今さらながら、いわゆる構造計算書偽装問題についてちょっとふれてみたいと思う。
blog界的には、不正の人的背景についての噂話をめぐる議論が絶えなかったこの1ヵ月ほどだが、そういうのはすでに食傷気味でもあるし、(司直や国会議員がするのでもなければ)たいして役立たない議論という気もするのであっさりと無視するとして、再発防止に関係して。
そもそも偽装できたのが問題、というのは、事件の渦中にあるイーホームズ株式会社の社長が再三述べている。これに対して「検査機関が申請内容について全部再計算すべき」という方向に議論が流れつつあり、実際に自治体等で構造計算ソフトを購入して再計算する動きが出始めているが、それは当面の対応としてはともかく、長期的にはどうなのだろう?それって分業否定という気がしてならない。
一方、毎日新聞によれば国土交通省が改ざん防止のための「暗号キー」を検討、という報道もある。ここでよくないのは、改ざんを行った元建築士が出力内容のみを改ざんしたからといって、プログラムそのものの改造はあえて想定しない方向で検討が行われつつあるらしいことだ。秘密鍵を持ったプログラムの解析を困難にする難読化技術が存在するとはいえ、原理的には荒川さんが述べ、その前にはessaさんが述べているように、プログラムの改ざんは可能であり、改ざんがもたらしていた「コスト削減」の大きさは、プログラム改ざんの困難さに十分に見合うかもしれない、と思わせるほどのものだったろう。
問題はその先だ。essaさんにせよ、荒川さんにせよ、検査機関が再計算して検証すべき、ということを述べているように思われる。が、それは同時に、検査の長期化をもたらしうるし、コストも目に見えて上昇する。それは、受け入れてもらえる議論なのだろうか?
私が考える正解は、構造計算ソフトのASP(Application Service Provider)化だ。最終的な形ではない構造計算をいろいろ試す段階では、従来通り、構造計算ソフトはスタンドアロンで計算を行って結果を出す。その上で、最後に決定版の電子データを作成するときには、構造計算ソフト上の操作で、そのソフトと対応したASPサイトに計算の入力データが送られ、計算結果がASPによって電子署名されて戻ってくる。こうすれば、個々の建築士が構造計算ソフトの出力を改ざんすることは原理的に不可能だ。一方、ASPサイトのほうは、定期的にセキュリティ面と計算手順についての監査を受けることが前提となる。また、建築士等のユーザからの計算リクエストのログも監査の対象としたり、保管しておいた上で、建築に関して不正などが疑われるさいに開示対象とする、という形をとってもいいかもしれない。従来でも構造計算ソフトは国土交通大臣認定、という形のチェックが入っているのだから、ASPについて監査を認定取得及び継続の要件とするというのは、あまり問題なく出来るように思う。
このようにしておけば、検査機関は再計算して検証する必要はなく、計算結果が正しいものとした上で、構造設計図と計算の対応や、計算結果の意味するところの分析などに重点を置いたチェックができることになる。ただし、こういうアプローチは、おそらく「唯一の形」である必要はなく、従来の方法と並行的に運用されるとした上で、検査機関の再計算を不要とすることのみを特典とするべきだ、とも思う。結局のところ、再計算するのとASPに署名させるシステムを構築するのとどちらがいいか、というのは、安全性についての水準が同程度で確保される前提の上で、制度で決めるのではなくて市場が決めればいいと思うわけで。
http://blog.sakichan.org/htsrv/trackback.php/4710d25b8f8d1dbb8127d2b86e46d4ce70cc7ca52b4344635aa1f2acbb9b5f89
なるほど、すでにASPは存在しているわけですね。
私の関心は、スタンドアロンプログラムに「改ざん不可能な仕組み」を組み込む方向の検討とその脆弱性をめぐるアサッテ方向の議論に対してオルタナティブな枠組をみせることだったので、既存の製品についての調査はしていませんでした。御了承下さい。
制度上の解決が必要なのは、それはそうですね。(要素)技術については、すべて存在しているわけですから。
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