERNET Watchにフィルタリングの必要性、同性愛サイトやプロフなどで親子に意識差という記事があった。IMJモバイルによる意識調査の内容。IMJモバイルの発表タイトルでは「同性愛」は落としてあるのだが、調査結果の内容から拾えばそういうタイトルになる。IMJの分析は「親子の意識差」に焦点を当てているのだけれども、絶対値でみても同性愛を規制が必要と考える親は87.8%と、かなり高い値となっている。ほぼ同水準がギャンブル(87.9%)で、成人娯楽、グラビア、グロテスク、オカルト、宗教といったあたりがこれらより若干低い。90%越えは、もっといかにもなカテゴリとなっている。

さて、IMJモバイルの分析では、子どものほうの許容度が高いことに注目して「10代へのBL(ボーイズラブ)ブームの影響」としてるが、そういう問題なのか、なにか違うだろ、というのが率直なところ。このブログで携帯フィルタリング問題に最初に言及した時には、まさにNTTドコモが同性愛を制限対象としていることを取り上げたのだけれども、その話題をmixiの「ドコモ」コミュニティに振ってみたときのコメントが、Norasさんの手でコピペされているので、当該コミュニティの管理者がトピックを削除した現在でも、内容を参照できる。そこについたコメントは、ほとんどが私の問題提起に対する強烈な反発だったのだが、その内容といえば、性的指向についての差別と偏見とその助長そのものだと言っていい。

こういう差別的言動が露骨に表面化するのはいかにもmixi的な事象だと思うが、そのような差別・偏見から、他の人が自由か、というと、そういうことでもない。モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)が公開している第三者機関設立のための準備委員会設置の説明(PDF)という資料がある。MCFが「健全サイト認定」のための第三者機関設立について発表したときから使われている資料で、私が初めて見たのは慶応大学DMC機構主催のシンポジウムのときだ。この資料の7枚目(6ページ)が「ブラックリスト方式のカテゴリーの実際」というタイトルで、「規制カテゴリの中に健全なサイトも含まれてしまう」ということをNTTドコモのカテゴリに対して具体的に述べているのだが、宗教・政治・コミュニケーションについて指摘する一方、同性愛カテゴリについては問題の指摘をしていない。「アダルト」カテゴリについてまで、「同じサイトにある一般図書も利用できない」と指摘しているにもかかわらず、だ。まぁ、MCF会員企業から具体的にボトムアップの苦情がなかったからに過ぎない可能性もおおいにあるけれども。

国会議員の中にはこの問題に注意を払っている人もいるけれども、一方で、自民党でフィルタリング義務化の方向で旗振りを一番懸命にやっている人達は、ぱっとみたところは日本会議系の議員が目立っていて、彼らはいわゆるジェンダーフリーバッシングの中で同性愛を異性愛と対等に扱うタイプの教育を攻撃してきたし、日本会議といえば、同性愛者の人権一般についても日本会議首都圏地方議員懇談会にみられるように異常に敵意を燃やしていらっしゃるようなのですよね。もっとも、フィルタリング推進の自民党議員でも、馳浩議員のように性同一性障害者の問題に継続的に取り組んでいる議員もいるので、「ライフスタイル(同性愛)」にはトランスジェンダーとして性同一性障害に関する話題も入っているということを伝えてみるというのもいいのかもしれない。

追記: 楠さんの反応に対して。価値中立的にカテゴリを選択できる状況にあっては、ある程度は然り。ただし、仮に親が望むとしても、例えば「部落(解放運動について。地名晒しなどのhate speechではない。以下同様)」「黒人」「ユダヤ人」「ハンセン病患者」といったカテゴリをアクセス制限のために用意することが許容されるかといえば許容されないわけで、その意味において、いわゆる LGBT をブロックしたいという要求に応ずることが適切かどうかといえば、私個人としては適切ではないと考えている。ただ、社会的な合意としてはまだそこまでは行っていない、ということは認めるというレベル。

そして、目下の携帯フィルタリングにおいては、ネットスターのブラックリストカテゴリの端末単位での価値中立的な選択、というところには落ちそうもないし、まして、セルフレイティングをベースに端末単位でコントロールする、という方向にはどうがんばっても今年の6月には間に合わないだろう。端末であれば年単位の時間が要るかもしれず、ゲートウェイでも実運用に入れるとなれば時間はかかる。従って、短期的には、現行の画一的なカテゴリが社会的に適切なのか、というところに落ちざるをえない。そこでどのような設定をするかは、いくら「親権の代理行使」と言ってみたところで、親ならぬ事業者や社会・国家からのメッセージとして機能してしまうだろう。

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