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2009/05/16

Permalink 15:59:17, by Nobuo Sakiyama Email , 98 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

「レイプレイ」叩きに見るポリシーロンダリング(1)

「レイプレイ」という、ひとつの、おそらくはマイナーなエロゲーが猛烈な勢いで叩かれた件について、今さらながら書いてみたいと思う。表面的な流れについては、セキュリティmemoの小島さんが手際よくまとめているので、もうちょっと背景的なものを。

単純に追っていくだけでも、抗議を行ったEquality Nowは、一貫して「女性に対する性暴力ゲーム」の禁止を求めており、ゲームで児童の年齢のキャラクターが扱われていることへの言及は、描写されている性暴力の程度を強調するだけのものにすぎないし、日本の児童ポルノ禁止法への言及も、APP研の見解を紹介する形になっている。しかし、読売新聞のキャンペーン支持的な報道では「児童ポルノ」(と言っているが実在の児童と関係しないもの)と強く結びつけられていることがわかる。Equality Nowのメッセージそのままでは広範で強すぎるので、昨年来の日本ユニセフ協会などのキャンペーンと結びつけるように、あえてメッセージを狭めたものだ。しかも、読売新聞では

インターネットで国を越えて情報が流通するなか、子どもを性的に描写した児童ポルノの扱いが国際的な問題になっており、米国や英国などは漫画やコンピューターグラフィックス(CG)の画像なども含めて製造や販売を禁止している。

性暴力ゲーム、規制議論を 読売新聞 2009年5月13日

という、明らかな嘘まで書いている(この点は後述)。

ここから今回の背景に。まず、「レイプレイ」を最初に槍玉に上げたイギリスの事情から。イギリスではこのところ、刑事法規の改正が急ピッチで行われていて、そうした中で、性犯罪や性表現規制が強化されている状況にある。まず、現行の単純所持禁止の「児童ポルノ」の対象を確認すると、「写真」や「擬似写真」、そして、それらのトレース画などとなる。CGが問題となる場合、それはほぼ写真のように見えるリアルなもの。立法目的は描写された児童の存在を刑事訴訟のレベルで証明するという重荷から検察を解放することであって、実在でない描写を取り締まるものではない。トレース画など、実在のものからのトレースなどの「由来物」は、やはり実在児童の被害を前提にするから取り締まろう、ということで追加されたものであって、やはり創作物を取り締まるものではない。それ以外は、従来からのわいせつ物取り締まりの法律であるObscene Publications Act 1959が適用され、deprave and corrupt test と呼ばれるもので判断される。映像の頒布については、Video Recordings Act 1984 により、政府から独立している British Board of Film Classification (BBFC)による事前審査とレイティングが必須とされ、ゲームは映像に含まれているが、子どもを性的に描写したアニメやゲームが発禁になるのは結局のところ obscene と判断される場合で、レイプレイがもし審査されていれば発禁とされた可能性はあるが、全ての子どもを性的に描写したアニメやゲームが当然に発禁になるものではない。また、これらはいずれも出版や頒布を規制するものであって、単純製造を規制するものではない。従って、前述の読売新聞の記述は、現時点では明確に嘘である。なお、米国の場合は、「わいせつ」であることを前提にして視覚的創作物で児童描写の単純所持を禁止している。わいせつかどうかが問題になるので、やはり「子どもを性的に描写した漫画やアニメ」全ての製造販売が禁止されているわけではない。

さて、実のところ、イギリスでは、創作物に関する禁止は、現在の話ではなく、近い未来の話だろう。現在、イギリスの国会には、政府からCoroners and Justice Billという法案が提出されていて、審議経過をみると、すでに下院は通過し、貴族院の審議に入っている。法案の内容 (下院通過バージョン)はかなり幅広いのだが、第52条以下58条までの内容(政府原案では49条以下、となっていて若干ずれる)が、まさに創作物に関する禁止(prohibited images of children) になる。米国の場合、従来のわいせつ物頒布罪などと同一の定義を含めるなどして、従来公表が禁止されていないものをあらたに処罰対象とすることがないようになっていたが、この点、Coroners and Justice Billでは処罰対象を

(2)A prohibited image is an image which—
(a) is pornographic,
(b) falls within subsection (6), and
(c) is grossly offensive, disgusting or otherwise of an obscene character.

としていて(b節の参照先は具体的な描写内容の列挙)、最後のc節は従来のわいせつ物罪を定めた Obscene Publications Act とは異なる書きぶりで、そこのobscene は辞書通りの意味であって Obscene Publications Actを参照するものではない、ということになっている(ただ、どうやら、a,b,c併せてObscene Publications Actの範囲内、ということは前提されているらしい)。そして、55条での「子どもの画像」の定義で、画像に描かれた人物の全体としての印象が18歳未満の子どもであれば、「肉体的特徴」のいくつかが子どものものでなくても、それは子どもとみなす、とされていて、はっきりとある種の漫画をターゲットにしている。ちょっと詳しく立ち入り過ぎたけれども、いずれにせよこの法案はまだ審議中であって、前述のように読売新聞が嘘を書いたことは動かない。

ここで、ひとつ見るべきなのかもしれないのは、ゲームがイギリスで問題にされたタイミングは Coroners and Justice Billの審議が始まったすぐ後だったということだろう。委員会質疑の開始が2月3日で、その日と5日に参考人質疑がまとめて行われていて、Internet Watch Foundationからも参考人が出ていた。イギリスでの「レイプレイ」報道は2月12日から。そして、prohibited images of childrenの条項の集中審議は3月3日に行われている(リンク先は議事録)。イギリスでは Coroners and Justice Bill に問題の条項があることは大きく報道されているから、イギリス国内では法案と関連付けて受け取られた可能性は高いだろう。しかし、日本の報道からはそれは見えない。ただ、prohibited images of childrenは、まさに読売新聞のいう「子どもを性的に描写した児童ポルノの扱いが国際的な問題になっており」という文脈のものではある。

しかし、冒頭に書いたようにEquality Nowは児童描写に限定した話をしていない。ということでさらに続けるのだけれども、この記事はもう十分に長いのでいったんここで切って別記事で続けます。

2009/04/23

Permalink 10:45:38, by Nobuo Sakiyama Email , 20 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 情報社会, 児童ポルノ問題

「ネットは検閲をダメージと解釈し、それを回避する」

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2009/04/18

Permalink 22:39:36, by Nobuo Sakiyama Email , 114 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

問題はトレンドマイクロだけじゃない

ネットスターの人にウイルスバスターは関係ないと言われてしまった前エントリだが、それはそれとして、「活動家グループ/反体制的団体」がフィルタリングソフトでブロックされるというのは、ウイルスバスターに限った話ではない。フィルタリングソフト業界も淘汰やM&Aがいろいろあり、新規参入もあるので昔の情報だけでは問題があるので、メジャーなものをいくつか簡単に調べて同様の状況があるかどうか見てみた。

簡単にみつかるところで、企業向けで有名なSmartFilterがある。SmartFilterを開発・販売してきたSecure Computingの日本法人サイトにはほとんど情報がない のだが、リセラーであるバーテックスリンクが用意したサイトには、カテゴリ一覧が説明つきであり、"Non-Profit Organizations/Advocacy Groups"というカテゴリがあることが分かる。このカテゴリ一覧だけだといまいち位置づけが分からないが、SmartFilter含め複数のSecure Computingで使われているデータベースであるTrustedSource(これは単なるコンテンツに対するURLリストではないとのこと)のTrustedSource Web Database Reference Guideという文書を参照すると、フィルタリング用のカテゴリについて、リスクの種類に応じたグループ分けがされていて、"Non-Profit Organizations/Advocacy Groups"カテゴリは Information というリスクグループで、ポルノなどのコンテンツが Liability というリスクグループに分類されているのとは異なる位置づけだということが明確になっている。TrustedSourceではURLがどのカテゴリに入っているかの検索機能を一般に提供していて、日本生活協同組合連合会サイトが当該カテゴリである一方、みやぎ生協はMarketing/Merchandisingになっていることなどが分かる。なお、リンク先を適宜みるとすぐに分かることだけれども、Secure Computingは昨年秋にMcAfeeに買収されていて、TrustedSourceもMcAfeeブランドに移行している。ただ、SmartFilter はMcAfee ブランドにはまだなっておらず、McAfeeサイト上にはほとんど情報がない。マカフィーの日本向けの個人向け製品の2009年版には、「保護者機能」としてURLフィルタリングを含むものが搭載されているけれども、同じ機能は以前から Parental Control として提供されているし買収時期のことを考慮すると買収効果が反映されているかというと、まだのようにも思う(判断する情報はない)。個人向け製品としてウイルスバスターと競合するものなので、「保護者機能」の詳細がどうなっているかと思ったら、サイトの説明をみる限りでは、年齢設定のみでカテゴリのカスタマイズなどはないようだ(個別のサイトをブロック対象に入れたり外したりという機能はある)。よく分からない。

もうひとつ、さらに企業向け製品として、Websenseというのがある。ここは歴史が長いところで、そもそも、ネットスターでサイト分類作業を行っている、仙台の「URLリサーチセンター」は、もともとはネットスターの設立前、親会社のアルプスシステムインテグレーション(ALSI)がWebsenseの国内代理店をやっていたころに、日本語コンテンツの分類を担当していたことに遡る。その後、ALSIはWebsenseとの契約を段階的に解消する一方で自社フィルタリングソフト InterSafe を発表し、URL分類作業とデータベース化の部分を分離してトレンドマイクロと合弁してネットスターを設立、という流れになる。そういう経緯から、Websenseのカテゴリとネットスターのカテゴリは共通のルーツをもつため似ているが、その後の双方のカテゴリ改訂で別のものになっている。Websense と InterSafe に分かれたころに聞いた話では、Websense が企業向けにフォーカスする方針の一方、ALSI は教育・家庭市場をめざした、ということのようだった。で、このWebsenseなのだが、Master Databaseといって、URLのほか、プロトコルやアプリケーションも分類したデータベースを持っている(Websenseは企業向けとして、HTTPのフィルタリング以外にも他のさまざまなプロトコルへの対応や、企業内パソコンにインストールされ動作するアプリケーションの監視といった機能まで提供している)のだが、URLカテゴリとして、次のように説明している。

Adult Material

Parent category that contains the categories:

  • Adult Content - (引用時略)
  • Lingerie and Swimsuit - (引用時略)
  • Nudity - (引用時略)
  • Sex - (引用時略)
  • Sex Education -(引用時略)
  • Advocacy Groups - Sites that promote change or reform in public policy, public opinion, social practice, economic activities, and relationships.
Websense.com — URL Categories

つまり、Websenseでは、「活動家グループ」のコンテンツは明確に「成人向けマテリアル」とされ、未成年のアクセスは制限されるべきという意味でカテゴリ分けされている。なんだか、ウイルスバスターの場合と似た状況ではないだろうか。「フィルタリング業界」的には、こういうスタンスは珍しくないということだろうか。なお、Websenseでは、MyWebsenseといって、登録ユーザにさまざまな情報を提供するサイトを用意していて、ここで個別のURLがどのようなカテゴリに属するかも確認できるそうだけれども、MyWebsenseの登録ユーザとなれるのは、製品の有効なアクティベーションキーを持っている場合に限るので、実際にどういうサイトが「成人向けマテリアル」としての「活動家グループ」に属するかの確認はしなかった(30日体験版の申し込みをして確認するという手段もありそうだけれども、製品そのものをインストールして評価する気でないのに申し込むのはどうかと思ってやってない)。ケーススタディによれば、玉川学園や東京都庁で使われているようだ。

2009/04/17

Permalink 23:43:55, by Nobuo Sakiyama Email , 12 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

根深い「ウイルスバスターによる誤判定」問題

最後に重大な追記あり:

数日前、トレンドマイクロのウイルスバスター2009について、生協関連のウェブサイトが、軒並み有害サイトとしてアクセスが規制されたという報道があり、報道で表沙汰になってまもなく規制が解除されたという報道があった。これは、トレンドマイクロの弁解するような「何らかのミス」というよりも、フィルタリングをめぐる政治的な動きの一端として極めて興味深い。

報道によれば、生協のウェブサイトが分類されていたのは、「活動家グループ/反体制的団体」だったという。トレンドマイクロは、自社でURLの分類を行っているのではなく、自社が40%の株式を有するネットスターのデータベースを使っていると考えられる。企業向けのプロキシタイプのフィルタリングソフトである Interscan Web Manager の説明では明記されている一方、ウイルスバスターに関しては明記されていないが、違うものを使う理由はあまりないだろう。ただ、「活動家グループ/反体制的団体」という分類は、有名になった携帯フィルタリングのカテゴリには出てこない。ネットスターの「URLリスとを用いたソリューションビジネス」におけるカテゴリ一覧にも問題の分類はないが、説明をよくみれば、この分類はあくまで代表的なもので、内部でより詳細な分類を行っていて異なった見せ方をする可能性があることが分かる。実際、ネットスターのデータベースを使っている各社の個別の製品やソリューションをみると、フィルタリングカテゴリは共通要素は多いが統一されているわけではない。「活動家グループ/反体制的団体」という分類は、新しいものか、従来のものを再分類したのだろう。追記: と思っていたら、ネットスターの方から、ウイルスバスターではネットスターのデータベースは利用していないとのことで、独自か別会社のものということに。

一方、ウイルスバスターのURLフィルタのカテゴリ全体がどうなっているかというと、ウイルスバスター2006ウイルスバスター2007ウイルスバスター2008ウイルスバスター2009と、全てサポートサイトに情報がある。2008と2009で比較すると、以前は「性教育/同性愛」だったカテゴリから同性愛が落ちて「性教育」となり、「アドウェア/ジョークプログラム/クッキー」というカテゴリは無くなり(おそらくウイルスバスターの別の機能でカバーされる)、「ピアツーピア」カテゴリが「ファイル共有」カテゴリに改名され、「インターネット電話」「翻訳」「着信メロディ/携帯電話向けダウンロードサービス」などとともに 「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリが追加されている。

ここで紹介したカテゴリは、アクセスブロック可能なカテゴリであって、実際にはさらにどれをブロックするかという設定が別にある。ウイルスバスター2009についてどのような設定かはやはりサポートサイトに情報がある。「高: 13歳未満の児童に適さないWebサイトをブロックします。」という設定の場合、ブロック候補のカテゴリのものは全部ブロックされる。「中: 10代の青少年と児童に適さないWebサイトをブロックします。」では、ある程度ブロック対象が絞られるが、なお「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリはブロック対象となる。公共端末やネットカフェなどで想定される設定でこのようになる。さらに緩い「低: 暴力、ポルノ、または悪意のあるWebサイトのみをブロックします。」や「最低限: 悪意のあるWebサイト以外はブロックしません。」では「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリはブロックされない。このほか、ユーザーが完全に任意にカテゴリ設定をして保存しておく「カスタム」がある。要は、「活動家グループ/反体制的団体」カテゴリは、未成年には見せるべきでない、というかなり強い設定をトレンドマイクロ社としては推奨しているといえる。

ここまでみて、いくつか問題があって、まずは「活動家グループ/反体制的団体」というのはどの程度のものを想定しているのか、というのがある。とりあえず字義だけではいえば、生協は消費者運動の一種としての生協運動というのが原点としてあって、今はともかく昔は対企業のデモなどもよくやっていた。そういう経緯もあって、大学によっては大学生協の設立を認めないところもある(現在では「過激派」セクトとの関係で生協を潰した大学もあるが、例えば筑波大学などは設立当初からの学生自治否定の文脈で生協を認めなかった)。フィルタリングソフトのカテゴリ追加を熱心に依頼する層のイデオロギー的偏りを想像すると、生協がここに入れられることは、そもそも不思議なことではない。

次に、なぜウイルスバスターの「改良」として「活動家グループ/反体制的団体」がブロック推奨カテゴリに追加されたのだろうかという問題がある。やはり、以前紹介したように千葉学芸高校の高橋邦夫校長に代表されるように、思想信条、宗教に関わるようなフィルタリングを望む「現場の声」があるのだろうか?そして、携帯フィルタリングの「主張一般」カテゴリに特定の政治的意見を突っ込むことが問題視されるや個別に外す状況になっていることに対して、カテゴリ定義としてフィルタリングを外さないで突っぱねられる状況が求められているのだろうか?

ウイルスバスターの利用者のほとんどは、おそらく、どのようにURLフィルタリングの内容が変わったか、ということを明示的には知らされていないだろう。そもそも、URLフィルタリングがメインの製品でもないし。そういうところで、いったい何が起きているのか、明らかにしてほしいよね。

追記: ネットスターの方から連絡があり、ウイルスバスターではネットスターのデータベースは使ってないとのことです。

2009/04/13

Permalink 00:39:44, by Nobuo Sakiyama Email , 9 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲, 通信傍受, 監視社会

「出会い狩り」問題のやっかいさ

楠さんがmixiの出会いコミュ大量削除問題に言及し続報も書いている件、実のところ、かなりやっかいんだよね。

楠さんは今回の出会い系サイト規制法改正に問題があったという認識のようなんだけれども、全ての根は、そもそもの2003年の出会い系サイト規制法の立法に遡る。「ネット上に限った交際相手を募集していても『出会い系』とみなされてしまう」というのは、今回の警察庁の要請に限った話ではなく、規制法の当初の解釈基準において、実際に出会うかどうかではない、と明記されていた。最初の解釈基準もパブリックコメント募集があり、その上で堅持されたものだ。今回の問題は、届け出制によって警察が法執行力を大幅に強化できたから表面化したにすぎない。私は、2003年の法案が出る前の段階でJCA-NETとCPSR/Japanの共同声明を起草して発表して懸念を示した。当時は、今もある某商業コミュニティサイトからの反応を頂いたのだが、私はヤバいと思って声明を出したものの、JCA-NETっていう左翼色の強い市民団体で声明を出す賛同を取り付けるだけならともかく、ネット企業とどう組むか、という話を私が主導権を握って回す状況にもなく、CPSR/Japanも実働はかなり厳しい団体なので、そのまま放置してしまった苦い思い出がある。

異性交際、というか、もう少しぶっちゃければ性的な関心が主導する交際相手探し、というのについて、警察サイドの見方を想像してみると、リアルかバーチャルかは関係ない、というのは、それなりに根拠がある。最終的に防ぎたいのが、児童買春を中心とした「不適切な大人と子どもの性的な関心での出会い」であるとして、それを手前で防ごうとすればどうなるの、ということだ。「通信の秘密」を前提とすると、児童側の通報があるのでなければ、つまり両者の「合意」が継続している限りにおいて、両者の通信内容に警察はタッチできない。そうなると、両者が接触すること自体を防ぐという話になる。実際に出会うことを前提としている場合は当然対象になるとして、「出会わないこと」を当初の前提としていても、通信の秘密で保護された二者の間の通信のなかで、その前提が覆されることはありうる。そして、それが現実であることはここまでに至る事件が証明している。

とはいえ、通信の秘密をアメリカ並に弱くするのと、業法でさらに手前で抑え込むのと、どちらが副作用が弱くみえて容易かといえば、警察からみても圧倒的に後者という話になるだろう。アメリカの話ついででいえば、アメリカでは児童をオンラインで誘う、いわゆるグルーミングについて、おとり捜査がかなり行われていて、端的には捜査員が子どものふりをしていたりするのが少なからず報道されているけれども、おとり捜査の合法性/違法性について、この場合、犯意誘発型と機会提供型のどちらなのかというのもあるけれども、現実の児童でない者を児童と思って誘うことを処罰対象とすることが日本の場合、はたして可能なのかというのもなかなか大きな問題のように思われる。ネット上のやりとりで、両方が児童でないとして、それは児童と思い込んで誘おうとしているのか、Age Play、日本のネット文化圏では「イメチャ」の一種になるだろうが、それと客観的な証拠で区別つけられるのか、といった問題もあるだろう。さらに、あらゆる困難を乗り越えてグルーミング処罰化を実現したとして、警察がどれだけ法執行のリソースを割けるのか、という問題はある。誘う段階の処罰だから、実際の児童買春や青少年条例の淫行処罰規定より、重くできるようには思えない。出会い系サイト規制法の禁止誘引行為の罰則は今のところ100万円以下の罰金に過ぎず、その水準で通信傍受捜査とかおとり捜査とか、ありえないだろう。逆にいうと、淫行処罰規定を構成要件を限定して条例から法律に移行して、全体として児童相手の性犯罪の量刑をアメリカのように大幅に引き上げて、その上でグルーミング処罰化をそれなりに重い罰則でやらないと、実効性はない。そこまでやるという選択が、日本で現実的なんだろうか。

処罰対象を公然と性的目的で児童を誘い出すことに絞る、というのは、それはひとつのアプローチではあるのだろうけれども、児童が全て無垢ではないわけで、それで児童買春や、青少年条例で問題になるような児童と成人との関係を十分に抑制できるかというと、警察を納得させられるものでもないだろう。

出会い系サイト規制法がネット規制という観点からは最低・最悪の部類だというのは、もうずっと前から思ってはいるのだけれども、ではどうしたらいいか、というと、なかなかいい代案が浮かばないんだよなぁ。

2009/03/24

Permalink 00:55:11, by Nobuo Sakiyama Email , 0 words   Japanese (JP)
Categories: 政治

自民党厚労族の医薬品ネット販売潰しの本気ぶりについて

慶應大学の国領教授が自民党の「医薬品のネット販売に関する議員連盟」のヒアリングを受けてきた話をブログに書いている。省令によるネット販売規制についての違憲論について「この議論に対するスタンスによって、親規制改革会議か、反規制改革会議かが決まるということらしく、そのようなことを考えもせず出かけていった自分の政治センスのなさ」云々とおっしゃっていて、逆にそういう「政治的」なポジションで規制強化に動いている議員が少なからずいる、ということが伺われる。

前回この問題について書いたときよりも情報がネット上にあがってきているので、いくつかみてみると、自民党厚労族の本気ぶりがわかる。

まず、「産科医療のこれから」という現役医師の3月11日付ブログの記事に、日刊薬業という業界ニュースからの転載があった。これによれば、議員連盟の事務局長である渡嘉敷奈緒美衆院議員が、薬剤師会主催の会合の講演で「今国会での議員立法も視野に入れてネット販売規制活動を進めていく」とし、さらに「個人的見解としては、第1~3類すべてのネット販売を禁止し、消費者教育をきちんと行ってから、(第3類薬のネット販売解禁など)ステップを踏んだ議論を進めていくべきだ」と、ネットでの医薬品販売の全面禁止をしてネット薬局を一度全部潰していつ終わるともしれない消費者教育が終わってから、今回の省令の範囲に限ったような限定的な販売について解禁する議論を始めるべき、といった見解を述べたということで、前回の記事での懸念はかなり現実的なものとなっている。

また、国領教授が出席した3月18日のヒアリングについては、薬事ニュース社

ヒアリングで招いた楽天、日本オンラインドラッグ協会らが、薬のネット販売を第三類以外認めない省令は「違憲」と発言したことに対し、「法廷で別途議論すべき」(尾辻秀久会長)と応じたことを明かした。

薬事ニュース 行政ヘッドライン

と報じている。ヒアリングでの意見陳述に対して「法廷で別途議論すべき」と議員連盟側が述べているということは、つまりは敵対的な対応だろう。違憲という意見を、自分たちとしては考慮に値しないと宣言しているわけだから。

それにしても、この議員達は、「国民の安全」を本気で考えているのだろうか?渡嘉敷議員は前出の記事で、「現段階でリスクを背負うことを消費者が知らないままネット販売を解禁すると、トラブルは増え、訴訟も増える。逆に薬のネット販売の道を遠のかせてしまうことになってしまうだろう」としているのだけれども、個人輸入代行業者とか日本向け海外通販サイトは、今、喜んで「うちには影響ありません」というアナウンスを出しているのだけれども。

2009/03/20

Permalink 02:06:19, by Nobuo Sakiyama Email , 0 words   Japanese (JP)
Categories: 検閲

青少年ネット規制法が早くも改正されようとしている

ふと気づいたんだけれども、今開いている通常国会で、青少年ネット規制法が施行前から早くも改正されようとしている。

具体的には、内閣から提出されている閣法「青少年総合対策推進法案」(審議経過情報法案)に、青少年ネット規制法の改正が含まれている。

青少年ネット規制法では「インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議」というのを内閣府に設置して「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」というのを定める、ということになっている。ここの「会議」の機能を、青少年総合対策推進法案で定める「青少年総合対策推進本部」で置き換えることや、青少年規制法では基本計画を「定める」だけだったのに対して、青少年総合対策推進法案では「本部」が「実施を推進する」ことも定められている。

気になるのは、青少年総合対策推進法案では、青少年ネット規制法では意図的に避けられていたといってよい「青少年の健全な育成」が正面から掲げられており、青少年総合対策推進本部はそのために「青少年総合対策推進大綱」を作成することになっていることだ。現行の「青少年育成推進本部」は閣議決定で設置されているに過ぎず、現行の「青少年育成大綱」もそのレベルのものだけれども、青少年総合対策推進法案でレベルアップすることになる。

この法改正があろうとなかろうと、「インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議」と「青少年総合対策推進本部」の構成員(どちらも内閣総理大臣が長で構成員は関係閣僚)はさして違わないし、実際のお膳立てをすることになる官僚の顔ぶれが変わるわけでもないだろうけれども、しかし、青少年総合対策推進法案が成立すれば青少年ネット規制法は微妙に位置づけが変わるようにも思え、気になるところだ。実際問題、どういう話なのだろう?

2009/03/11

Permalink 00:23:30, by Nobuo Sakiyama Email , 5 words   Japanese (JP)
Categories: 政治

医薬品ネット販売規制のさらなる強化に自民党厚労族がアップを始めたようです

あんまり話題になってない小ネタニュースで気づいたんだけど。3月5日の産経ニュースの報道で、自民党で、「医薬品のネット販売に関する議員連盟」というのが3月5日に設立されているというのを知った。

今年6月の改正薬事法の施行に伴って大半の一般用医薬品(大衆薬)が、インターネットを含む通信での販売が規制される問題で、自民党の有志議員が5日、ネット販売などの是非を考える議員連盟を立ち上げ、党本部で初会合を開いた。販売の是非に関する意見書をまとめ、党内の医療委員会に提出する方針を確認した。

(以下略)

薬のネット販売可否問う 自民有志が議連 意見書提出へ - MSN産経ニュース

この記事は、議員連盟の名前がはっきりしていないし、議員連盟が「これから意見をまとめる」としている建前を尊重してか、議員連盟全体のスタンスははっきりさせていない。それでも、「規制支持の意見が多くを占めた」とか、「一部議員は」「省令公布後の検討会設置に疑問を呈した」と、そのニュアンスが分かるもの。初会合でネット販売規制派団体だけヒアリングして、規制反対派は次回、というのも会の性質を伝えてはいるだろう。

ただ、いまいちピンボケた記事だったので、他の報道をチェックしたら、もっと明解な規制強化が目標のようだ。

自民党の「医薬品のネット販売に関する議員連盟」(代表・尾辻秀久参院議員会長)の初会合が5日開かれた。議連事務局によると、6月に始まる一般用医薬品(市販薬)の大半のネット販売禁止を支持する多くの議員が参加。今後まとめる提言も禁止に賛成する内容になる見通しで、必要なら法改正も検討するという。この日は28人の議員が出席。薬害被害者など禁止に賛成する5団体から意見を聞いた。次回は楽天 <4755> や伝統薬業者など反対派から意見を聞く。

自民議連、薬ネット販売禁止を提言へ=法改正も視野 (時事通信) - Yahoo!ニュース

そもそもこの議員連盟は今年の1月と2月の二度に渡って開催された「医薬品のネット販売に関する勉強会」が母体になっていて、その勉強会には厚生労働省やネット販売規制派団体だけが呼ばれていて、規制反対側は呼ばれなかった模様。特に、2月18日の第二回勉強会は、薬事ニュース社医薬経済社のヘッドラインニュースによれば、設立を了承された議員連盟はネット販売の罰則規定立法化などを目指すものであり(薬事法施行規則では最大限で行政処分まで)、また「楽天・三木谷社長の「参戦」容認の厚労省にダメ出しするものであったようだ(なお、両ニュースはバックナンバーや記事本体がとても高額な有料制であり、とくに薬事ニュース社は購読対象を業界関係者に限定しているので、検索結果に表示される抜粋から読み取った)。

記事には明記されていないが、「薬害被害者など禁止に賛成する5団体」のうち、少なくとも薬害被害者系団体と消費者団体は、改正施行規則の規制では満足しておらず、第3類を含む全て、水溶性ビタミン剤などを含む全ての一般医薬品のネット販売禁止を求めてきた経緯があり(薬害オンブスパースン会議サイトにある要望書)、議員連盟のトーンもこの線である可能性は十分にある。

なお、勉強会と議員連盟の代表は元厚生労働大臣でその方面の議員連盟複数のトップをつとめる尾辻秀久参議院議員。そして 薬剤師求人サイトに掲載されている薬事日報記事によると事務局長をつとめているという渡嘉敷奈緒美衆議院議員は薬学部出身で薬剤師免許を取得して社会人としてのキャリアを製薬会社でもある資生堂でスタートしている(そもそも資生堂は調剤薬局として創始された企業)。現在、厚生労働委員会の委員をつとめていて、>自身のサイトに2008年2月の厚生労働委員会で新薬事法施行について与党議員として質疑を行っている議事録を掲載している。

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