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2007/04/12

Permalink 01:36:28, by Nobuo Sakiyama Email , 10 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由

インターネット協会はインターネットを悪用した人権侵害は止めましょう

冗談のようなタイトルだけど、これは本当に思っていることです。

インターネット協会は、さきごろ「インターネット上の有害コンテンツの多様化に対応した新たな格付け基準SafetyOnline3の策定」というプレスリリースを出しています。その中で、どのような項目をフィルタリングするかを表形式で発表していますが、次のような部分があります。

区分具体的内容年齢区分
性行為 性交または性行為、SM・同性愛・獣姦・フェチ等の変態性欲に基づく性行為、乱交等の背徳的な性行為 18歳未満
利用制限
性交または性行為を連想させる行為、不倫行為
官能小説
インターネット上の有害コンテンツの多様化に対応した新たな格付け基準SafetyOnline3の策定 2.(1)フィルタリング項目 から一部抜粋

個人的には、18歳未満が性行為の描写を見たところで有害だとは思いませんが、とりあえずここの話は「フィルタリングの妥当性」をめぐる議論ではありません。表をよく読んで下さい。「SM・同性愛・獣姦・フェチ等の変態性欲」と書いてあります。「変態性欲」という言葉を使うのがpolitically correctかどうか、ということは置いておくとして、この項目は、「同性愛」という性的指向について、明確に「変態性欲」というカテゴリに入れて表現しています。これは、同性愛を異性愛と対等に扱うべきか、といった水準の議論ではなく、明確に同性愛を異常視、差別視した表現です。このような表現を日本でインターネット業界を代表する業界団体である財団法人のプレスリリースに堂々と掲げられてしまう、というのがはたして社会的に許容されてよいのだろうか、という問題です。

これは、「ちょっとしたミス」などではありません。この基準はインターネット協会が設置するレイティング/フィルタリング連絡協議会において、少なくとも2年以上検討されてきた内容の成果です。ここの研究会資料や議事録を読めば分かりますが、このフィルタリング基準は、全体としては個々の言葉遣いについて細かいチェックを行ってここまできています。例えば、「性暴力・性犯罪」の区分における「近親姦」という表現は、最終段階直前まで「近親相姦」であったものが指摘があって修正されています(それ自体は正しい修正でしょう)。そういう場において、同性愛を「変態性欲」とする記述は、2006年1月24日付の中間案の18ページに登場して以来,全く揺らいでいません。その回の議事録において、

○委員:ラベリング基準案の中の、「SM、同性愛、獣姦、フェチ等の変態性欲の性行為」はICRA ではどのように分類されているのか。

○事務局:ICRA ではおそらく、アブノーマルなものとノーマルのものとは分けずに一律に「明白な性行為」にいれるということで対応しているかと思う。

○委員:「セックス」という項目の中に含まれると思われるということか、実際に含まれているということか?

○事務局:「明白な性行為」のところか「明白ではないが性行為と思われる行為、または性行為を連想させる行為」のどちらかに該当するだろう。

2005 年度「レイティング/フィルタリング連絡協議会」第2 回研究会議事録

といった程度の議論があったのみです。ICRAが分けていないものを何故分けるのか、とか、分類の仕方は妥当なのか、といった議論があった形跡はありません。

これは、少なくとも同性愛者の方々や権利団体は抗議を申し入れるべき事態だと思うし、人権擁護活動をされてきた方々も動くべきではないかと思います。あと、インターネット協会内部で、こういったコンテンツ規制推進に関わっている部門は、他の部門とはかなり異質で、問題があると考えている方が少なからずいらっしゃると漏れ聞こえているのですが、やはり、組織ガバナンスの問題としてこういうおかしなことをしている部門をきちんとチェックしたほうがいいのではないかと思います。

2007/04/06

Permalink 08:40:44, by Nobuo Sakiyama Email , 5 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由

Wikipedia日本語版管理者は百科全書とか知らないんだろうか?

NTTドコモのフィルタリング話では差別された当事者が動き出した。そういう人達にさらにインプットすべき情報もあるかなと思うのだけど、基本的に以前からのネタの繰り返しなので個人的にもうちょっと落ち着いてから。

さて、Wikipediaの日本語版管理者のひとりがWikipediaと表現の自由は関係ないとまで力説しているんだが、Wikipedia以前に百科事典の歴史というのを知らないでやっているんだろうか?近代史のなかでの百科事典というのは啓蒙思想と密接に結び付いているわけで、実際、それは教会の権威と対立し、弾圧され、それを乗り越えて編纂されてきた、という意味で、まさに近代における言論の自由の確立とは切り離せないものなんだけどなぁ。

Wikipedia日本語版の「百科全書」の項は、現時点でそのあたりの書き方が、英語版と比較してもあまりに弱すぎるので、大阪府立図書館の図版集の解説ぐらいは読んだほうがいいだろう。

751年に第1巻が出版されましたが、絶対主義的権威の否定や人間精神の解放を基本にした「百科全書」は、教会を中心とした反対派からの攻撃でいったん出版を取り消されます。その後もさまざまな迫害を受けますが、ディドロは困難を乗り切り、1772年に最後の図版集を完成させました。

フランス百科全書について

2007/01/24

Permalink 02:16:04, by Nobuo Sakiyama Email , 6 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由

「フィルタ付きがデフォルト」は重大な問題だ

携帯電話のWeb閲覧サービスについて携帯電話事業者が提供するフィルタリングサービスの問題について、このブログでは以下のように扱ってきた。

さて、そうこうしているうちに、総務省から「有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の 普及促進に関する携帯電話事業者等への要請」というものが11月に出て、同日に携帯電話キャリア3社と業界団体が連名で「有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の更なる普及促進に向けた取り組みの実施について」という文書を発表した。こうした経緯の結果として、1月22日の朝日新聞報道によれば、「未成年者の携帯有害サイト制限、親の意思確認が必須に」ということである。曰く、

3社はこれまで必須項目ではなかったフィルタリングサービス利用の親の判断を必須とするよう同意書を改める。契約時に親の意思確認を徹底する措置だ。親が子供にフィルタリング対象のサイトを見せてもいいと判断した場合だけ、例外的にサービスを外して契約できる。

未成年者の携帯有害サイト制限、親の意思確認が必須に

とのことだ。つまり、フィルタリングつきがデフォルトだ。さらに、年齢まで引き上げられる。

auとソフトバンクは、契約時に親権者の同意書が必要な年齢を18歳未満としてきたが、同意書改定にあわせて対象を20歳未満に引き上げる。これで3社とも未成年者すべてを対象にすることで足並みがそろう。

未成年者の携帯有害サイト制限、親の意思確認が必須に

従来、青少年条例などで「有害図書」などの規制が行われてきたのは18歳未満であったし、また多くのメディアの自主規制も「18歳」がひとつの線であった。法律でも、児童福祉法などで保護されてきたのは、18歳未満であった。これが、携帯電話の規制では「未成年」というラインになって、年齢が上がっている。18歳、19歳といえば、大学生や高校を卒業して就職した人々も含まれてくる。こういった年齢層について、情報入手を親権者が制限できるようにするべき、しかもデフォルトで、という社会的なコンセンサスは、今まで存在したのだろうか?

そして、以前のエントリで指摘した、NTTドコモの「政治・宗教・同性愛」を「有害サイト」扱いする方針は、変わらないままとなっている。これは、「フィルタリングがデフォルト」の状況でも、なお「妥当」とNTTドコモは考えるのだろうか?それを私達の社会は「妥当」と思っていいのだろうか?

2007/01/02

Permalink 01:58:57, by Nobuo Sakiyama Email , 27 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

通報を処理しきれない警察という観点からコンテンツ規制をみる

すでに昨年のことになるが、 「危機と好機は同時に訪れているのかもしれない」というエントリをこのブログに書いたのだが、あまり反応が無かった。考えてみれば、あまりに一次情報の少ない憶測的な内容だったので、そういうものだろう。そのエントリで書いたことの根拠は、実は他にもあったのだが、それを明かすことについてはまだ躊躇する事情があった。しかし、状況が変わったので、もう少し突っ込んで書いてみようと思う。

警察庁のサイトで総合セキュリティ対策会議平成18年度第1回総合セキュリティ対策会議(平成18年7月5日)発言要旨、及び平成18年度第2回総合セキュリティ対策会議(平成18年9月15日)発言要旨というものが、12月18日に公表されている。いずれも主要議題は「インターネット・ホットラインセンター」 についてである。個人的に注目するべきと感ずるのは、生活安全局長の竹花豊氏の次の発言であろうか。

○ 局長 違法情報として情報提供を受けたものについては、犯罪として適切に処理することが重要であると考えている一方で、捜査においては人的な制約もあり、より悪質なものを摘発するという方向で考えていかなければならない。ホットラインセンターから通報を受けた違法情報について警察がどう対処したのか、また、捜査上も大きな役割を担っているといったことについても、報告できればと考えている。

平成18年度第1回総合セキュリティ対策会議発言要旨

○ 局長 ホットラインセンターの運用状況に関する報告を受け、違法情報の捜査がなかなか簡単には進まないという現状を考えると、捜査に必要な証拠保全をできるだけ早く講じ、それが終了したものについては迅速に削除を依頼するといった方向での検討が必要であると考えている。

他方で、ホットラインセンターからプロバイダ等に削除依頼を行った情報の中には、削除されないまま放置されているものもあることから、こうした点についても検討した上で、それなりの対応を講じられるようにしていくことが、ホットライン制度の重要なポイントではないだろうか。

平成18年度第2回総合セキュリティ対策会議発言要旨

○ 局長 ホットラインセンターとして措置を取ったものが1万1,309分の1,000件足らずという状況であり、通報された方が、通報しても何ら措置がなされないということを感じ始めると、ホットラインセンターの活動が先細りになっていくという懸念もある。

やはり、通報内容を分析し、できるだけ取り上げられるようにしていくという工夫もあってもいいのではないか。

平成18年度第2回総合セキュリティ対策会議発言要旨

会議の発言要旨はこの後の回のものはまだ公開されていないが、ホットラインセンターでの措置については次のようなニュースが12月31日にあった。

インターネットの接続業者などが平成18年6月に設立した「インターネット・ホットラインセンター」は、(中略)この半年間にセンターに通報があった違法なホームページは、あわせて2226件で、(中略)このうち、国内のサーバーを使用していたホームページについて、センターが警察に届けたりサーバーの管理者に削除を要請したりした結果、3分の1以上の860件余りが削除されたということです。

NHKニュース: ネット違法情報 2200件超

このニュースのなかで、ホットラインセンターの運営にかかわっているWEB110の吉川誠司氏は「3分の1以上」という数字について、予想以上に削除された旨の発言をしていた。

さて、ここで冷静に考えてみてほしいのだが、ホットラインセンターの取扱対象とされる「違法情報」は、違法であることが比較的自明なものであるはずだ。それが警察に通報され、証拠保全ののち、あるいはそれとともにISPなどに通報されて削除される、ということが残りの3分の2あまりについては、行われていないのだ。ホットラインセンターではIPアドレスベースで国内サイトであることを確認して取り扱っているので、ネット特有の越境性、といったことはこの場合には理由にならない。

結局のところ、この通報が警察の現場の対応能力を越える通報件数をもたらしているのではないか、という状況が疑われる。竹花局長が「違法情報として情報提供を受けたものについては、犯罪として適切に処理することが重要であると考えている一方で、捜査においては人的な制約もあり、より悪質なものを摘発するという方向で考えていかなければならない。」と述べているのだが、この優先順位付けが大量通報によって損なわれているのではないか、という問題である。

これらの資料は12月に公開されたのだが、ホットラインセンターの統計情報から個人的には早い時点からホットラインセンターの大量処理の問題を疑っていた。ということで、ホットラインセンターの通報がどの程度機能しているのか、すでに試していた。具体的に通報してそのプロセスをみれば、ある程度見えてくるものがあると考えた。

10月下旬に、PC・携帯電話両用のレンタル画像掲示板サービス(国内設置)を利用した掲示板で、児童に裸体をさらすように誘う書き込みが行われていて実際にそういう状況が存在するサイトを5つ探した。どう探したかは明示しないが、Googleの検索で容易に発見できるようなものである。サービス事業者は3つで、掲示板のうち3つがひとつの事業者のもとにあった。仮に掲示板A1,A2,A3,B1,C1、としておく(A,B,Cはサービス事業者種別)。通報には、一目で女児の裸体や性器であるとわかる画像URLを明示しておいた。これらのうち4つが違法情報として警察に通報、という判定となり、残り1つ(A1)は有害情報扱いに留まった。警察へ通報されたもののうち1つだけ(B1)は数日して削除されたが、残りはいまもって現存している。一部の画像のみがピンポイントに削除されたというようにも見えない。なお、B1の運営者は別途事業者Aのところに同趣旨の掲示板A4を運営していたが、B1の削除とほぼ同時期にA4の設定を変更している(A4の使い勝手が悪い、という趣旨でA4の新規投稿許可を停止した上でB1を使っていたようだが、そのロックが解除されている)ので、検挙されたようでもない。なお、事業者AのサービスのドメインについてGoogle検索を行うと、今もって同種の趣旨の掲示板がときたま作成されている状況が確認できる。運営者はいずれも匿名だが、自分について成人を名乗っているか高校生や中学生を名乗っているかについてはさまざまであるようだ。

これらが「悪質」であるかどうかはわからないが、昨年の秋までには、児童が脅迫されて自分で撮った裸体を脅迫者に送るであるとか画像掲示板に掲載するであるとかいった事件がいくつか摘発されて報道もされていたはずで、表面上にそういう状況が見えていなくてもそういうことを疑う必要はあるだろうし、あるいは脅迫などなくても児童が自発的に、ないし掲示板に書き込む人々のリクエストに乗せられて裸体や性器を撮っては載せていく状況というのは、強制的な介入が行われて児童は適切に保護されるべきはずだが、とりあえず放置され続け、というのが現状である。「児童ポルノ」ではない、大量の「わいせつ」についての通報のせいじゃないだろうか?と個人的には疑うところ大である。まぁ、こういう話を含めて、「危機と好機は同時に訪れているのかもしれない」に書いたような話を、じつは11月に少し人前で話したのだけれども、ホットラインへの通報云々は、考慮するところがあって警察庁やホットラインセンターからの情報がある程度出るまではおおっぴらにはしていなかった。警察自らやホットラインが通報処理をこなせてないよという事実を公表するまでは、面子潰しともとられかねない内容だったし。

さて、こういう状況をふまえて、その上で、総合セキュリティ対策会議よりも少し先をみているバーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会におけるような、「わいせつ規制」から「子どもを守る」へのシフト、というのを、うまく使っていけるか、というのは、重要なポイントだと思っている。研究会の最終報告書について、山口貴士弁護士が「ダイレクトに法規制という方向に行かなかったことは、進歩であり、一定の評価には値します。」としているけれども、ポイントはそこだけではなくて、第6回での前田雅英座長の

従来は刑罰を科すには、保護法益として何か犯罪抑止につながるとか実効性のあるものしか犯罪にしちゃいけないという議論があったんですけど、必ずしもそうじゃないんじゃないかと。みんながまずいと思って、みんなでやめようよと。やめさせる手段として刑罰が有効なら刑罰を使うというのも1つあり得るんだと思うんですけどね。

バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会 第6回議事要旨

といった極めて問題のある持論については徹底スルーして盛りこまれていないあたりも重要であろうと思う。「子どもを守る」という(わりと具体的な)保護法益をベースにすることが崩れなければ、因果関係を議論の対象とできるからだ(これが「美しい国であるために」とかだと困っちゃうわけです)。ちなみに、山口さんはカタルシス論に言及していないことについて疑問を呈しているけれども、カタルシス論は第6回で言及があった上で、第7回のゲストスピーカーの渋谷明子氏(委員の坂元章氏との共同研究あり)によって、

5番目のカタルシス理論は全く逆で、フラストレーションを発散し、攻撃行動が抑制される、これはある意味でいいことだとされています。

研究者の間では5番目は正直現在のところ余り問題にされていません。

バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会 第7回議事要旨

と切り捨てられ、これに坂元氏(とみられる委員)が

他にも、幾つか付け加えさせていただきたいんですが、渋谷さんから、社会的学習説すなわち暴力シーンが暴力性を高めるという説と、暴力シーンがかえって暴力性を低めるというカタルシス説の対立のお話をされました。カタルシス説を研究者は余り相手にしていない、評価していないというお話をされたわけですが、実際にカタルシス説を支持するような研究の方法に問題点があることが研究者の間で指摘され、評価されなくなって参りました。

また、一つの説明として見られますのは、カタルシス説で言うようにフラストレーションが低下して、その結果、暴力性が低下するということがあるとしても、欲求不満の低減というのはあくまで短期的なことと考えられます。それに対して社会的学習説で言っているような価値観の学習、すなわち、暴力というのは悪いものではないとか、暴力で問題解決をすることは有効であるということを学習するとは長期的なものであって、大事なのは結局長期的にどうかということになりますから、最終的に社会的学習の方を重視すべきではないかという見方があるようにも思います。

バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会 第7回議事要旨

と補足しているので、カタルシス論に言及しないのは研究会の結論としてはいわば当然ということになる。従って、カタルシス論を肯定的に認めされるには今後それなりの努力が必要だし、あるいはカタルシス論を前提しないでロジックを組み立てていく必要もあるだろうと思う。

2006/12/15

Permalink 02:59:06, by Nobuo Sakiyama Email , 17 words   Japanese (JP)
Categories: コンピュータとインターネット, 政治,

「ネットvs.リアルの衝突」を読んだ

「ネットvs.リアルの衝突-誰がウェブ2.0を制するか」(佐々木俊尚)を、献本頂いたので、早速読んだ。ということで感想を。

この本は、佐々木氏の本が常にそうであるように、コンピュータ技術やネットビジネスを専門としない人達をも大きく想定読者に取り込みつつ、わかりやすい形で書かれていて、ネットの現況をジャーナリスティックに伝えている、というレイヤにおいては、好まれるタイプの本ではあると思う。ただ、個人的には、結構違和感が出る本でもあった。

最近一審判決も出たWinnyの問題(これについてはまた項を改めてそのうち書く。まだ判決全文も広く公開されていない状態だし)にドライブされて、それに大きくページを割きつつ、他の問題も網羅的に書かれているのだが、「ネットvs.リアル」の「衝突」の構図に多くを落とし込み過ぎているように思う。

Winny作者の金子氏を過大に「ネット」側からの価値破壊者として描いている部分については他の方からの批判もあると思うが、それだけに留まらない。

インターネットガバナンスに関する対立構図は、佐々木氏の描いたものよりも実態はもっと複雑であるし、あるいは、ICANN一般理事選挙のアジアでの組織動員問題はかなり的を外していると思われる。なぜか佐々木氏はこれが主として日中政府それぞれの仕掛けた問題であることを明示していない。これはそもそも地域選挙における集票だったので、アジアが他地域に対して覇権をとろうとしたというよりは、アジア内部で覇権狙ったっぽいのがまるみえになって大恥かきましたね、という話。さらに、中国の事情は分からないまでも、日本のほうは、「覇権」狙いというのは、いわばネタだったと思う。理事に選出された加藤幹之氏が理事になったところで、「ネットの覇権」がとれるという話でもないことはまともにかかわれば見えていたことで、そういう文脈とは違うところで、例えば会津泉氏は加藤氏を推していた。が、「産業界からの日本人理事候補」ということで、ある種の勘違いから、日本社会の中であれば極めてよくある組織的選挙運動のスイッチが入り、法規制もないところで暴走して、蓋をあけてみればいかにも暴走していて馬鹿でしたね、という話でしかない。万一、覇権を本当にとりにいこうとしていたのだと仮定すれば、それは最悪の戦略だったとさえいってよい。さらに、ICANNにおけるLynn報告での国家主導への揺り戻し的な動きについては、ネタとはいえ9.11テロが口実に使われ、テロ後しばらくの閉塞感(この空前絶後の航空機テロがICANNモンテビデオ会合の直後であり、アメリカ以外からの参加者もその多くが帰国途中に空港などでテロの第一報を聞き、場合によっては帰国が遅れたり安否を心配されたり、という形で巻き込まれていたことは無視できない要素だろう)がそれを裏打ちしてしまっていたということについて、言及がないというのはいかがなものだろうかとも思った。

また、デジタル家電に関する話も、「iPodの衝撃」自体は事実であるにしても、業界構図はやや単純化のきらいはあるし、また、この章でDRM(の違い)についての言及が全くないというのは、どんなものなんだろうか、という気がした。Winnyに大半を割いたこの本で、そこへの言及と「衝突」構図への落とし込みがないのは、むしろ書き足りないのではないかという気がする。

最後の、ウェブ2.0の章でも、書き割りとしては楽しめるが、世論形成についての議論、とくに2005年総選挙については、テレビなどの従来型主流メディアの分析がないままにネットの影響について語っているあたり、実証的にどうなのか、かなり疑問が残るところ、というか、主流のメディアの強力なアジェンダ設定にネット言論も従っていただけにしか私には見えないんで。

といった感じで、面白く読めるけど、でも、ね。

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    | ノ\   ,_ ヽ  .|   レ |      |  レ|       || J |
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  彡、   |∪|   |              .J                レ
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  \  "  /  | |
   \ / ̄ ̄ ̄ /

2006/12/13

Permalink 03:51:41, by Nobuo Sakiyama Email , 9 words   Japanese (JP)
Categories: 個人的なこと

緊急告知: 現在メールを受信できません →復旧してます

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2006/11/26

Permalink 02:01:58, by Nobuo Sakiyama Email , 4 words   Japanese (JP)
Categories: 言論・表現の自由, 児童ポルノ問題

危機と好機は同時に訪れているのかもしれない

先日、バーチャル社会のもたらす弊害 から子どもを守る研究会が、ついに表現規制に言及し始めた、として話題となっている(例えば山口貴士弁護士のところなど)。

たしかに、山口さんが言及しているように前田雅英座長の発言に極めて問題が多いことには、完全に同意する。ただ、危機ばかりを見つめるだけでは、果実は得られないような気がしている。

この研究会は、あくまでも警察庁の研究会に過ぎないので、携帯電話フィルタリングの件で見られるような自主規制強化のプレッシャーをかける場として使われることはあっても、法務省の法制審議会のように法制化に直結させる場とは、本来されていない。そのかわり、やや「ぶっちゃけた」と言っていい話もされていて、前田座長のさまざまな問題発言も、全てではないにしてもかなり強力に反論されていたりはする。そういう意味では、単なるセレモニーの場ではない。そういう強力な反論をできる人々を委員にもってきた事務局の意図というのを想像すると興味深い。警察庁生活安全局長である竹花豊委員も、その領域は確実にアウトだろ、という案も出しているが、この段階では、憲法的制約も忘れたふりをしてあらゆる選択肢をあげてみたよ、ということをやっているだけにも見える。たとえば、共謀法案を含む刑法・刑事訴訟法の改正議論をやっていた法制審議会刑法部会のサム(くならざるをえな)い議事録に比べれば、かなり生き生きした議事録だと思う。

この議事録を読むと、はっきりそうは言っていないのだけど、もう警察は「わいせつ」表現を取り締まることに「厭き」があるのではないか、そう思わざるをえない。「わいせつ」表現の概念は、彼らは刑法にそれがある以上は、その領域を見極めて法執行していく立場にある。USのように実質的にフリーな状況に判例上なるのならともかく、日本の判例はそうはなっていない。そして、「わいせつ」表現かどうかを問題にしたところで、それは、(ある種の性的な)表現の流通が規制されていてほしいという人々の要望とズレてしまっている。それが「創作物規制」と山口さんが表現しているものへの検討になっているのではないだろうか。 とはいえ、「もうわいせつ表現取り締まりなんていらないんじゃね?」とは、警察庁からは言い出せない話ではあるし、性的表現の自由化が気に入らない前田座長なので、規制強化の方向の議論になってはいるが、事務局説明などからは、現状の判断基準が国民のスタンダードに照らして緩すぎるか厳しすぎるかのどちらの方向にも判断できるものがないことについて問題意識がある、という状況が伺われる。

ここでいったん、別の話に移る。境真良氏の「中国の消費者を海賊版から救いたい」という話。中国の厳しいコンテンツ規制が正規版供給を拒む結果、海賊版が横行する原因のひとつとなっている、という話で、

日本政府は、単に中国政府の海賊版対策不足を責めるのではなく、同時に、正規版商品の流通規制を行っていることの海賊版保護効果を指摘しなければならないと私は思う。

境真良(実名登録)の“とりあえず、前進!” - 中国の消費者を海賊版から救いたい

としている。実は、この議論とまったくパラレルな議論が「エロの敵」(安田理央・雨宮マミ)に載っている。いわゆる裏ビデオの話で、藤木TDC氏の議論を引用して、いわゆる逆輸入物(日本から海外向けに制作・輸出されたポルノビデオが、日本国内に再輸入・不許諾複製されて裏ビデオとなるもの)や輸入物の裏ビデオがメーカーなどの権利を侵害しているため、すでに抗議の声があがっている、という話が紹介されている。中国に正規版流通に向けて規制の「調整」を求めるのであれば、日本も当然、規制の「調整」を求められるだろう。

こういう議論をまじめにすることで、刑法175条のわいせつ物頒布罪をなくしていく、という方向を考えることができるんじゃないかと思うのだがどうだろう?この場合、単に条文を削除して流通を自由にする、という議論にはならないと思う。少なくともゾーニング(法規制なのか自主規制なのかはともかく)によって、既存の生活空間の秩序が崩れない担保が求められることは間違いない。また、「被写体が18歳未満かどうかよくわからない」がゆえに児童ポルノ禁止法ではなくわいせつ物頒布で摘発されてきたような領域について、2257 Regulationsのような規制を用いてカバーしていく必要があるかもしれない。いずれにせよ、「今まで通りか、強化か」ではなくて、表現規制の状況全体を変えていけるチャンスが実はあるのではないか、と思ったりするのだが、これはあまりに楽観的だろうか?

2006/11/02

Permalink 03:44:58, by Nobuo Sakiyama Email , 93 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

中国のネット検閲問題と、ある日本企業の関係

ギリシャで開かれているインターネットガバナンスフォーラムに関して、「協力企業に国連サミットで批判相次ぐ」といった記事が出ています。で、各社非難されているところです。ただ、これら各社は中国の人にとってのネットの価値を増やすサービスを提供するがために、その種の検閲に対応しなければならない状況になっている、とも言えるわけで、各社の反論もそこのところにあるように思われます。

ところで、こういった議論でおそらくほとんど言及されていないのですが、中国のネット検閲には、ある日本の企業も関係があります。それも、堂々と発表されているのですが、まだ特に批判されていないようです。むしろ、称賛さえされているようにも見受けられますね。

次のような報道があります。

海外でも、中国向けに文化や習慣を考慮したURLフィルタリングソフト(法輪功、反共産党の規制などを追加)『InterSafe(中国版)』が中国公安の販売許可を日本企業で初めて獲得し、中国の教育基幹ネットワーク“CERNET(サーネット)”に採用されるなど、実績を挙げているという。

ASCII24 2006年6月1日: ALSI、ウェブフィルタリングソフトの最新版『InterSafe ver.5.0』を7月3日に発売

ということで、ALSIのリリースを見ると次のようなリリースが出ています。

アルプス システム インテグレーション株式会社(本社:東京都大田区、代表取締役社長:大喜多晃、以下ALSI〔アルシー〕)は、北京先進数通信息技術有限公司(本社:中国北京市海淀区、以下ADTEC)を通じ、中国国家教育基幹ネットワーク「中国教育和科研計算机网(CERNET)」の事業運営会社、賽尓寛帯网絡有限公司(CERNET BROADBAND CORPORATION)の家庭向けISPサービスとして、日本市場シェアNo.1※フィルタリングソフト「InterSafe(インターセーフ)」が採用されたことを発表いたします。

ALSI News Release 平成17年12月22日: 中国教育基幹ネットワーク「CERNET(サーネット)」の家庭向けISPサービスとして、ALSIのURLフィルタリングソフト「InterSafe」が採用

海外においても、ADTECとの業務提携により、インターネット利用規制の動きが強まっている中国市場にて、安全で快適にインターネットを利用していただくために「InterSafe」の販売を強化、グローバル展開を進めております。

ALSI News Release 平成17年12月22日: 中国教育基幹ネットワーク「CERNET(サーネット)」の家庭向けISPサービスとして、ALSIのURLフィルタリングソフト「InterSafe」が採用

アルプス システム インテグレーション株式会社(本社:東京都大田区、代表取締役社長:大喜多晃、以下ALSI〔アルシー〕)は、2005年に中国公安部の製品安全認可を取得し、中国におけるフィルタリングソフトの販売認可を受けている唯一の日本企業として、日本での市場シェアNo.1(※)Webフィルタリングソフト「InterSafe」の販売活動を行っております。

ALSI News Release 2006年7月27日: ALSI Webフィルタリングソフト「InterSafe」 NTTCom Asia Limited(香港)マネージドサービスに採用 −中国の法律や文化に合わせたデータベースにより、 安全なインターネット環境を実現−

ALSIは2000年より日本国内でWebフィルタリングソフト「InterSafe」の販売を開始し、学校、企業、官公庁、自治体、家庭などを中心に販売を行っておりますが、インターネット利用規制の動きが強まっている中国市場に早くから注目し、2005年6月には中国公安部の製品安全認可を得て、販売活動を行っております。

ALSI News Release 2006年7月27日: ALSI Webフィルタリングソフト「InterSafe」 NTTCom Asia Limited(香港)マネージドサービスに採用 −中国の法律や文化に合わせたデータベースにより、 安全なインターネット環境を実現−

当サービスを利用する企業は、中国国内で規制すべきサイトと、日本企業として規制したいサイトへのアクセスを同時に制限することができ、安全にインターネットを利用する環境が整います。

ALSI News Release 2006年7月27日: ALSI Webフィルタリングソフト「InterSafe」 NTTCom Asia Limited(香港)マネージドサービスに採用 −中国の法律や文化に合わせたデータベースにより、 安全なインターネット環境を実現−

中国向けに提供している「InterSafe」では、中国での利用を考慮し、管理画面等全面的に中国語化しております。規制カテゴリも中国文化、法律等を反映した独自の規制カテゴリを提供しています。

ALSI News Release 2006年7月27日: ALSI Webフィルタリングソフト「InterSafe」 NTTCom Asia Limited(香港)マネージドサービスに採用 −中国の法律や文化に合わせたデータベースにより、 安全なインターネット環境を実現−

ところで、InterSafeという最終製品はALSIの製品ですが、このフィルタリングソフトのエンジンと更新されつづけるURLデータベースはネットスターという別会社になっています。ここは、ALSIとトレンドマイクロが半分ずつ出資した会社で、もとはALSIでやっていた事業を外に出したものです。

このブログのちょっと前のエントリーをみれば分かりますが、ネットスターはNTTドコモとボーダフォン(そして現在はソフトバンクモバイル)のフィルタリングサービスのフィルタ提供会社、ということで、日本では極めてメジャーな存在です。かくして、警察庁の「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」の第5回でもゲストスピーカーとして呼ばれて話をしています。

私ども国内では、この手の企業では最大規模ということで、東京と宮城県の仙台市にこのリサーチセンターを設けておりまして、合計で35名の専任のリサーチャーというものを持っております。パソコンのサイトを見るチーム、それから最近、携帯電話のサイト、携帯電話にデザインされたサイトを見る専門のチーム、それから一部パートナー様の方で、中国マーケット向けにフィルタリングソフトを輸出というか販売を始めているところがございますので、そういったところ向けということで中国語のネイティブの方をスタッフとして迎えて、中国語のサイトを見る専門のチームみたいなものに分かれて活動をしているということになります。

バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会 第5回 議事要旨

つまり、中国で法輪功サイトや反中国共産党サイトの閲覧を阻止するためのデータベース化作業は、日本企業によって日本国内で行われています。

さて、ここで、最初に紹介したCNET記事から、Ciscoの幹部の反論を引用しておきましょう。

しかしCiscoのある幹部は、同社のルータは特定のインターネットアドレスを遮断するように設定することも可能だが、同社が中国政府のために同社製ルータをカスタマイズしたことはないと語った。Ciscoの戦略的技術ポリシー担当シニアディレクターのArt Reilly氏は、「これは、われわれが販売活動を行っている世界の国々で販売しているルータと同じものだ」とし、さらに「何の違いもない」と付け加えた。

CNET: 中国ネット検閲問題:協力企業に国連サミットで批判相次ぐ--グーグルの対策も明らかに

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