Winnyを利用したウィルスなどによる情報漏洩については、武田圭史氏が、積極的に規制推進の議論を行っている。武田氏の議論は、「個人のプライバシーの暴露の問題」よりは に焦点を当てつつも、そこからさらに「(個人情報を含む)重要情報の漏洩・拡散の防止」にまで重点を置いて論点を拡大している。
しかし、問題は、それらの「重要情報」の漏洩・拡散防止のために、漏洩元とは別の組織や個人多数が、はたして基本的人権を制限されてまで、協力する義務ってあるのか、ということだろう。一般に、漏洩した情報を拡散させたとして、それはどういう法的問題が、「他人」にとってあるのだろう?個人情報漏洩ウィルスによる漏洩ファイルは、流出元のPCに格納される個人情報を含むから問題だ、という議論はひとつありうるだろう。しかし、では含まれる個人情報を「洗浄」した場合はどうだろう?そういう機能をもつ情報漏洩ウィルスも理論上はありうるだろう。
端的にいって、政府レベルで(そして武田氏が)問題にしている「重要情報」というのは個人情報ではないと思うのだが、そういう情報を第三者が拡散させたところで、現状で刑法上の問題になるのは、「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」が定める特別防衛秘密ぐらいじゃないだろうか?自衛隊法には防衛秘密があるが、これを漏洩・拡散させない義務は一般の国民には存在しない。
「重要情報」の拡散防止につきあう義務が一般に存在したとしよう。あるいはそういう法制化でもいい。そうすると、それはWinny等匿名P2Pファイル共有ソフトの規制でとどまるのだろうか?そもそも、そういう規制が正当化される政府のもとでは、漏洩・拡散情報に基づく、住基ネットの運用状況についての批判報道であるとか、Nシステムの運用実態についての批判報道であるとか、警察における裏ガネ作り目当てと思われる架空調書の存在についての報道であるとか、警察のISPへのユーザ情報照会についての実態についての報道であるとか、この間行われてきたさまざまな報道自体が規制・禁止されていくことになるのではないだろうか?我々の国はそのような国となるべきなのだろうか?
追記: コメント欄にあるように、武田氏の認識では、個人情報と重要情報は別のものではなく、個人のプライバシーは重要情報にふくまれ、そのなかで「対応が急務」なものだそうだ。そのむねは訂正。ただ、私の意図は「個人情報を除く」ことにあるのではなく、「重要情報」というネーミングで別の要素が入ってくることについて、どうなんだろうか、ということでもある。この点、後日別のエントリで書きます。
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